憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第58話

ーサラ・ヒューイットー

 

火のアーウェルンクスを潰したので、グレートパル様号に降り立ちます。

 

「茶々丸さん、大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫です。しかし、サラさん。その姿は…」

 

「簡単な話ですよ。私も『闇の魔法(マギア・エレベア)』を会得して、既に人間をやめた身だということです」

 

そう言って上半身だけになってしまった茶々丸さんを抱きかかえて、操縦デッキに入ります。

副操縦席に茶々丸さんを座らせ、

 

「ハルナさん、上層部まで飛んでもらえますか?今は儀式の最中で迎撃兵器も機能しないはずです。機能してても私が潰しますからお願いします」

 

「まさか、サラちゃんまでそんな姿になってるとは思わなかったよ。ひょっとして『闇の魔法』が流行ってんの?」

 

「いえいえ、これは手出ししないほうがいいですよ」

 

「もちろん、そんな危ないことはやらないよ。OK、それじゃアスナ達のところに行こうか!」

 

そんな危険なモノお断りです、と言わんばかりに手を振るハルナちゃん。

まぁ、その方が賢明でしょうね。

私は再度甲板に上がり、パル様号も祭壇に向けて発進しました。

 

宮殿上層部の祭壇まで上がってくると、ネギ君とフェイトが既に殴り合いを始めていました。

ネギ君はちゃんとあちらから戻ってこれたようでよかったです。

こればかりは私にも干渉しようがなかったので、ネギ君次第だったんですが、無事生き返ることができて嬉しいような、人外へと成り上がってしまって悲しいような、複雑な気分ですね。

フェイトが相手を石化させる黒い針を無数に飛ばしてきますが、ネギ君は「雷天(ヘー・アストラペー・ヒューペル・)大壮(ウーラヌー・メガ・デュナメネー)」でフェイトの懐まで潜り込むことで回避し、さらにフェイトを殴り飛ばしました。

調がシレッとアスナちゃんを祭壇に戻そうとしてますね。

その状態で私が何もしないのは怪しまれるので、

 

「美空さん、高音先輩、佐倉さん、ファランドールさん、フェイトの従者がアスナさんを祭壇に戻そうとしているので阻止してください!私はネギ君の後詰で動けません」

 

尤もらしい理由をつけて、他の人に動いてもらいます。

動けないというのは全くの嘘ですけど、私が動いたら確実にアスナちゃんを取り戻して、麻帆良とここを繋ぐことができませんからね。

他の人がアスナちゃん奪還を頑張るんですが、調の粘り勝ちでアスナちゃんは祭壇に供えられ、さらに樹霊結界を施されてしまいました。

こっちは一先ずOKです。

あとはネギ君がフェイトを説得すれば、そこからは私の仕事ですね。

 

そのネギ君はというと「雷天(タストラパー・ヒューペル・)双壮(ウーラヌー・メガ・デュナメネー)」状態になって、まだフェイトと殴り合いを続けてます。

フェイトが「断罪の剣(エンシス・エクセクエンス)」を壊せば、ネギ君もフェイトの石の剣を破壊し、フェイトがネギ君を殴り飛ばせば、お返しとばかりにネギ君が頭突きを喰らわせ、両者ともに譲り合ってません。

ふとネギ君とフェイトが空を見上げたので、私もつられて空を見ると、懐かしの麻帆良とその象徴とも言える世界樹が浮かんでいました。

真っ逆さまですけど。

ついにあちらとこちらが繋がりましたね。

このままパル様号の甲板にいたら魔力の乱流で麻帆良に流されてしまうので、私も祭壇の側に降ります。

パル様号は茶々丸さん修理の為、麻帆良に流されてもらいましょう。

アンカーを3つ打ち込んだものの、打ち込んだ場所自体が壊れ、麻帆良へと流されていったパル様号からネギ君へと視線を向けると、ネギ君の右拳がフェイトの腹部を貫いたところでした。

