憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第39話

ー???ー

 

気がつけば一面真っ白、上も下も右も左も前も後ろも真っ白という空間にいました。

私、何してたんだっけ?

 

「マンガ『ネギま!』を読んでたらいつの間にか『ネギま』の世界に来たんでしょ?」

 

そうそう、それでエヴァちゃんに弟子入りしたり、ネギ君の生徒になったり、修学旅行で少し暴れて、ヘルマン伯爵を封印して。

学園祭では暴れすぎと超ちゃんに怒られて、今は魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に来て「闇の魔法(マギア・エレベア)」に手を出しt…ってさっきの声はどちらさん?

 

「こっちよ、こっち」

 

声がした方を振り向くと、私の見知った顔がそこにいました。

でも何か違和感があるなぁ。

 

「それは鏡越しでしか私の顔を見たことないからでしょう?」

 

そうだ!

よく見た顔だと思ったら、私の…サラ・ヒューイットの顔じゃない‼︎

 

「貴女の顔じゃないでしょ?元々ここの世界の人じゃなかったんだから」

 

それは確かに。

じゃあ貴女は誰かしら?

 

「私こそが貴女に憑依されてしまったサラ・ヒューイットよ。やっと貴女とお話できるわね」

 

「そうだったんだぁ。ちなみにここはどこなの?」

 

「ここは…そうね。私と貴女の心の中、精神世界といったところでしょうか。もっともここまで広くて大きいのは貴女に因るものですけどね」

 

私が原因で精神世界が大きくなった?

 

「貴女は元々、この世界よりも上位の世界に住んでいたのよ。『ネギま!』という物語を描いた人はあの世界を思いつきで描いたのか、この世界のことを無意識に受信したから物語を描いたのかはわからないけど、貴女はその人と同じ世界から…落ちてきたのよ」

 

落ちてきたって、なんで?

 

「落ちてきた理由はわからないわ。あちらの貴女に何かあって落ちてきたのか、貴女自身はコピーであちらでは本体が普通に生活しているのか…。元の貴女がどうなっているかなんて下位世界の私にはわからないもの。ひょっとしたらここまでのこと事態、泡沫(うたかた)の夢なのかもしれないわね」

 

「夢だなんてそんな⁈」

 

「あくまで仮説の一つよ。それに私自身こうやって考えて話もしてるんだから、夢だなんて言うつもりはないわよ」

 

そうよね、例え元の世界で「ネギま!」という物語があったとしても、この世界でネギ君や3-Aのみんなはちゃんと存在しているんだから。

 

「あら?私はそこに入らないのかしら?」

 

「もちろん貴女も生きてるわよ…って、なんでさっきから私の考えてることがわかるの?」

 

「私は貴女という上位の存在に憑依されてから、貴女の一部になったようなものよ。貴女の魂が大きすぎて私はそうせざるを得なかったんだから」

 

「それはごm「謝ることはないわよ」…え?」

 

「私は貴女の中で生きてるんだし、貴女が暴れる姿は爽快で楽しかったもの。しかもこれからが本番なんでしょ?」

 

「それは…、そのつもりだけど…」

 

「貴女も知ってると思うけど、私は目標もなく漂うかのように生きてきた。でも貴女のおかげでこうして、危険だけど生きてるという実感を持った生活を送っているわ」

 

「私も元の世界では同じような生き方をしてたよ。なんとなくで生きてきた。それがこっちに来て、いろんなことに巻き込まれたり、頭突っ込んだりして…。不謹慎かもしれないけど楽しかったんだよね」

 

「だから謝ることはないの。貴女は貴女の生きたいようにしたらいい。私は貴女についていくわ」

 

「ありがとう。そう言ってもらえてよかった。でも『闇の魔法』に手を出したのは…」

 

「まぁ、仕方ないわよ。それに手を出してた方がアーウェルンクス達に対抗しやすいんでしょ?まぁそれだけじゃないんだろうけど。でも、あの『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』の固有スキルを会得するなんてねぇ」

 

「知ってたの?」

 

「まさか!『闇の福音』自体、貴女の所でいうナマハゲみたいな存在よ。麻帆良に住んでたなんて知らなかったし、固有スキルだって知る人は少ないわよ」

 

「そう言えば、美空ちゃんも学祭後にそんなこと言ってたっけ」

 

「学祭中にエヴァさんが本物の『闇の福音』って知った時の、美空ちゃんの驚き様は見ていて面白かったわね」

 

美空ちゃんは私の師匠がエヴァちゃんだということを知って、かなりビビってたっけ。

 

「そう言えば、なんで私は貴女と話ができてるの?」

 

「詳しくは私にもわからないけど、『闇の魔法』を身体に取り込んだのが引き鉄でしょうね。今は『闇の魔法』に耐えられる身体に変化?進化?しているところよ。精神の方は、闇と言えど貴女の力には敵わなかったみたい。だから私も消えずに済んだわけ」

 

「んー、わかったようなわからないような…」

 

