憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第24話

ーサラ・ヒューイットー

 

上位悪魔ヘルマン伯爵の襲撃から数日経ちました。

現在は、間もなく開催となる全学園合同の学園祭である麻帆良祭へ向けて、クラスの出し物「お化け屋敷」の準備をしています。

この出し物が決まるまでが、また大変だったんです…。

 

最初はメイドカフェに決まりかけてました。

委員長はメイドカフェがどんなものか知らないまま、衣裳まで用意してたんですよね。

それをネギ君に自慢してた委員長の後ろでは、祐奈ちゃんとハルナちゃんが黒い笑みを浮かべてました。

委員長の人の良さと財力を利用できたので、してやったりなんて思ってたんでしょう。

因みにメイド服を着てたのは委員長、和美ちゃん、柿崎美砂ちゃん、釘宮円ちゃん、椎名桜子ちゃんです。

ネギ君はお客様第1号として接客を受けたんですが、接客してるはずのくぎみーちゃんが飲み物を注文したり、桜子ちゃんがエプロンと服の間に栓抜きを挟んで

 

「胸の谷間に落ちたから取って♡」

 

なんて言ったり、止めに

 

「お会計が7,800円になります」

 

とか言われてました。

ネギ君は値段の高さに驚き、エロガモは

 

「ぼったくりかよ…」

 

と呆れたように言ってたので、これが私の元いた世界でも極たまぁにニュースに出ていたぼったくりバーというやつなんだと知りました。

格好はメイド服でも中身は全然違うものですよね。

美砂ちゃんはネギ君に

 

「これが『お・と・な』の世界よ♡」

 

なんて言ってましたが、こんな大人の世界なんか知りたくないし、ネギ君にも教えたくありません…。

それにこれで終わらないのが3-Aクオリティ。

(クー)ちゃんと(チャオ)ちゃんはチャイナ服、ハカセちゃんもチャイナ服にスカートを合わせたような服、まき絵ちゃんは大正時代の給仕服、祐奈ちゃんは猫耳をつけたウェイトレス、ここまでは目を瞑ってもいいと思うんですが、アキラちゃんだけバニーガールの格好をさせられてました。

1人だけ場違いな服着せられたアキラちゃんが不憫でしたね。

ネギ君は古ちゃんに

 

「12,000円になります、払え」

 

なんて言われ驚愕してました。

接客もなくただ格好を見ただけなのに…。

暴走はまだ続きます。

龍宮さんは袴が短い巫女服、美空ちゃんはミニスカシスター、亜子ちゃんはミニスカ猫耳ナース、ふーちゃんは赤頭巾ちゃん、ふみちゃんはブルマの体操服、せっちゃんは猫耳スクール水着と最早カオスな状態となってました。

せっちゃんなんか恥ずかしくて顔が真っ赤で初々s…、じゃなくてとても凄腕剣士には見えなかったです。

ネギ君は古ちゃんに

 

「20,000円、払え」

 

と既に接客業とは思えない態度を取られ、値段の高さに真っ白となってました。

ここまで騒ぎを起こせば、当然他のクラスにも迷惑をかけることになるので、生活指導の新田先生がウチのクラスに乗り込んできます。

しかも騒ぎで気付いてなかったのかHRの時間も終わっていたんで、ネギ君も含めて全員正座させられました。

 

次の日、ネギ君は朝から張り切って出し物を決めようとするんですが、クラスのみんなはまた暴走します。

桜子ちゃんが「ドキッ☆女だらけの水着大会・カフェ♪」なんていう意見を出せば、まき絵ちゃんは「女だらけの泥んこレスリング大会喫茶」というアイディアを出し、ふーちゃんが「ネコミミラゾクバー」と言えば、那波さんが「ノーパン喫茶」という止めを刺しました。

カフェとか喫茶とかバーなんて単語をつければいいと思ってるのかわかりませんが、本当に意味がわからない、勢いだけで意見を出してる感がありますね。

ただ、茶々丸さんによるとノーパン喫茶というのは

 

「1980年代に実在したという記録はありますが、現在は違法のようです」

 

とのこと。

私達は1988〜89年生まれなので、その存在を知るはずないのですが、那波さんはどうして知ってるんでしょうか?

やっぱり年齢詐s…ゲフン、ゲフン。

真っ黒な笑顔とオーラを撒き散らしてる那波さんがこちらを見ています。

本当その察知力はどこから来るんでしょうか?

