ーサラ・ヒューイットー
睡眠不足解消のために一眠りしたら、窓の外は夕暮れになっていました。
時刻は午後5時半を過ぎています。
少し寝過ぎてしまいました。
私が寝ていた図書室の中ではちうっちと夕映ちゃんが深刻そうな話をしてます。
「えー、みなさん。お話中申し訳ないんですが、パソコンでライブニュースを見てもらえませんか?」
「起きたか、サラ。ニュースがどうしたって…って、オイ!もう外では戦闘が始まってんのか⁉︎
「というわけで、私はちょっとロボットを潰してきますね。ネギ君は完全回復するように、ギリギリまで寝かせておいてください。あとエロガモに連絡を。まあそろそろ来ると思いますが、それまでは千雨さんが指揮を執ってくださいね」
「な?なんで私なんだよ⁈」
「この面子で一番冷静かつ客観的に物事を判断できるからですね。では行ってきます」
「ちょっ!待てって‼︎オイ!」
ちうっちには悪いんですが、呼び掛けを無視して図書室の外へと出て行きました。
さてどこの敵を迎撃しましょうか。
最後は広場前で迎え撃つので、今は礼拝堂にでも行きましょう。
そうと決まれば早速礼拝堂に…と思ったんですが、昼食を摂ってなかったので空腹を訴えるお腹のために屋台でフランクフルトを買います。
さっさと食べて、改めて礼拝堂に向かい、右手の指環を外して自分の魔力を元の値に戻します。
今の私の魔力はサウザンドマスターよりも大きいと言われるこのちゃんよりも大きなものへと成長しました。
これも日々の修練の賜物です。
まぁ、まだ増やす気満々ですが。
なんて思いながら礼拝堂へと移動してると、超ちゃんのロボの田中さんや多脚戦車ブチアナの残骸がちらほら出てきました。
礼拝堂前の広場には超軍団と麻帆良軍団がぶつかり合ってます。
超軍団の横っ面にダメージを当てましょう。
「
田中さんの顔やブチアナの頭部を壊して行動不能に追い込みます。
「こんにちはみなさん!ヒーローユニットのサラ・ヒューイットです。私はどんどんロボットを倒すつもりなので、早く倒さなくてはみなさんのポイントは取れなくなってしまいますよ‼︎」
この超軍団と麻帆良軍団の戦いですが、麻帆良の戦力である普通の生徒には学祭の全体イベントとしか説明されていません。
そして、参加者がロボットを倒せばポイントが入り、得点上位者には報酬が出ると言われてます。
さらに、私たちのような魔法使いはヒーローユニットという、いわゆるお助けキャラとして参加します。
ヒーローユニットはゲームを盛り上げる演出でしかありませんが、ゲームの演出として魔法を使っても問題ないということなんです。
なので、私が参加者に対して発破をかけると
「おい、あのヒーローユニットの子。すごい勢いでロボットを倒していくぞ!」
「俺たちも負けてられねーよ‼︎」
「ポイントを稼ぐためにもガンガン行くわよ!」
といった感じで私に負けるまいと田中さんやブチアナをどんどん行動不能に追い込んでくれます。
ただ、あまり無双をしていたら参加者のやる気が失くなりかねないので、注意しないといけませんね。
「
他の参加者のことも考えてペースを落として攻撃を広げます。
順調に超軍団の侵攻を抑えていると、視界の隅に黒い球体が映りました。
「な⁈何だこ」
「きゃー!助け」
黒い球体が小さくなって消えると、球体に飲まれた参加者も忽然といなくなってました。
あれは
麻帆良湖湖岸で超ちゃんの巨大立体画像がB.C.T.Lについて、参加者向けには失格弾として説明していますが…。
この弾は世界樹の大発光してるこの数時間しか使えないんですが、当たれば最後。
3時間後まで強制的に跳ばされるので、今あれにやられるわけにはいきません。
すでに礼拝堂前を守る参加者も結構な人数がやられてます。
私もとりあえず遮蔽物に身を隠しました。
一応攻略法を考えてはいるんですが、それがちゃんと通じるのか確認しないといけません。
まず、魔力を込めた糸をB.C.T.Lのガトリングをぶっ放してる田中さんの射線上に仕掛けて能力発動!
