ーサラ・ヒューイットー
ナギさん共々影の
「なあ、サラちゃん。そろそろ説明してくれてもいいんじゃねーか?俺としてはこの空間にはあんまりいたくねーんだけどよ」
「イスタンブールに行った時の私の質問覚えてます?」
「ああ、『6年前にネギを助けたか?』ってヤツな。俺には覚えがないって言ったろ?」
「そうでしたね。だから今から助けに行くんです」
「今からってどうやって?」
「これを使います」
と言って「カシオペア」をナギさんに見せます。
「それ、さっきの100年後から来たとかいう嬢ちゃんからもらったやつだろ?」
「はい。懐中時計型
そう言って7年前のネギ君の村が襲われた日に「カシオペア」をセットしスイッチを押すと、私の周囲がグルンと変わりました。
ナギさんはいなくなり、代わりに氷漬けにされたかのように封印されている造物主がいます。
今は用がないので無視し、目的のナギさんの杖を探すと、すぐ見つかりました。
床に無造作に転がしてあります。
さて、目的のものを手に入れたので、一度元の時間に戻りましょう。
「カシオペア」をセットし、再度スイッチを押せば周囲がグルンと回転し、ナギさんの背後へと戻ってきました。
「ただいま戻りました」
「うぉっ⁈びっくりしt…ってそれ俺の杖じゃねーか?目の前から消えたと思えば背後にいるし、消える前には持ってなかった杖を、なんでサラちゃんが持ってんだ?」
「これは7年前のこの部屋から持ってきたものです。とりあえず、次はネギ君を助けに行きますよ」
杖をナギさんに渡し、今度はネギ君の故郷である石化された村の側へ、影の転移魔法で移動します。
「では、7年前のネギ君の村が襲われたその日にタイムスリップします。向こうについたら悪魔が暴れまわってるので、全部潰してきてください。そのあと杖をネギ君に渡せば史実通りとなりますから」
「ホントにタイムスリップ出来んのか、未だに信用できねーんだけどよ。まあ、サラちゃんの言う通りになったとしてだ…他の村人とか助けちゃダメなのか?」
「ナギさんの気持ちはわかりますが、ダメです。それをやってしまうと歴史が微妙に変わることになるので、今度は私達が戻ってこれなくなる可能性があります。すると元の時間にいるネギ君とアリカさんは2度とナギさんに会えないことになりますよ。それに今は無理でも、将来このかさんが村人の石化は解除しますから問題ありません。ネカネさんは足だけが石化しているはずなので応急処置をしてください。詳しい話は後でするので、とにかく私の肩に掴まってください」
「あ、ああ」
あまり要領を得ないといった感じのナギさんですが、言われた通り私の肩を掴みました。
それを確認して、
「では行きます」
と一言告げて、スイッチを押しました。
途端に周囲の風景がグルンと回転します。
それが終わると、ネギ君の村に火の手が上がっているのが見えました。
「無事、7年前に到着することができました。既に村への襲撃が始まってるみたいなので、すぐに助けに行ってきてください」
「お、おう!」
ナギさんは最初、何が起こったのかよくわからないといった様子でしたが、村が襲撃を受けていると分かると、文字通り村の方へと飛んでいきました。
私は、ナギさんが戻ってくるまで休憩です。
能力を解除し、空になった回復アイテムを袋に入れます。
麻帆良にいる間にかなりの数のアイテムを消費してしまいました。
袋に入ってたアイテムの4割は使ったでしょうか?
