憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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修学旅行編を書いてる途中なんですが
1話が長すぎたのでバラしたら3話になりました。
なので今日も更新しておきます。


第6話

ーサラ・ヒューイットー

 

エヴァちゃんから指環を頂戴して3週間ほどありました。

この間、2001年度麻帆良学園大体育祭というのが開かれました。

原作では2年後、ネギ君がクラスメイトに追いかけられて好きな子をバラされそうになるアレですね。

エヴァちゃんも悪ノリしてネギ君を追い込んだのに、五月ちゃんが一刀両断ですからね。

流石五月ちゃん、齢十五にしてしっかり人間が出来上がってます。

それに比べ、私の師匠ときたら600年を超える時を生きておきながらなんと大人気ないことか…。

まぁ、これもあくまで原作の話ですから果たしてその通りに進むかどうかはわかりません。

それとこれも原作の話だけど、確か来年の体育祭で行われる格闘大会ウルティマホラは(クー)ちゃんが優勝するから、今年はどうかなって思ったんだけど古ちゃんがまず出場してなかった。

どうやらクラスメイトの誰かの策略で他の競技に参加させられたっぽい。

ウルティマホラのことを知った古ちゃんは

 

「来年は絶対出るアル〜‼︎」

 

って叫んでた。

武の道を極めんとしてるのに格闘大会に出られなかったら、そりゃ叫びたくなるよねぇ。

その遣る瀬無さは来年にぶつけてもらいたい。

今年については合掌。

 

そして学園全体のイベントが一区切りついたということで、今晩は魔法先生、魔法生徒と顔合わせです。

麻帆良に来てから3ヶ月程経って、やっと顔合わせになったというのは、おそらく私がエヴァちゃんに弟子入りしたのが原因でしょう。

学園長と高畑先生はともかく、麻帆良の魔法使いの大多数が頭の固い人ばかりというイメージなんですよねぇ。

その人たちに学園長が説得して回ってどうにか顔合わせまで持ってこれたんだと思います。

学園長には悪いことしましたねぇ。

その分しっかり働いて返すので勘弁してもらいましょう。

集合場所である世界樹前広場に行くと、すでに学園長をはじめ魔法使いの皆さんが揃っていました。

どこぞのマフィアみたいなヒゲグラこと神多羅木先生。

学園長の秘書にして神鳴流の使い手、葛葉刀子さん。

娘が心配ガンドルフィーニ先生。

クラスメイトの明石祐奈ちゃんのパパ明石教授。

魔法の始動キーが饅頭ばかり弐集院先生。

ウルスラの脱げ女、高音・D・グッドマン先輩とその従者、佐倉愛衣ちゃん。

もう1人眼鏡おさげの子はいない。

影が薄い瀬流彦先生と高畑先生もいる。

高畑先生はこの間まで出張だったのに顔合わせのために態々戻ってきてくれたのかな?

最後はシスターシャークティーと美空ちゃん。

美空ちゃんは顔を隠そうとしてるけど初日に紹介されたじゃない…。

 

「こんばんは学園長。ひょっとして随分お待たせしてしまいましたか?」

 

「いやいや、そんなことはないぞ。よく来てくれたのぅ、サラ君。エヴァまで連れてきてくれて大変だったろう」

 

そう、この顔合わせには師匠としてエヴァちゃんと従者の茶々丸さんも来てくれている。

 

「うるさいぞ、じじい。大事な弟子の顔合わせなんだ。師匠としてそれに参加しないわけにも行かんだろうが」

 

「学園長をはじめ、魔法先生、生徒の皆様こんばんは」

 

「あぁ、茶々丸君もよく来てくれた。さて、サラ君、君も察していると思うが、ここにいるのは学園中で勤務している魔法先生、魔法生徒たちじゃ。もちろん全員ではないがの」

 

「どうも、サラ・ヒューイットです。みなさんよろしくお願いします」

 

あれ?挨拶したけど学園長と高畑先生以外の表情は固い。

あぁ、この場にエヴァちゃんがいるからか。

エヴァちゃんはそんなの関係ないと言わんばかりだし。

なんか空気が重いなぁ。

「サラ・ヒューイットさん、ちょっとよろしいかしら?」

 

「はい?えぇっとお名前を伺ってもよろしいですか?」

 

突っかかってきたのはやっぱりこの人か。

私は知ってるけど初対面だから、ちゃんと名前を聞かないとね。

 

「私は高音・D・グッドマンと言います。貴女はそこにいらっしゃるエヴァンジェリンさんに弟子入りしたとのことですが、彼女がどういう方かわかっていらっしゃるのかしら?」

