憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第34話

ーサラ・ヒューイットー

 

運動部4人組との食事会から一月程経ちました。

エヴァちゃんの書庫を漁って作ろうとしたマジックアイテムは、最近漸く形になってきました。

影の転移魔法(ゲート)の応用については、そんなに難しくなくすぐに解析の目処が立ちました。

容れ物のマジックアイテムは、容量を拡大するのが大変でした。

拡大のための魔法陣を組み、魔力を籠めて容量を大きくしていくんですが、無理矢理籠めてしまうと容れ物自体が壊れちゃうんですよ。

なので容れ物を壊さない様に慎重に魔力を籠めなければなりません。

かといって途中で魔力の供給を止めてしまうと、そこで容量拡大も終了と判断されてしまい、それ以上大きくすることができなくなるんですよね。

ゆっくり時間をかけながら、容れ物の容量を大きくせざるを得ませんでしたが、なんとか10×10×10㎥程の袋を2つ作ることができました。

2つ作ったのは1つを回復アイテム専用にして、もう1つはそれ以外のものを入れるためですね。

作り方は覚えたし、そのメモも袋にいれて、袋は私の影の中に固定したので誰にも取られません。

この袋の口も私の影に通じており、私が取りたいものを思い浮かべて影に手を突っ込めば、物が取れるという便利仕様です。

それから魔力回復アイテムですが、最初は嵩張らない紙をアイテムにできればと考えたんですが、調べた結果、西洋魔術には紙を回復アイテムにする方法がありませんでした。

陰陽術ならありそうなイメージなんですが、私は西洋魔術師。

今更畑違いのものに手を出すわけにはいきません。

仕方なく宝石に魔力を籠めます。

これは魔法陣を描いて、その中心に魔力を籠めたい宝石を置き、術を発動させて魔力を籠めていくというものです。

この時も魔力を籠め過ぎれば宝石のほうが壊れてしまいます。

ただ、袋に魔力を籠めるのと違って、宝石は許容量一杯になれば強く発光するので、そのタイミングで魔力の供給を断てば、回復アイテムの完成です。

それと宝石の大きさや石の純度、形も籠められる魔力量に関わってくるみたいです。

大きさはもちろん大きい方が良く、純度も高純度な物が求められます。

形はいろいろ準備して検証した結果、丸い球形の物がいいということがわかりました。

なので握り拳くらいの大きさの水晶を大量購入して片っ端から魔力を籠めていきます。

もっと大きな水晶もあるんですが、魔力を時間あたりに吸収出来る量は水晶の大小に関わらず同じなので、大きい水晶1個より、小さい水晶複数から魔力を吸収する方が時間のロスが少ないわけです。

そういう感じで、ここのところは魔力を水晶に籠めては袋にいれる作業を繰り返してます。

 

 

学校はというと期末テストも終わり遂に夏休みへと入りました。

期末テストは超ちゃんが未来に帰ったからか、学年順位1位を取ることができませんでした。

いやぁ、オール100点の麻帆良最強の頭脳は伊達じゃなかったんですね。

私はいつも通り20位以内に入りましたよ。

 

それから「ネギ(・・)君のお父さんである大()法使いナギさんを捜すクラブ」、通称「ネギま部(仮)」も学園長の認可待ちの状態になりました。

ちゃんとアスナちゃんがクラブ開設のために動いてくれたので、私は暗躍せずに済みました。

暗躍といっても、アスナちゃんの代わりにクラブを設立して、アスナちゃんを部長に据えるだけなんですけどね。

私は部長なんていう立場が苦手ですし、目立つこともしたくないので、アスナちゃんにマルッと任せるつもりでしたが、原作通りにアスナちゃんがリーダーシップを発揮してくれたのでよかったです。

そのアスナちゃんはというと、部員であるネギ君パーティーのみんなに部長に推薦されたんですが、名誉顧問のエヴァちゃんに反対されて、部長就任のために(魔法球時間で)7日間雪山サバイバルテストを実施中です。

ネギ君とコタロー君も同じ修業をエヴァちゃんにつけてもらってましたが、2人共幻覚を見るくらい追い込まれてましたから、1人だけのアスナちゃんは大変でしょう。

私もエヴァちゃんの別荘に城や各種訓練場が追加された時にやらされました。

その時はかまくらを作って風雪を凌ぎ、麓で木を集めて暖をとり、川で魚を捕まえて飢えを凌ぐといった感じでした。

魔法を使えたおかげで苦労はしましたが、苦労したというレベルで済みました。

ですがアスナちゃんの手札は咸卦法(かんかほう)だけなんで、私以上に辛い思いをするでしょう。

それでもこのテストを乗り越えるんですから、アスナちゃんはすごいですね。

今日がテスト最終日なのでもうすぐアスナちゃんも戻ってくるでしょう。

ネギ君やコタロー君、他のネギ君パーティーもバーベキューの準備をしながらアスナちゃんが戻ってくるのを待っています。

私も一応ネギま部部員ということになっております。

魔法世界に行くためには部員になってたほうが、すんなりあちらに行けますから。

まぁ、あちらに行ったらすぐに別行動となるんですけどね。

 

