憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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これ以降はいつも通りに戻ります。
次は400件突破できるよう頑張りますので
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第37話

ーサラ・ヒューイットー

 

MM(メガロメセンブリア)からラカンさんがいると思われるグラニクス近郊まで直線距離で約10,000kmあります。

北海道から鹿児島までの直線距離が約2,000kmなので日本列島の5倍と言えば、目的地までの遠さをわかってもらえるでしょうか。

こんなに長距離を影の転移魔法(ゲート)で移動するのは初めてなので、最初は100km移動したら休憩をいれて、次は200km移動して休憩というように移動距離を伸ばしつつ休憩を挟んで、動いていきました。

消費した魔力を休憩中に回復しながら移動したので6時間程かかりましたがグラニクスへと到着しました。

 

街頭テレビにはゲートポートのテロ事件が速報として流れてます。

MM以外のゲートポートでも破壊工作が行われたみたいで、各地の状況がLIVEで中継されてます。

流石に「白き翼(アラアルバ)」の指名手配映像は流されてません。

おそらくフェイトが手を回した嫌がらせなんだろうと思うんですが、私もフェイトをぶん殴ってしまったので懸賞金付きの指名手配犯になるでしょうね。

あぁー、一時の感情に任せたせいで変装薬という余計な出費が…。

いや、ネギ君の仲間と見做(みな)された時点で懸賞金がかかるのは避けられない事態なんですから、殴ろうと殴るまいと結果は一緒だったでしょう。

懸賞金の額が違うだけで。

なら変装薬はどのみち購入しないといけませんね。

 

それとまだネギ君と茶々丸さんには見つかりたくないので、ピンバッジはグラニクスまでの移動中にアルミホイルで包んで影の袋に入れました。

ネギ君にはオスティアに向かう方向で集中してほしいですから、原作に沿うよう頑張ってもらうためにも、不必要な接触は避けなければなりません。

これ以上のピンバッジの位置測定を遮断する方法は思いつかなかったので、見つかったらその時です。

自由交易都市というだけあって、グラニクスは活気に溢れてますね。

治安は日本に比べたら圧倒的に悪いですが…。

あっちこっちで喧嘩が起こってたり、それを囲んで賭けが行われたり。

スリもいて、私も狙われたんですが影の袋に貴重品類は入っているので、取れるわけもなく。

逆に捕まえて裏通りに連れ込んで、有り金全部奪ってやりました。

本当は警察に当たる組織に突き出したほうがいいんでしょうけど、私もそのうち懸賞首ですから。

ここで警官に見られるわけにもいかないので、乱暴な方法をとりました。

このスリ、結構稼いでたみたいで1000ドラクマ近く手に入りました。

そのまま近くにある魔法具店に入り獣人化の変装薬と解除薬を買います。

それぞれ30ドラクマだったので5個ずつ購入し、ついでに杖も見て回りました。

初心者用の星や羽のような飾りがついた玩具みたいな杖から、見た目は菜箸みたいに細く長いけどちゃんとした強度を持っていると思われる杖、木の枝や幹から削り出したかのように確りとした作りが見て取れる杖と様々です。

値段もピンキリで、初心者用は100ドラクマからあり、大型の杖になると最低でも5,000ドラクマからとなってました。

これはまだ買えませんね。

もうすぐ奴隷になってしまう亜子ちゃん、大河内さん、夏美ちゃんを解放するためには100万ドラクマが必要なので無駄遣いもできませんし。

その辺のお金の稼ぎ方も考えないといけませんね。

とりあえずグラニクスでの用事は済んだので、ラカンさんのところに行きましょう。

 

グラニクスは東に河が流れ、北は海に面した街で南と西は岩や土がむき出しの大地が広がっています。

街の外れまで移動し、浮遊術で空に浮かび付近のオアシスを探すと、3つほど植物の緑に囲まれた土地が見えました。

さらに遺跡が見られるオアシスはグラニクスから東の1ヶ所しかありません。

ラカンさんの住処は遺跡があるオアシスだったので、ここがそうなんでしょう。

あたりはつけたので影の転移魔法でさっさと移動します。

転移魔法の転移先は生い茂る樹が作る影でした。

見上げれば何の遺跡かはわかりませんが、高い塔が聳え立っています。

 

