ーサラ・ヒューイットー
高音先輩と試合をした顔合わせの時から1年4ヶ月近く経ちました。
あの後から麻帆良の警護をするようになって、実際に図書館島の貴重な魔法書を狙った盗人と何度も対峙することになりました。
この警護というのはチームを組んで行うものなんですが、私は師匠であるエヴァちゃんと従者の茶々丸さんのグループに一応属してます。
一応とつけた理由は私しか盗人と戦ってないからですね。
これも修行だと言って盗人が喚んだ召喚魔の大群の中に突っ込まされたり、盗人自身と戦わされたりしました。
しかも拘束具の指環をつけたままです。
それを外せば圧倒的な魔力で簡単に終わらせられるんですが、
「それじゃ修行にならんし、他の人間に目をつけられるだろうが」
というエヴァちゃんのツルの一声で、指環をつけた状態でもある程度のことには対処できるようになろうという指導のもと操糸術、合気鉄扇術の実地訓練をさせられました。
召喚魔の攻撃を糸で弾き、あるいは反らして魔法で反撃。
盗人は合気で攻撃をそらし、いなしながら隙を見て一撃極める、もしくは操糸術で無力化して捕まえます。
エヴァちゃんと茶々丸さんは盗人が逃げないよう監視するだけ。
茶々丸さんは盗人の監視のみですが、エヴァちゃんは私も監視しています。
私の戦い方でちょっとでも悪いところがあれば盗人を解放して仕切り直しです。
しかもただ解放するだけでなく、私と戦って勝てば逃がしてやるとか、負けたら二度と陽の目を見れなくなるぞ、なんて唆すものですから盗人さんも必死になって攻撃してきます。
折角捕まえた盗人をまた苦労して捕まえなければならないので心的疲労は半端ないですが、ここでヘマをすれば今度はエヴァちゃんの地獄の特訓が待ち構えることになるので、私も必死にならざるを得ません。
結果、私の操糸術、合気鉄扇術、魔法の術式の効率が大幅に改善されました。
やはり実戦というのは大切なんですねぇ。
私の魔力も着実に増加の一途を辿っていて、エヴァちゃん曰く
「
だそうです。
あの時の呆れ顔は忘れられません。
まぁ、魔力が大きすぎて困ることはないでしょう。
なんせ、原作最後らへんに描かれた"
原作では"造物主"に逃げられてましたが、この世界では逃さないためにも魔力を増やして増やして増やしまくってやります!
それとこの1年ちょいの特訓中に新しい発見もありました。
いつも通りエヴァちゃんと模擬戦をしていて、魔力で強化した糸をエヴァちゃんに絡ませ、魔力吸収をオンにしたところ、私の吸収効果範囲外にいたエヴァちゃんからも魔力を吸収できたんです。
慌てて模擬戦を止めて、実験した結果魔力で強化、あるいは魔力のみで作られた糸を使えば、離れた敵からも魔力を吸収可能ということがわかりました。
しかも魔力で作られた糸を切るには魔法的な力で切らなければなりませんが、その魔力自体が吸収されたら切断できません。
まさに魔法使い潰しの技ですね。
その吸収力は私に接触している状態と同じなので、5mだった効果範囲がかなり広がったことになります。
接触面が大きい程、吸収量も増えるので巻きつければ巻きつけただけ、どんどん吸収できるというわけです。
ただし、糸の吸収の許容量を超える魔力を出されると糸は切れます。
ナギさんの仲間のジャック・ラカンさんはこの力技で糸を切りそうな気がしますね。
それでもこの能力にはエヴァちゃんも太鼓判を押してくれました。
いやぁ、やっててよかった操糸術って感じですね。
話は変わりますが、今は2002年度3学期中頃となります。
そう、原作ではネギ君が麻帆良にやって来る時期なんですが、果たしてこの世界ではどうだったかと言いますと…。
ちょっと時間を遡って2002年7月のことです。
私はメルディアナ魔法学校の校長と渾名で呼び合うほど仲が良かった学園長の元を訪れました。
「失礼します、学園長はいらっしゃいますか?」
「おぉ、サラ君か。よく来たのぅ。儂に何か用かな?」
「はい、単刀直入に尋ねます。ネギ・スプリングフィールド君はメルディアナを卒業できましたか?」
学園長の普段眉毛で隠れている右眼がこちらを射抜きます。
「どうしてサラ君が、その名を知っているのかな?」
「簡単な話ですよ。彼は私の1学年下に在学してましたから。しかも2年飛び級ですよ?頭良すぎですよね」
「まぁ、そういうことならいいじゃろう。先程の質問の答えはイエスじゃな」
「それではもう一つ質問です。彼の修業先は麻帆良ですか?」
この質問をした途端、学園長のオーラが変わり、眉毛で見えなかった左目もこちらを見つめてきました。
普段の好好爺とした雰囲気が全くありません。
流石学園最強の魔法使いです。
以前の私だったらよくて腰を抜かすだけ、悪いと気絶してたかもしれません。
それだけの気を発していますから。
ですが、私だって伊達にエヴァちゃんに鍛えられたわけではないんです。
これくらいの気は魔法球の中でバシバシ浴びまくってましたから、何てことはないんですよ。
「学園長、落ち着いてください。私は彼をどうしようというつもりはないんですから。何かするつもりならこうして話をしには来ませんよ」
「それは確かにそうじゃな。いや、すまんかったのぅ。彼の扱いには細心の注意を払わねばならんのじゃよ」
「英雄の息子ですからね。そういう対応になるのも仕方ありませんよ」
「しかし、サラ君は技術だけでなく胆力の方もあるようじゃな。儂の気に充てられんとはのう」
「エヴァさんに鍛えられてますからね。それでネギ君は麻帆良に来るんですか?」
「何じゃ、話を逸らすこともできんか。まぁ、サラ君の言葉を信じておくかのう。答えはイエスじゃよ」
よかったぁ、ちゃんと原作通り来てくれるらしい。
これで間違ってウェールズで占い師とかになってたら目も当てられなかったよ。
「でしたらちゃんと対策を取っておいた方がいいと思いますよ」
「対策?何に対してかな?」
おいおい、このぬらりひy…じゃない、学園長。
本気で仰ってるんですか?
