ーサラ・ヒューイットー
フェイトの従者の一人、調を逃がしてそのまま亜子ちゃん、大河内さん、夏美ちゃんを奴隷から解放しに行こうと思ったんですが…。
よくよく思い返してみたら、ネギ君がラカンさんと闘う時の切り札を考え付いたのは、亜子ちゃんとトサカさんの言葉があったからなんですよね。
それにも関わらず、今奴隷解放してしまうとその切り札開発の機会を奪ってしまうのではないでしょうか?
それはネギ君の戦力ダウンにも直結して、そんな状態でフェイトと戦ったところで、確実に負けてしまうかもしれません。
ネギ君が負けるというのは避けなければいけませんが、奴隷解放できるのにしないというのも…。
特に亜子ちゃん、大河内さんには麻帆良でも仲良くしてもらってましたし、夏美さんだって大切なクラスメイトです。
じゃあ、ネギ君を見捨てるのかというとそういうわけにもいかないし…。
うだうだ悩んでいるうちに、すっかり辺りは暗くなってました。
非常に申し訳ないんですが、亜子ちゃん達には拳闘大会が終わるまで我慢してもらいましょう。
もしネギ君が決勝で負けたら、私がお金を出して解放したらいいんです。
でもネギ君がフェイトに負けたら、最悪死ぬこともあるんですから、どう考えてもこちらを優先するしかありません。
少なくともここで考えても仕方ないので、ちうっち達と合流しましょう。
この姿では、また誰だ?なんて言われるので人化の術をかけ、影の
「おわっ?なんだ…ってサラかよ!普通に来れねーのか、普通に⁈マジでビックリしたじゃねーか‼︎」
「お久しぶりです、皆さん。元気にしてました?」
「「「「「サラさん(ちゃん)⁉︎」」」」」
ネギ君達は私がちうっちの影から現れたことに驚いています。
そういえば、影の転移魔法を使ってみせたのはこれが初めてでしょうか?
「よー、嬢ちゃん久しぶりだな」
「ラカンさん、ご無沙汰してます。ラカンさんがここにいらっしゃるということは、昔話をされたんですね?」
「おう、丁度話し終わったとこだ」
「ちょっと待て!なんでサラがおっさんと知り合いなんだよ?」
ちうっちがまるでおかしいだろと言わんばかりに聞いてきます。
まぁ、ラカンさんと知り合ってるのにネギ君とちうっちに会わなかったからでしょうかね?
「私はグラニクス近くのオアシスに飛ばされたんですが、丁度そこがラカンさんのアジトだったんですよ」
「それにしちゃバッジの反応がないというのはおかしくねーか?」
「はい、今もサラさんのバッジの反応は微弱なものになってます。それもこれだけ近付いてやっとわかるほどの弱さです」
「それはですね…」
と呟きながら影の袋に手を入れてピンバッジを持ちます。
もちろんバッジを包んでたアルミホイルは袋の中で剥がしてから、取り出しました。
「このように落としたらいけないと思って、絶対失くすことのない影の袋に入れてたんですよ。それが悪かったのかもしれませんね」
「あー、確かに便利バッジも落としたら意味ないしね」
一度バッジを落とした和美ちゃんが、苦笑いしながら応えてくれました。
「影を使った転移魔法とか、影の袋とやらとかいつの間に使えるようになってたんだよ?」
「転移魔法も影の袋も
取り出したバッジを服の襟に着けます。
本当は自由に動いて100万ドラクマ稼ぐのを頑張ってたんですが、それもあまり意味がないとさっきわかってしまいましたし…。
それに「
私は最終局面に用があるんですから、それまでは原作に近い形で時間を進めないといけませんので。
となると、クルト総督に招待される舞踏会までは私にできることはありませんね。
どうしようかなぁ、なんて考えていたら、ちうっちにボソリと尋ねられました。
「なぁ、サラさんよ?あんた何か隠してないか?どうもチグハグな感じがするんだが…。それにあの調って奴はどうしたんだ?」
さすがちうっち、鋭いですね。
「調についてはあちらでも大事な手下だったのか、フェイトの他の手下が来ましてね。猫族と竜族の女の子に炎を操る女の子、それに月詠さんが来まして、調さんは奪い返されてしまいました。大口叩いておきながら申し訳ないです」
まさか逃がしたなんて言えないので、他のフェイトの手下全員+αが来たことにしておきます。
面目無いとばかりに頭を掻きながら謝りました。
「その猫と竜の嬢ちゃんっていうのは俺がやりあった奴らだな」
「炎を操る女の子は私のところに来た子ね」
ラカンさんとアスナちゃんが援護してくれました。
本当はここにいる
せっちゃんは月詠の名前を聞いて顔を顰めてます。
まぁ今日戦った限りでは、月詠が本気でない状態で遊ばれたのが悔しいのでしょう。
「まぁ、確かに隠していることもありますが、時期が来たらお教えしますよ」
「それホントかよ?」
「私が千雨さんに嘘吐いたことありますか?」
私は千雨さんに嘘は吐いてませんからね!