「おいおい、変な気配がすると思って来てみりゃあ、カワイ子ちゃんじゃねーか。なんでこんなとこにいんだ?」

 

振り返れば褐色の肌にムキムキの筋肉男、「千の刃の男」、「生けるバグキャラ」、「不死身バカ」等々散々な渾名を持つジャック・ラカンその人が立っていました。

流石ですね、自然体なのに隙がありません。

まぁ、襲撃に来たわけではないんですが。

 

「いやぁ、捜す手間が省けました。こんにちは、『紅き翼(アラルブラ)』のジャック・ラカンさん。私はサラ・ヒューイットという者です」

 

「俺が誰かを承知の上でここまで来たみたいだな。何の用だ、嬢ちゃん?」

 

「ここにエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさんが編み出した『闇の魔法(マギア・エレベア)』の巻物(スクロール)がありますよね?それを貸してください」

 

ラカンさんの目が一瞬だけスーッと細くなりました。

ちょっと怪しまれたでしょうか?

 

「どうして俺がその巻物を持ってると思ったんだ?」

 

「エヴァさんと賭けをして巻物をぶん捕ったんですよね?(こす)いイカサマをされたんだと怒ってましたよ」

 

まぁ、「闇の魔法」の話をエヴァちゃんとしたことはありませんが、原作ではそう言ってましたから。

実際はどういう賭けをしたのか、本当にイカサマがあったのかも知らないんですけどね。

 

「ん?どうしてその話を知ってるんだ?それに『エヴァさん』っていうのは…」

 

「エヴァさんは私の魔法の師匠ですよ。巻物の話もエヴァさんが酒の席で愚痴ってたのを聞いたんです。それでここに巻物はあるんですよね?」

 

「教えて欲しければ100万ドラクマだな。まぁ、仮に巻物がここにあったとしてだ、それがどういうものかわかって言ってるのか?」

 

「わかってますよ。でも仕方ないんです、MMのゲートポートでフェイト・アーウェルンクスにちょっかいかけられたんですから。ご存知ですよね、『アーウェルンクス』?」

 

私が言った名前にビクッと反応するラカンさん。

 

「嬢ちゃんはどこまで知ってるんだ?」

 

「20年前暴れた『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の残党が再び暗躍を始めたこと、今回ラカンさんが出迎えをすっぽかしたネギ君のお母さんが誰かとかも知ってますね。もちろん、それが誰かというのを本人には伝えてないので安心してください。ネギ君が一人前と認められたら教えるという約束になってるんですよね?」

 

「随分細かいところまで知ってるんだな。じゃあ、そんな情報通の嬢ちゃんから見て、俺は嬢ちゃんに巻物を貸すと思うか?」

 

「難しい質問ですね。ラカンさんは誤魔化したいことなんかは、情報料100万ドラクマとか高額の料金をふっかけて有耶無耶にする剽軽(ひょうきん)な性格。かと思えば、膨大な経験に裏打ちされた堅実さも併せ持つという人。私の言ったことを嘘と言える材料がないけど、私を信頼する材料もないからそういう質問をされたと思われるので、条件付きで貸してくれる。ということではないでしょうか?」

 

「嬢ちゃんは俺の追っかけか何かか?」

 

「いえいえ、そういう風に評価した人を知ってるだけですよ」

 

ネギ君がラカンさんを「究極の努力家」って言ってましたからね。

 

「まぁ、いいや。嬢ちゃんの解析通り条件付きで貸してやるよ。何、簡単なことさ。嬢ちゃんの力を俺に見せてくれたらいいだけだ。嬢ちゃんはエヴァの弟子だと言ったが、それを判断するには闘ってみるのが一番わかりやすいからな。別にとって食うわけじゃねえ、稽古をつけるようなもんさ」

 

予想はしてましたが、やっぱりそうきましたか…。

まぁ、金銭を要求されるよりはマシだったというべきでしょうか。

お金なんて渡せないのに巻物だけくれなんて心証が悪くなりますし。

それより稽古もつけてくれるとおっしゃるんですから、私の今の実力を見てもらったほうがいいでしょう。

 

