憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第61話

ーサラ・ヒューイットー

 

魔法世界(ムンドゥス・マギクス)から無事、麻帆良学園に戻ってくることができました。

私がナギさんを連れて帰ってこなかったことを、エヴァちゃんに問い詰められましたが、魔法世界で名誉回復してその日にネギ君と一緒に帰ってくると伝えたら納得してもらえました。

まぁ、帰ってきてからが大変だったんですけどね。

エヴァちゃんのログハウスにて

 

「よし、ナギ。私にかけた『登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)』の呪いを解け!」

 

「断る!」

 

いやぁ、ナギさんの返事が速かったこと。

エヴァちゃんの話の切り出し方もどうかなと思ったんですが、ナギさんの切り返しも酷いものでした。

 

「呪いをかけられて15年も経ったんだぞ!もう十分だろうが‼︎」

 

「そうですよ、父さん!師匠(マスター)は12年間余計に中学校へ通ってるんですよ⁈」

 

「まぁ、俺が魔力に物を言わせた強引な術をかけちまったからな、それの正常化はやる!だが、呪いを解いたら速攻でトンズラすんだろ?」

 

「っう⁈」

 

痛い所を突かれたのか、エヴァちゃんが呻きます。

 

「えっ?師匠どこかへ逃げようとしてたんですか⁈」

 

「い、いや。それはだな…ぼーや」

 

さらにネギ君の追撃でしどろもどろになるエヴァちゃん。

 

「ちゃんと卒業するまで通ってくれますよね?ね⁈」

 

「えぇ〜い!五月蝿い‼︎ぼーやも言った通り12年余計に中学校に行ったんだ!もう解放してくれてもいいだろうが‼︎」

 

遂にエヴァちゃんが声をあげましたが、

 

「師匠、せめて卒業だけはしてくださいよ〜」

 

ネギ君はそれにもめげず、エヴァちゃんにお願いをします。

エヴァちゃんも思わずたじろいでしまいました。

 

「と、俺の可愛い息子も言ってるし、高校くらいは卒業しておいたほうが就職に有利だぞ?」

 

「なんで私が就職の心配をせねばならんのだ⁉︎そもそもナギはぼーやと違って、『魔法学校中退だ』と自慢気に語っていただろうが‼︎」

 

確かにナギさんが高校卒業の重要性を語っても、説得力はないですよね。

ネギ君も苦笑いですし。

 

「俺はいいんだよ!ちゃんと「悠久の風」っていうNGO団体で働いてんだかんな‼︎とにかく正常化はするが、俺がやんのはそこまでだ!学校には行ってもらうぞ、いいな⁈」

 

そう言って、強引に話を打ち切ってしまいました。

ですが、ちゃんと呪いの正常化は行われたようで、エヴァちゃんも一先ずそれで納得したみたいです。

私はそれを横で見ているだけでした。

ナギさんに主導権がある時点でエヴァちゃんでは勝てないだろうなって思ってましたから。

 

 

 

「それで、サラちゃんは俺になんの用があるんだ?」

 

スターブックスのテラス席で、話があると私はナギさんを呼び出しました。

ネギ君は現在「火星緑化計画(プロジェクト・ブルー・マーズ)」推進と各地で遊説するために、魔法世界へ赴いてます。

ナギさんも計画に参加していて、かつての英雄として顔も出したりしているそうですが、基本はネギ君がやりたいようにやらせているそうです。

息子の計画に親があーだこーだと口出しするのはよくないという考えなんだとか。

それは置いといて、

 

「なんでイスタンブールで行方不明になってたんですか?」

 

「え?俺ってそういう扱いになってんの?」

 

「そうですよ。私のクラスメイトに雪広コンツェルンという大企業の令嬢がいるんですが、そのコネで調査した結果、1993年トルコのイスタンブールで姿を確認されたのを最後に公式記録では死亡となっています。あの地に何があったんですか?」

 

「いや、あそこには調査に行っただけで…」

 

ナギさんの歯切れが悪いですね。

 

「イスタンブールには『造物主(ライフメイカー)』がいたんじゃないですか?」

 

「なんでそこに奴の名前が出てくんだ?」

 

「フェイトって知ってますよね?」

 

「あぁ、アーウェルンクスシリーズの生き残りだろ?ネギの計画にも協力している奴」

 

