美食(?)ハンターのちマフィア?   作:もけ

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12/2、この話を投稿するのと同時にアニタさんの口調変更しました。
ペルソナ3のゆかりっちをご想像ください。
ゆかりっちの喋り方って僕の考える『普通の女の子』の喋り方なんですよね。
初めて聞いた時はそのナチュラルっぷりに驚いたものです。



ある日森の中熊さんに……出会わない

 街から伸びる一本道はいつしか平原から鬱蒼として森へと変わり、視界を遮る樹木の中、方向感覚を狂わす曲がり道や、上がっては下がりトンネルを潜るなんて事を幾度となく繰り返しながら森の奥深くへと続いて行く。

 

 アシルは方位磁石と歩数で簡単なマッピングをしながら進んでいるため大凡の位置は把握しているが、アニタは一本道のせいか気にしている様子はない。

 

 アシルとしては獣にでも襲われ戦闘になって道から外れたり、道をショートカットするほど急いで帰る羽目になった場合に困るだろうと思うが、今の時点では聞かれれば答えるがわざわざ自分から指摘する事もないだろうと黙っている。

 

「(自分の立ち位置と周囲の状況把握は基本だと思うんだけどな)」

 

「ねぇ、アシル」

 

「なんだ?」

 

「ここまでずっと一本道で来たから大丈夫だとは思うんだけど、私達ちゃんと進めてるんだよね?」

 

「あぁ、大分遠回りさせられてるけど順調に街から遠ざかってるぞ」

 

「そこは目的地に近付いてるって言ってくれない?」

 

「街の住民がこぞって嘘をついてなければな」

 

「怖い事言わないで」

 

 アシルは情報収集している際、違った情報があまりに少ない事から情報統制されている感じを受けていた。

 

 でもそれは手の込んだ嫌がらせと言うより、むしろ「ハンターだったら自分の目と耳で情報収集くらいしろ」と言われているのだと解釈している。

 

「可能性の問題だけど」

 

「うん?」

 

「情報では俺たち以外にもこの道を選んだ奴らが相当数いるはずだけど、誰一人として引き返してくる奴がいない」

 

「うん」

 

「それはこの道が正解なのか、違うルートで街に戻れるのか、それとも…………」

 

「な、何よ、言いかけてやめないでよ」

 

「それとも、この先で全員死んでいるか」

 

「聞かなければ良かった」

 

「まぁそうは言っても戦闘の痕跡もないし、断末魔も聞こえないし、たまに血の匂いがするくらいだから安心しろ」

 

「できるわけないでしょっ!!」

 

「はっはっは、いいツッコミだな。アニタ」

 

「分かった。殴られたいのね」

 

「いやいや、場を和ませようと思ってな」

 

「和む要素が1ミリたりとも見つからないわよっ!!」

 

 と愉快な会話をしながら進んでいく二人。

 

 口に出しては言わないが、二人とも胸中では話し相手がいる事に安堵を覚えていた。

 

 見通しのきかない森の中で「この道で正しいのか」「どこまで続くのか」分からないストレスと言うものは相当なものだ。

 

 一人でいれば不安に押し潰されるかもしれない。

 

 だが、誰かがいれば気が張れるし、話せば気が紛れる。

 

 道行を共にする相手に恵まれた事は二人にとって幸運だっただろう。

 

 そうして街を出てから5時間余り、森の中と言う事もあって辺りは既に闇に覆われている。

 

 そろそろ一旦休憩して夕食でもと思っていると、手の自由を確保するため頭部に装着するタイプを選んだライトの明かりに漸く村の入り口が照らし出された。

 

「アシル」

 

「あぁ」

 

「あれは扉だよね?」

 

「あぁ」

 

「てことは、村って事だよね?」

 

「あぁ」

 

「良かったぁ~~~~~~」

 

 不安から解放され、その場にへたり込むアニタ。

 

「真っ暗だし、お腹は空くし、このまま野宿する事になったらどうしようかと思った」

 