やっぱり魔物の力を封じる学園結界は厄介ですね。
まぁ、仕方ないんですけど。
それに、麻帆良以外では魔力も元に戻るので、これからの時間跳躍に支障はないでしょう。
30分程したらナギさんが戻ってきました。
「前、ネギに村の襲撃の話を聞いていたんだが、あれは俺が助けたことになってたんだな…」
「そういうことになるんでしょうね」
「あんな小さい頃から苦労をかけちまってたとは…。ネギのヤツ、傷付いたネカネを守るために俺に杖を向けてきたんだぜ」
「ちゃんと杖は…渡せたみたいですね」
「ああ、渡せはしたが…。小さい頃のあいつに何もしてやれなかったのは、辛いものがあるな」
「その分はこれから埋めていけばいいと思いますよ。そのためにも計画その3です」
そう言って、影の袋からペンと便箋と封筒を取り出し、ナギさんに1部ずつ渡します。
「これに『日本時間の午後4時までにさっきまでいた駅にて待つように。この手紙は読んだら燃やすこと』という旨の文面を書いてください」
「それってイスタンブールで見た…」
「そうです。アリカさんが閉じ込められていたはずの部屋で見つけた手紙の内容です。そして私の計画その3『アリカさんを助ける』に繋がるものです」
「あの時読んだ手紙っていうのは、俺たちが書いた手紙だったということか?」
手紙を書きながらナギさんが私に尋ねてきます。
「それを確認するために、もう一度イスタンブールに行きます。手紙は書けましたか?では私の肩に掴まってください」
ナギさんが肩に手を置いたのを確認して、影の転移魔法を展開しました。
行き先はイスタンブール、アリカさんか捕らえられたというアジトがあるという森林地帯です。
以前行った場所と同じところだったので、すぐに移動することができました。
罠を警戒して能力を発動しつつ、すぐにアジトに入り、アリカさんが閉じ込められていたという部屋に行くと、そこには造物主と同じように閉じ込められたアリカさんの姿がありました。
「アリカ!」
「待ってください!罠がないか確認します。それとさっき書いた手紙も部屋の隅に置いておくので、もらっていいですか?」
「ああ、よろしく頼む」
能力を一度解除して手紙を受け取り、ナギさんが範囲外に離れたのを確認して、能力を発動し部屋を調べて回ります。
特に大きな魔力の吸収はなかったので、魔法的な罠は設置されていなかったのでしょう。
罠がないのが確認できたので、アリカさんを閉じ込めている魔法の魔力を吸収します。
すぐにアリカさんを閉じ込めていたものがなくなり、アリカさんがドサリと倒れる前に抱きかかえました。
アリカさんの封印を解いて新しい罠が発動するかとも思ったんですが、それもないみたいなのでナギさんを部屋に呼びます。
「罠もないみたいなので、ナギさん入ってきて大丈夫ですよ」
部屋に入ってきたナギさんにアリカさんを渡し、私は手紙を部屋の隅に置いて、探知系の魔法にかからないよう認識阻害の魔法をかけます。
「アリカ!大丈夫か⁈」
「ナギ?ここはどこじゃ?それにネギは?」
「安心しろ。ネギはb「ナギさんストップです」…え?ダメなのか?」
「ナギ、そこの少女は誰じゃ?」
「すみません、アリカさん、ナギさん。ですが、いずれわかることですし、ここからは変な先入観を持たれては困るので無言でお願いします」
「まあ、嬢ちゃんがそう言うならそれに従うさ」
「ナギが従うなら妾も従うほかあるまい。しかし、自己紹介くらいはしてくれてもよいのではないか?」
「すいません、それについてはもう少しあとで行います。今はナギさんの協力者としてアリカさんを助けにきたということにしておいてください」
「そうなのか、ナギ?」
「そうだな。嬢ちゃんがいないと俺はお前を助けられなかった」
お2人を疑うつもりはないんですが、うっかりどういうことがあったとか漏らして、今後に影響を与えるような先入観を植え付けるわけにはいきませんからね。
「では、麻帆良に行きましょう。途中で乗り換えがありますが、問題ありません。では、私に掴まってください」
ナギさんが私の肩に手を置いたの見て、アリカさんも私の肩に手を置きました。
それを確認して以前使った駅まで影の転移魔法で移動します。
そこからさらに「カシオペア」を使って、ナギさんとイスタンブールに行った日に戻ってきました。
「アリカさん、この駅のホームに入ればもう1人のナギさんと私が待っているはずです。恐らく『何があったのか?』とか『どこにいたんだ?』という事を聞かれるかもしれませんが、私に『いずれわかることだから何も言うな』と言われたと答えてください」
「それはわかった。そもそも私には何が起こっているのか理解できておらんから、説明もできまい」
「では、ホームに行ってください。また後ほど会いましょう」
「またな、アリカ」
そう言うと不思議そうな顔をしながらも、アリカさんはホームに向かってくれました。
「いずれわかるというのは、こういうことだったんだな」
ナギさんが呟きます。
「それでは、私たちも私たちが出発した時間に戻りましょう」
「ああ、わかった」
ナギさんがすぐに肩に手を置いてくれたので、私は「カシオペア」を起動し、出発したくらいの時間に戻り、さらに影の転移魔法で中学校の屋上まで戻ってくることができました。
「ちゃんと戻てきてくれて何よりヨ」
「ただいま帰りました。私が出発してからどれくらい経ちました?」
「5秒くらいじゃないかナ?」
「影の転移魔法を挟んだのでそんなものでしょう。5秒じゃ何も説明してないですよね?」
「そんな短時間で説明できることじゃないのは、サラさんが一番わかているはずネ」
それもそうですね。
「では、超ちゃん。説明をお願いします」
「なぜ私からヨ⁈」
「順序立てて説明するにはそちらの説明の方が先でしょう?」
「それは確かにそうネ。なら私の方から説明させてもらおうカ」
と言って超ちゃんの説明が始まりました。