「何も心配はいらないってことよ。それよりももうすぐ身体の造り替えが終わるわよ」

 

「また貴女と話すことはできるの?」

 

「それもわからないわね。今回のことは偶発的に起こったことだから。でも私は貴女の中にいるから、貴女がここに来ることがあれば、また話すこともできるはずよ」

 

「サラがちゃんと生きてるってわかってよかった…」

 

「ここに来た時、私の心配もしてくれたものね。でももう心配ないわ。じゃあ、また会えたら会いましょう」

 

「またね」

 

 

 

 

ーサラ・ヒューイットー

 

目を開けると、ガラスが割れるような音が周りに響いて、暗かった辺りが急に明るくなりました。

 

「ようやく戻ってきたか」

 

その声がする方を向こうとしたんですが、なんか節々が痛いんですよね。

 

「あぁ、無理はするなよ。貴様は10日もの間、そうやって片膝をついた状態で固まっていたんだ。急に動くのは無理だろう」

 

10日間⁉︎

でも、魔法球の中で10日だから、現実では10時間ですね。

やっぱり魔法球に入っていてよかったです。

 

「そのまま暴れたなら抑えつけてたんだが、動かなくなったからな。変に刺激する必要もないと思って、放置してたんだが…」

 

「ぃへ…、だぃじょ…」

 

喉もなんだか掠れて、上手く喋れません。

 

「声も出ないだろう。水を持ってきてやるから、少し横になってろ」

 

エヴァちゃんにチョンと突かれただけでドサッと倒れてしまいました。

これは快復するまでは、暫く動けませんね。

ですが、まだ実時間軸では魔法世界に来たばかりなので問題はありません。

それよりも今後について考えないといけませんね。

なんてことを考えている間に、エヴァちゃんがコップに汲んだ水を持ってきてくれました。

 

「ほら、持ってきてやったぞ。頭を上げてやるから動くなよ」

 

動くなと言われても動けませんよ。

それと後頭部に何か引っかかってるような感触があります。

あと仰向けになりたいのに、腰というかお尻辺りにもつっかかるものがあるのか、それもままなりません。

エヴァちゃんがコップを傾け、水を流し込んでくれました。

私の意識ではそんなに時間は経ってないんですが、身体の方は違うみたいで、10日ぶりの水がとても美味しいです。

 

「とりあえず魔法球から出るぞ、私では介抱できんからな。貴様の右手側に巻物(スクロール)が置いてあるからそれを持て」

 

右手を動かすと紙の感触があったので、これがおそらく巻物なんでしょう。

それを掴みました。

 

「よし、巻物を掴んだな。私がそれに触れば中に戻されてしまうから触れられん。だから落とすなよ。それと出口までしか運ぶこともできんから、貴様が私も一緒に外へ出せ。外に出ればあの筋肉がなんとかしてくれんだろう。わかったな?わかったら1回瞬きをしろ」

 

言われた通り1度瞬きをします。

するとエヴァちゃんは、私の胸ぐらを掴んで引き摺るように、というか引き摺ってますね。

 

「ほれ、出口まで来たから魔法陣を発動させろ」

 

エヴァちゃんに言われた通り魔法陣を発動させ魔法球の外、ラカンさんの物置に戻ってきました。

胸倉を掴んで私を引き摺りながらラカンさんを探すエヴァちゃん。

すぐに見つけることができたのでしょう

 

「おい、この小娘に消化のいいものを食わしてやれ。10日間飲まず食わずだったからな」

 

「お、嬢ちゃんは『闇の魔法』を乗り越えたのk…って、おいおい⁈ホントにこいつが嬢ちゃんか?」

 

え?ラカンさんに視認してもらえないくらい容姿が変わったの?

鏡がないから自分が今どんな姿かわかんないけど、ちょっと確認するのが怖いんですけど」

 

「よく見ろ、顔の造形は変わってないだろうが」

 

「んー、あー、確かに。まぁ、気にするこたぁねぇよ。後で自分で確認しな。今から飯作ってきてやるからよ、悪いが嬢ちゃんをゲストハウスへ連れてってやってくれ。あっちにある建物だ」

 

「あの建物だな、わかった。よし、行くぞ」

 

そう言って相変わらず胸倉を掴むエヴァちゃんと引き摺られる私。

でもずっと引き摺られたからか固まってた筋肉が、程よく解れたような気がします。

片膝ついて曲げて固まってたんですから、引き摺られたら自然と伸びますよね。

ゲストハウスのベッドの上に放り投げられ、お粥みたいだけど栄養満点という流動食をラカンさんに流し込まれ、そのまま眠りにつきました。

 

 

翌朝、飢餓状態からすっかり回復し固まってた身体も解れたので、昨日のラカンさんの視認してもらえなかった私の姿を確認しに行ったんですが…

 

「何よこれー!」

 

「まったく、朝も早くから大声を上げるな…。近所迷惑だろうが」

 

「あ、すみません。エヴァさん」

 