 

「えぇ、存じておりますよ。600万ドルの賞金首であり、"不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトウ)"、"闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)"、"人形使い(ドールマスター)"、"悪しき音信(おとずれ)"、"禍音の使徒"、あと"童姿の闇の魔王"と二つ名に事欠かない真祖の吸血鬼ですよね。それがどうかしましたか?」

 

そんなことどうでもいいと言わんばかりの返事をしてやります。

実際、私にとってはどうでもいいことですし。

ですが、頭の固い人には到底納得できない返事でしょうね。

高音先輩も一瞬唖然とした顔を見せました。

 

「…っ⁈あ、貴女は"偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)"になりたいとは思わないんですか⁉︎」

 

「そうですねぇ、私は人々から認められた"立派な魔法使い(マギステル・マギ)"にはなりたいですが、MM(メガロメセンブリア)元老院の認定資格みたいな"偉大なる魔法使い"には興味ありません」

 

「んな⁉︎それはMMを馬鹿にしているのですか⁈」

 

「いえいえ、目指してるものの違いですよ」

 

まぁ、はっきり言えばMM元老院なんて大嫌いだけどね。

自分達の保身のためにネギ君のお母さんのアリカ女王を処刑しようとしたり、ネギ君の故郷に悪魔仕向けたり、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)ではネギ君達に懸賞金かけたり。

やる事なす事汚すぎる。

あの素直そうだったクルト・ゲーテル少年が新オスティア総督の頃にネチネチした性格になってたのだって、きっとMM元老院で精神を汚されたんだよ。

アリカ女王LOVEを拗らせてあんな性格になった可能性も否定できないけど。

ともかく、国は別にして私の中のMM元老院の評価は最低なんですよ。

 

「それに理想を掲げるにはそれに見合う力が必要ですから、折角世界最強といわれる魔法使いがいるのに魔法を習わない手はないでしょう」

 

この言葉には数名の魔法先生も息を詰まらせました。

やっぱりエヴァちゃんは強いんですねぇ。

だから魔法先生は言い返せないと。

 

「そこまで仰るのでしたら、さぞかし腕に自信がおありなのでしょう。ならば貴女に決闘を申し込みます!」

 

あるぇ?顔合わせで終わりなんじゃないの?

学園長の方を見るとなんだか苦笑いしている。

 

「まぁ、ここにいる者たちにサラ君がどれだけできるかを見せてやってくれんかのぅ?」

 

ひょっとして最初からそういう顔合わせをするつもりだったんですかね?

師匠の方は…、見るまでもないでしょう。

自分が鍛えた弟子が負けるはずないと信じてくれてはいるけど、負けたらさらにきつい修行を課す気満々だ。

ニタニタして、えげつない修行を考えてるに決まってる。

つまり、手合わせするしかないってことか…。

 

「わかりました。私もちょっと言い過ぎたところはありますから、その申し出を受けて立ちます。それでルールはどうしましょうか?」

 

「そうじゃのう…、これから結界を張るから、その中で有効打を決めた方が勝利とするかの。あまり長々と時間も取れんから1本勝負となるがどうじゃ?」

 

「私の方は問題ありません。高音先輩はどうでしょうか?」

 

「ええ、学園長の仰った条件でいいでしょう。貴女のその高慢な態度を粉々にしてあげますわ」

 

いやぁ、高音先輩お冠ですね。

先輩は他人を"偉大なる魔法使い"に導くことに使命感を燃やしてるところがあるからなぁ。

私としては余計なお世話なんですが。

悪い人じゃあないんだよねぇ。

融通が利かなくて、すぐ脱げるけど。

 

「では結界も張ったことだし、早速始めるとするかのう。両者10mほど離れなさい。互いに準備はよいかな?では…、始めぃ!」

 

学園長の合図とともに、高音先輩の背後に仮面をつけた黒衣の人形が現れた。

 

「私の操影術、近接戦闘最強奥義"黒衣の夜想曲(ノクトウルナ・ニグレーデイニス)"にて貴女をこらしめてあげますわ‼︎」

 

出ました!脱げ女の真骨頂‼︎服まで使い魔の影で出来ている高音先輩の操影術。

防御力を高めるためなんだろうけど、態々裸の上から影を纏う必要ないよねぇ。

しかも背後の人形は先輩の動きをトレースする形でしか動けないのがもったいない。

人形から伸びてる影の帯はある程度自由が利くみたいだけど、どうせならその本体も半自律型にしたらいいのに。

 