 アシルも安堵の息を吐くが、アニタが自分の代わりに盛大に気を抜いてくれたおかげで、むしろここからが問題なんだと気を引き締め直す事ができた。

 

 軽く周囲に目を走らせるが、目の前の村は獣除けのためか4m程の丸太に囲まれていて外からは中の様子を窺う事はできない。

 

 夜間だからか閉ざされている門を前にしてアシルは仕方なしに声を上げようとするが、その前に門は向こうから勝手に開いた。

 

「えっと、これって入っていいって事?」

 

 アシルの警戒心が首をもたげるが、入る以外に選択肢がないと割り切り、何があっても反応できる様に臨戦態勢に頭を切り替える。

 

「アシル?」

 

「アニタ、俺の後ろに」

 

「う、うん」

 

 門をくぐり、開けた人物を探すが見える範囲に姿はなく、そこかしこの建物から視線や息づかいは感じ取れるが敵意や殺意の類はない。

 

 何事もないまま歩を進めていると視界が開け村の中心の広場にたどり着く。

 

 そこには場の雰囲気には合っていてもアシル達のテンションにはそぐわない情景、四人の老人がテーブルを囲んでお茶を飲んでいた。

 

 罠の可能性も考慮して無闇には近付かずアシルは警戒を強め、代わりにアニタが声をかける。

 

「こんばんは、違ってたらごめんなさい。ここはハンター試験の中継ポイントで合ってますか?」

 

「あぁ、合っとるよ」

 

「じゃあ、あなた達が試験官?」

 

「その通りじゃ」

 

 四人が席を立ちアニタ達の前に横一列に並ぶ。

 

「これからお主たちに選択問題の出題をする。その答えによって次の問題に進むか、その場で道を示されるかが決まる。ただし早く示された道が間違いである訳ではない。何か質問はあるか?」

 

「答えるのは一人ずつですか? それとも二人で一回?」

 

「どちらでも」

 

「示された道以外を進むのは?」

 

「好きにするといい。自分の選択した結果を受け入れるも、間違いを認め違う答えを模索するのも自分次第じゃ」

 

「そうですか。ちょっと連れと相談する時間をもらっても?」

 

「なるべく早くの」

 

 少しだけ老人たちから距離をとる。

 

「アシル、どうする?」

 

「好きに選べるなら選択肢は多い方がいいと思う」

 

「でも結局右がいいか左がいいか聞かれてもその先がどうなってるか分からなければ一緒じゃない?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「むしろ迷う分だけ損だと思う。最初に選んだ道がちょっと危なそうだから引き返したら逆はもっと危なかったみたいな」

 

「確かに」

 

「じゃあ、二人一緒でいい?」

 

「OK」

 

「答えるのはどっちにどうする?」

 

「アニタに任せるよ」

 

「いいの?」

 

「こういうのはアニタの方が向いてそうだからな」

 

「そう?」

 

「俺は石橋を叩いて渡るタイプだから、直感に従うのは苦手なんだ」

 

「褒めてる?」

 

「褒めてる」

 

「なら、任された」

 

「おぅ、任した」

 

 再度、老人たちの前に歩み寄る。

 

「まとまったかの?」

 

「はい。回答は二人一緒で、私が答えます」

 

「了解した。では、始めるぞ」

 

 老人はこれ見よがしに咳払いをしてから話し出す。

 

「親でも恋人でも親友でも何でもいい。お前の大事な人、そうじゃな、お主の場合は後ろの坊主で良かろう」

 

「なっ、またっ!? ち、違うからねっ」

 

「お主が愛しくて愛しくて仕方ないその坊主が」

 

「違うったらっ」

 

「そ・の・坊・主・が、死の呪いを受けて今にもその命尽きようとしている。 ①諦める ②諦めない」

 

「本当にどうしてみんな……」

 

「①諦める ②諦めない」

 

「あぁもうっ!! ②よ、②」

 

