憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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少し書き溜めができたのでこの話だけ1日早くお届けです。
次は3日後の予定ですが、また溜まったら早く更新します。


第5話

ーサラ・ヒューイットー

 

私の特殊スキルをエヴァちゃんに話して1週間ほど経ちました。

あの時何故エヴァちゃんが悪い顔をしていたのかを、これ以上ないほど思い知らされてます。

どういうことかと言いますと、稽古のレベルがグンと高くなったんですよ。

地獄の入り口にいたはずが、ずいぶん深い階層に落とされたような気分です。

その地獄の鬼…、じゃなかった吸血鬼のエヴァちゃんから、放課後にまた呼び出されたんですが…。

今日は超包子(チャオパオズ)のバイトもあると言ったのに、すぐ終わるからとにかく来いとのこと。

こういう時は「鬼が出るか蛇が出るか」って言うんでしょうが、鬼はすでに出てきてるんで出るのは蛇でしょうね。

 

「すいませーん、サラ・ヒューイットでーす。エヴァさんいらっしゃいますかー?」

 

呼び鈴代わりのベルをカランコロンと鳴らすと

 

「いらっしゃいませ、サラさん。マスターがお待ちです」

 

茶々丸さんがいつも通りの無表情で出迎えてくれた。

超ちゃんが来てから茶々丸さんは生まれたから、まだ生後何ヶ月の状態なのよね。

だから当然原作と比べても表情が乏しい。

そこはネギ君に惚れるまで待つしかないんだけど。

 

「来たな、サラ・ヒューイット。貴様にいいものをくれてやろう」

 

「いいものですか?」

 

まさか、稽古のレベルを上げてやるとか言うんでしょうか?

今でもいっぱいいっぱいなのに⁈

 

「安心しろ、稽古のレベルはもう少し時間が経ってから上げてやる」

 

どのみちレベルはまだ上がるんですね…。

っていうか何も言ってないのに。

 

「貴様は顔に出やすいんだよ」

 

呆れ顔でエヴァちゃんに言われちゃいました。

ここの世界の皆さんは妙にというかすごい勘がいいんですよねぇ。

特に母性豊かでナイスバディのとても中学生には見えn…っげふん、げふん。

これ以上は身の危険を感じたのでやめましょう。

 

「いつまでそこに突っ立ってるつもりだ?早くこっちに来い」

 

エヴァちゃんに促されて椅子に座ります。

相変わらず部屋の中はファンシーな人形で溢れてますねぇ。

別荘がある地下にはファンシーじゃない人形もありましたが。

 

「貴様にはこの2つの指環をやる。1つは魔法発動体だな。いつまでも初心者用の杖を使い続けるわけにはいかんだろう。この1週間私のシゴきに耐えた褒美だ」

 

「やっぱり稽古のレベルを上げてたんですね」

 

「そんなの当たり前だ。最初は熱い風呂も長く入ってればぬるくなるだろうが。だからぬるくなる前にさらに熱くするんだよ」

 

「その例えは何か違う気もしますが…」

 

「えぇい、ごちゃごちゃ言うな!文句を言うならレベルの上げ方をさらにえげつないものにするぞ‼︎」

 

自分でえげつないって言っちゃったよ⁈

 

「いえいえ、文句なんて滅相もない!ありがたく頂戴致します‼︎それでぇ、もう1個のほうは…?」

 

「まぁ、いいだろう。もう1つは簡単に言えば拘束具だな。その効果は着けている者の大きな魔力を一般魔法使いレベルまで下げるというものだ。外せばもちろんもとの魔力に戻るぞ。これは私が昔、賞金稼ぎ対策で隠れる時に使っていたものだ。貴様も一応魔力を小さく見せる努力はしているようだが、全くなっていない。一流と呼ばれる奴ら以上にはすぐバレるぞ?」

 

「そうかもしれませんが、これでも頑張った方なんですよ。別荘の書庫を漁りまくって、どうにかこの状態まで持ってきたんですから⁈」

 

「貴様のその涙ぐましい努力は認めてやらんでもない。だがな、その努力の一方で魔力容量の拡大に勤しんでることを、私が知らないとでも思っているのか?隠そうとしている魔力を態々大きくする馬鹿がどこにいるんだ‼︎」

 

バレてるかなぁって思ってましたが、案の定バレてました。

 

「いやぁ、魔力が少ないよりは多いほうが選択の幅も広がるかなぁなんて…」

 

