美食(?)ハンターのちマフィア?   作:もけ

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何だか、今話書いてて何が書きたいのか自分が分からなくなってきた。
グダグダで申し訳ないです。


お姫様だっこって憧れるけど、ちょっと無理でした

「ねぇ、アシル」

「ん~~?」

「アシルの念能力って」

「教えないぞ?」

「うん、でも推理するのはいいでしょ?」

「まぁ」

「私が飛行船のラウンジで見せてもらった時は、手を触られてすぐに意識が遠くなって、でもすぐに目が覚めた」

「そうだな」

「でもさっきの戦闘で襲ってきた狼たちは、速くて見えなかったけど多分殴り飛ばされるか何か、とりあえず直接攻撃を受けて倒れてたけど、呼吸の感じとか気絶と言うより痺れてるみたいだった」

「よく見てるな」

「任せて。この事から分かる事は二つ。一つは、アシルの能力は直接接触しなければいけない。もう一つは、効果が複数ある」

「それで?」

「狼は麻痺。私は気絶、もしかしたら仮死。この二つから思い当たるのは毒。つまり、アシルは毒と同じ効果を接触によって相手に付与できる」

「へぇ~~」

「『へぇ~~』って正解じゃないの?」

「だから教えないって」

「ケチ」

「何とでも」

「百点じゃなくても50点くらいは行ってるでしょ?」

「聞こえな~~い」

「どうしても教えてくれないの?」

「能力の秘匿は生命線だって言ってるだろ?」

「教えてくれたら、何でもしてあげるって言っても?」

「な、何でもっ!?」

「うん、な・ん・で・も」

「……」

「エッチなこと想像してるでしょ」

「まぁ」

「そこ、同意しちゃうのっ!?」

「見透かされてるのに隠してもな」

「いや、そこは照れ隠しでとぼけるとこでしょ」

「男に何を求めてるんだよ」

「様式美は大事だよ?」

「ならば仕方ない」

「それにはノっちゃうんだっ!?」

「さぁ、フって来い」

「じゃ、じゃあ、行くよ? エッチなこと想像してるでしょ」

「なっ、違っ、こ、これは、アレだ、アレ。男の本能って奴で仕方なく」

「……」

「……」

「結局、エッチって事?」

「まぁ」

「……アシルのエッチ」

「ぐはっ」

 

 こんな呑気な会話をしている二人だが、ほんの一時間前には―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村を出てからまた一本道が続いたが、しばらくすると急に開けた場所に出たと同時に狼の群れに行く手を遮られた。

 

 広場には所々、赤黒いシミ。

 

 前方にはヨダレ垂らして殺る気満々の狼たち。

 

 進むべき道は彼らの後ろ。

 

「(選択肢はないな)」

 

 そう決断してからのアシルの行動は早い。

 

 即座に『練』でオーラを練り上げ『堅』で全身にまとい、念の集大成とも言うべき固有能力『発』を発動。

 

「(先手必勝、『無限の調味料(インフィニティ・シーゾニング』)」

 

 防御は『堅』に、攻撃は『発』の能力任せで、突っ込む。

 

 こういう群れ相手の場合は頭を潰すのが定石。

 

 それに倣って、アシルは中央の一番敵の層の厚い所に見当を付け、前方の狼を左右に打ち払い、打ち上げ、後ろに投げ飛ばし、狼同士をぶつけて余計な邪魔が入らない様にしながら進む。

 

 そしてその最奥に案の定陣取っていた一回り体の大きいボスと思われる個体を視認するや否や攻撃も回避も撤退もさせる隙を与えず一撃で意識を刈り取る。

 

 結果として包囲網を突き抜けた形になった所で反転、中央を厚くし左右に展開していた所を中央突破したので、残りは左右に広がっていたおよそ半数。

 

 頭を潰した結果、戦意は削れただろうが油断はできない。

 

 道が塞がれる前にと足にオーラを集中し、全速力でアニタの下に戻る。

 

 そしてアニタを背にして守る様に立ち、得意ではないがオーラに殺意を込めて狼たちに飛ばす。

 

 この間、わずか十秒足らず。

 

 アシルは念能力の系統的にも、父親に付いて食材集めを主なフィールドワークにしていた経験からも、殺気を飛ばすと言う行為に慣れていない。

 

 むしろ気付かれる前に仕留めるのがスタイルで、気配を絶つ『絶』を得意とし、そこからの瞬間的な『練』とその操作『流』からの先制攻撃が持ち味なのだ。

 

