ーサラ・ヒューイットー
ネギ君達と再会してから数日経ちました。
拳闘大会の方は順調に進み、ネギ君・コタロー君ペアは無事に、ラカンさん・カゲタロウさんペアと対戦することとなります。
ラカンさんの大会参戦を知った時のネギ君達の慌てようったらなかったですね。
それも仕方ないと言えば、仕方ないんですけど。
私も手合わせしてもらった時、零距離で「
そう、理解したつもりで理解できてなかったんですよ。
まさか「
刺さった「雷の投擲」は自分で引っこ抜きますし。
目の前でそんな光景を見せつけられては、まさにバグキャラ、チートという言葉はこの人のためにあったんだと錯覚するほどでした。
あれだけのエネルギーを受けてたら、私は立ち上がるなんてできないと思います。
試合自体は原作同様引き分けに終わりましたが、ネギ君も新技をちゃんと開発できました。
あとは「
それはネギ君次第ですから、私がどうこう言ってもしょうがないんですよね。
試合が終わった後、一人前と認めてくれたラカンさんから、ネギ君は拳闘大会の賞金を分けてもらい、亜子ちゃん、大河内さん、夏美ちゃんを奴隷から無事解放することができました。
私は3人に会い辛かったので、その場は遠慮させてもらいましたが。
こちらの都合で解放を遅らせたのに、のこのこあの場に出るほど私も恥知らずではありませんよ。
グレートパル様号で再会した時はすごく喜んでくれました。
私も会えて嬉しかったんですが、早く解放しなかったことを考えると、胃がシクシクと痛んできます。
良心の呵責がすさまじいことになってます…。
現在はネギ君、本屋ちゃん、
ネギ君達は闘技場で世話になった人達に挨拶に行くらしいんですが、私の目的は別にあります。
まぁ、ぶっちゃけるとクルト総督のネチネチしたやり方がムカつくので、邪魔してやるというだけの話なんですが。
総督は人間を救うと言ってましたが、そこには
ネギ君は諦めずに最終的には全員助けるんですが、総督は諦めておきながら大上段からの物言いでネギ君を丸め込もうとしていたんですから、これは少し曲がった根性を叩き直す必要がありますよね。
どういう風に総督をぶん殴ってやろうかなんて考えてて、3人より少し後ろを歩いていると、棒立ちになった本屋ちゃんにぶつかってしまいました。
「おっとすみません、のどかさん。どうかしましたか?」
本屋ちゃんの肩越しに前を見ると、夕映ちゃんとエミリィちゃんがそこにいます。
そうでした、総督を殴ることだけを考えていたので、夕映ちゃんのことを忘れてました。
夕映ちゃん、すまんです。
「ゆえっ!心配したよ…。無事で本当に良かった…‼︎」
本屋ちゃんが嬉しさのあまり抱きつきますが、夕映ちゃんは記憶が戻ってないので混乱しています。
「あ、あの…。あなたはどなたですか?」
このままいくと公衆の面前で下着姿を晒すことになりますが、それは私も避けたいので、騒ぎになる前にちょっと話をしましょう。
「こんにちは、夕映さん、セブンシープさん」
「サラさん?」
「どうしてあなたがここにいるのですか⁈」
「夕映さんについて後日お話すると以前言ったので、その約束を果たしに来ました。ファランドールさんとモンローさんはどちらに?ちゃんと一緒に来られたのでしょう?」
「ちょっ?委員長!そいつら指名手配h…あれ?サラさん⁈」
「ヒューイットさんはなぜその人達といるのですか?」
私が残りのアリアドネー組について尋ねると、タイミングよく2人が来てくれました。
「丁度いいところに来ましたね。とにかく今は落ち着いてください。暴れるようでしたら
鷹竜を2発で伸した私を思い出したのか、首をブンブンと縦に振るアリアドネー組の4人。
「サラさん、あちらのみなさんをご存知なんですか?」
よほど親しそうに映ったのか、ネギ君から尋ねられました。
「ちょっとアリアドネーに行く用事があったので」
「サラ、あんたまた暗躍してたの?」
「まあまあ、そのおかげで無用な争いを回避できたんですから」
そう言いながら、さっさとオープンカフェのテラス席に座ります。
渋渋といった感じで、他のメンバーもテラス席に座りました。
各々適当に飲み物を注文したのを確認してから、口を開きます。
「まずは夕映さんの問題から解決しましょう。夕映さんは記憶喪失、そうですね?」
「はいです」
「「「記憶喪失⁈」」」
ネギ君達が驚きの声を上げると
「あー、ぶっちゃけ私が原因なんだけど…」
コレットちゃんが申し訳なさそうに呟きます。
