憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第62話

ーサラ・ヒューイットー

 

私の前には野菜のネギが、お尻にブッ刺さったネギ君がいます。

かわいそうなネギ君…君のことは忘れません。

いや、別に死んでしまったわけではないんですけどね。

今は体育祭の学園全体イベント「教師突撃☆スーパー借り物競争」というものを実施しております。

これは委員長さんのお家が主催でやってる企画で、教師に対して無理難題な借り物を要求できるというものです。

原作でも3-Aの団結力により、ネギ君はかなり苦しめられたんですが、私も原作の五月ちゃんの考え方に賛成なんですよね。

まだ10歳なのに、夢のために自由を失ったネギ君の秘密を守ってあげたい。

いやぁ、五月ちゃん…いえ、五月さんのなんと大人びていること!

それなのに我が師匠のエヴァちゃんは600年生きてきてなんと大人気ないこと…。

ということで私も一肌脱いできました。

と言っても、私もエヴァちゃん同様魔力を抑え込まれていて、普通の魔法使いと変わらない状態です。

 

借り物競争が始まった当初は様子見してました。

ネギ君はすぐに祐奈ちゃんの魔法禁止弾を喰らって、チア部3人組からは好きな人がいることを告白させられ、(クー)ちゃんには危うく如意棒でスプラッタにされかかってました。

古ちゃんの攻撃をなんとか逸らし、ネギ君が魔法を使えないことに古ちゃんも気付いて、その場は事なきを得ましたが。

そのあとはネギ君を殴ろうとしたちうっちと、ネギ君を守ろうとした茶々丸さんが喧嘩したりしてました。

当のネギ君はアスナちゃんに連れられて逃げてましたけど。

まあ、ちうっちがネギ君を殴ろうとしたのは、麻帆良の馬鹿馬鹿しい日常に戻ってくるはずが、アスナちゃんも連れて非日常に行ってしまったネギ君を思ってのことだったんですよね。

ちうっちも五月ちゃんとは違ったベクトルで、しっかりした考えを持ってますね。

 

その場を逃れたネギ君でしたが、遂に相対してしまいます、ザジさんと女帝那波さんに…。

最初は図書部3人組と大河内さんのいない運動部3人組が現れたんですが、アスナちゃんの能力で対抗できてました。

長瀬さんの「天狗之隠蓑(てんぐのかくれみの)」と夏美ちゃんのアーティファクト「孤独な黒子(アディウトル・ソリタリウス)」という超隠密コンボも力技で攻略してましたから。

しかし、本気のザジさんが出てきて状況が一変。

アスナちゃんはハルナちゃんの高畑先生ゴーレムに騙され罠にかかり、せっちゃんが無力化。

ネギ君は不意を突かれて、亜子ちゃんのアーティファクト「不思議な注射器」で上下左右が混乱状態になったところを、那波さんの杖…というかネギをお尻にブッ刺されたわけです。

亜子ちゃんの注射器も痛そうだったんですが、ネギは現在進行形で痛そうです。

那波さんの杖は刺せば病気や状態異常を回復する代わりに、那波さんの言うことを聞かせるという代物です。

ネギ君は那波さんの「本命を答えなさい」という質問に口を噤んで抵抗します。

が、那波さんはお願いの重ねがけで無理矢理、口を割らせようとしました。

朝倉さんはそれを中継でクラスの皆に流そうとしますし。

3-Aの団結力は素晴らしいんですが、悪ノリするとこんなにタチの悪いものはありません。

ということで那波さんが3回目の質問をしようとしたところで、ネギ君の足下に影の転移魔法(ゲート)を展開し、

 

光よ(ルークス)

 

目眩ましの呪文を唱えて、すぐにネギ君を私の所まで引きずり込んだので、目の前にはネギが刺さったネギ君と大河内さんがいるという状況です。

因みに転移魔法の魔力はネギ君から糸で吸収しながら展開しました。

魔力を封じられた私では短距離の移動も大変なんで。

 

「大河内さん、ネギ君のこと頼みますね。もう少ししたらエロガモが来ると思うのでその指示に従ってください。私はちょっとのどかさんと夕映さんにお話があるので」

 

それだけ言ってズブズブと影に沈みます。

これで大河内さんと仮契約できたら、かなり時間を稼げるでしょう。

大河内さんを犠牲にするようで悪いんですが、他に方法が考えつきませんでしたし。

とにかく、本屋ちゃんなら影の転移魔法から、誰がネギ君を攫ったか気付きそうですから、あちらより先に手を打ちます。

 

「いやぁ、まだ皆さん残ってくれてましたか」

 

ネギ君を尋問していた場に現れると、

 

「サラ、よくやったわ!」

 

これはネギ君を逃がそうとしていたアスナちゃんの声。

 

「あとちょっとだったのに!なんでネギ君を逃しちゃったの⁉︎」

 