「こんにちは、千雨さん。茶々丸さんと随分仲良くなったんですね」

 

私もいつもの回復アイテム作りを切りのいいところで中断して、バーベキューをする広場に行きました。

広場に来てすぐ目に入ったのは茶々丸さんに肩を掴まれたちうっちです。

 

「ちげーっ!茶々丸に無理矢理連れてこられたんだよ‼︎」

 

「まあまあ、せっかくのバーベキューなんですから。電子精霊にもお肉を食べさせたらいいじゃないですか」

 

「あれ?なんで私の電子精霊の事知ってんだ?サラに見せたことないはずなのに…」

 

そう言えば、私はまだ見たことないことになってるんでした。

これはうっかりしてました。

でも、あのハムスターみたいな電子精霊が可愛くて好きなんですよね。

まき絵ちゃんのネーミングも可愛さに拍車をかけてると思います。

とりあえず話をそらしましょう。

 

「それは企業秘密です。ところでこれ、なんのパーティーか知ってますか?」

 

「さぁ?茶々丸に有無も言わさず連れてこられたから知らねぇんだけど。サラは知ってんの?」

 

「アスナさんが部長に就任するために、エヴァさんから課せられた極寒雪山サバイバルテストの完遂記念パーティーですよ」

 

「なんだよ、それ⁈アホなんじゃねーか?」

 

アホかと思うのが普通の感覚なんでしょうねぇ。

私は自分もやった修業だし、修業を課したのがエヴァちゃんだから納得してました。

そんな私はだいぶエヴァちゃんに毒されてるんでしょうか…。

 

「まぁ、あれは売り言葉に買い言葉でやったことだと思いますよ。エヴァさんが『だだの中学生にぼーやは守れない』と言って、それにアスナさんが反応したような感じですね」

 

「そんな単純なことで極寒の雪山に1週間もいられるかよ⁈」

 

ですよねー。

 

「だからアスナはネギ君に好き好きフォーリンラブなんだって」

 

向こうで話してたはずの和美ちゃんがこっちの話題に乗ってきました。

 

「や、やっぱりそうなんでしょうか?」

 

ネギ君が好きな本屋ちゃんもこの話は気になるみたいですが、こういう色恋沙汰は話が長くなるんですよねぇ。

当のネギ君はというとコタロー君とせっちゃんを連れてアスナちゃんを迎えに行っちゃいましたし。

私もついて行けばよかったなぁ。

 

「あれ?サラちゃんは気にならないの?」

 

「はい?何がですか?」

 

ボーッと考えてたからか、私だけ会話から取り残されてたみたいです。

 

「カモっちには人の好意を測る能力があるのに、その計測結果が茶々丸さんに燃やされちゃったんだよ。それが気にならないのかなって」

 

床を見ると一部黒コゲの灰が積もってるところがあります。

 

「ああ、ネギ君への好意を測ったんですね。私はネギ君に対してLIKEの気持ちはあっても、LOVEはないですねぇ。出来のいい弟くらいの気持ちでしょうか?」

 

あとは憧れてるというところでしょう。

それ以上の気持ちは不思議と湧かないんですよね。

 

「ふーん。さっき慌てて燃やしたあちらとは全然違うね」

 

そう言う和美ちゃんの視線の先には夕映ちゃん、(クー)ちゃん、茶々丸さんがいます。

まぁ、あの方々はまだ自覚してないだけでネギ君LOVEな人たちですから。

慌てるのも仕方ないでしょう。

 

「それよりもアスナさん遅いですねぇ」

 

私の一言で周りも騒がしくなります。

 

「そーだよ、アスナは?アスナー!」

 

「主役がいないと盛り上がんないよ!」

 

「せっちゃんも迎え行ってんになー」

 

「拙者達も迎えに行くでござるか」

 

長瀬さんの提案で、みんな一緒にアスナちゃんを迎えに行くことになりました。

 

雪山を訪ねてみるとエヴァちゃんは高笑いして、アスナちゃんは何かしらエヴァちゃんに訴えてました。

ネギ君とコタロー君はその周りではしゃぎ、せっちゃんもその様子に微笑んでいます。

 

「お疲れ様でした、アスナさん。バーベキューの準備ができてますよ。お腹も空いたでしょう?」

 

「サラ達も来てくれたんだ!もうお腹ペコペコよ」

 

「なんでゾロゾロと引き連れてきてんだよ?」

 

エヴァちゃんから文句が出てきたんですが、

 

「準備ができたのに主役がいつまで経っても来ないから迎えに来たんですよ。とりあえずここで話しても仕方ないので城に戻りましょうよ」

 

ということで城へ戻って、アスナちゃんの部長就任を祝ったどんちゃん騒ぎが始まりました。


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