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これを読んでくれてる皆さんに、
ありがとうございます。
ーサラ・ヒューイットー
「
再び「雷天双壮」状態になり、雷速瞬動で造物主に相対します。
「こんにちは、『造物主』さん。それとも『始まりの魔法使い』さんと呼ぶべきですか?そうじゃなければ『ナギさんの身体を乗っ取ってる何か?』と呼んだ方がいいですか?」
話しかけながら魔力の糸を編み、造物主の周囲を囲むように広げていきます。
造物主はといえば、ローブを目深に被っているため、その表情はわかりません。
戦闘の方は当然ながら、エヴァちゃん達が有利に進めてます。
「
祭壇ではちうっちが音頭をとって、私以外のクラスメイト皆でアスナちゃんの意識を覚ますために、呼びかけを行っています。
原作と違いネギ君も呼びかけに参加してるので、こっちももう少し頑張れば、アスナちゃんは帰ってこれるでしょう。
私はその前に造物主を動けないようにしないといけません。
でないとアスナちゃんにトドメを刺されて、原作同様逃げられてしまいますから。
それにしても、こちらから話しかけてるのに返事なしなんて…。
私如きは余裕があるから、アウトオブ眼中ですか?
そうですか。
どうせ興味があるのは、エヴァちゃん、ネギ君、アスナちゃんだけなんでしょうが、その余裕を打ち消してやります。
魔力の糸を操作して造物主を包んでしまう球体を作りながら、能力を発動します。
糸が魔力を吸収してしまうものだと気付き、その糸を操る私を攻撃するための魔法陣が、空中に浮かび上がります。
随分大きな魔法陣ですが、あれって原作でアスナちゃんとネギ君を攻撃するために出した魔法陣じゃないですか?
陣の構成なんて覚えてませんが。
これはこれは、私の危険性を認識していただけたようで。
でも素直に攻撃を受ける私ではないので、魔法陣を構成する魔力も吸収します。
糸は造物主を包むのに使ってるので、私自身が雷速瞬動で移動し、魔法陣に体当たりして無効化していきます。
その間も手は糸の操作をやめません。
秒速150kmで動く指というのは伊達ではないんですよ。
造物主も糸を斬って、私の魔力吸収陣から逃れようとするんですが、斬られた部分をすぐに繋ぎ直し、さらに糸を巻きつけていきます。
今はより多くの魔力を吸収できるように引き絞って造物主に密着させているので、側からみればミイラみたいな状態になってます。
それでもまだ抵抗して魔法を乱発しようとしたり、糸を斬ろうと必死になってきました。
その度に魔法陣は雷速瞬動体当たりで吸収し、糸は修復し、身動きが取れないようさらにキツく糸を縛り付けます。
造物主を絞めつけてる糸は、私の魔力を使って作られたものですが、その魔力も造物主から吸収したものを再利用しているので、造物主は糸から逃れるためと私の吸収陣により魔力の損耗が激しいのに対し、私は糸を作るために魔力を消費するだけでいいという最早格闘ゲームのハメ技状態ですね。
ふと周りを見れば、私と造物主の周囲以外は一面氷の世界が出来上がってました。
どうやら使徒との対決は終了したみたいで。
もちろん、エヴァちゃん達の勝ちです。
少し離れたところには敵に召喚された
ネギ君達もアスナちゃんの意識を呼び戻すことに成功したみたいで、
あとは私だけということですね。
造物主の攻撃魔法による抵抗がなくなったので、いよいよ魔力が足りなくなってきたのでしょう。
さっきからミイラの方が芋虫のようにウネウネと動いて、糸から逃れようと踠いてます。
では、駄目出しということで私の能力範囲内にミイラを収めましょう。
さっきまでは魔法陣を潰すのと、不意の攻撃を警戒して雷速瞬動で動き回ってましたが、その必要もなくなったということですね。
すぐ動けるように警戒はしたままでミイラに近付き、距離が5mをきりました。
途端に吸収量が上がり、ミイラの踠き方もウネウネから激しいものに変わりますが、状況は何も変わりません。
やがて、諦めたのか動くこともなくなり、その後魔力の吸収量がガクッと落ちました。
造物主の魔力がスッカラカンになってしまったんでしょう。
ないものを吸収することはできないので、警戒はしつつも糸を解除しました。
ミイラ状態から解放されて出てきたのは、黒ローブの造物主ではなく、白いローブを纏ったナギさんその人でした。
「っく…、お嬢ちゃん。助かったぜ…。だが、かなり強引な…救出方法じゃねーか…」
そう言って限界だったのか、ばたりと倒れてしまいました。