「わかりました。私の実力ではラカンさんに及ばないでしょうが、胸を借りるつもりで精一杯やらせていただきます」

 

「おう、かかってきな!」

 

影の袋から鉄扇を取り出し、

 

魔法の射手(サギタ・マギカ) 氷の101矢(セリエス・グラキアーリス)

 

「ほう、鉄扇って奴か。ならエヴァも使ってたアイキドーが得意なんだな。ならこっちから行ってやるぜ!」

 

氷の矢の追撃も無視して瞬動で近付いてきたラカンさんが、私の腰と同じくらい太い腕を振り上げてストレートパンチを放ちます。

気で強化してないパンチですがスピードも重さもある拳です。

それを鉄扇で逸らし、すぐ動けないように魔力の糸で固定し、

 

「ん?これは糸か?」

 

「リインカーネイション

来たれ氷精(ウェニアント・スピリートゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)

闇を従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレッド・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス)

闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)

 

「ヤッベ…、気合防御!」

 

零距離から「闇の吹雪」を撃ち込みましたが、大丈夫でしょう。

残念ながらこれくらいでは倒せるとは思いませんし。

そもそも、これは稽古ですからね。

 

「おいおい、嬢ちゃん。嬢ちゃんは俺を殺す気か?」

 

やっぱり無傷のラカンさんが土煙から出てきました。

 

「何言ってるんですか?零距離で『闇の吹雪』を食らってもピンシャンしてる人が、そう簡単に死ぬわけないでしょう。動けなくしたところで、気合防御とかいう無茶苦茶な技で防いだのを知ってるんですよ」

 

「なんだ、それも知ってるのか。嬢ちゃんはなんかアルみたいだな」

 

「アルってアルビレオさんですか?勘弁してくださいよ、人の人生を集めるなんて趣味は持ってませんよ」

 

「そんだけ色々知ってるところがあいつそっくりなんだが…。まぁ、いいや。嬢ちゃんの技を見てるとエヴァに鍛えられたのがわかったよ。条件はクリアだ。エヴァの巻物も貸してやるよ。っていうか貸すだけでいいのか?」

 

「はい、これはいずれネギ君に必要なものとなりますから。私が『闇の魔法』を体得できればお返しします」

 

「何でそんなに言い切れるんだ?」

 

「ネギ君もフェイトに対抗できるだけの奥の手を必要としてるからですよ。おそらくグラニクスで拳闘士になるはずですから接触してみてください」

 

「嬢ちゃんはネギに会わねえのか?」

 

「私は『闇の魔法』を体得できればすぐにここを離れます。ネギ君とはしばらく接触しません。ラカンさんも私のことは他言無用でお願いしますね」

 

「まぁ、それくらいはいいけどよ。ちょっと待ってな。巻物を持ってきてやるよ」

 

そう言ってラカンさんは多分、家か倉庫に行ってしまいました。

暫くして戻ってきたラカンさんの手には巻物が握られています。

あれが「闇の魔法」の巻物なんでしょう。

 

「ほれ、これが『闇の魔法』の巻物だ。嬢ちゃんのことだ、リスクなんかも理解して手を出すつもりなんだろう?なら何も言わねぇよ」

 

「すみません、ラカンさん。この巻物って私が使っても、ネギ君も使えますよね?」

 

「それはわかんねーな。その巻物に聞くしかねーんじゃないか?」

 

「それもそうですね。それとすみませんが私の身体をよろしくお願いします。エッチなことしないでくださいよ?」

 

「残念ながら俺の趣味はボンキュッボンだからなぁ。嬢ちゃんに手を出すようなことは完全にありえない」

 

ラカンさんも私をぺったんこと言いますか。

 

「まぁ、いいです。では行ってきます」

 

「おう、頑張れよ」

 

ラカンさんの言葉を受け、巻物を開きます。

すると巻物からエヴァちゃんのコピーが現れて、私の頭を掴んだと思ったら、私の意識はそこで途絶えました。


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