「ぬぅ……これは、流石に困ったな」
既に頭上近くにまで登ってきている陽の光を浴びながら、シシンは呻くように声を漏らしていた。足元を確かめるように摺り足で動くその姿は、なんとも危なっかしいモノである。
おぼつかない、ユックリとした足取りで進みながら、シシンは何処へと向かっているというのか? ――と言えば、それは当然、
もっとも、時刻は間もなく昼に成ろうとしている。
確実に遅刻であった。
一応は言っておくと、シシンは寝坊をした訳でもサボろうとしている訳でもない。普通に目覚め、間に合うように登校しようとしたのだった。
では何が原因でこんなことに成っているのか? と言うと、それは顔を覆っている目隠しに依るものである。
キツくキツく締め付けてあるその目隠しによって、現在のシシンは視界を完全に塞がれている状態に成っているのだ。
そのため、普通に歩くことも儘ならない。
一歩一歩探るように歩くしか出来ないので、何時まで経っても
『そんな目隠しなんて取ってしまえば良いのでは?』
と、思わないでもないのだが――
「(シシン様、そちらに往かれては危のぉございますぞ)」
突然に聞こえてくる声に、シシンはビクッと体を震わせる。コレはお目付け役兼、監視役として付いて来ている
もっとも、シシンのすぐ隣を歩いているという訳ではなく、形部は自身の使う忍術である『滅形の術』を使い、文字通りに周囲に溶けこむようにして付いて来ている。
そのため山の中では勿論、例え街中に入ったとしても形部に気づく者は先ず居ないであろう。
シシンはユックリと大きく息を吐くと、首を動かしてどこかに居るであろう形部に弱音を漏らす。
「……す、すまぬ、形部。しかし、コレは辛いな」
見えない場所を歩き続けていることで、必要以上に体力と精神力を削られているシシンは、卍谷から学校へと向かう道の半ばで既に膝をガクガクと震わせてしまっている。
「(人と言うのは、視界に頼って周辺の情報を纏める生き物ですからな。それを防がれては、マトモに動くのも困難と言うものでしょう)」
「だったら、何故ソレをやれと……?」
「(出来ぬことではないから、でしょうな)」
「確かに、豹馬の奴はやってるが……」
シシンの師である
目で見なくても、豹馬は周囲の状況がどの様なモノなのか? ソレを感じることが出来るらしいのだ。豹馬は弟子であるシシンに、自身と同じことが出来るように―ーと、今のような修行を施しているのだが、
「これでは、普通に遅刻するぞ?」
イマイチ修行の意味が解りかねるシシンは、眉間に皺を寄せて不満そうにぼやいていた。
「(まぁ、確かに難しい修練ではございますが。しかし、シシン様のお父上であられる弦之介様も、かつては同様の修練を行っておったのですぞ?)」
「父上がか?」
「(はい。弦之介様も当初はこの修練に文句を言っておったようですが、次第にコツを掴んだのか、最後には目を閉じておっても何ら問題なく動くにまで成っておりました)」
「……父上は、目が見えないわけでは」
「(普通に、俺等と同じく眼は見える者でしたな)」
「…………」
懐かしむように話をする形部の言葉に、シシンは少しだけ唸ってみせた。自身の記憶の中では見たこともない、会ったこともない実父。
しかし、その実父が自分と同じように修行を行い、最後には完遂したというのだ。ならば
「――……はぁ、投げ出す訳にはいかないか」
溜め息とともに肩を落とすと、シシンは口元に笑みを浮かべながらどこかに居る形部に声をかける。
「形部、すまんな。色々と面倒をかける……。俺がさっさと目的地に着きさえすれば、お前もこんな事をしないで済むというのに」
「(シシン様……。いえ、気になさいますな。これも儂の役目の一つ成れば、シシン様のお役に立てて嬉しく思っておりますぞ)」
「すまぬな。――よしっ! それでは、さっさと登校を済ませることにしようかのぉ!」
声を出して気合を入れるようにするシシンは、前に向かって再び一歩を踏み出した。形部はそれを微笑ましい物を見るような視線で見つめていたが、とは言え目的地である
(まぁ、これは、今日中に到着するのは無理かもしれぬなぁ)
と、形部は内心で思うのであった。
そんな形部の考えなど知らず、シシンは当然のようにこの日は盛大に遅刻をする。シシンが
もっとも、それはこの日だけ――なんてことはない。
次の日も、そのまた次の日も、更に次の日も。当たり前のように延々と遅刻を繰り返すこと、数日間。
徐々に登校までの時間は短くなっているものの、遂に入学から一度も授業を受けること無く、それだけの時間が経ってしまったのだ。
此処まで来ると、流石のシシンもストレスを溜め始める。
自分の父親がやっていたとはいえ、何故自分もやらねばならないのか? 本当に出来るのか? 担がれているんじゃないのか? 豹馬は自分に出来るからと、他人に押し付けているだけじゃないのか
?