「まったく…。まぁ、そうなるだろうと思ったから指環を探しておいたんだがな」

 

「でも、そんな明らかに高そうな魔法装具もらっちゃっていいんですか?」

 

「発動体については問題ない。もともと私を追ってきた賞金稼ぎから奪ったもので、在庫はまだあるからな。拘束具も私にはもはや必要ないものだ。それに貴様には面白いものを見せてもらったからなその礼だと思え」

 

賞金稼ぎから奪ったって…。

いや、ずいぶん昔の話のはずだし、私は聞かなかったことにしよう。

在庫がまだあるなら、ちゃんとネギ君にも指環型魔法発動体を渡してくれるだろうし。

あれがないとネギ君カンフーができないしね。

 

「ありがたく使わせていただきます」

 

「あぁ、用事はこれで終わりだからもう行っていいぞ。茶々丸も超包子に行くのか?」

 

「はい、マスター。今日は私もシフトに入ってます」

 

「そうか、ならば行ってこい」

 

「では、行ってまいります。マスター」

 

「私もこれで失礼します、エヴァさんありがとうございました」

 

早速もらった指環を着けて、茶々丸さんと超包子へと向かいます。

もちろん左手薬指には着けてませんよ。

まだ結婚してませんからね。

左手小指に発動体を、右手中指に拘束具を着けました。

左手小指は願いを叶える、右手中指は邪気を払うという意味があるそうで、私にぴったりじゃないですか。

 

 

 

 

超鈴音(チャオリンシェン)

 

私が麻帆良に来てから半年以上経たヨ。

エヴァンジェリンに茶々丸を渡して、学園側とのパイプも作た。

お陰で魔法についてもある程度知る事が可能ネ。

計画の一端を担う戦力のT-ANK-α3も試作機ができた。

耐久テストをクリアすればささと量産するヨ。

学園の地下にいるはずの鬼神も探さねばならないネ。

ここまで計画のための準備は順調ヨ、ただ一つを除いて。

サラ・ヒューイット。

私の知る麻帆良の歴史には全くいなかた存在。

ここにいるはずがないのに今や立派なクラスメイトヨ。

その経歴を調べてみたが、どこにもおかしなところは見られなかた。

普通の魔法生徒。

イヤ、普通とはちょと違う。

普通の魔法使いなら600万ドルの賞金首に弟子入りしようなんて思わないネ。

エヴァンジェリンも普通の魔法生徒を弟子にとるわけないから絶対何かあるはずヨ。

時々サラを観ていると、私の視線に気付いてか微笑み返してくるが、私のことを見透かしてると言われてるみたいで若干腹立つネ。

茶々丸の記憶ドライブを見ても怪しいところは見つけられなかた。

それも違うナ、2つ程気になる点があた。

1つは茶々丸からサラに、私のご先祖様であるネギ坊主の確認の電話をしてたヨ。

ネギ坊主とサラは同じ学校に通てた。

茶々丸の主人エヴァンジェリンとネギ坊主の父親"サウザンドマスター"は因縁の関係ネ。

だからサラはエヴァンジェリンに、ネギ坊主の存在を仄めかしたと思われる。

サラはネギ坊主の存在を何らかの取引材料としたようだが、その内容は不明ネ。

もう1つは先週からサラとエヴァンジェリンの稽古に茶々丸が参加させてもらえなくなたヨ。

これはエヴァンジェリンの命令のようだが、こちらも理由が不明。

まさか歴史改変のためにこの地へ来たら、こんなイレギュラーが待てたとはナ。

それでも「お前は何者ネ?」なんて馬鹿正直に聞くわけにもいかないから、ズルズルと今に至てる。

今日もサラは超包子にバイトに来るヨ。

 

「どうも〜、サラ・ヒューイットでーす。茶々丸さんと一緒に来ました〜」

 

何が「サラ・ヒューイットで〜す」ヨ?

