ーサラ・ヒューイットー
新オスティアへ戻ると、舞踏会で消された人々が何事もなかったかのように復活していました。
夕映ちゃん達アリアドネー組はエミリィちゃんと、本屋ちゃんはトレジャーハンターの2人と、亜子ちゃん大河内さんはトサカさんと、夏美ちゃんはクマの奴隷長さんとそれぞれ再会を喜びあっていました。
いやぁ、よかったですね。
頑張った甲斐があったというものです、私ではなくアスナちゃんがですけど。
翌日はというと、まず
特にネギ君は魔法世界を存続させる計画の発案者ですから、トップ3人とクルト総督とは顔繋ぎをしなければならないでしょう。
他のMM元老院議員は信用なりませんから。
アスナちゃんもこの世界では「黄昏の姫御子」という重要人物です。
この顔繋ぎは今後の活動に影響を与える大事なものとなりますね。
MM元老院議員は信用できないので、守ってくれる的な感じで頼りにできるのはこの4人ですし。
その夜はクルト総督による戦勝記念パーティーが開かれました。
パーティーでは、3-Aクオリティーを発揮した皆が、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを繰り広げました。
コタロー君は那波さんや委員長さんと久しぶりに語り合い、ネギ君もアリアドネー4人組やら、久しぶりに会った生徒の皆と楽しい会話をしていました。
楽しげな会場の裏ではラカンさんとフェイト、ナギさんが、成長した弟子とライバル、息子を見守るといった表情です。
そのナギさんはというと医師の検査を受けましたが、特に異常はなかったようです。
原作では腕を切られてましたが、私がそうなる前に相対してましたからね。
しかし、この和気藹々とした雰囲気の中で話しかけるのも、空気読めてない感じがして嫌だったんですが、こればかりは早めに決めないといけないので、ネギ君に相談を持ちかけます。
「ご歓談中、すみません。ちょっとネギ君を借りていきますね」
丁度アスナちゃん、本屋ちゃんと話していたネギ君でしたが、2人に断りを入れて素直に私についてきてくれました。
会場の端っこに寄って、私から話を切り出します。
「申し訳ありません、楽しく話してたところを中断させてしまって」
「いえ、僕もサラさんにお礼をまだ言えてなかったので丁度よかったです」
お礼?何かしましたかね?
むしろ人外へと成り上がらせてしまったんですから、罵倒されても仕方ないと思うんですが…。
「すいません、お礼を言われる理由が思いつかないんですが?」
「サラさんが僕の捜していたお父さんを、無事に取り戻してくれたじゃないですか」
そのことでしたか。
あれは、狙ってやったわけじゃなく、偶然だったんですけどね。
「そんな、お礼を言われる程のことじゃないですよ。私は『
「偶然だったとしてもです。『造物主』を倒せる可能性があったのは
私の能力については新オスティアに戻るまでに、ネギ君とアスナちゃんに説明しておきました。
でないと造物主の中から魔力切れのナギさんが出てきた理由がわかりませんからね。
説明を受けた時のネギ君はかなり驚いてました。
ネギ君と違って「
ですがネギ君の「
瞬間的な出力ではネギ君の術、長期的な出力で言えば私の能力という違いでしょう。
いや、今はその話をしたかったんじゃないんですよ。
「それについてはまた後日ということで。私もナギさんには聞きたいことがあるので。それよりも明日は学校ですよ。と言いますか、今日は2学期の始業式でしたからね」
「え?そうだったんですか⁈」
そういえば、学校の話は今までしなかったから、忘却の彼方だったんでしょう。
魔法世界で一月半以上過ごしてたのに、
それはともかく、魔法世界の冒険はこれで終了です。
目的だったナギさんの情報というか本人が見つかり、バラバラになった皆も再び揃うことができたんですから、麻帆良に戻れるわけです。
「そうだったんですよ。麻帆良では明日、通常授業が始まりますから生徒は皆戻らないといけません。ただし、ネギ君は総督からの話通り、こちらで救世の英雄として魔法世界に対するお披露目の式典があるんですよね?」
「はい、父さんと一緒に紹介されるそうです。父さんは文字通り、身体を張って『造物主』を封印していた英雄として、名誉回復も含めて公式の場に姿を現わすということです」
そうなんですよ、原作では描写がなかったナギさんの名誉回復が、明日の式典で行われるんですよね。
ひょっとしたら原作でも行われてたのかもしれませんが、それが随分早まった形です。
「なので、ネギ君は明日の式典が終わってから学校に戻ることになるでしょう。その前に生徒は学校に戻したほうがよくないですか?学生の本分は学業ですから」
「確かに、サラさんの仰る通りです」
「アスナさんはこちらのお姫様でもあるのでこちらに残るといっても問題ないと思いますよ。このかさんも残るというかもしれませんね。このかさんが残れば刹那さんも残るかもしれませんが、それ以外は麻帆良に戻したほうがいいかと。委員長さんに指示を出して、高畑先生に引率してもらえば問題ないと思いますよ」
原作では確かアスナちゃんとこのちゃんがネギ君を陰から見守る描写があったので、それくらいは問題ないでしょう。
アスナちゃんはネギ君が無茶しないか心配で残ったんでしょうし、このちゃんはネギ君とアスナちゃんが心配なんでしょう。
このちゃんが残れば、せっちゃんも当然こちらに残るんじゃないですかねぇ。
「わかりました。いいんちょさんとタカミチにお願いしておきますね」
「ええ、よろしくお願いします」
とりあえず、これで学園長への義理は果たしたと言えるでしょう。
っていうか、学園長には貸しはあっても借りはないんですよね。
それなのにこうやってこき使われるっておかしくないですか?