――と、まぁ、どんどん気持ちが腐っていくのだった。
まぁ、毎日シシンのお目付け役をしている形部にすれば、毎日徐々にとは言え感覚の鋭くなっていくシシンの成長に驚きを感じるくらいなのだが……まぁ、形部も豹馬から『褒めるな』と伝えられている手前、シシンがそれを知ることは出来ないでいた。
そして、一度も登校することも出来ずに迎えた休日、シシンは――
「豹馬! 豹馬は居るかぁ!!」
朝の早い内から弾正屋敷を動きまわり、自身の大叔父にして師である室賀豹馬を探して回ったのだが……
しかし、それはそれ。
シシンが豹馬を探して回っていることなど、この際は些細な事である。
「可怪しい、絶対に可怪しいわ!」
強く声を出しながら卍谷への道を歩いているのは、うちはホタルである。黒髪を揺らしながら歩くホタルの表情、前述の台詞に合わさってチョットした怒り顔である。
何について怒っているのか? といえば、それはまぁ、シシンの所為だろう。
ホタルは
まぁ、それは、自身の将来に関する場所であるのだから、夢も希望も合わせて大きなワクワク感を抱いての事だった。
実際に、
自分と同じように、両親が忍びである者達、ソレとは違い、一般からの入学者も居て、ホタルはそう言った者達と交流を深めることが確かに楽しかったのだ。
だが――
「何だって、シシンは学校に来ないのよ!!」
ホタルは山道を歩きながら吠える。
そう、同じ学校に入ったはずの甲賀シシンは、入学の日以降に全く姿を見せなくなっていたのだ。
……まぁ、ソレは単純に学校に間に合わないというだけで、シシンは一応は学校に向かっているのだが……ソレはソレである。
理由を知らないホタルには察せるわけもない。
「今日は絶対に、なんで学校に来ないのか問い詰めてやるわ!」
「…………」
「ね、頑張りましょう! ヒナタ!」
「う、うん……」
グルっと視線を向けると、其処にはヒナタが困ったような表情を浮かべていた。どうやら一人で来るのが怖かったのか、ホタルはヒナタと一緒に来ていたようである。
まぁ、ヒナタも心配ではあったので、理由を聞くのは問題なのだが、流石にホタルのテンションに付いて行くのは大変そうである。
「でも、シシン君……風邪とかじゃないよね?」
「ソレはないわね。先生に確認したもの。『特に病気というわけじゃない』――って」
「ホタルちゃん、先生に確認取ってたんだ?」
「多分、何か理由があるんでしょうけど……その理由を私達にも知らせないってのが許せないわ!」
ギュッと握り拳を作り、ホタルは眉を釣り上げた。
ヒナタそんなホタルの様子を眺めながら、
(私も心配といえば心配だけど……)
と、ホタルの行動力に関して考えた。
確かにシシンが忍者学校に入学してから、途端に現れなくなったことには疑問がある。しかし、忍者の家系ならば逆に家で何かしらの訓練をさせられている可能性も有るのではないか?
