憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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書き溜めが増えたので更新します


第43話

ーサラ・ヒューイットー

 

影の転移魔法(ゲート)を使ってヘカテスに戻り、銀行へやってきました。

影の袋に入れてたウィリアムさんの書状を銀行員に渡すと、10,000ドラクマの入った袋が30個渡されました。

 

「こちらが今回、盗賊団と賞金首を捕らえた報酬30万ドラクマになります」

 

一応、重さを測ってから袋を渡してくれたので、硬貨の過不足はないと思いたいですね。

 

「ありがとうございます」

 

そう返事をしながら、それらを全部影の袋に入れました。

30万なんて大金ぶら下げて街を歩いたら大変ですから。

余計な騒動は勘弁です。

とりあえず、術式兵装もちゃんと作動したのを確認できたので問題ないでしょう。

あとは他の術式兵装もそのうち確かめないといけませんが、それはまぁ追い追いということで。

 

さて、これからどうしましょうか?

まだ魔法世界に来てから3日目なんですが、30万ドラクマ稼げたなんて幸先いいスタートが切れました。

私がやるべきことは2つです。

一つは100万ドラクマ貯めて奴隷になってしまう亜子ちゃん、大河内さん、夏美ちゃんを解放すること。

もう一つはアリアドネーで人化の変装術を調べること。

優先度の高さは100万ドラクマ稼ぐ方が上なんですが、言い方は悪いんですけど、さっさと奴隷解放を達成してしまうとネギ君の「闇の魔法(マギア・エレベア)」習得のきっかけを潰すことになりかねないんですよね。

そうなるとフェイトと戦うことすらできませんし。

早く奴隷から解放したいんですが、カゲタロウさんと市街戦をするまでは我慢してもらうしかないですね。

それなら早いうちに100万ドラクマを貯めておいて、いつでも解放できる準備をしておきましょう。

それと移動手段と武器にもなる杖も持っておきたいですし、他の魔法発動体も欲しいですね。

お金と攻撃の手数はあり過ぎて困る、なんてことはありませんから。

となるとネギ君がラカンさんに弟子入りするまで、あと3週間くらいと見積もって、それまでに賞金稼ぎとアリアドネーでの勉強をどうにかしたいんですが、最悪お金を稼ぐので精一杯な可能性もありますね。

その時は解放だけしてからアリアドネーには後で行きましょう。

白き翼(アラアルバ)」のみんなは…オスティアで会えることを信じましょう。

 

方針も決まったところで、次はどこに行くかですが…。

地図を見ると半径3,000km以内の大きな都市は4つ。

グラニクスから北北西にケフィッスス、北東にブロントポリス、南東にシレニウム、南南西にゼフィーリアという都市があるみたいです。

アリアドネーに近いのはシレニウムという都市ですが、グラニクスから近いのはゼフィーリアで2,000kmなんですよね。

ただこの2都市を廻って残り70万ドラクマを稼げるとも思えないし、アリアドネーは最後に寄るつもりなので、アリアドネーから遠い都市を先に攻略しましょう。

シレニウムは最後に行けばいいので、まずはブロントポリス、次にケフィッスス、ゼフィーリアそしてシレニウムと反時計回りに巡ることに決めました。

 

ヘカテスからブロントポリスまで、凡そ3,000kmの距離ですが、影の転移魔法で1,000km移動しては30分休憩を繰り返したので、1時間で到着しました。

世界地図に載るだけあって、ここも大きな都市ですね。

北は海が広がっており、東と西、南に街道が伸びています。

まずは詰所に行き、新しい手配書がないか確認しますが、特に目新しいものはありませんでした。

次に酒場ですが、グラニクスでの失敗を活かして、先に飲み物を注文してから賞金首や非合法組織、盗賊団の情報がないかマスターに尋ねてみました。

すると、南の街道に小さい盗賊団が出たという噂と、賞金首が1人この都市に滞在してるという噂が流れているそうです。

賞金首が大きな都市にいるなんて考え難いんですが…。

変装をしてるからと安心してやってきたんでしょうか?

それとも何かしらの仕事でやってきたのか…。

他の酒場にもいくつか行きましたが同じような噂しか聞くことができませんでした。

素の状態で聞き込みをしてたからか、変な人たちに絡まれたので、その人たちに拳で一方的に語りかけてたら日も暮れてしまいましたし。

聞き込みはこれ以上意味なさそうなので、明日から捜索ですね。

今日は宿をとって、明日に備えて早めに寝ることにしましょう。

 

翌日、街道に出るという盗賊を先に捜すことから始めました。

昨日の聞き込みによると盗賊団の人数は多くないんですが、それ故に女子供や老人といった弱い人たちを片っ端から襲うし、衛兵が駆けつけるとすぐバラバラに逃げてしまって、なかなか捕まらないそうで。

最近は南の街道を通る人たちは集団で動くようになったそうですが、それでもその隙を突くかのように未だ襲撃があるらしいです。

でもこういう盗賊なら私1人で歩いてればすぐに襲撃してくれるでしょう。

なんて考えながら街道を歩いていたら、後ろから誰かが近付いてくる気配を感じました。

そして背中に何か刃物を突きつけたのでしょう。

 

「ちょっとお嬢さん街道から外れてくんねぇかな?」

 

と言ってきました。

これは当たりでしょうか。

後ろを向こうとすると、

 

