ーサラ・ヒューイットー
学祭2日目のまほら武道会1回戦が終了しました。
2回戦の対戦表は
第1試合 村上小太郎vsクウネル・サンダース
第2試合 長瀬楓vs
第3試合 高音・D・グッドマンvsネギ・スプリングフィールド
第4試合 桜咲刹那vsエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
となっています。
現在は2回戦前の休憩中で、1回戦のハイライトが空中投影の映像に流されています。
「オイオイ、ええんか?アレ」
「え?撮影禁止のハズなのに…。大会側が撮るのはOKってことかな?」
コタロー君とネギ君が流れる映像に驚いています。
確かに個人のカメラは使えなくなってるんですが、大会側の
「いや、先生。そのことなんだけ…なんですけど。ネットにも上がってますよ?」
「「え⁈」」
「おー!ホンマや♪ネギ、バッチリ映っとるやん!カッコえーんちゃうか?」
「えぇ⁈ホントだ…。あのぉ、千雨さん。この映像っていつから…?」
「つい30分くらい前から出回り始めてました。基本的に会場に流されてる映像と同じものだから、大会側から流出したんじゃないですか?」
〈ど、ど、ど、どうしよう⁈僕魔法をたくさん使っちゃったよぉ…〉
〈アホ!んなビビんなや。映像くらいでバレへんて〉
〈で、でももしバレたらマズいことに…〉
ネギ君、ヒソヒソ話してても聞こえてますよ。
私に聞こえてるくらいなんで、ちうっちにも当然聞こえてるでしょうね。
「ネギ先生、何がバレたらマズいことになるんですか?」
「いっ⁈いえ、そのぉ、何でもっ…」
ネギ君、そんなにあたふたしたら余計怪しいですよ。
「…先生や他の人もですけど、ものスゴく強かったんですねー。ビックリしました、私。でも、正直スゴ過ぎてこの大会を信じられないんですよねー。常識的に考えたらあんなのあり得ませんし」
ですよねー、普通あんな闘いあり得ないですよねー。
「先生の強さも何か秘密があるんじゃないですか?例えばこの映像と一緒に出回ってる噂の『魔法』とか…」
「「へ…⁈」」
流石にいきなり核心を突かれたら言葉に詰まりますよね。
ネギ君もコタロー君も動きが止まってます。
「や、やだなぁ。千雨さん、何ですか突然。魔法ってテレビゲームじゃないんですよ?ハハハハ…」
「そうや、魔法とか。アホちゃうか、姉ちゃん?」
「うるせー、はっ倒すぞガキ」
「ま、まあ。んなもんどーでもええわ。俺2回戦行ってくるで!」
「う、うん。コタロー君!頑張ってね‼︎」
いやぁ、コタロー君の対戦相手はアルビレオさんで、しかもあちらの攻撃は普通に喰らうのに、こちらの攻撃は効かないというチートっぷりですからね。
残念ながらコタロー君に勝ち目はありません。
「おう!お前も格上のタカミチさん相手に頑張ったんや、俺も負けられへん!決s…「あぁ、コタロー君。ちょっとこちらへ」なんやサラ姉ちゃん?盛り上がっとるところに」
「まあまあ」
そう言ってコタロー君を引っ張ってネギ君から距離を置きます」
「俺すぐ試合やねんけど」
「コタロー君、君は油断はしないでしょう。京都でネギ君や長瀬さんと闘いましたから」
「当たり前や。油断は俺の弱点やからな」
「それでも敢えて言います。コタロー君、残念ながらあのクウネルには勝てません」
「なっ⁈いくらネギの兄弟子で女でもその言葉は許せへんで!」
「確かに納得しないかもしれませんが、長瀬さんでもこの大会で彼と闘っては勝てないでしょう。その上で全力でぶつかって、どれだけ差があるのかを知り、長瀬さんに弟子入りなさい。そうすれば、君はさらに強くなるでしょう。ネギ君が君を見限ることもありません。それと獣化はダメですよ」
「ふん!あんな奴すぐ勝って姉ちゃんを見返してやるからな‼︎」
ちょっと言い方が悪かったでしょうか…。
でも時間もなかったので、ああいう言い方しかなかったですし。
コタロー君にはネギ君と切磋琢磨してもらわないといけませんから、自分に負けないでほしいですね。
「サラさん、コタロー君と何かあったんですか?」
「いえいえ、相手は強いから気をつけるよう注意してきたんです。さあ、試合が始まりますよ」