なんて思ってるうちに約10本程の影の帯が私を叩きつけんと襲いかかってきた。

まぁ、エヴァちゃんの攻撃に比べたら圧倒的に緩すぎるけどね。

鞭のようにしなったり槍のように伸びてくる帯を右に左に、あるいは前後に動いて避け続ける。

帯だけでは攻撃にならないと思ったのか人形を纏った先輩も抜手を繰り出してきた。

先輩の動きに合わせて人形も抜手を刺してくる。

私は瞬動で後方に回避、直後にズドンという音が前方から聞こえ、 私がいた場所は石畳みで舗装されてたのに大きな穴が開いていた。

 

「いつまでも避けてばかりでは私には勝てませんよ?」

 

「もちろん、わかっています。ですので今度はこちらから行きますよ!」

 

「そう言われて待っているような人がいるとお思いですか⁈」

 

そう言いながら高音先輩がまた人形を使って攻撃しようとこちらに近付くその前に、無詠唱で光の矢を3本放つ。

先輩は動こうとした瞬間に攻撃を受けたので、防御のためにその場でとどまらざるを得なかった。

と言うか人形の自動防御に絶対の自信を持っていたから回避するという選択肢がなかったのかもしれない。

そんな立ち止まった状態と言える先輩の手足と人形の帯、さらに人形の防御用マントを、私の魔力で強化した糸の操糸術で動かせなくする。

 

「っな⁈」

 

突然動きを止められたことに先輩は思わずと言った声を上げる。

そんな隙だらけの先輩に再度瞬動を用いて近付き、ガラ空きのお腹に拳を当てた。

 

「チェックメイトです」

 

ただ拳を当てただけなら、まだ終わらないだろうけど手足は封じられた状態だし、私の背中には光の矢が待機していつでも飛び出すことができる。

これ以上はどうしようもないでしょ?

 

「そこまで!この勝負、サラ・ヒューイット君の勝ちとする」

 

学園長の言葉を受けて高音先輩の拘束を解き、待機してた光の矢も霧散させる。

 

「とまぁ、こんな感じですがどうでしたか?」

 

先輩に尋ねてみた。

 

「ええ、認めざるを得ないでしょう。貴女は私よりもお強いですわね。ですので余計に残念でなりません、あの"闇の福音"のことを師事してるなんて…」

 

この人も頑固だなぁ…。

 

「高音先輩、私はエヴァンジェリンさんを師匠としたからここまで強くなれたのですよ。あの人が課す地獄のような特訓に耐えられたから今の私があるんです。まぁ、600万ドルの賞金首ですから警戒してしまうのかもしれません。ですが、上っ面だけで物事を判断していてはいずれ痛い目にあいますよ」

 

例えば麻帆良武闘会で衆人環視の中、全裸にさせられるとか…。

 

「さて、皆も今見た通り、サラ君はエヴァに鍛えられたおかげで実力は折り紙つきじゃ。以後はサラ君にも学園防衛の任に就いてもらうことになるが、各人異論はないの?」

 

高音先輩の一方的な攻撃を避けた後、あっさりと攻撃手段を封じて勝ったからか、誰も文句を言う人はいなかった。

でも学園防衛ってなんだろう?

そんな話は原作にはなかったと思うんだけど。

 

「ではこれにて解散じゃ。サラ君はエヴァの弟子なんじゃからエヴァに任せるかの。エヴァは事情を説明しておいてくれ」

 

「おい、ジジイ⁈私に全部丸投げする気か⁉︎」

 

「まぁ、そうなるかのぅ。ではエヴァンジェリン、あとは頼んだぞ」

 

そう言って学園長はさっさと学園長室へと向かい、他の魔法先生や生徒もそれぞれが戻るべき場所へと帰っていく。

 

「いやぁ、サラ君。エヴァに弟子入りしたのは聞いてたけど、操糸術まで使えるようになってたんだね。驚いたよ」

 

そう言いながらこちらに近づいてきたのは担任でもある高畑先生。

 

「高畑先生、お疲れ様です。出張は終わったんですか?」

 

「残念ながら、また出張さ。今日はサラ君が顔合わせをするって聞いたから戻ってきたんだよ。エヴァの弟子と聞いたら普通の魔法使いはいい顔しないからね」

 

確かにさっきの顔合わせは重たい雰囲気だったかなぁ。

エヴァちゃんはつまらなさそうに鼻を鳴らす。

 

「じゃあ、悪いんだけどすぐ出発だから、今日はこの辺で失礼するよ」

 