「サラが私に嘘を吐いた記憶はないが、『企業秘密です』とか言って誤魔化したのはいくつかあるな」
あら?
確かに企業秘密と言って話さなかったことは、あった気がします。
「それは失礼しました。これからは、話せることについては包み隠さずお教えしますね」
「話せることはって、結局話せないことは今まで通り話さないって意味じゃねーかよ」
「そうなりますが、そこだけは譲れません。世の中には理由があって話せないこともあるんですよ。例えばネギ君の母親が誰かとか」
「おい、嬢ちゃん!それは言わねぇ約束だろ⁈」
ラカンさんが慌てたように声をあげますが、
「だから言ってないじゃないですか。でもなぜ言わないか、その理由くらいは言ってもいいでしょう」
と答えると、渋々といった感じで納得してもらいました。
「サラさんは、僕のお母さんが誰なのか知ってるんですか?」
「知ってますが、それはラカンさんとの約束通り言えません。その約束は『ネギ君が一人前となるまではこちらのことは話さない』というものです。まぁ、近々ネギ君が一人前か確認するためのテストのようなものがあると思うので頑張ってください」
そう言いながら、ラカンさんを見ると目を逸らされました。
やっぱり拳闘大会に出るんでしょうね。
その方がネギ君も鍛えられるので、こちらとしても助かりますが。
「サラさん、あんたどこまで知ってんだよ?」
「だよなぁ、チサメ嬢ちゃんもそう思うだろ?俺もこの嬢ちゃんが、実はアルのヤローなんじゃねぇかと疑ったんだがな。物知りなくせに勿体ぶって話さないとかそっくりじゃね?」
「前も言いましたが、私には人の人生を集めるという趣味はありませんよ。そしてどこまで知っているかですが、かなりのことを知っています。ですがそれを今教えてもネギ君のためにはなりません、集中を乱すことになりますからね。それならまずは拳闘大会が終わってから考えたほうがいいでしょう?」
「確かに、僕達は亜子さん達を解放しないといけません!」
ネギ君が決意を新たに声をあげます。
「ということです。情報は大事ですが、扱い方を間違えると毒にしかならないというのは、千雨さんならご存知でしょう?」
「そりゃそうだがよ…」
ちうっちの耳元に近付き、
「因みに千雨さんがちうとしてネットアイドルをやっているのも、まぁ今更ですが知ってましたよ。それとネギ君を守ろうとしてくれてありがとうございました」
「なんでテメェがそれを⁈…っていうか守ろうとしたというのはどういうことだ?」
「ネギ君が『闇の魔法』を会得する際、タイムリミットに焦って、ナイフを
私の言葉にちうっちの顔が引きつります。
「あの場には私と先生とおっさんしかいなかったはずなのに…。なんでサラがそのことを…。そうか!おっさんからk「ラカンさんからは聞いてませんよ」…は?」
「私は千雨さん達より先にラカンさんと接触して、あそこを離れた後、入れ違うように千雨さん達がやってきたんですから。ですよね」
ラカンさんに確認のため話を振ると
「ん?ああ、そうだな。そっちの嬢ちゃんが出ていってからぼーず達が来たんだ。それからは連絡もとってなかったな」
と答えが返ってきました。
その言葉にますます混乱するちうっちですが、まさかこの世界に似た物語があって、私がそれを知っているなんて想像もつかないでしょう。
っていうかその可能性に思い至る人がいたら、逆に私が驚いてしまいます。
「まぁ、納得できないでしょうけど、今はお話しできないので我慢してください。いずれちゃんとお話しますから」
「わかったよ、時期が来れば話してくれる。それまではこちらは詮索しない。それでいいんだな?」
「そういうことになりますね。いやぁ、申し訳ない」
もう一度頭を掻きながら謝ります。
「そういう仕草が胡散くせえんだよ。絶対誰かに胡散くさいって言われただろ…」
そんなこと…ありましたね。
「えーっと、学園長にエヴァさん、
「腹に一物あるから胡散くせーんだよ。超の奴にも言われたんなら、その腹に抱えてんのは相当な物だな」
確かにまだ言えない秘密がいろいろあります。
いっそのこと吐き出せれば楽になんですけど。
「その言葉を否定できないんですが、それでもまだ言えません」
「いずれ話してくれるって言うなら、待っていてやるよ」
「千雨さんは本当にいい人ですね」
「うっせー」
ちうっちが拗ねたようにこの場を去ってしまいました。
私は褒めたつもりなんですけどねぇ。
「それで、嬢ちゃんはこれからどうすんだ?」
「私ですか?『
「そ、そりゃーよかったな!ハハハハ」
「ええ、じゃあ頑張ってくださいね。ラカンさん」
私の言葉に反応するネギ君。
「え?ラカンさん、何かあるんですか?」
「い、いや。何もねーよ!おい、嬢ちゃん!変なことをいうn…って嬢ちゃん!どこ行く⁈おい‼︎」
「お疲れ様でしたぁ」
珍しくあたふたしてるラカンさんを残して、私もその場を離れました。