第1試合 村上小太郎vsクウネル・サンダース が始まったんですが…。
やはり開始早々のコタロー君の攻撃は当たらず、アルビレオさんのカウンターで逆に吹っ飛ばされます。
コタロー君は分身で攻撃の密度を上げますが、悉く受け止められるか避けられ、当たった一撃も無効化され、今度はリングの外まで吹っ飛ばされました。
そこから狗神を召喚し、必殺技を仕掛けるものの、アルビレオさんはそれすら無効化し、強烈な肘打ちによってコタロー君はダウンします。
しかし、ネギ君と決勝で闘うという目標の為に負けられないコタロー君は、獣化してまでアルビレオさんに挑もうとします。
流石に獣化を人目に晒すわけにはいかないので、アルビレオさんが重力魔法でコタロー君を気絶させ、アルビレオさんの準決勝進出が決定しました。
「あ!オイ‼︎どこ行くんだよ先生⁈」
「えっと…。その、コタロー君の所に…」
「何しに⁈」
「いえ…、あの…。は…、励ましに…」
ネギ君、それはライバルの傷口に塩を塗る行為ですよ。
「かーーっ‼︎これだからガキは…。アホかてめぇっ!」
ちうっちは口調が素になってますよ。
「いいか?よーく考えてみろ?てめぇが試合で負けたとしてだ。その負けた直後にお前の1番の親友でライバルがノコノコ慰めに来た。その時嬉しいか⁉︎」
「え…、えーっと……?………」
なかなか答えが出ないネギ君にちうっちもイライラしてます。
10歳ではこの辺の心の機微は難しいのでしょうか?
「あ…、イヤかも…。てゆーかちょっと辛いかな…」
「だろ?…ったく、男ならフツーその辺は阿吽の呼吸でわかんだろーが…。いくら強くてもダメダメだな。いいか?わかったら放っとけ。慰めになんか絶対行くなよ」
「ハ…、ハイ!」
「古菲さんの試合がなくなったので、次はネギ君の試合でしょう?そろそろ準備したほうがいいと思いますよ」
「そ、そうですね、サラさん。でも行く前に、千雨さん。さっきのネットの話なんですけど…」
「ああ、『魔法』のことですか?すいませんがすごくつまらない話ですよ。大体、この学園ってくだらない都市伝説が多いんです。3-Aの幽霊とか…」
それは相坂さよちゃんですね。
「桜通りの吸血鬼事件とか…」
それはエヴァちゃんですね。
「図書館島の地下にはバカデカイ怪物がいるとか…」
それは見たことないですがアルビレオさんとこの門番のドラゴンですね。
「中でも根強い人気なのが、学園内で危険が迫るとどこからともなく『魔法少女』や『魔法オヤジ』が現れて助けてくれるなんていうのがあって…」
「へ、へーー…」
ちうっちが言葉を発する度にネギ君の顔色が悪くなっていきます。
「ま、私はごくフツーの常識人ですので、こーゆーくだらない話なんか信じてません。てゆーか信じてる人なんていないと思いたいんですが…」
「は、はぁ」
「ところが、この大会があまりに非常識なんで私も気になってネットを調べたら、『魔法』とゆー単語が出るわ出るわ」
そう言いながらちうっちはネギ君の頭を、持ってきていたノートパソコンに近づけます。
「どう思います?」
「え?どどどどうと言われましても…」
「よくよく考えたら確かにこの学園おかしい所があるんですよ。ネギ先生、この学園に来た時、あの世界樹と呼ばれる樹の大きさに驚きませんでした?」
「た、確かに大きいですね…」
「私も小学校からここにいるので違和感を感じてなかったんですが…。樹高270mですよ⁉︎よく考えなくても異常な大きさです!その上、年に1度発光もするんです‼︎世界遺産ものですよ‼︎それなのに、ギネスブックどころか旅行雑誌にも載ってないし、テレビ局の取材の話も聞かない!学園外の人間はガン無視です!あの大きさを考えたらむしろ不自然でしょう?何かオカシイと思いませんか⁈」
「ハ、ハア。言われてみたら確かに…」
「そこにきて今日のこの大会です。…『魔法』ってのもあながち…ってね」
ネギ君、もう一杯一杯っていう顔をしてます。
それは自白してるようなものですよ。
「…って、アハハハハ。スイマセン、試合前にこんなくだらない話を。大体『魔法』ってねぇ⁉︎アホかって‼︎突飛すぎてついていけないですよ。『気』とかはまだ少しはあるかなー?くらいには思いますけどねー」
