ーサラ・ヒューイットー
麻帆良を出発し、ネギ君の故郷へとやって来ました。
イギリスに着いた私達はすぐに委員長達にも捕まってしまったので、大所帯です。
クラスのほとんどがこっちに来ているので、ここにいない人を数えたほうが早いくらいですね。
案内人として金髪釣り目美人のドネット・マクギネスさんが迎えに来てくれて、ネギ君は半年振り、私は2年振りにメルディアナ魔法学校に戻ってきました。
『2年振りじゃな、サラ君。修業は順調かね?』
ネギ君とネギ君の従姉妹のネカネさんが話しているのを眺めていると、背後から声をかけられました。
振り返ると長い白髪と白髭を蓄えた「おじいちゃん」ことメルディアナ学校長が笑みを浮かべてこちらに歩いてきました。
『お久しぶりです、学校長。学校長が麻帆良行きを認めてくださったおかげで素晴らしい師匠や仲間に巡り会うことができました』
『麻帆良行きを希望したのはサラ君じゃったろう。その師匠や仲間と出会うことができたのも君の頑張った成果じゃよ。随分落ち着きも出てきたみたいで結構。その調子で頑張りなさい』
『ありがとうございます』
私と話した次はネギ君達に用があるみたいです。
ヘルマン伯爵により石化された村人たちの様子を見に行くのでしょう。
ネギ君達が地下へ向かう通路を潜っていった後、アーニャちゃん、アスナちゃん、このちゃん、せっちゃん、本屋ちゃん、夕映ちゃんにちうっちも通路に入っていったので、私もコソッとついて行きます。
階段を降りきった先の部屋には、杖を構えて村を守るために戦ったであろう村人たちの石像が並べられてました。
ネギ君達が話しているのを尻目に部屋の隅に置かれた石像に近付き、能力を発動してみましたが…、ダメですね。
完全石化と言うだけあって、石になってしまった村人を戻すことはできませんでした。
ひょっとしたらと思ったんですが、仕方ありません。
村人たちはこのちゃんに任せましょう。
能力を解除してネギ君達と一緒に宿へと戻りました。
明ける早朝、「
夕映ちゃんはこれから向かう場所がどのような場所なのか、その概念を説明していますが、長々とした話なので誰も聞いてませんよ。
ネギ君は少し険しい顔をして周りをキョロキョロ見ています。
フェイトの気配を僅かながら感じたのでしょう。
それに麻帆良のラッキー仮面の異名を持つ桜子大明神の導きで、運動部4人組と夏美ちゃんもゲートの範囲内に入りました。
チアガール3人組はゲートの範囲外からこちらを覗くだけで済んでますね。
本当は「白き翼」以外の一般人は巻き込みたくないんですが、物語が進めば貴重な戦力になるので見て見ぬ振りです。
今後のことを思うと、魔法世界に何も知らない人を放り出すことに胃がキリキリしてくるんですが、うまくいくことを願って私は私のするべきことをするしかありません。
修学旅行以来のハラハラ感です…。
そして、鐘の音が響くと共に
学祭の時と同じように地面が輝き、上空に魔法陣が描かれたかと思うと、一際輝きを増した地面から光の柱が魔法陣へと放たれました。
眩しさがなくなったので目を開ければ、周囲はストーンヘンジだけの野原から一転、周りを壁に囲まれた建物の中に私達は立っていました。
私はネギ君、せっちゃんと一緒に杖や指環が入った箱を受け取りに行きます。
この後、フェイトと対峙するので早く指環が必要ですから。
「ネ、ネギ君!大変よっ‼︎ゲートに密航者が…。あなたの生徒よ‼︎」
ドネットさんの報告を聞いて走った先には運動部4人組が不安気な表情を浮かべてました。