これも貸しにしておきましょう。
これで貸し3つです。
どうやって返してもらいましょうか?
そんなことを考えながら、ネギ君へのお話も終わったので離れようとしたら、ネギ君に呼び止められました。
「サラさん」
「はい?なんでしょう」
「どうして、サラさんが父さんを解放したのに、それを公表しないんですか?」
とネギ君が言った通り、ナギさんを解放したのはネギ君とアスナちゃんということになってます。
アスナちゃんについては、いずれウェスペルタティアの王族として紹介されることになるんですが、まだ先の話です。
私が公表しないのは、まぁ私だけの能力が理由ですよね。
魔力吸収なんて、アスナちゃんよりタチの悪い能力を持ってると世間に知られたら、どんな目に遭うかわかりませんし。
ネギ君にそれを正直に言って心配させるのもなんなので、
「どこの誰ともわからない私がナギさんを解放したというよりは、実の息子であるネギ君が解放したという方がストーリー性があって、英雄譚にもピッタリでしょう?それに私はあがり症なんで、人前に出たくないんですよ。ということで明日の授業を考えればここに長居はできないので、委員長さんと高畑先生への説明は早めにお願いしますね。ではパーティーを楽しんできてください」
そう告げて今度こそネギ君から離れました。
ネギ君は納得してない感じでしたが、私がこれ以上話さないとわかったからか、アスナちゃん達の元に戻っていきました。
「あがり症なんてよく言うぜ。先生に言ったことが全てじゃないんだろ、サラ?」
「千雨さん、盗み聞きはどうかと思いますよ。それに嘘はついてませんし」
そこにはちうっちが腕を組んで立っていました。
ちょっとイライラしてるんでしょうか?
「全く…先生だけじゃなく、あんたまで『闇の魔法』に手を出してたなんてな。しかも、それすら秘密の一端かよ。あとどんだけ隠し事をしてんだ?」
あとどれだけ隠し事をしているかですか?
もう役に立つかはわかりませんが、ある程度の歴史を知っていたこと。
憑依をしていたこと。
ナギさんにも少し話を聞かないといけませんが、まだ私にはやるべきことがあるということ。
特に3つ目はそれがいくつになるのかわかりませんが、大まかに言えばこれだけでしょうか?
思ったより少なくて済みましたね。
「多分あと3つだけだと思います。ちゃんと数えたわけではないので他にもあるかもしれませんが」
「最低3つ以上か。ていうかまだ隠さなきゃいけねーことがあんのかよ…」
ちうっちが呆れたように呟きます。
ひょっとして心配されてるんでしょうか?
だとしたら申し訳ないですね。
「ひょっとして心配してくれてます?」
「バッ⁈なんであんたの心配なんかしなきゃなんねーんだよ!」
「いやー、なんだかんだ言って、千雨さんは本当いい人ですよね。そんな人に心配をかけるのは心苦しいので、約束をしましょう」
「なんだよ、約束って?」
「卒業式近くになれば隠し事をお話ししますよ」
胡散臭いものを見るかのような目で、ちうっちが私を見ます。
「それ本当だろうな?」
「私が千雨さんに嘘を吐いたことがありますか?」
「確かに嘘は吐いてねーが、『企業秘密です』なんて誤魔化してばっかじゃねーか」
そう答えるちうっちですが、さっきまでのイライラは鳴りを潜め、ニヤリと笑っています。
まあ納得してもらえたんでしょう。
「いやぁ、申し訳ない」
そう言って頭を掻きながら謝ると、
「その仕草が胡散臭いんだよ」
と返してくれました。
本当にいい人です。
「皆さん!ネギ先生は明日もこちらで用事があるということですが、私達は明日から授業ですので帰りますわよ‼︎」
と、手を叩いて注目を集めながら委員長さんが言いました。
やっぱりアスナちゃん、このちゃん、せっちゃんは明日の式典が終わってから、ネギ君、ナギさんと一緒に戻って来るみたいですね。
私達は高畑先生の引率のもと、懐かしの麻帆良学園への帰路に着きました。