「アハ、アハハハ。そ、そうですよねー」
「でも、ちょっとこのネットの動きもオカシイんですよ」
「え?何がですか?」
「この話題、1週間前位から急に出始めたようなんですが…。まるで、誰かがわざとこの『魔法』ってのを流行らせようとしてるみたいです」
ネギ君の顔色が驚愕に染まります。
「ネギ君、急いだ方がいいですよ」
「わ、わかりました。サラさん、千雨さん行ってきます」
そう言ってネギ君は会場に戻って行きました。
「サラさんはどう思ってるんですか?」
「何がですか?千雨さん」
「今までの私とネギ先生の話の内容ですよ」
第3試合 高音・D・グッドマンvsネギ・スプリングフィールド が始まりました。
今目立つ魔法を使うのは非常にマズイんですが、状況をわかってない高音先輩は私との模擬戦でも使った"
これでネットの方はさらに盛り上がるんでしょうね。
「千雨さんが思ってる通りですよ。もう結論は出てるんでしょう?」
「あんな話に疑問を持たないってことはあんたも…」
高音先輩の攻撃を掻い潜りながらネギ君も攻撃するんですが、人形の自動防御で全て防がれてます。
「まぁ、そうなりますね。詳しいことはネギ君に聞いてください。千雨さんはネギ君との会話で気付いてしまったんですから、説明責任はネギ君に果たしてもらいましょう」
「関係者ならあんたでもいいんじゃないのか?」
「私ではダメなんですよ。まぁ、先程の推測をネギ君にも聞かせてあげてください。10歳だからか少々迂闊なところがあるんですよね」
私が話すこと自体は問題ないんですが、ちうっちにネギ君のうっかりさんなところを注意してもらいましょう。
試合も決着がつきました。
打撃、遠距離攻撃は防御されるのでネギ君は零距離で
高音先輩はこれを防ぐことができず、気絶し影の精霊でできた人形は姿を消していきます。
同じように影の精霊でできた先輩の服も消えていき、今度は胸どころではなく全裸を晒すことになりました。
ネギ君からローブを奪ってリングから逃げて行きましたが、どうして服の上か下に影の精霊を纏わなかったのか不思議ですね。
服を着てれば精霊が消えても全裸を晒さず済んだでしょうに…。
とりあえず、ネギ君は準決勝進出です。
「おいおい、世間にバレたりするとマズいんじゃなかったのかコレ?」
ちうっちのパソコンの画面には高音先輩の人形がデカデカと映ってます。
「いやぁ、よろしくないですね」
「じゃあ、どうすんだよ?」
「どうもしませんよ」
「どうもしないって…」
「私は今パソコンとか持ってないですし、そういうネットでの論戦とかは苦手なんですよ。よかったら千雨さん、火消しをしてあげてくれませんか?ネギ君もあんなに慌ててることですし」
視線の先ではネギ君と愛衣ちゃんがあたふたしてます。
「今さら慌てふためいてんのかよ…。全く、仕方ないな」
そう言いながらキーボードをカタカタと叩き始めました。
ブラインドタッチって仕事ができる感じでかっこいいですよね。
第4試合 桜咲刹那vsエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル は始まり早々エヴァちゃんが操糸術でせっちゃんを糸で縛り付けました。
せっちゃんも糸に気付いて気で切断し、得物のデッキブラシを振りますが、エヴァちゃんはそれを鉄扇でいなし、逆に掌底をせっちゃんの顎に叩き込みます。
魔力や気がない最弱状態でも神鳴流剣士を手玉に取るんですから、流石としか言いようがないですよね。
さらにせっちゃんを糸で磔にしたエヴァちゃんは、せっちゃんと目を合わせたまま動かなくなりました。
「なあ、あいつらなんで動かないんだ?」
「30秒程待てば終わりますよ」
「それ答えになってねーじゃん」
そこら辺も含めて全部ネギ君にお任せします。
ちうっちにはネギ君の相談役になってもらうんですから、私よりネギ君との会話を増やしてもらわないと。
「試合が動きますよ」
リングを見ると、睨み合ってた2人の間で爆発が起こり、その煙からせっちゃんが飛び出してデッキブラシの一閃をエヴァちゃんの胴へ叩きつけました。
この一撃によってエヴァちゃんはギブアップし、せっちゃんの準決勝進出が決定しました。