「どうして?いえ、どうやってここに来たんですか⁈」
ネギ君も4人組がここにいることに驚いています。
まぁ、ゲートには正式な手順を踏んで歩かなければ辿り着けないはずなのに、それをすっ飛ばして4人がいるんですから、驚くのも当然でしょうね。
ドネットさん曰く迷い込んでくる確率は宝くじの一等を当てる位の難しさだとか。
桜子ちゃんの運の良さは神懸かり的なものですね。
ネギ君がまき絵ちゃんに事情を説明しようとした時、何かに勘付いたかのように周りを探し始めました。
さらに隠し持っていた小さい杖を出して周りにテキパキ指示を出していきます。
「刹那さん、探知の術をお願いします。
私もすぐ動けるように準備を始めましょう。
「刹那さん、その箱を貸してください」
「サラさんもどうされたんですか?」
「いいから早く!」
そう言った瞬間ネギ君の右肩に
「ネギーッ!」
「ネギ先生!」
やはり来ましたか、フェイト。
せっちゃんが指示を飛ばして、古ちゃんがこのちゃんを連れてきました。
私はせっちゃんがショックで落とした箱を拾って能力を発動させ、封印に使われた魔力を吸収、箱を開封します。
「みなさん、箱を開けたので早くカードと武器を!」
そこに雷撃が起こり、ゲートの警備員が行動不能にさせられます。
「久しぶりだね、神鳴流剣士。それに犬上小太郎、ネギ・スプリングフィールドとその仲間達。幾分力をつけたようだけれど、僕の一撃でこの有り様だ。中途半端な力ほど無様なモノはないね。そう思わないか?ネギ君」
「不意打ち仕掛けるしかできなかった小物がよく言いますね」
フェイトの物言いにカチンときてつい口を出してしまいました。
「ん?確か京都で見たけど、君なんかに用はn…うぐっ!」
フェイトが喋るのを遮って、瞬動で接近し魔力を込めた拳を腹に叩き込んでやります。
曼陀羅のような障壁も魔力を吸収されては形無しですから、簡単にパンチを当てることができました。
「テルティウム!」
「フェイトはん!」
フェイトを吹っ飛ばした私を危険と見たデュナミスと月詠が私に迫りますが…
「魔法の射手 氷の101矢」
氷の矢を放ってこちらに近付くのを防ぎます。
「このかさん今のうちにネギ君を!」
「うん!」
このちゃんがネギ君の治癒に取り掛かるのを横目に見ながらフェイトを見ます。
障壁を抜けられると思ってなかったフェイトは受身も取れず、壁まで吹き飛んでいましたがこちらに戻ってきます。
「どういうことかな?僕の障壁を抜けて拳を当てるなんて」
「それを聞かれて馬鹿正直に答えるわけがないでしょう?それに用があるのは私でもネギ君でもなくここ、ゲートなんですからさっさと引き上げたらどうですか?」
「確かに君の言う通りだ。目的も果たしたことだしここは引かせてもらうとするけど、…一矢報いさせてもらおう。
ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト
フェイトが呪文を唱えると六角形の石柱が降ってきてゲートの足場を壊していきます。
さらに「白き翼」を
ネギ君たちの足下で転移魔法陣が輝きます。
散けることは非常に不安なんですが、原作通りになることを祈るしかありません。
フェイト達も転移でアジトへと戻っていきました。
私は能力を発動させ、足下の魔法陣を消去します。
転移魔法が発動しなかったことを向こうも気付くかもしれませんが、今更ですね。
「
「オスティアで会えることを祈ってます」
私の呟きは聞こえたでしょうか?