実際に、ヒナタ自身も父である日向ヒアシに扱かれている。
シシンと顔を合わせなく成ってから既に1週間、されどまだ1週間である。
流石にシシンのことを氣に掛け過ぎではないだろうか? と、ヒナタは思うのだった。
「……なに、どうしたのヒナタ?」
と、どうやらマジマジと見ていたことがホタルにバレたらしく、ホタルは首を傾げてくる。
「あ、ううん。何でもないよ」
思わず首を左右に振ってしまったヒナタであるが、とは言え今しがた考えていた内容を聞いて良いかも今のヒナタには解らない。
返答としては、コレが一番であったのだろう。
ホタルはヒナタの態度に更に不思議な感覚に成ったのだが、とは言えソレを追求するつもりはないようだ。
短く「そう?」とだけ返すと、前を向いて歩を進めていく。
ヒナタはソレに付いて行くが、時折にホタルが口にする――
「シシンの奴、くだらない理由で休んでるようだったら私の忍術で懲らしめてやる!」
といった呟きに苦笑いを浮かべた。
まぁ、入学したての『忍たま』である自分達は未だ大した術を教わっては居ない。
そのため、仮に何か術を使ったとしてもたかが知れているのだろうが、それも木の葉の名門である『うちは』出身のホタルが口にすると洒落にはならないような気がするのだった。
「そ、そう言えばホタルちゃん、今日はサスケくんは一緒じゃないの?」
ふと、先を行くホタルに問いかけるヒナタ。
少しでも攻撃的な台詞から遠ざけたかったのだろうか? なるべく当り障りのない内容を選んで口にする。
だが――
「……サスケ? アイツは来ないわよ」
と、若干苛立ったように返事をしてくる。
どうやらサスケの話題は、今日のホタルには地雷だったようだ。
「一応はね、私はアイツの事も誘ったわよ。一応、本当に一応ね」
何度も『一応』と連呼するホタルだが、かえってソレがホタルのサスケに対する苛立ちを表しているように感じる。
「サスケだって、シシンのこと多少は心配してるだろうな――って思って、『今日は卍谷に行くわよ』って言ったら――『何言ってんだオマエは? 俺は今日これから、兄さんと一緒に修行するんだ。卍谷になんか行くわけ無いだろ』――って、あのブラコン野郎」
身振り手振りを加え、出来る限りの声真似をして説明をしたホタルは、最後に吐き捨てるように文句を言い放った。
……まぁ。サスケの口にしている『兄さん』とはホタルにとっても兄なのだが。
「
どこまで本気なのかは分からないが、先程までのシシンに向けて言っていた言葉以上に真実味を感じさせる口調である。
ヒナタは内心で
(余計なことを言っちゃった……)
と、後悔するのであった。
だがそうこうしている内に
「――其処の二人、何処へ行こうとしておる。此処から先は甲賀の里であるぞ」
いつの間に現れたのであろうか? 二人の前に一人の男性が立っていた。長身痩躯、黒く長い間身の毛をしているが……その髪型は酷く特徴的である。モミアゲ……では無く、左右の側頭部からヒョロリと伸びるように、髪の毛を外に向かって飛び出している。
まぁ、他の特徴として羽織袴を身に纏っている――といったところもあるのだが、男の横から飛び出す髪の毛に目が行ってしまうため、そちらの方はどうでも良いような気がしてしまう。
「……っ!?」
「誰っ!」
男の雰囲気に、思わず身構えてしまう二人。
だがそんな二人の反応が初々しかったからだろうか? 男は小さく笑みを浮かべる。
「拙者はこの卍谷に住む者だ。そういう主等こそ、この谷の者ではあるまい。……見たところ、うちは一族と日向一族の者と見受けるが……」
男は尋ねるように聞いてきた。
要は、『他所の奴が此処に何のようだ?』 と、男は言っているのだ。
因みに、ヒナタのことはその瞳を見て、ホタルのことは服に縫い付けられている家紋を見て男は言っている。
男の問いかけは、その内容自体は何ら問題ないことだろう。
言ってしまえば、家の敷地に知らない人物が入り込んでいるようなものだ。その質問も理解できる。
「……あ、その、私達はシシン君に会いに――」
「シシン様に会いに、じゃと?」
「――っ!?」
掠れるような声で言うヒナタの言葉に、男はギロッと視線を投げる。男自身にはそんなつもりはないのだろうが、ヒナタは睨まれたように感じて身を竦ませた。
……まぁ、逆にホタルの方は
(何なの、あの横にヒョロリと伸びた髪の毛は?)