ネギ君、ふみちゃん、本屋ちゃんは不穏な単語のオンパレードにガクガクブルブル、涙流しながら龍宮さんに説明を求めてました。

ハルナちゃんはさらに踏み込んで、

 

「カワイイ女の子を見世物にするというのはいささか単純かもしれないから、逆はどうかしら?」

 

なんて仰いました。

ウチは女子中なので男の子は当然ネギ君しかいません。

すぐにネギ君に魔の手が迫り、スーツのジャケットやシャツを脱がされ、ズボンもベルトを外され、代わりに猫耳と尻尾、ブラを着けられようとしてたところで新田先生が前日に続き登場。

新田先生もネギ君の格好を見ると、流石に一瞬絶句しましたが、またクラス全員とネギ君に雷が落ちます。

 

その日の夕方バイトをしていると、ネギ君が五月ちゃんと一緒に超包子(チャオパオズ)にやって来ました。

ネギ君の目がちょっと赤くなってたのは、クラスをまとめられない不甲斐なさを泣いていたんでしょうが、ウチのクラスは個性が強烈ですからね。

まだ10歳のネギ君にはちょっと大変だったかもしれません。

ネギ君が五月ちゃんの作る料理を食べてるうちに学校の先生や大学の学生さん達もやって来ました。

いつも通り、座席はお客さんで一杯です。

そして人が多くなればいざこざというのも残念ながら発生しやすくなります。

特にこの時期の格闘系の部活は、学園祭に行われる格闘大会に向けてピリピリしてるからか、喧嘩っ早いんですよね。

なんて、言ってるそばから喧嘩です。

お客さんの話では、昔から仲が悪い麻帆良大と工科大の格闘団体が言い争ってるみたいですね。

一触即発、まさに殴り合いに発展しそうなその時に…

 

ズシンッ‼︎

 

という大きな音が2団体の間から響きました。

音源には五月ちゃんと武器を持ち用心棒というエプロンを着けた古ちゃんが立っています。

古ちゃんの武器には、棒の先に人の顔くらいの大きさはありそうな鉄球がくっついてます。

それを両手に持っているのですが、片方は地面にめり込ませ、もう片方は軽々と肩に担いでます。

地面にめり込むくらいなんで結構な重さのはずなんですが、魔力や気の恩恵もなしによく持てますよね。

 

ーあんた達、ここでの喧嘩は御法度だよー

 

騒ぎが鎮まった広場に五月ちゃんの凜とした声が通ります。

凜とした声なんですが纏ってるオーラはコアラなんですよね。

その雰囲気に争っていた大学生もほっこりして、刺々しい雰囲気がなくなります。

その様子を見たネギ君はとても驚いています。

 

「あんな怖そうな人達を一言でまとめるなんてすごい…」

 

「当たり前だ、バカ者」

 

あ、エヴァちゃんがやって来ました。

 

「あ⁈エヴァn…、じゃない。師匠(マスター)!」

 

「サツキは子供だらけのクラスメイトでは、ほぼ唯一私が認める人間だ。奴だけはしっかり現実に根を張り、前を見ている。サツキはホンモノだよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「なんだ、サラもそこにいたのか?」

 

「お疲れ様です。私もなんとか厨房でお手伝いできるようになりましたからね」

 

「まぁ、いい。今日は私も呑むからな。お前達の修業はなしだ」

 

そう言って頭にチャチャゼロさんを載せたエヴァちゃんは帰っていきました。

私はまだまだということですね。

確かに五月ちゃんほど将来について明確なビジョンがあるわけではないですからねぇ。

 

「いやぁ、今日もさっちゃんの勇姿が見れましたねぇ!おおっ?ネギ先生じゃないですか!これは珍しい。さっきは私も言い過ぎました。3-Aを相手にしてるんですから、先生も大変でしょう!」

 

いつの間にか、新田先生と瀬流彦先生がカウンター席にいたネギ君の隣に座ってました。

しかも2人とも顔が赤くなってます。

すでに出来上がってますね。

 

「ま、ま。どうですかね、一杯?」

 

「あぁ、ダメですよ、新田さん。ネギ君にはこっちの甘いのにしましょう」

 

ネギ君が先生をしてる時点でアレですが、新田先生。

天下の往来で子供にお酒を勧めるのはマズくないですか?