「よぉ、嬢ちゃん。目ぇ覚ましたか。イカす格好してんじゃねぇか」

 

はっはっはと他人事のように笑うラカンさん。

いや、確かにラカンさんからすれば他人事ですね。

頭と腰に違和感を感じたのは角と尻尾が生えてたからでした。

角は後頭部から側頭部を経て前に向かって生え、尻尾は長さ2mはありそうな感じです。

手の指は5本ですがそれぞれの爪が鋭いものになっていて、足は指3本になってそれらと踵にも鋭い爪が生えていました。

手足の甲には鱗があって完全にドラゴンですよ。

肌の色も白人系のものから褐色系のものになってます。

それら以外は原形を保てたみたいです。

 

「その姿こそ貴様が人間の上位の生き物に進化した証だな。闇の眷族になったんだからもっと禍々しい姿になるかと思ったが、可愛いものじゃないか」

 

「可愛いですかね?」

 

可愛いかと聞かれたら微妙な気がするんですが…。

 

「どうせなら胸も進化したらよかったのにな!」

 

ワッハッハと笑うラカンさん。

さすが変態オヤジ、セクハラだし腹が立ちますよ。

 

「あの筋肉馬鹿は無視だ。『闇き夜の型(アクトゥス・ノクティス・エレベアエ)』をとってみろ。今の貴様なら少し意識すればできるはずだ」

 

そうエヴァちゃんに言われたので意識を集中させると、身体を闇が覆ったかと思えば、それが鎧となって私を包んでいました。

頭以外の全身を包んでいるのに重さはまったく感じません。

 

「それは闇の魔力を身に纏うことでパワーを底上げするものだが、見た限りでは防御力も上がってそうだな」

 

鎧を纏ってるようなものですから、防御力も上がるでしょうね。

鎧の随所に「闇の魔法」を会得した時、腕に現れた模様が描かれています。

こうして見るとちょっとかっこいいかもしれません。

 

「どうだ?新しい自分の姿は?」

 

「闇き夜の型」を解除して

 

「そうですね、まぁ見た目竜人になったようなものか、と思えばなんともないですね。そもそも、見た目が人間から遠くかけ離れる可能性もあったことを考えれば、これだけで済んだのはマシだったと思うべきなんでしょう」

 

「まぁ『闇の魔法』に手を出したんだ。それくらいで済んだことに感謝するんだな。それで貴様はこれからどうするんだ?」

 

「私は『闇の魔法』を慣らしがてら、ちょっと世界を回る予定です。一つ聞きたいんですが、もう1人『闇の魔法』を会得したいという人が来た時、エヴァさん教えることできますか?」

 

「その人間が巻物を開き直せば、その者の記憶から構成された私が試練を課すことになるだろうな。何だ?貴様以外に『闇の魔法』を会得したいなんて馬鹿がいるのか?」

 

「そうですね、しばらくすれば現れます。でもそうなると、私の面倒を見てくれたエヴァさんとはお別れになるんですね」

 

「そういうことになるな」

 

「そうですか…。今までありがとうございました」

 

「なに、気にすることはない。これも私が本体に課せられた仕事だったんだ。だが願わくば、本体をがっかりさせるようなことはしてくれるなよ」

 

「それは任せてください。弟子として師匠を驚かせることをしてみせますよ」

 

「まぁ頑張るんだな」

 

そう言ってエヴァさんは巻物の中に戻ってしまいました。

 

「それで、嬢ちゃんはすぐに出て行くのか?」

 

「はい。『闇の魔法』の習熟度を上げるためにも世界各地の非合法組織を潰してお金を稼ぎつつ、アリアドネーで人化の変装術も研究してこようかと思います」

 

アリアドネーなら人化の変装術について記された書物があるでしょう。

魔法学術都市を名乗っているんですから。

私もこの姿のまま麻帆良に戻るわけにはいきませんし。

お金の換金はいくら容姿が変わっても、どこから足が付くかわかりませんからね。

非合法組織、具体的には武器を横流しする組織や政府に認可されてない奴隷売買組織とかを潰しがてらお金を稼ぎましょう。

私は懐が暖まりながら、「闇の魔法」にさらに慣れることができ、民衆も喜んで一石三鳥です。

 

「そうか、せっかく強い人間?がいるんだから勝負してぇって思ったんだがなぁ」

 

「『闇の魔法』ならネギ君も会得しますから、オスティアで開かれるナギ・スプリングフィールド杯で闘えばいいじゃないですか。ネギ君が一人前であるか判断しないといけないんでしょう?」

 

「うっ…。それはそうだけどよぉ」

 

「ネギ君が一人前となれなかったら私が出張りますよ。一応ネギ君の姉弟子ですから」

 

「そう言われたら強く言えねぇな」

 

「ではオスティアで会いましょう。短い間でしたがお世話になりました」

 

「おう、それじゃあな」

 

ラカンさんにお辞儀をしながら影の転移魔法(ゲート)を展開しズブズブと沈んでいきました。


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