ネギ君たちは遂に転移してしまい、ゲートに残ったのは私だけとなりました。
さらにフェイト達が壊したゲートの要石から暴走した魔力が溢れだし爆発が起こります。
その魔力を吸収し、魔法の矢を放ってダメージを受けないよう逸らしながら数秒耐えると、暴走も落ち着いたみたいで魔力の奔流はなくなりました。
魔力の流出は続いてますが、私には処置する術がないので放置ですね。
ここにいても仕方ないので、ドネットさんを捜します。
すると向こうもこちらを捜しに来たのか、ゲートと通路の隔壁が開かれてドネットさんがこちらに駆け寄ってきました。
「サラさん、ネギ君は?ユーナはどこに⁈」
焦った表情のドネットさんが息を切らして尋ねてきます。
「残念ながらみんなは強制転移によってバラバラに飛ばされてしまいました。敵は"完全なる世界"です。マクギネスさんは麻帆良に連絡を取ってタカミチ・T・高畑先生と龍宮真名さんをこちらに派遣するよう手配をお願いします」
焦った表情から愕然とした表情に変わるドネットさん。
「貴女はどうするつもりですか?」
「私は知り合いを頼ってそちらから捜すつもりです。マクギネスさんの方で誰かを見つけられたら、出来ればでいいので保護をお願いします。2ヶ月後のオスティアで行われる終戦記念祭を目処に一度集合をしましょう」
「ちょっと待ってちょうだい!貴女まで動き回ったらダメよ‼︎」
私の言葉に驚くドネットさんが反対しますが、私はどうしても行かなければならない場所があるんです。
「大丈夫ですよ。私が頼るのはジャック・ラカンさんですから」
「ジャック・ラカンってあの"
さっきとは別の驚きをみせるドネットさん。
クールビューティーだと思ってたんですが、表情がコロコロ変わるんですね。
「はい。本来は今日私たちを迎えに来るはずだったんですが、ここにいないでしょう?あの人のことなんで面倒くさいとか言ってすっぽかしてるんですよ。なのでちょっと働いてもらおうと思ってるんです」
ラカンさんのところに行くのは本当ですが、ネギ君達はオスティアで集まるはずなので、本格的に捜しはしません。
ちゃんと集まるか不安ですが、それを今考えてもしょうがないですから、その時に考えます。
「そうね、ラカンさんの庇護に置かれるなら大丈夫でしょう。でもどこにいるかわかってるのかしら?そこに行く為の足はあるの?」
「グラニクスの近くに拠点があるのでそちらに向かいます。足は飛行魚では時間がかかるので転移魔法で移動する予定です」
「確かに飛行魚は時間がかかるけど、長距離転移魔法なんて大丈夫なの?」
「魔法世界の地図だけもらえますか?流石に座標もなしの転移は私も遠慮したいので」
「わかったわ、ちょっと待ってちょうだい」
そう言ってゲートに来る時歩いた通路を戻っていくドネットさん。
しばらくすると魔法世界の地図と思われる紙とジャラジャラ音がする袋を持ってきました。
「世界地図とこちらの通貨を持ってきました。10,000ドラクマ用意できて、日本円に換算すれば64万円程になります。これを旅の日銭に使いなさい」
「いえ、64万円は高くないですか?」
「何が起こるかわからないんですから、それくらいは持っていきなさい」
「わかりました。ちょっと待ってください」
そう言って私は影の袋から
「ここに64万円あります。これと10,000ドラクマを交換してください」
「こんなお金なんで持ってるのよ?っていうかどこから出してるの⁈」
「このお金はバイトで稼いだお金ですよ。ちゃんと真っ当な仕事ですから問題ありません。出した場所は私の影に作った袋の中ですね。誰にも取られない安全な場所です」
「随分面白い技術を持ってるのね。まぁいいわ。その円とドラクマを交換しましょう。すぐに出るの?」
ドネットさんに64万円を渡し、10,000ドラクマと地図を受け取り影の袋に収めます。
「はい、"完全なる世界"が動き出したのですから一刻の猶予もありません。ドネットさんは麻帆良への連絡をお願いしますね」
「ええ、そちらは任せてちょうだい。ゲートが使えなくなる前にこちらに派遣してもらうから。それじゃあサラさん、気をつけるのよ」
「はい。では行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ドネットさんの見送りの言葉を背に影の
1ドラクマ=16アス=64円としました。