「その彼なんですが、以前修学旅行で京都に行った時、私達は彼に襲撃を受けたんです。その時、詠春さんが足取りを調べた結果、イスタンブールの魔法協会から日本へ派遣されたことになってたんですよね。魔法協会から派遣されたというのは嘘かもしれませんが、イスタンブールから来たのは本当じゃないかと思いまして。それにナギさんがイスタンブールで行方不明になったとあれば、2人を繋ぐのは『造物主』くらいしか考えられません」

 

ジッと私の話を聞いてたナギさんでしたが、徐に口を開きます。

 

「その推論は誰かに話したりしたか?」

 

「話してませんよ。あくまで私の推論ですから。でも私と同じ考えを抱く人は…いるかもしれませんね」

 

私の返事に対して、諦めたような表情を浮かべるナギさん。

 

「ったく、フェイトの奴。なんでイスタンブールから来たって設定にしたんだよ」

 

「本来は日本に来る予定はなかったんじゃないですか?イスタンブールにいるはずの『造物主』を探しに行ったら、そこにはいない。それで探した結果、麻帆良にいるという情報を掴んだので、最初は関西呪術協会に潜入し、その後悪魔を召喚して麻帆良を調べたと。これが私の考えです」

 

「イスタンブールにゃ『造物主』はいなかったろうさ。その頃には既に俺とバトって、すぐ麻帆良に封印されたんだからな」

 

「どうしてイスタンブールに行ったんですか?」

 

「あそこには『造物主』だけじゃなく嫁さんがいたんだよ…」

 

嫁さんってことはアリカさんがイスタンブールにいたってことですか?

原作ではアリカさんがどうなったかなんてわからないんですが、これはこの世界だからなんでしょうか?

とにかくアリカさんを攫って、ナギさんを誘い出したということなんでしょう。

でもナギさんを誘い出す理由がわかりませんね。

 

「奥さんってアリカさんですよね?」

 

「なんでそれも知ってんだ?まさかジャックがもらしたのか?」

 

「いえいえ、クルト総督が作った映画ですよ。魔法世界に行ったクラスメイトは全員知ってますよ」

 

「あの映画見られたのか。それは、ちっと恥ずかしいな」

 

少し顔を赤くして頭を掻いてます。

 

「なんでナギさんを誘き出したんでしょうか?『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』計画には邪魔な存在だったから?だとしても、アリカさんを攫わずとも直接対峙すれば十分だったはず。アリカさんを攫ったのは、ナギさんに確実に来てほしかったから。それはどうして?ナギさんに乗り移りたかった?でもゼクトさんが乗り移られたのを知ってるナギさんが対抗措置を施してることは『造物主』だって考えていたはず。乗り移ったら封印されるのを承知で戦った。じゃあ封印してほしかった?それはどうして?動きたくない?ではなく止めてほしかった?…」

 

「おい、サラちゃん。ブツブツ呟くのやめてくれよ。なんか黒いオーラ出てんぞ?」

 

「いやいや、私今すごい真面目なこと考えてましたよ。黒いオーラだなんてあんまりな言い様じゃないですか」

 

学園長やちうっち、超ちゃんも腹黒いって言うんですが、そんなに腹黒いことはないと思うんですけどねぇ。

まさか!皆して私を腹黒キャラに仕立てようとしてるんでしょうか⁈

いつの間にそんな計画が…。

 

「おーい、サラちゃん。話し続けるぞ?いいか?」

 

「すいません、続けてください」

 

「『造物主』もいなくなったからな、攫われたアリカを助けに行きてーんだが、俺今パスポートとかないから、事情を詳しそうな嬢ちゃんに手伝ってほしいんだけどよ、どうにかなんねーか?他の連中には相談できない話だしな」

 

「いいですよ。その前に図書館に寄っていいですか?ちゃんと転移先の座標を調べておきたいんで」

 

「手伝ってくれんのか!いやぁ、助かるぜ‼︎それじゃ早速図書館行こうぜ」

 