 アシルが単独行動なら、危険は避ければいいし、直面したら逃げればいい。

 

 だが今はアニタがいる。

 

 アシルにとってアニタは守るべき存在であり、足枷でもある。

 

 かと言って、食材を扱う者として無益な殺生はポリシーに反する上に、現地の食物連鎖のパワーバランスを崩すのも良ろしくない。

 

 よって、こちらの実力を示してからの威嚇と言う手段を用いている。

 

「(これで引いてくれれば)」

 

「アシル」

 

「アニタは後ろの警戒を頼む」

 

「了解」

 

 獣相手と見くびるなかれ、奴らは包囲戦だけでなく、だまし討ちや誘い込みなど狩りにおいて人間と同レベルの戦術を使ってくる。

 

 しかも夜目も利けば、鼻も利く。

 

 脚力などは比べるべくもなく、牙と爪と言う武器もある。

 

 絶対的アドバンテージの念が使えなければ、この数の差をひっくり返すのは相当に骨だろう。

 

 試験官が「実力を示せ」と言ったのにも納得が出来る。

 

 さておき、

 

 しかしアシルの目論見は、にらみ合い後すぐに轟いた遠吠えによって瓦解する。

 

 アシルが声のした方に視線を向けると、広場から少し離れた森の中でもひときわ背の高い木に、先程昏倒させた大型の個体よりもさらにもう一回り大きい個体がこちらを見ていた。

 

「あいつがボスっぽいね」

 

「そうだな。さっきのは中ボスってとこか」

 

 狼たちは陣形を変え、はっきりと左右に分かれる。

 

 こちらを挟み撃ちにするつもりらしい。

 

「(ちっ)」

 

 アシルは胸中で舌打ちをする。

 

 これだとアニタを守るために、打って出るわけにはいかなくなった。

 

 離れた位置にいるボスは論外、各個撃破も反対がフリーになる。

 

「(一旦、後退するか……)」

 

「アシル」

 

「なんだ」

 

「私だって時間稼ぎくらいできる。アシルはその間にボスを」

 

「いや、さすがにこの数は無理だろ。俺だって左右から一気に来られたら危ない」

 

「でも、素直に逃がしてくれるとは思えないよ」

 

「……前向きなプランと後ろ向きなプランがあるが」

 

「前向きで」

 

「内容聞かずに即答かよ」

 

「いいから早くっ」

 

「ちっ、後で文句言うなよ」

 

「きゃっ」

 

 そう言うや否やアシルはアニタの足を払い、体勢が崩れた所を背中から腰に腕を回して抱え上げ、お構いなしに全力で、狼たちが左右に割れた事で結果的に素通り可能になった進路を駆け抜ける。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 もちろん相手も即座に追いすがって来るが、逆の手でポケットから煙玉を投げ煙幕を張る。

 

 ついでに悲鳴がうるさいので、無慈悲にも空いた手で口を塞ぐ。

 

「むーーむーー」

 

「(これじゃ、人さらいにしか見えないな)」

 

 と思いながらも止めはしないアシル。

 

「(一応、声で居場所を悟らせないためっていうちゃんとした理由があるから大丈夫だ。って、誰に対して大丈夫なんだ?)」

 

 答えの出ぬまま走り続けること10分。

 

 背後を確認し、なんとか逃げ切ったと足を止め、アニタを地面に下ろす。

 

「ふぅ、何とか逃げ切れたな」

 

「……」

 

「アニタ? 大丈夫か?」

 

「……」

 

「目、回したか」

 

 脇に抱えられた状態で、車並みの速度で振り回されたアニタはブラックアウトしていた。

 

「ここも絶対安全ってわけでもないし」

 

 アシルはため息を一つしてから、自分のリュックを体の前に持ってきて代わりにアニタを背負い、

 

「ま、修行と思えばこのくらい何てことないな」

 

 『絶』で無駄なエネルギーの消費を抑えながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後は何事もなく平和な時間が続いたため冒頭の様な気の抜けた会話に繋がるのだが、なぜか意識を取り戻してからもオンブは継続され、

 

「教えてくれたら、何でもしてあげるって言っても?」

「な、何でもっ!?」

「うん、な・ん・で・も」

 

 の所では、殊更背中に胸を押し付けられた上に耳元で囁かれるというコンボを喰らったアシルがいかがわしい妄想をしたとしても責められる者はいないだろう。

 