こちが何もできないからと、いけしゃあしゃあとしやがて。

絶対その正体を暴いてやるネ。

 

「よく来たネ、サラさん、茶々丸。今日も皆で頑張て、バリバリ稼ぐヨ‼︎」

 

「はい!今日も頑張りましょう‼︎よろしくお願いします、超さん、茶々丸さん、五月さん!」

 

「よろしくお願いします」

 

ー皆さんに美味しいものを食べてもらいましょうー

 

必ず化けの皮剥いでやるから、首を洗て待とくヨ‼︎

 

 

 

 

ーサラ・ヒューイットー

 

超ちゃん笑ってるけど目がヤバイよ。

私のこと完全に敵対視してるでしょ⁈

まぁ、何者かわからないイレギュラーがいたらそんな態度になるよねぇ。

私自身はフレンドリーに接しようとしてるんだけどなぁ。

それに計画についても、原作通り進めばネギ君が頓挫させちゃうし。

私としては魔法バレが悪いと言うつもりはない。

魔法を公開すれば世界のありふれた悲劇から人々を救う可能性が格段に上がるって思うよ。

でもその後の政治的、軍事的な混乱その他諸々を考えると手放しでは歓迎できないよね。

魔法を使った犯罪も急増するんじゃないかな、大手を振って魔法使っても問題なくなるんだから。

ありふれた悲劇をなくすためにさらなる混乱をもたらそうというのはおかしな話だし、それを超ちゃんはコントロールできるなんて断言してるけど、いくら立派な頭脳を持ってるからってそれで世界をコントロールしようだなんて、まるで神にでもなったかのような言葉は流石に見逃せないものがあるよ。

まぁ、私自身も原作通りに誘導するというある意味、超ちゃんと似たようなことをしようとしてるのを考えると、同族嫌悪みたいなものを少し抱いてるのかもしれない。

超ちゃんとは仲良くなりたいのは本心だけどそれはそれ、これはこれだし。

私は原作に沿うということが、いくらネギ君が強くなるためとはいえ、傷付き人間をやめることになっても、それを識ってて止めないというのを自覚してるんだから、超ちゃんについてとやかく言う資格ないよね。

この世界に来た当初は漫画の世界に来れたなんて喜んでたけど、この世界の人々だって生きている。

ネギ君もそんな生きてる人たちの中の1人なんだ。

そんな当たり前のことを今更ながら気付いて、事の重大さに愕然としたけど、私のない頭で考えた結果は、ネギ君に選択させるということだった。

ネギ君が人間のままいたいと願うなら私が"完全なる世界(コズモエンテレケイア)"の矢面に立つ。

それでどうにかなるかはわからないのが問題点かな。

ネギ君が人間をやめてでも"完全なる世界"を止めたいと願うなら私はそれを補佐しよう。

人間をやめるというのがどういうことかはわからないけど、好き好んでやめようなんて思うわけないだろうから、ネギ君が人間をやめてというよりはやめざるを得なかった場合、が正しいかな。

これはもちろんネギ君を人外にしてしまうのが問題点。

この世界のネギ君は原作ネギ君とは似て非なる存在なんだから、彼の人生に干渉するのは失礼だしね。

とりあえず、この件は後で考えよう。

幸い、事件が起こるまで時間は余裕だし、下手の考え休むに似たりって言葉もあるしね。

エヴァちゃんに稽古もつけてもらえるし…。

 

「サラさん、その指環はどうしたヨ」

 

「これですか?エヴァさんからもらったんですよ」

 

「あのエヴァンジェリンからのプレゼントとナ⁈どういう理由でもらたヨ?」

 

「エヴァさんに弟子入りしてるのは知ってますよね。それで操糸術と合気鉄扇術を教えてもらうことになったんですが、流石に杖を持ったままでは支障をきたすだろうということでくれたんですよ」

 

操糸術も合気鉄扇術も習っているのは嘘じゃないよ。

習い始めて日が浅いからまだまだ研鑽の余地有りだけど。

杖が邪魔になるというのも間違いじゃない。

操糸術は杖を持ってない手を使えばいいかもしれないけど、両手の方が技の選択の幅が広がるし、合気鉄扇術を杖でやったとして、杖を折ってしまったら話にならないからね。

だから嘘は言ってないよ、本当のことも言ってないけど。

 

「あ、超さんお客さんですよ!」

 

超ちゃんは釈然としない表情だけど、これ以上の追求は避けたいのでお客さんを理由に話を断ち切ります。

3年の麻帆良祭が終わるときにはちょっと話してもいいかなぁ。




なんか超が黒くなった気がします。
ごめん超りん。
あと喋り方がわざとらしい様な気もしなくはないんですが…。
難しいですね。

それと主人公が柄にもなくシリアスになりました。
本人にも思うところはあるのでしょう。

指環は独自設定です。
でもエヴァちゃんは賞金稼ぎに狙われまくって、それを追い返す時には追い剥ぎ的なこともやってたと思うんですよ。
あとは狙われないために自分の魔力を隠すとか。
そういうわけで複数存在する指環型魔法発動体と拘束具を登場させました。

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