というナギさんに首根っこ掴まれて、図書館島までやってきました。

地図で確認したところ、イスタンブールの北西の森林地帯に誘き出されたそうなので、その辺まで行きましょう。

ただし、私は一度麻帆良を出ないといけません。

闇の魔法(マギア・エレベア)」で人外となった私は、学園結界に引っかかるようになってしまったんです。

これはちょっと面倒ですよね。

電車に乗って麻帆良を出るとすぐに近くの駅に降りました。

魔力も元に戻ったので、影の転移魔法(ゲート)を展開し、ナギさんとイスタンブールの森林地帯まで一気に移動します。

そして、アリカさんが捕らえられ、かつ造物主が待ち構えていたというアジトに入ったんですが、何も見つかりませんでした。

本来、捕まって封印されているはずのアリカさんすらいないのはおかしいですね。

 

「本当にこの部屋にいたんですか?」

 

「あぁ、ここにいたんだ!まさか、奴が消えたからアリカを閉じ込めた結界も解けたのか?」

 

確かにその可能性はありますね。

若しくはアリカさんは元々いなくて、何かしらの罠が仕掛けられていたのか…。

ちょっと確かめてみましょう。

 

「ナギさん、ちょっとこの部屋の入り口で待っていてもらえますか?この部屋を調べるんで」

 

「ああ、わかった」

 

そう言って、ナギさんが離れたのを確認してから能力を発動します。

そして、部屋を隈なく調べると、2通の手紙が出てきました。

態々、部屋の隅っこに置いてあって、さらに探知系の魔法にも引っかからないような術が施されてました。

アスナちゃんや私みたいに無効化させないと、見つからないようにしてあるものです。

しかも宛先は私とナギさん。

 

「ナギさん、手紙がありましたよ」

 

「特に罠がありそうな感じじゃないな。っていうか今更手書きのやつかよ」

 

「魔力を無効化しないと見つからないような仕掛けが施されていたので、魔法世界の手紙ではダメだったのかと思いますよ。しかもこの字は私の字ですし」

 

「俺宛のは俺の字だ。『日本時間の午後4時までにさっきの駅で待て。手紙は読んだらすぐ燃やせ』だとよ」

 

「私のも同じことが書かれてます」

 

なるほど、これは「未来の」私がやったことなんでしょう。

ということは計画は成功したということなんでしょうね。

もう一つ、確認をしておきましょう。

 

「ナギさん、一つ聞きたいことがあるんですけど…」

 

私が疑問に思っていたことを、ナギさんに尋ねます。

 

「いや、おれは何もやってないぞ」

 

「わかりました。大丈夫です、アリカさんはその手紙に書いてある通り、さっきの駅に来てくれます。とにかく手紙を燃やして駅に戻りましょう」

 

と言って手紙を燃やします。

ナギさんもわけがわからないといった表情を浮かべながらも、手紙を燃やしてくれました。

ナギさんが私の肩に手を置いたのを確認して影の転移魔法で、さっきの駅へと戻ります。

 

午後4時まで待っていると、手紙に書いてあった通りアリカさんが駅のホームへとやってきました。

ナギさんも思わず駆け寄り、アリカさんを抱き締めます。

 

「アリカ!捜したんだぞ?どこにいたんだよ⁈」

 

「すまぬ、ナギ。そこの少女に『いずれわかることだから何も言うな』と先程言われてな」

 

「いや、サラちゃんは俺とずっといたんだからそれはねーよ」

 

「初めまして、アリカさん。私はサラ・ヒューイットと申します。アリカさんはさっきまで私と一緒にいたのかもしれませんが、それは私であって私ではありません」

 

「サラちゃんはどういうことかわかってんのか?」

 

「そうですね。予想はついてますが、今は言えません。ですが、いずれわかることですよ。今はアリカさんが戻ってきた、それでいいじゃないですか」

 

「そうだな、サラちゃんの言う通りだ。いずれわかるんならそれでいいか。アリカ、知ってたか?ネギはもう10歳になってんだぞ」

 

「なんと、そんなに時が経っていたのか…。あの子には苦労をかけてしまったろうな…」

 

「今日はネギも魔法世界から戻ってくる。久しぶりに親子水入らずで過ごそうぜ」

 

ネギ君はナギさんが戻ってきたことで、現在女子寮を離れて家族で入れる教職員寮で生活を送っています。

 

「あの子は魔法世界にまで行くようになってしまったのか⁉︎」

 

「まあまあ、アリカさん。これまでのことはあとでネギ君も交えて、話をしたらいいではないですか。電車も来たので麻帆良に帰りますよ」

 

そう言って私達は麻帆良行きの電車に乗りました。




驚きのアリカさん復活です。
実際のところ、どうなってしまってるんでしょうかね?

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