「では諦めないならどうする。 ①呪った相手を探し出して呪いを解かせる ②他に呪いを解除する方法を探す」

 

「①……ううん、やっぱり②」

 

「情報を集めていると、呪いの解呪を専門にしている者を発見した。すぐに依頼をするが、対価にある人物を誘拐して来いとのこと。もう他の手段を探している時間的余裕はない。 ①拷問してでも解呪させる ②誘拐する ③それでも他の手段を探す」

 

「くっ、嫌らしい問題ね。 ②よ」

 

「何とか誘拐には成功したが、その際に仲間が捕まってしまった。相手側は人質交換を言ってきている。 ①依頼を遂行する ②素直に人質交換に応じる ③人質交換で何とか仲間だけ奪還する」

 

「……」

 

「①坊主を救うために仲間を見捨て依頼を遂行する ②仲間のために坊主を見捨て素直に人質交換に応じる ③一見どちらも見捨てていない様に見えるが、その実どちらも選べていないだけで、淡い希望にすがり人質交換で何とか仲間だけを奪還しようとする」

 

「……」

 

「どうした? さっさと答えるんじゃ」

 

「……」

 

「選べないと言うなら後ろの坊主にでも」

 

「――――――よ」

 

「なんじゃて?」

 

「③だって言ってるのっ!! 私は見捨てたりなんかしない。絶対にどっちも助けてみせるっ!!」

 

「…………ふむ、その心意気や良し。ただし現実はそう甘くない。人は簡単に死ぬ。お主が死んだら坊主も仲間も死ぬだろう。それでも」

 

「分かってる。無茶な選択だって。でも私は死なないって決めた。だから誰かを犠牲にもしない。そう決めたの」

 

「そうか」

 

 4人並んだ老人たちが左右に割れる。

 

「ではその信念の下、真っ直ぐ進むがいい。過酷な現実を打ち破るための実力を示すのだ」

 

 振り返ったアニタの強い視線に、アシルは背中を押すように頷いてみせる。

 

 前に向き直ったアニタは、戸惑う事なく一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――が、村を出る前になってその歩みが止まる。

 

「ねぇ、アシル」

 

「どうした?」

 

「あ、あのね」

 

「……?」

 

「ご飯と寝るとこどうしよ」

 

「……………………戻るか」

 

「で、でも、あんなに格好良く出て来ちゃったし」

 

「今のところ獣が襲ってくる気配はないけど油断はできない。村の中の方が安全だ」

 

「そうだけど」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「恥ずかしいのはオマエだけだ」

 

「ズルいっ!! 何よそれっ!!」

 

「分かってる。無茶な選択だって。でも私は」

 

「あ~あ~、聞こえない聞こえない」

 

「いや、イジっといて何だが、良い台詞だったぞ? こう、心に響くと言うか」

 

「や、やめてよ。真面目にそういう事言うの」

 

「恥ずかしいのも分かるけど、本音なんだろ?」

 

「う、うん」

 

「その心境の変化が嬉しいよ」

 

「うっ」

 

「どうした?」

 

「な、なんでもないっ」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

「とりあえず戻るか」

 

「う、うん」

 

 広場に戻った二人は、食事は自前だが寝床は貸してもらえた。

 

 その際また色恋ネタでイジられるのだが、まぁ何とも締まらない二人であった。

 




選択問題の結果によって示される道は『危険な道』『安全だけど遠回りな道』『辿りつかない道』となっております。

『リリカルなのは』の二次創作と交互に投稿してる今作ですが、『ゼロ魔』のも書きたい衝動にかられている今日この頃。
ただし、にじファンで書いてたやつではなく新作。
外見は『輪環の魔導師』のアルカイン(二足歩行の黒猫、帽子にマント、笛が吹け、武器はパンケーキナイフ)で、中身は悪魔(属性は怠惰)。
それがルイズに召喚されて~って話。
でも3作同時はキャパオーバー。
温めておいてそのうち書こう。

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