「はい、高畑先生。今日は態々ありがとうございました」

 

「じゃあな、タカミチ」

 

「高畑先生、行ってらっしゃいませ」

 

私とエヴァちゃん、茶々丸さんに見送られて高畑先生も行ってしまった。

 

「全く、あのジジイ。自分の学園の話だというのに面倒ごとをこの私に押し付けおって…」

 

「あのー、エヴァさん?学園防衛って何から何を守ろうって話なんですか?」

 

「道すがら説明してやる。いつまでもここにいたって仕方ないからな」

 

そう言って歩き始めるエヴァちゃんと茶々丸さん。

私も置いてかれないようついていく。

 

「サラ・ヒューイット、貴様も図書館島は知ってるだろう」

 

「ええ、図書館なのに何故か本棚の上から滝が流れてたり、罠が仕掛けられているような意味がわからない図書館ですね」

 

「まぁ、滝が流れている理由は私も知らんが、罠にはちゃんとした理由がある。この図書館には普通の本だけでなく、魔法書なんかも保管されている。価値があるもの、ないもの、それこそピンからキリまでな。その貴重な本を守るために罠は設置されてるんだよ。一般人が入れる場所は追い返すための罠が、明らかに一般人が入れない場所には追い返さずにむしろ閉じ込めて出られなくするような罠がな」

 

「図書館島に罠がある理由はわかりました。それで図書館島と学園防衛に何の関係があるんですか?」

 

「簡単なことだ。そんな罠なんぞ使わずと魔法書を狙ってくる盗人を捕まえてしまおうという話だよ。それが防衛の目的の一つだな」

 

「目的の一つということは他にもあるんですか?」

 

「そうだな、他にも世界樹と渾名されている神木・蟠桃を警護するというのもあるが、近衛木乃香を守るのも重要度が高いと言えるな」

 

「木乃香さんをですか?」

 

そう言えば、このちゃんには"サウザンドマスター"以上の魔力が宿っていて、そのせいで修学旅行中に襲われたんだっけ。

 

「あぁ、近衛木乃香にはあの馬鹿(ナギ)を越える魔力が眠っているらしい。もっとも親の方針でそのことを本人は知らされてないそうだがな。そのおかげで本人はほのぼのとした学園生活を送っているだろう?魔力にしても眠ったまま発動の兆しを見せんしな」

 

「ですが木乃香さんには護衛がいるじゃないですか」

 

「なんだ、貴様も近衛木乃香の護衛には気付いたか」

 

そりゃあ、原作知識として知ってましたが、せっちゃんがこのちゃんを見る目は明らかにヤバいですよ。

下手にこのちゃんに近付こうものなら、視線だけで相手を殺っちまいそうな勢いだからね。

 

「桜咲刹那さんですよね。あれだけ穴が開くかのように木乃香さんを見ていれば、誰だって何かあると気付きますよ」

 

「それもそうだな。近衛木乃香の護衛は確かに桜咲刹那だが、奴も四六時中護衛ばかりというわけにはいかんからな。そういうわけで貴様も実力を認められて、晴れて学園の警備員となったわけだ」

 

「そういうことだったんですね」

 

要は他の魔法先生や魔法生徒もエヴァちゃんみたいに警備員として働いていたってことですね。

確かにエヴァちゃんだけにこの学園の警備を任せるわけないか。

 

「この警備はチームで動く。ジジイが貴様のことを私に任せたということは、貴様は私の配下ということだな。よかったではないか、近いうちに実戦を経験できるぞ?」

 

いやいや‼︎いつもの訓練がすでに実戦みたいなものじゃないですか⁈

まぁ、こんなことを言った日には地獄の階層がさらに深まってしまうので、おくびにも出しませんが。

 

「では今日はこれで終わりですか?」

 

「そうだな。今日は顔合わせだけで警備は他の奴らが担当だからな。もう帰っていいぞ」

 

「それではエヴァさん、茶々丸さん、また明日学校でお会いしましょう」

 

「ああ、またな」

 

「サラさん、おやすみなさい」

 

エヴァちゃん、茶々丸さんがログハウスに通じる森の道を歩いていく姿を見送って、私も寮へと帰りました。




図書館島の罠が奥に行けばよりヤバくなるというのは独自設定ですが、
一般人がいけないようなところに来るのは盗人か、
可能性として麻帆良のラッキー大明神くらいじゃないでしょうか?
ラッキー大明神はそもそも危ないところに行かないですね。

そして戦闘描写が難しいです。
伝わっていれば幸いなんですが…。

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