「今それは関係ありません。前にも言いましたが、ここにいるのはユエ・ファランドールさんではなく、綾瀬夕映さんです。その証拠に
「ええ、確かにそうです」
エミリィさんが頷きます。
「そこで夕映さんと契約を結んだ相手が出てくるんですが…。それがこちらにいるネギ君です。彼は夕映さんのマスターカードを持っています、ねぇ?」
「はい、これがそのカードです」
ネギ君がカードを出したのを見て、
「カードを使った念話ができれば、証拠もより確かなものになるでしょう?」
「それもそうですね!」
私の言葉にネギ君が元気に答え、念話を始めました。
途端に顔が真っ赤になる夕映ちゃん。
「さて、夕映さんの正体が分かったところで、そのマスターの正体も明かしましょう。彼と夕映さんも含めて私達は旧世界は日本、麻帆良学園からやってきました。私達のリーダーが彼、サウザンドマスターの息子、ネギ・スプリングフィールド君です」
「ナギ様のむすっ」
エミリィちゃんが声を上げたところを慌ててコレットちゃんが抑えます。
「さて、セブンシープさん。セラス総長に連絡をしてください。恐らく『オスティア総督に気をつけなさい』と言われると思いますが、ちゃんとあちらにも伝えておかないといけませんし」
「それはどういう…」
「早くお願いします!」
いや、タイムアップですね。
総督が来てしまいました。
「これはこれは…アリアドネーの名門、セブンシープ家のお嬢様ではありませんか。それにそちらの少年は…?どこかで見たy「あー、はっきり要件を言ってはどうですか?記念祭中にそれだけの武装集団を連れている神鳴流の剣士殿?」…人が話してる最中に割り込むとは無粋なお嬢さんですね」
エミリィちゃんも異常を察して、セラス総長に連絡してくれてますね。
「これは失礼、総督殿。ですが先程も述べた通り記念祭中の武装はアリアドネー騎士団にしか許されてないはずですが…。それだけぞろぞろ連れて歩いてる総督の方が無粋ではないですかね?あぁ、虚弱体質なんて言い訳は聞きませんよ、元『
「「 「『紅き翼』ですって⁈」」」
そういえば、総督が「紅き翼」のメンバーだったというのは、まだ知らないんでしたかね…。
「私はネギ君とお話したかったんですが、あなたともお話する必要があるようだ。そもそもあなたは何者ですか?」
よし、総督の意識が私の方に移りつつあります。
人化の術で人の姿をとります。
「これはこれは、紹介が遅れました。私、サラ・ヒューイットと申します。ネギ君とお話しされたいみたいですが、弟弟子であるネギ君を守るのは私の仕事ですから、手出しはさせませんよ。ああ、ネギ君も手を出してはダメですよ、あちらの思う壺ですから。お母様の話をされても無視です」
人化の術を解き、ネギ君にも注意しておきます。
挑発に乗っては斬られることがわかってますから。
「斬魔剣・弐の太刀」はラカンさんに見せて貰えばいいんですよ。
総督は私が話の取っ掛かりを潰してるせいで、苦虫を噛んだような顔をしてます。
「ネギ君はお母上の話が気にならないと言うのですか⁈」
さらに私という正体不明の存在に焦ってるのか、尊敬するアリカ女王を侮辱するというのを忘れてしまってます。
「ネギ君のお母様はアリカ・アナルキア・エンテオフュシア様です。これで総督のお話することはないでしょう?それともネギ君のお母様がウェスペルタティア女王だったのだから、世界征服しましょうとでも言うんですか?それこそナンセンスですね。ネギ君は魔法世界12億人を救う存在ですから。総督如きが操れるような人物ではないんですよ」
この場でネギ君のお母さんのことを言うのも気が引けたんですが、総督から悪し様に言われるくらいなら、サラッと流したほうがいいでしょう。
ラカンさんから一人前と認められたんですから、問題もないと思いたいですね。
「どうやらあなたはいろいろご存知のようだ。それに邪魔が入ってしまった」
「そこまでよ、クルト総督!今、あなたにその子を逮捕する権利はないわ」
エミリィちゃんの連絡でセラス総長も来てくれたみたいです。
「お久しぶりです、セラス総長。その節はお世話になりました」
「サラさんもこちらに来ると言ってたわね。ならこれも予定調和なのかしら?」
「そうですね、順調に進んでいます。私はこうなることも知っていたので」
「知っていたとはどういうことですかねぇ?まるで私がこの場に来ることをわかっていたかのようだ」
怪訝そうに総督が言います。
っていうかまだいたんですか?