「うちの師匠に決まってるじゃないですか…。ただでさえエヴァさんとサウザンドマスターには因縁があるのに、その息子がやってくるんですよ。ネギ君なら、正確にはネギ君の血ならエヴァさんの呪いを解ける可能性があるのを考えたら、正しく鴨がネギ背負ってくるようなものですよ」
私の呆れ顔に気付いたのか、学園長が慌てたように答えます。
「お、おぉ、そうじゃなそうじゃな。しかし、サラ君からその話をしに来たということは、何か考えがあるのではないかな?」
「えぇ、エヴァさんとネギ君に模擬戦をさせるんですよ。もちろんエヴァさんが本気になればネギ君も瞬殺でしょうから制限を設けます。ネギ君が勝てばエヴァさんにはネギ君の血を諦めてもらい、エヴァさんが勝てばネギ君には死なない程度に血を提供してもらいましょう」
「それでエヴァは納得するかのぅ?」
「納得するしかないでしょう。封印された吸血鬼と英雄の息子では、どちらが大事かなんて火を見るよりも明らかですから。この提案を蹴って無理矢理ネギ君に襲いかかれば学園中がエヴァさんの敵になりますよね?」
まぁ、エヴァちゃんには既にこの話は済んでるんですけどね。
エヴァちゃんとしてはネギ君が来るチャンスを潰すわけにはいかず私の話に乗るしかなかったので、あとは学園側を説得すればOKです。
「確かにサラ君の言う通りじゃのう。儂としてはその提案でも問題ないと思うんじゃが、他の魔法先生、生徒がどう思うかが問題じゃな」
「そこは学園長の強権で黙らせることも有りかと思いますが、ちゃんと説明しておいた方がいいかもしれませんね。魔法先生、生徒方には模擬戦を監視してもらって、エヴァさんのルール違反があれば介入してもらえばいいのではないでしょうか?」
逆に魔法先生、生徒方が模擬戦を邪魔したらそれは模擬戦じゃなくなりますが、この場合悪いのは学園側ですし。
「これなら不満は残るかもしれませんが、双方の落とし所としてはベターではないかと思います。ネギ君が勝てば"
「確かに、模擬戦とはいえあのエヴァに勝ったとなれば、ネギ君も自信ができるじゃろう。それでなくともいい経験になるはずじゃ。よかろう、その提案通りに事を進めるとしよう。悪いがサラ君はエヴァへの説明を引き受けてもらえんかのう?もちろん学園側の魔法先生、生徒には儂から話を通しておくつもりじゃ」
「えぇ、私もそのつもりでこの話を持ってきましたから」
「面倒をかけてすまんのう。じゃがこの提案は本当にありがたいものじゃ。サラ君ありがとう」
「いえいえ、私としても知り合い同士が命を狙い合うのは嫌ですからね。私の提案を受け入れてもらって感謝します。それでは私はこれで失礼します」
「うむ、儂としても非常に助かった。早速検討させてもらおう。そのまま退室しなさい」
私は一礼して学園長室から出ました。
いやぁ、本当にネギ君来るんだ。
1年半ぶりかぁ。
…私のこと忘れててくんないかなぁ。
あの時の私は私やないんやぁ‼︎
と、こんな感じでネギ君が麻帆良にやってくることを知りました。
私の卒業式でのネギ君の困った顔とアーニャちゃんの変な物を見る目を思い出してちょっとブルーになりましたが、これで修学旅行までは目処が立ったかな。
修学旅行までに起こる事といえば、図書館島遭難、桜通り吸血鬼事件くらいしかない。
この2つは生命に関わるようなことはないからノータッチ、何かするにしてもアドバイスくらいで無問題でしょう。
っていうか下手に関わってややこしいことになるくらいなら無視するに限る。
藪を突いて蛇が出てきたら堪らないしね。
ほんの少し黒い主人公が出てきましたね。
それと時間をすっ飛ばしたのは特にイベントがなk…ゲフンゲフン。
サラちゃんは魔力をどんどん増やします。
具体的にはナギさんを超える魔力を持つと言われる
このちゃんすら超える予定です。
さらに操糸術を併用した魔力吸収。
着実にチートへの道を歩んでますね。