「おっと、後ろを向くな。声も上げるな。何かしようとすりゃあ、ナイフを刺す。そのまま左に移動しな」

 

言われた通り街道からそれて左手に向かうと、大きな岩が転がっています。

あの裏ならブロントポリスの街からは見えないでしょうね。

岩の裏に行くと、やっぱりというか、いかにも盗賊ですというような風貌の男たちが5人ほど待機していました。

なんていうか、身体全体が土埃で汚れているし、身に付けているものも綺麗じゃないんですよね。

持っているナイフや斧といった刃物の手入れはちゃんとしているところは、まぁ仕事だから当然なんでしょう。

 

「街を出てきたところ悪いが、持っている金目のものは全部置いていってもらおうか」

 

男たちを代表して猫の亜人が脅しをかけてきます。

 

「あ、あなた達で、と、盗賊は全員ですか?」

 

なるべく怯えた感じを装って声を出します。

ここにいる全員を捕まえても、実は他に盗賊はいましたとなれば、その盗賊を捕まえるのに手間がかかりますからね。

なるべく一網打尽で終わらせたいんです。

 

「あぁん?そうだが、それが何だってんだ?いいから、てめぇは金さえ出しときゃいいんだよ!」

 

はい!ここにいる6人が盗賊団員全てだと、言質がとれました!

ひょっとしたら嘘かもしれませんが、それは今確認のしようがないですから、詰所に突き出して聴き取りのプロに任せるとしましょう。

私はとりあえずこの人たちを捕まえるだけです。

 

「わかりました。それではみなさん、あとは詰所でお話しください」

 

盗賊たちに返事をさせる暇も与えず、「凍てつく氷柩(ゲリドゥスカプルス)」で全員捕まえました。

この魔法、相手を捕まえたまま黙らせられるので便利ですよね。

人が入った6個の氷柱を浮かべて街に戻ると、門のところに見廻りの衛兵が数人駆けつけていました。

ただ、私を見る目が厳しいんですよね。

まぁ、氷漬けにした人を運んできたら、警戒するのも仕方ないでしょう。

なので、なるべく和かに声をかけます。

 

「こんにちは、衛兵さん方。私の名前はジェーン・ドゥ、賞金稼ぎを生業にしているものです。今回、南の街道で噂になっていた盗賊を捕まえたので確認してもらえるでしょうか?」

 

「あ、ああ。ちょっと待ってくれ」

 

私の方から話しかけられると思わなかったのか、衛兵の1人が一瞬間を置いて、どこかに念話を始めました。

おそらく詰所にいる上司に確認を取っているのでしょう。

念話が終わると、

 

「悪いが詰所まで来てもらえないか?その盗賊の確認も行いたいんだが」

 

「わかりました。このまま運んだ方がいいですか?」

 

「いや、それはこちらで行おう」

 

そう言われたので浮かべたままだった氷柱をゆっくり下ろしました。

ちょうど応援の衛兵がやってきたので、その人たちに盗賊を任せ、私は念話をした衛兵に連れられて昨日も訪れた詰所にやってきました。

 

「お?昨日来た嬢ちゃんじゃねぇか。どうかしたか?」

 

そこには昨日もいた熊の衛兵がいました。

 

「隊長、この子がさっき念話でお伝えした子ですよ」

 

「ほう、君が南の街道の盗賊を捕まえてくれたジェーン・ドゥさんか」

 

「はい」

 

「俺は隊長やってるギュンター・リンツだ。あいつらは嗅覚だけは鋭いのか、こちらが囮捜査で捕まえようとした時もすぐ逃げられたんだが…。よく捕まえられたなぁ」

 

「私は後ろからナイフを突きつけられて、街道外れの大岩の裏に連れ込まれたんですが、すぐに魔法で捕まえました。まぁ、私の見た目に騙されたんでしょう」

 

「あの6人をいっぺんに捕まえたのか⁈そりゃスゴい!俺だって、嬢ちゃんがそんな凄腕の魔法使いだとは思わなかったぜ」

 

いやぁ、あれくらいはやらないと、師匠のエヴァちゃんが怖いですからね。

そういえば、私が捕まえた盗賊は6人で全員だったんでしょうか?

 

「すみません、あの盗賊団は6人だけだったんでしょうか?他のメンバーがいたりとかしないですかね?」

 

「被害届に記載されてる襲撃者の人数も、最大が6人だからなぁ。これから調査しなければならないが、おそらく6人だけだと思うぞ。ああ、それと…」

 

そう言って、ギュンター隊長がサラサラと書状を認めます。

 

「この盗賊たちは被害者が多い割に被害額とかは少なくてな。盗賊団としても賞金額は低くて20,000ドラクマだ。さあ、これを銀行に持って行きな」

 

「ありがとうございます」

 

隊長さんから書状を受け取り、影の袋に収めてから詰所を後にしました。

次は手配書に載ってる噂の賞金首を探しましょう。

噂の賞金首はヨミアエルという魔族だそうで、殺人から用心棒まで、報酬さえあればなんでも請負うそうです。

その賞金も15万ドラクマと1人なのに高額です。

こんな大物が本当にいるんでしょうか?

目撃情報はブロントポリスでも治安が悪いという、街の東側に集中しているそうなので、ちょうど昼時ですから食堂で昼食を摂ってから調査に赴きましょう。




演技でも怯えた感じがしないのは気のせいでしょうか?

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