ああ、招待状を渡してないからいるんですね。
「それを知ったところで総督にはどうしようもないでしょう?今夜の舞踏会には行ってあげますから、招待状を置いてさっさと帰ったらどうですか?」
私に散々馬鹿にされてきたからでしょう、総督の額に井形が浮かんでいます。
「いいでしょう。あなたがいてはネギ君と話すこともできないようです。ここは招待状を渡して撤退しましょう」
そう言って懐から招待状を持ってヒラヒラと見せびらかしてきます。
まぁ、取りに来いってことなんでしょうね。
それくらいはしてあげましょう。
スタスタと総督に近付いて、招待状を受け取ろうとしたんですが
「その前に口の利き方がなってないあなたには、お仕置きを受けてもらいましょう!斬岩剣‼︎」
総督が秘書の少年から受け取った仕込刀で斬りかかりましたが、残念。
その攻撃では私の障壁は抜けませんよ。
「「「サラ(さん)!」」」
ネギ君達も慌てますが
「大丈夫です。とにかくこの場は逃げますよ!」
私が叫ぶと同時に煙幕が焚かれます。
恐らくトサカさんでしょう。
ネギ君達が離れていく気配を感じながら声をかけると、
「普通の小娘と侮りましたね?そして私にダメージを与える最大のチャンスを潰したわけです」
私の前には糸で磔状態になった総督がいました。
「私を磔にしてどうするつもりです?」
さすがに自分の技が防がれたからか、幾分冷静さを取り戻したみたいです。
「弐の太刀を使えば、或いは私にダメージを与えられたかもしれませんが…。磔にしたのはこれ以上斬りかかってほしくないからですね。招待状も貰っていきますよ」
そう言って総督の懐の中にある招待状を奪い取り、
「それから、総督の方から斬りかかってきたので、これは正当防衛ですね」
と言ってボディブローを1発お見舞いしてやります。
さすがに磔状態でサンドバッグはかわいそうだったので、インパクトと同時に糸は解除しましたが、魔力を少々込めたパンチだったので勢いよく吹き飛び、総督の後ろに控えていたMM重装兵も巻き込んで転がります。
魔力を全力で込めて、総督がトマト的なことになられたら困るので、少々にとどめておきました。
当初の目的を達成できて、ストレスも少し発散できましたし。
煙幕が晴れるとネギ君達は逃げており、ここに残るのは私とアリアドネー組、セラス総長とアリアドネー騎士団、腹部を庇うように踞る総督と心配そうに駆け寄る秘書と重装兵達、あとは野次馬ですね。
「ではセラス総長、私も失礼しますね。総督も肋が何本かいってしまったでしょうから、お大事になさってください。夕映さん達はまた後ほどお会いしましょう」
そう言って影の
目指すはネギ君が逃げる前に巻きつけた私の魔力を込めた糸です。