などと考えていて、ソレナリに余裕そうである。
「本日、シシン様は修練をするため忙しい。ヌシ等と会っておる暇はないぞ」
腕組をし、男は言葉に『さっさと帰れ』といったニュアンスを載せて、二人を追い払おうとする。
まぁ、此処に居たのがヒナタだけならばそれも有り得ただろうが、良くも悪くも『うちはホタル』は気が強い。
「――暇がないって……そういうオジサンはシシンの何なの? 師匠?」
「オ、オジ……ッ!? ――いや、儂は甲賀に住む忍じゃ。取り分け、シシン様の師というわけではないが――」
「師匠じゃないなら、なんだってシシンの行動を勝手に決め付けるのよ。オジサン」
「ォッ……オジ……くっ、確かに直接の師ではないかも知れぬが、シシン様は甲賀の次期頭領と成られる大事な身の上じゃ。そのシシン様に良からぬ虫が付かぬようにするのもまた、儂ら甲賀の者達の努めよ」
フンッ! 鼻を鳴らす男。
一方、『虫』などと呼ばれて眉間に皺を寄せたホタル。
大人と子供の両者が、互いにジッと睨み合い
「だ、誰が虫よ!!」
「儂とて中年呼ばわりされとうないわ!」
一触即発? というか……男の方は少しくらい歳相応の落ち着きを持つべきだろう。
「だいたい、誰の許しを得て卍谷に参ったのだ! うちは一族と日向一族の娘が、名を名乗れ!」
「人に名前を尋ねるときは、自分からだって教わらなかったの!」
「えぇい! あぁ言えばこう言う娘じゃ! ならばとくと聞け! 儂の名は
「……薬師寺…天膳?」
声を荒らげて自信の名前を高らかに言い放った男――天膳に対して、ホタルとヒナタは
「「え?」」
と、お互いの顔を見た。
「……薬師寺天膳って、確か」
「シシン君が言ってた」
「ほう? 儂のことをシシン様より聞いたとな?」
訝しむような視線を向けるように成ったホタルとヒナタの反応に、天膳はやおら楽しそうに口元を緩める。
「して、シシン様は儂のことを何と言うておった?」
自分がなんと言われているのか気になったのか、天膳は途端にニコニコと笑みを浮かべ始める。
ヒナタはシシンの言っていた言葉を思い出し、ソレを言うべきか言わないべきかを考えた。
因みにシシンの言っていた言葉は何かと言うと、
『天膳か? ……あ奴は言ってしまえば、歩く死体じゃな。小四郎等が言うには忍としての腕前はかなりの物らしいのだが、如何せんしょっちゅう死んでおる。山に出かければ野山の獣に、任務に出かければ任務の先々で――と言った具合にじゃ。……まぁ流石に、任務先で死ぬというのは冗談だと思うが、な』
歩く死体……とてもではないが褒め言葉ではないだろう。
果たして其のような言葉を、目の前の居るワクワクとした面持ちの中年に伝えて良いものだろうか?