いや、私は造物主を逃さないためにも、まずは魔力を吸収してしまおうって思っただけなんですが、まさかナギさんが出てくるなんて…。
足で突いても起き上がる様子はありません。
呼吸はしているので、気絶してるだけみたいですが、こんな形で救出してしまうとは思ってませんでした。
「どうして、『造物主』の中からナギが出てきた?」
私達の戦いとも呼べない戦いが終わったからか、エヴァちゃんが駆けつけて発した第一声がそれでした。
ネギ君と反転魔法を終わらせたアスナちゃんもナギさんの姿を見て、側まで寄ってきます。
術式兵装を解除しながら、
「つまり10年前に行方不明になったというのは、『造物主』と戦って引き分けたか負けたかして、その身体を乗っ取られていたわけですよ。その後は遅延呪文で自らを封印したのか、『
とエヴァちゃんに説明します。
「封印したのはナギの力ですよ。『造物主』に身体を乗っ取られたゼクトを倒した後、魔力を消耗し身体もボロボロだった彼が今度は乗っ取られてしまったわけです。その場合に備えた準備は済んでいたので、封印されてからは麻帆良学園の奥深くで眠っていて、私はその門番を務めていたということです」
私の言葉にそう付け加えたのはアルビレオさん。
そういえば、こうしてお話するのは初めてでしたね。
人化の術で人の姿をとり、自己紹介をします。
「初めまして、アルビレオさん。私、サラ・ヒューイットと申します」
「なるほど、貴女がサラさんでしたか。キティから話は伺っていましたが、貴女も色々詳しいご様子。今度、茶会を開きますので、よろしければご参加いただけますか?」
「お茶会だけならいいですけど、私の人生録は作らせませんよ。作ろうとされるなら、古本に戻って頂きますので」
「なかなか厳しいお方だ。ですが参加くださるなら、それでよしとしておきましょう」
「まあ、話せる範囲内ならお話しますよ。それより、ここにはもう用はないんですから早く戻りませんか?とりあえず新オスティアに行きましょう。ネギ君はフェイトやこの世界のトップに、魔法世界を救う計画の話をしなければならないでしょう?」
「そ、そうですね…」
私の言葉に返事をするネギ君ですが、イマイチ反応が鈍いですね。
あぁ、長年追いかけていたお父さんが目の前にいるのに、少し目を離した内にいなくなるのではないかと、気が気でないんでしょう。
「心配しなくともナギさんは逃げませんって。それに戦闘にはなりませんでしたが、一応医者に診てもらった方がいいと思いますよ」
「そうですね!」
今度は納得できたのか、早速ナギさんを抱えるネギ君。
抱えるのはいいんですが、お姫様抱っこはどうなんでしょうね?
せめて、おんぶくらいにしたらいいと思うんですが…。
「というわけで、麻帆良から来てもらったエヴァさんや学園長、詠春さん、アルビレオさんには申し訳ないんですが、私達はもう少しこちらにいることになると思います。私以外の魔法世界に来ていた皆さんは、戦いで心身ともにくたびれていると思うので、休息が必要でしょうし」
「確かにサラ君の言う通りじゃな。幸い、現実世界の明日は始業式だけじゃから問題もなかろう。できれば明後日には戻ってきてほしいんじゃが」
学園長が代表して答えてくれました。
「私自身は明後日に戻るつもりですが、皆さんがどうされるかは私にはちょっと…」
「ではサラ君、3-Aを頼んだぞ」
そう言って学園長は私に丸投げして、さっさと麻帆良に戻ってしまいました。
教育者としてどうなのよ?と思わなくもないんですが、まあいいでしょう。
詠春さんは申し訳なさそうに、アルビレオさんはニコニコしながら麻帆良に戻って行きました。
エヴァちゃんはというと、やっぱり不満気ですね。
エヴァちゃんだってナギさんを待っていたのに、自分だけ登校地獄で明日学校に行かなければならないとあれば、不満に思うのも仕方ないでしょう。
「エヴァさん、明後日にはナギさんに会えるんですから」
「ええい、うるさい!まるで私が不満を持ってるみたいではないか‼︎」
「いや、顔に出てましたよ。とにかくここは麻帆良に戻るしかないでしょう。呪いがかかってるんですし」
「全く、忌々しい呪いだ!しかも解けるヤツが目の前にいるというのに!いいか、サラ・ヒューイット!絶対、明後日までに連れて帰ってこい‼︎いいな?絶対だぞ‼︎」
未練タラタラという感じで私に命令しながら、エヴァちゃんは帰って行きました。
15年も待ち続けたんですが、申し訳ありません。
もう2日くらいは我慢してください。
私もネギ君達に合流し、新オスティアへと無事帰還を果たしました。
造物主がどうやって乗り移っているかわかりません。
ラスボスのはずがこの扱い…。