まだ闇の侵食が起こるのか、右腕に纏う「闇の魔法」の紋章が黒く変色しますが、どうにか抑え込んでいます。

そして互いを認めて仲良く握手かと思いきや、双方が極大魔法を至近距離でぶつけようと構えました。

ネギ君は雷系で最大の「千の雷(キーリプル・アストラペー)」を、フェイトは土系で最大の「引き裂く大地(テッラ・フィンデーンス)」を同時に放ちます。

極大魔法のぶつかり合いにより溢れた光が収束すると、ネギ君の姿はなく、フェイトだけがボロボロで右腕を差し出したまま突っ立っていました。

 

普通はこれで終わりかと思いますが、消えてしまったかと思ったネギ君が現れます。

いえ、あれはネギ君ではなく、ナギさんですね。

この場にいるはずのないナギさんが目の前に現れ、混乱するフェイトをよそに、ナギさんがフェイトをボッコボコに殴ります。

これはネギ君の中のイメージのナギさんで、完全なる世界(コズモエンテレケイア)の逆流が起こした現象ですね。

次はラカンさんが現れました。

さすがにこの現象が何か気付いたフェイトも、ラカンさんを殴りつけます。

ラカンさんもフェイトに応戦して殴り返します。

もちろんネギ君だけの力でナギさんやラカンさんをこの場に呼ぶことはできません。

ナギさんやラカンさんはネギ君のイメージした2人であり、それを顕現させられたのはアスナちゃんの力を借りたから、らしいです。

どういう風に力を借りたのかは、わかりませんが。

しかし、これで勝負がついたのか、いつの間にか戻っていたネギ君と握っていた手を離し、改めて握手を交わします。

ネギ君はフェイトの協力を得ることに成功しました。

ネギ君の仕事は一先ずここまでですね。

ここから先は私の仕事です。

 

「敵意はありませんよ」

 

そう言いながら雷速瞬動でフェイトを挟んだネギ君の反対側5m程の位置に立ち、魔力で編んだ糸をさらに編み、1m四方の布を5枚作り私の前方に配置し、能力を発動します。

原作ならフェイトとネギ君を貫いた黒いビームのような魔法を布で吸収していきます。

2枚程貫かれましたが、減衰させ続け3枚目で吸収することができ、ネギ君とフェイトを守るという目標も達成できました。

上にいた調を助けることはできませんでしたが、あとでアスナちゃんに任せましょう。

 

「ネギ君とフェイトは上のみんなを守ってください。私はあそこにいる人物に用があるんで」

 

「サラさん、その姿は…⁈それにあれは『造物主(ライフメイカー)』⁉︎」

 

「まさか、君までその技を使っているとはね…」

 

驚いたネギ君とフェイトが呆然と呟きますが、早くこの場を離れてほしいんですよ。

 

「いいから、ボロボロの2人は早く離れてください!造物主の使徒が来ますよ‼︎」

 

「やれやれ、また貴様か…。だが、それも終わりだ」

 

フェイトの魔法でドロドロの溶岩になった地面からデュナミスや2番(セクンドゥム)、他の歴代使徒達が現れます。

 

「たかが人形如きが五月蝿いですね。

左腕解放(シニストラー・エーミッサ)千の雷(キーリプル・アストラペー)』」

 

牽制として左腕に装填していた「千の雷」を放って、一度「雷天大壮」状態に戻り、

 

左腕(シニストラー) 解放固定(エーミッサ・スタグネット)千年(アントス・パゲドゥー・)氷華(キリオーン・エトーン)

掌握(コンプレクシオー) 術式兵装(プロ・アルマティオーネ) 『雷天捲氷』」

 

私オリジナルの術式兵装です。

いえ、オリジナルは言い過ぎですね。

ネギ君の「雷天大壮」とエヴァちゃんの「氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)」を合わせたものと思ってください。

「氷の女王」だけでも完成されてる技なんですが、せっかくなので雷速瞬動も付け足しました。

もちろん「雷天大壮」なので常時雷化はできませんし、先行放電(ストリーマー)によるカウンターの問題もあるんですが、風系魔法とさらに氷系魔法で移動先をズラすなどして対策をとっています。

私の魔力を氷に変えて、周囲を一気に氷結呪圏としました。

 