ヒナタが何度か逡巡していると、その隙に
「確かに、シシンはアンタのことを色々と言ってたわよ」
「ホタルちゃん!?」
ホタルは「フン」と鼻を鳴らしながら天膳に言う。
ヒナタは、まさか正直に言うつもりなの? と、驚いた。
「――シシンが言うには、薬師寺天膳とは不死身の忍だと」
「ほ、ほぅ。不死身とな?」
「腕前もかなりのもので、非常に困難な任務でも必ず帰ってくるとかも言っていたわ」
「ほう、ほう。シシン様がそのような事を」
嬉しそうに何度も頷く天膳に、ホタルは内心で『ニヤリ』と笑みを浮かべていた。
しかしヒナタは、ホタルの言っていた内容に「あれ?」と首を傾げる。それはそうだろう。ヒナタの記憶の中では、シシンが薬師寺天膳を褒めたようには思えないからだ。
だが直ぐに
「あ、そうか……」
と納得して頷いた。
そう、何もホタルは嘘を言っては居ないのだ。ただ、言葉の伝え方を変えたに過ぎない。
『歩く死体』を『不死身』、『任務の先々で死ぬ』を『必ず帰ってくる』などと置き換えているのだ。……詐欺めいた言い換えのように思えるが、誰も迷惑に成らないのなら問題はないのだろう。
「……そうか、シシン様が儂をそのようにな。フフフ」
案の定、うまい具合に載せられた天膳は、その表情を緩めて満更でもなさそうである。
「そうじゃな、普段から室賀豹馬の奴に任せきりにし過ぎていたやも知れぬ。偶にはシシン様の鍛錬の様子を見るのも良かろう――と、お主等、今日の儂は気分が良い。シシン様の邪魔をせぬと誓うのであれば、修練場に案内してやろう」
ついさっき迄の険悪な雰囲気は何処へやら。
天膳はニコニコとしながら――と言っても、元が悪人面なためか何方かと言うとニヤニヤといった表情だが、そんな顔を浮かべながらホタルとヒナタに言ってくる。
「解ってるわよ、邪魔なんてしないわ。私達だって、シシンが心配で来ただけなんだから」
「ならば良い。付いて参れ」
ホタルの言葉にニヤけた表情で頷いた天膳は踵を返し、二人を案内するように歩き出していった。
……まぁ、なんて事はない。
豚もおだてりゃなんとやら――だ。そわそわした様子でシシンからの風聞を聞いてきた天膳に、ホタルは『褒められたいのかな?』と思ったのだ。
そしてチョットばかり……そう、ほんのチョットだけシシンの言っていた台詞を言い換えて天膳に伝えたのである。
結果は良好。
薬師寺天膳とて真性の馬鹿ではないから、多少煽てられていることくらい解っているのだろうが、それでもホタルから告げられた言葉は嬉しいものであるようだった。
「行きましょう、ヒナタ」
「う、うん。……でも、凄いねホタルちゃん」
歩き出すホタルに頷きながら、同じように歩き出すヒナタは関心したような、憧れのような視線をホタルへと向ける。
「凄いって……別に私、嘘は言ってないわよ?」
「……うーん。そうなんだけど、でも、それでも凄いよ?」
「唯の言葉の回し方だから、ヒナタは真似しないほうが良いわ」
「そうなの?」
「うん」
自分でやっておいてなんだが、ホタルはヒナタにコンナ事を覚えないでほしいと思っていた。ホタルはイタズラの延長でこんな方法を取ったわけだが、そのイタズラでさえヒナタには真似をしてほしくはない。
まぁ、それもこれも、ホタルの勝手なイメージの問題なのだが……。
「何をユックリとしておる、早く来ぬか!」
ふと、先を歩く天膳が声を上げる。
ホタルとヒナタを呼ぶ天膳は、未だに頬の緩んだ表情を浮かべたままであった。
……煽てられていると、解っているのだよな?