しばらく新田先生と瀬流彦先生、ネギ君が飲み物や食べ物を摂りながら歓談してたんですが、ネギ君が急にカウンターにうずくまりました。

 

「お、おや?どうしたんだい、ネギ君?」

 

「おい、瀬流彦君。ネギ君に何を飲ませたのかね?」

 

新田先生がネギ君に注がれた飲み物を飲んで一言。

 

「瀬流彦君、こりゃ甘酒だよ⁈」

 

「ええーっ⁈しまった!間違えちゃった」

 

「うぅ…っ。四葉さん、新田先生。僕は先生としてダメなんですぅ〜…」

 

ー何か酔い覚ましを作りましょうー

 

「あー、ネギ君は泣き上戸かね…」

 

「僕…、全然ダメなんです」

 

「何を言っとるのかね、ネギ君。君はあのクラスでよくやっとるよ。昼のことは忘れなさい」

 

「ほら、ネギ君。元気を出しなって」

 

新田先生と瀬流彦先生が励ましますが、ネギ君は一向に泣きやみません。

 

「やぁ、新田さん、瀬流彦君。やってますね。こんばんはさっちゃん、サラ君。お邪魔していいかな?」

 

「こんばんは、高畑先生」

 

高畑先生がネギ君の隣に座りました。

 

「久しぶり、ネギ君」

 

「タカミチ…」

 

ネギ君も高畑先生に気付いて顔を上げます。

鬼の新田と呼ばれる生徒指導の新田先生でも泣く子には勝てなかったのか、泣き止んだネギ君にホッとしてます。

 

「色々大変だったみたいなのに、助けになれなくてすまなかったね。エヴァの話だと、ネギ君。随分強くなったみたいじゃないか。どうだい?子供の頃の約束通り、そろそろ腕試しに勝負しないかい?」

 

高畑先生がそう言った途端、ネギ君の涙が溢れてきました。

 

「違うんです〜!僕、強くなんてなってないんですーっ!」

 

「おっと、ネギ君。どうしたんだい?」

 

「いやぁ、実は高畑君。彼に甘酒を飲ませてしまってねー…」

 

「僕っ…、ただ逃げてただけなんですっ!僕は…、僕はダメ先生で…、ダメ魔法使いなんですぅ〜〜っ‼︎うわぁぁ〜〜ん」

 

なんて大声で叫びながら本格的に泣いてしまいました。

「魔法使い」という単語が出た瞬間、高畑先生と瀬流彦先生は焦った顔をしてました。

私は事前に知ってたので顔色は変わってないと思います。

新田先生は子供の言葉とあまり気にしてなかったみたいですね。

ネギ君は泣き疲れたのか、しばらくしたら寝てしまいました。

「泣き疲れたみたいですね。これは動かさない方がいいのではないでしょうか?」

 

「くーふぇ、悪いんだけどこいつ屋台に寝かせておける?」

 

いつの間にかアスナちゃんとこのちゃん、せっちゃんが超包子に来てました。

 

「OKアルよ」

 

「ごめんね、くーふぇ、さっちゃん、サラ。私明日の配達の時ここに寄るから」

 

「悪いね」

 

そう言ってアスナちゃん達も先生達も帰っていきました。

ネギ君がここまで感情的になった理由は、アルコールが入ったのもあるんでしょうが、ヘルマン伯爵の言葉が原因にあります。

ネギ君の力は雪の日の夜から復讐するために手に入れたものだろう?と。

その言葉を聞いたネギ君は、自分の魔法使いや先生としての頑張りは嫌な思い出から逃げるための嘘の頑張りだったのではないか、と自信を失くしていたんですよね。

これは、原作同様五月ちゃんに元気付けてもらうしかないですね。

 

「五月さん、ネギ君は色々悩んでるみたいなので、明日話を聞いてあげてくれませんか?」

 

ーわかりました、任せてください。サラさんは優しいですねー

 

「そんなことはないですよ、私にできることは微々たるものですから。片付けも終わったことですし、帰りましょう」

 

そう言って店じまいをして、私と五月ちゃんは寮へ帰りました。

 

翌る日のHRではネギ君はスッキリした顔をしていました。

私はいつも通りの登校でしたが、五月ちゃんは超包子の朝のシフトに入っていたので、先に寮を出ています。

きっとネギ君の悩みも解決してくれたことでしょう。

そして自分の悩みを解決できたネギ君は、先生の仕事にもしっかり取り組めるようになったと。

 

「なかなか決まらないのでみなさんのアイディアから、僕が厳正に選考と抽選を行った結果、3-Aの出し物を『お化け屋敷』にしたいと思うのですが。ど…どうでしょう?」

 

この一言が決定打となりウチのクラスは「お化け屋敷」をやることとなりました。

これでネギ君はまた一つ成長したことでしょう。


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