 そんな傍から見たらイチャついてるとしか思えない状況も、二人の視界にあるもの、全く持って場にそぐわないものが入った事で終わりを迎える。

 

 幼女がいたのだ。

 

 見間違えではない。

 

 妄想でもない。

 

 道をふさぐ形で張られた天幕の中でお菓子と漫画に囲まれて、ゴシックロリータ風の赤いドレスでオシャレをした幼女が、一人で。

 

 周りは森だ。

 

 人里は遠い。

 

 さっきの様な狼だって出る。

 

 そんな所に、いきなりコレだ。

 

 違和感があり過ぎて、逆にツッコミづらい。

 

 アシルはアニタを背中から降ろし、前日の役割分担と同じようにアシルは警戒、アニタは交渉と目配せして頷き合う。

 

 しかし二人が近付くと、声をかける前にこちらに気付いた幼女は読んでいた漫画を閉じ、立ち上がってポケットから一枚の紙を取り出し読み上げ始めた。

 

「よくぞ来た。力を示し者よ。そなたらには褒美として、その求める先を予言の一文より指し示そう」

 

「「(凄い棒読み)」」

 

 言葉にはしないが、この時二人の心は繋がっていた。

 

「よいか、一度しか言わぬので心して聞くように」

 

「眼前にそびえし大地の壁を、光と闇が終焉を迎えし彼方より回り込め。その先でたどり着く大きな循環の流れに従い、運命の選択を迫られし時は自らの胸に手を当て心のある所に従え。さすれば求めし地は必ずや現れるであろう」

 

「さぁ、道は示された。自らの知恵と勇気を信じ、旅立つがよい。勇者の行く末に神々の加護があらんことを」

 

 言うべき事を言い終えた幼女は紙をポケットにしまい、ぺコンと一礼してから読書に戻った。

 

 呆然とするアニタだが、何とか復活し幼女に話しかける。

 

「こんにちは。私はアニタ・バニッシュ。あなたのお名前は?」

 

「キャロル・マグワイノフ」

 

 声に感情の乗らない喋り方だが没コミュニケーションと言うわけではなく、ちゃんと漫画を置き、体の向きを変えてくれる。

 

「じゃあ、キャロって呼んでいい?」

 

 少し考える間が空いたが、無言で頷く。

 

「キャロはハンター試験の試験官なの?」

 

「お手伝い」

 

「誰の?」

 

「ママの」

 

「そっか、ママのお手伝いしてるんだ。キャロは小さいのに偉いね」

 

 分かり辛いが、照れているのか、ちょっとだけ顔が赤くなった……様に見えなくもない。

 

「じゃあ、ママは近くにいるのかな?」

 

 首を横にコテンと倒す。

 

「う~~ん、じゃあ何してるか分かる?」

 

「狙ってる」

 

「狙ってる?」

 

 頷く。

 

「何を?」

 

「アニタ達を」

 

 ハッとしたアニタがアシルを振り返ると、

 

「殺気はしない……が、あの崖辺りだと思う」

 

 アシルは1㎞ほど離れた崖を見ていた。

 

「大丈夫」

 

「えっ」

 

「私に悪い事しなければ撃ったりしないって言ってた」

 

「そ、そう」

 

 アニタが口元を引きつらせていると

 

「頑張ってね」

 

「?」

 

「試験」

 

「っ!? うん……うん♪ ありがとう、キャロ」

 

 淡々としていたキャロからの応援にアニタの表情は一転してほころび、仲良く握手をする。

 

 と、その時「タンッ」と言う軽い音がアニタの背後でした。

 

「凄い」

 

「アシル?」

 

 アニタが振り返ると、アシルが片手に穴の開いたタオルを持って何やら感心している様だった。

 

「キャロのママは凄いスナイパーなんだな」

 

 スナイパーという単語が分からないのか、キャロの首は横に倒される。

 

「自慢のママって事さ」

 

「うん♪」

 

 母親が褒められた事がよっぽど嬉しかったのか、初めてキャロの表情が明確に動き笑顔を形作る。

 

 そのまま休憩がてら少しお喋りをしてから、最後は「バイバイ」と手を振りながらキャロと別れ、二人は変な暗号に従って先を目指す。

 




予言(?)、中二病的文を考えるのって難しいですね。
もうちょっと捻らないととは思うんですが限界でした。
次回は一次試験会場に着いて……できたらゴールしたい。

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