「祐奈さん、無理矢理ネギ君の想い人を知ってそれで満足ですか?」

 

質問した祐奈ちゃんに答えますが、視線は本屋ちゃんと夕映ちゃんに向けてます。

例え、無理強いで答えを聞いたところで、しこりが残るだけだと思うんですよね。

それなら正々堂々聞くべきでしょう。

 

「のどかさん、夕映さん本当にそれでいいんですか?それとザジさん、クラスの意見は別れたので中立ならば、双方の意見を吟味してくださいね。少なくとも私とアスナさんは無理強い反対ですよ」

 

「そう言われると、手出しできませんね」

 

これでザジさんは抑えられました。

 

「さて皆さん。どうされますか?」

 

「ええい、ネギ君を追うわよ!のどか、読心術(リーディング)!」

 

「ネッ、ネギ先生は嫌がっていらっしゃったので、私は抜けさせてもらいます」

 

「私も無理強いは良い結果をもたらさないと思うです!」

 

と言って、本屋ちゃんと夕映ちゃんは離脱してしまいました。

 

「さて、他の皆さんはどうされます?追いかけるというなら私は足止めさせて貰いますよ」

 

「まさか、サラちゃんが敵対するなんて…。撤退よ!撤退‼︎」

 

ハルナちゃんの声に皆バラバラな方向に行ってしまいました。

まあ、それくらいは許しましょう。

罠で宙吊り状態のアスナちゃんを助けます。

 

「サラ、助かったわ」

 

「まだこの騒動は終わってませんよ、1番大人気ない人が残ってますから。アスナさんはハカセさんのところに行ってきてください。そこに騒動を終わらせる鍵があります」

 

その大人気ない人が師匠なんですけどね…。

 

「何よ、その鍵って?」

 

「行けばわかりますよ。では急いでお願いします。私はしつこい追っかけを抑えてくるので」

 

ということで、私もその場を離れます。

うまくいけば大浴場にいるはずですから。

 

杖を使って急いで移動すると、エヴァちゃんと五月ちゃんが向かい合ってました。

ちょっと遅かったみたいですね。

あー、影の転移魔法が使えれば移動も楽なんですが、麻帆良には高位の魔物に対する学園結界が働いてて、私もその結界に引っかかってるんですよね。

魔力が完全になくなったわけではないんですが、不便で仕方ありません。

 

「む?サラ・ヒューイット、貴様もそちらにつくのか?」

 

「はい。私はネギ君の味方ですから。そもそも600年も生きてるのに興が乗ったとかはっちゃけたとか、どうなんですか?いや、それが悪いとは言いませんが、ネギ君はまだ10歳。エヴァさんの60分の1しか生きてないんですよ。そんな子相手にどうなんですか?って話ですよ」

 

「いや、しかし…」

 

「ひょっとしてナギさんからネギ君に乗り換えるつもりですか?」

 

「な?何を言ってる⁈」

 

そう、ナギさんに対するストーカー染みた以前のような気持ちが、今のエヴァちゃんには感じられないんですよね。

まあ、ナギさんのところにアリカさんがいるのが原因でしょうか?

アリカさんもネギ君とナギさんが生活を送ってる教職員寮で一緒に暮らしています。

それがなかった今までがおかしかっただけで、本来あるべき姿に戻っただけなんですよね。

そんな感じのナギさんとアリカさんにエヴァちゃんは遠慮しているような雰囲気なんですよね。

 

「ナギさんには奥さんが戻ってきたから、仕方ありませんよね。ネギ君はナギさんに似ていますし。でもその好きな子を虐めたくなる小学生男子、みたいなことはやめた方がいいですよ」

 

「何を言っとるかーっ‼︎」

 

エヴァちゃんが顔を真っ赤にしながら、私の襟首を掴んでガクガク揺らしてきます。

 

「ちょっと待ったーっ!」

 

という声とともに上からアスナちゃんとハカセちゃん、このちゃん、せっちゃんが降りてきました。

っていうか、どこから降りてきたんでしょうかね?

別に吹き抜けとかがあるわけでもない普通の大浴場なんですが。

 

「こんなこともあろうかと!ネギ君の本命を知るべきではない、決定的材料を用意しておいたよ!」

 

そう言ってハカセちゃんが持ってきたのは「(チャオ)家家系図」。

超ちゃんが後夜祭で持ち出したあの究極兵器(アルティメットウェポン)…の偽物ですね。

本物はアスナちゃんが燃やしましたから。

でもそれを知らない皆には効果絶大です。

家系図に書かれてるネギ君の結婚相手の名前がなくて、未来は白紙で皆にチャンスがあるとわかると、一番積極的に本命追求をしていたハルナちゃん、祐奈ちゃん以外、皆ネギ君の味方になってしまいました。

皆現金というかなんというか。

それだけネギ君は愛されているということにしておきましょう。


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