糸に当たったB.C.T.Lの術が発動しますが、すぐに霧散しました。
思った通り、あれは世界樹の魔力を頼りに時間跳躍の術を発動しています。
ならその術が発動するときに魔力を吸収してしまえば、跳ばされる心配はないと思ったんですが、予想通りでしたね。
これで私が跳ばされる心配はなくなりました。
あとは参加者の方ですが、こちらは7割くらいは跳ばされてしまいましたか。
ですがこれくらいならガトリング持ちの田中さんをどうにかすれば戦力的には拮抗して問題ないでしょう。
ということで遮蔽物から飛び出します。
私に向けてB.C.T.Lが一斉に放たれますが、全て無効化。
ガトリング持ちの田中さんは1、2、3…、20体ちょっとというところでしょうか。
「
ガトリング持ちの田中さんが背中に背負った弾倉を氷の矢で貫きます。
弾倉内の弾に氷の矢が当たり時間跳躍の術が誘爆するように発動し田中さんを巻き込んで消えました。
「みなさん、失格弾の心配はなくなりました!ですがロボットはまだまだ攻めて…「やべーぞ!デカイのが来やがった‼︎」はい?」
誰かが叫んだのが聞こえたので周りを見れば、礼拝堂を目指して歩いてくる鬼神が見えました。
京都の「
私は瀬流彦先生みたいに結界で抑えるということはできないんですよね。
なので力技で侵攻速度を落としましょう。
まず瞬動、虚空瞬動を使って鬼神の背後に移動。
鬼神が前へ進むために一歩脚を踏み出したところで
「
と唱えて光の矢を身体に纏い、瞬動を使って鬼神の膝に体当たりをすると膝カックンの要領で鬼神のバランスを崩しました。
後ろに倒れた鬼神の脚部に向かって
「リインカーネイション
を当てたので鬼神の脚はスッパリ失くなりました。
これで時間稼ぎにもなるでしょう。
礼拝堂と世界樹前広場以外の魔力溜まりは占拠されてしまったみたいですね。
空へと伸びる光の柱が4本見えます。
「鬼神の侵攻速度は遅くなると思うのでみなさんもう少し持ち堪えてください!私は世界樹前広場の支援に回ります」
「おう!ここは俺たちに任せろ‼︎」
「まだまだ、これからポイントを稼ぐわよ!」
ここの人たちはやる気十分ですね。
今度は世界樹前広場へ向けて走ります。
移動中に広場に向けて侵攻していた鬼神が真っ二つになるのが見えました。
ネギ君も復活したみたいですね。
なら私も超ちゃんがいる上空へと行きましょう。
瞬動で地面を蹴り虚空瞬動を使ってさらに高く跳びます。
虚空瞬動を連続で使ってどんどん高度を上げていくんですが、私も空中を高速移動できる手段が必要かもしれませんね。
ネギ君みたいな大きな杖を買おうかな。
私の視線の先ではネギ君が杖に跨って高速飛行してます。
そこに空戦タイプの田中さんや茶々丸さんの妹型のロボットがネギ君へと襲いかかりました。
ネギ君1人をロボット60体近くが追いかけてます。
しかもB.C.T.Lを標準装備してるみたいで、ネギ君は徐々に追い詰められてますが、コタロー君、せっちゃん、アスナちゃん、美空ちゃんたちが応援に駆けつけました。
そしてネギ君は超ちゃんの元へ再び高速飛行していきます。
このままでは私が跳んできた意味がなくなっちゃうんで、ちょっと急ぎましょう。
「
田中さんの頭を氷の矢で撃ち抜きます。
「遅くなりました、みなさん」
「サラも来てくれたのね!」
「助かります、サラさん」
「げっ⁈サラの姉ちゃんも来たんかいな…」
「ねぇ、サラちゃん。アスナを箒に乗せたら調子悪くなるから持ってくれない?」
アスナちゃんは不安定な足場でよく飛んだり跳ねたりできますね。
せっちゃんは自前の綺麗な羽根で飛んでます。
コタロー君の「げっ⁈」っていうのはどういうことでしょうか?
美空ちゃんは責任を持ってアスナちゃんの面倒をみてください。
「さぁ、もう少しで学園祭も終わりですよ。もう一踏ん張りといきましょう!」
再度田中さんへと攻撃をかけようとしたところで、大きな爆発が夜空を明るく染めます。
超ちゃんの魔法「
「ネギ⁈」
「ネギ君⁉︎」
「大丈夫です。エヴァさんに鍛えられたので、あれくらいでは負けません!」
爆煙から飛び出したネギ君は煤けているものの無事なのがわかります。
「ネギ君が気になるならこちらを先に片付けましょう。
田中さんの頭や茶々丸妹さんの飛行ユニットを攻撃して、全部片がついたところでネギ君たちの方を見ると、あちらも決着がついたみたいです。
超ちゃんの「燃える天空」をネギ君の「雷の暴風」が突き破ったんですが、2人とも限界を迎えたのか、重力に従って落下していきます。
2人が落ちていく方向に虚空瞬動で先回りし、魔力を込めた糸を巻き付けて、今朝と同じように引っ張ります。
落下速度がほぼなくなったところで、抱えられるように糸を引っ張りあげます。
2人を抱えたところで
「サラちゃん力持ち!っていうか馬鹿力‼︎」
「これも日々の鍛錬の賜物ですよ祐奈さん」
「みんなもだけどどうやって飛んでるの、サラさん?」
「これはCGですよ大河内さん」
ネギ君も同じような言い訳をしてた気がするんですけど、CGってかなり苦しい言い訳ですよね。
「さすがにこんな上空ではみなさん寒いでしょう。早く屋台に入りましょう」
世界樹の上空に集まってた魔力が花火のように弾け、学園側の勝利を彩って、超ちゃんの革命は幕を閉じました。