「ではいきますよ?」

 

まずは様子見で「闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)」20発を放ちます。

障壁で防がれるとはわかってますが、構いません。

私はエヴァちゃん達が来るまでの繋ぎですし、本当に用があるのは造物主ですから。

さらに「氷槍弾雨(ヤクラーティオー・グランディニス)」をドカドカ撃ち込みます。

その中を2番と風系特化の使徒2人が雷化して接近しますが、私は能力発動状態なので雷化と障壁の魔力を吸収します。

 

「なんだ⁈貴様は…!」

 

完全に雷化は解けなかったものの、自分の魔力を吸収されてることに気付いた2番が、呻きながらも拳を放ち、他の2人も蹴りやパンチを打ってきます。

2番の拳を逸らしながら手首を掴み、力任せにぶん回して他の2人にその身体をぶつけて吹っ飛ばします。

しかし風系以外の使徒が呪文詠唱を始めました。

あら…2番達に気を取られて、弾幕が薄くなってしまいましたかね?

呪文を撃たせないため、撃っても減衰させるために再度「闇の吹雪」を放ちます。

ついでに魔力の糸を使徒達に巻き付け障壁を弱らせてやりましょう。

まさかこんな方法で障壁が弱くなるとは思ってなかったのか、驚きの声が聞こえます。

 

「んな⁈」

 

「何?」

 

障壁が弱まったところに「闇の吹雪」が当たり、障壁を壊されたことに驚愕しつつも辛うじて避ける使徒達。

障壁に大層な自信を持ってたせいで、私の攻撃を避けるのもギリギリになってしまったみたいです。

 

〈サラ・ヒューイット、能力を解除しろ。私もそちらに行ってやる〉

 

やっとエヴァちゃん達がこちらに来てくれるようで。

造物主は様子見なのか何もしてきてませんが、使徒を相手にしながら造物主の相手は無理ですからね。

能力を解除し、目眩まし代わりに

 

左腕解放(シニストラー・エーミッサ)千年(アントス・パゲドゥー・)氷華(キリオーン・エトーン)』」

 

をぶっ放しました。

街一つを凍らせられる冷気が敵へと襲いかかります。

すぐに私の影からエヴァちゃんが出てきました。

 

「まさかぼーやだけでなく、貴様も『闇の魔法』に手を出してたとはな」

 

「お久しぶりです。学園長やアルビレオさん、詠春さんはまだですか?」

 

「それも知ってたんだな?まあ、後で聞かせてもらうが、あいつらもすぐに来るさ」

 

「よかったです。ではそちらはお任せしますね。私はあちらの『造物主』に用があるんで」

 

その言葉にエヴァちゃんが驚きます。

エヴァちゃんの驚き顔なんて珍しいですね。

 

「貴様、あいつがどんな存在なのかわかってるのか?」

 

「詳しく知ってるわけではないですが、私ならどうにかできるかなと思ってるんで」

 

「千年氷華」の氷霧が晴れると、人間側でも屈指の実力者が私の側に立っていました。

 

エヴァちゃんを筆頭にアルビレオさん、学園長、詠春さん、高畑先生、クルト総督、そしてラカンさん。

半分はアスナちゃんの力とはいえ、もう半分は自身の気合で戻ってきたんですから、やっぱりバグキャラでした。

 

「お久しぶりです、ラカンさん」

 

「嬢ちゃん、舞踏会で助けてくれても良かったんじゃねーのか?」

 

「まさか⁈このかさんに自分の拭き残しくらいどうにかしろって、言われたんでしょう?それに戻ってこれたんですから、いいじゃないですか」

 

「それ言われちゃ仕方ねーな。よっしゃぁ!ヤロウども、とっとと終わらせようぜ‼︎ガキどもに笑われねぇように、サクッとな‼︎」

 

ラカンさんの気合の言葉で皆さんは使徒の方へと向かいました。

なので私もやっと造物主と対面です。




「雷天捲氷」はサラの説明通りの技です。
氷系魔法で移動先を変えることができるのかはわかりませんが
そういうことにしておいてください。

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