ーサラ・ヒューイットー
ネギ君の弟子入りテストから1週間と少し経ちました。
この間にネギ君は綾瀬夕映ちゃんに魔法がバレたり、アスナちゃんとケンカしたり、南の島でバカンスしたり大変だったみたいです。
夕映ちゃんにバレたというのは、修学旅行での騒動や学園の不思議、世界樹の存在から推論した結果、バレてしまったそうです。
夕映ちゃん、バカブラックを拝命してるんですが、こういう興味のあることにはすごく頭の回転が速くなるんですよね。
さらに夕映ちゃんと本屋ちゃん、ネギ君が近衛詠春さんからもらったナギさんの手がかりを発見し、その報酬として、手がかりがある地底図書館に連れて行くことを要求。
その熱意に負けたネギ君はアスナちゃんに黙って2人を連れて行きます。
ネギ君としては危険かもしれない場所にアスナちゃんを連れて行けないと配慮したんですが、アスナちゃんは自分のことを無関係な中学生と言われて腹がたち、ケンカをしてしまったと。
実際、ドラゴンが門番をしていたので危険だったんですけどね。
まぁ、そんなすれ違いを起こした2人のために委員長が一肌脱ぎ、南の島へと気分転換のために連れて行ったわけです。
委員長としてはネギ君だけを連れて行って2人っきりのパラダイスのつもりだったんですが、和美ちゃんとハルナちゃんに嗅ぎ付かれて、結局クラスの大半を連れて行く羽目になったみたいで。
その頃私はというと、エヴァちゃんの稽古と
羨ましいですねぇ、南の島…。
とりあえず、ネギ君とアスナちゃんは委員長のおかげで仲直りできたみたいです。
よかったですね、あの2人はやっぱり姉弟のように仲良くないと。
恋人のようにと言いにくいのがアレですが…。
そんなネギ君ですがここの所、フラフラしてるしやつれてきてるしで授業中も集中力に欠けてるんですよね。
原因はエヴァちゃんの修行で疲れてる上に、魔力を供給するため血を吸われてるからなんです。
私も以前稽古をつけてもらう時はエヴァちゃんに血を吸われてましたが、最近はネギ君がメインで魔法を使った訓練をして、私はもっぱら操糸術と合気鉄扇術の稽古を受けてます。
もちろん、ネギ君がいない時は能力も使った訓練をやってます。
これについては、まだネギ君にも内緒にしていることなので仕方ありません。
話は逸れましたが、心ここに在らずなネギ君の状態を怪しんだアスナちゃん、
私はその7人を尾行してるんですが、いやぁ、前の7人、怪しさ全開ですね。
小さい子が7人を指差していると、そのお母さんでしょう、見てはいけないと言わんばかりにその場から離れていきます。
ですがこの状況、雨も降ってきたところを見ると、これは悪魔伯爵襲来ですね。
ネギ君の村を襲った悪魔の中で石化能力を持ち、村人を石化しまくった上位悪魔の一体がネギ君と関係者に襲いかかります。
このイベントもネギ君の成長の糧になるでしょうが、悪魔が持つ石化能力は看過できません。
それと成り行きとはいえ、一般人である那波千鶴さんを巻き込むのもいただけません。
大丈夫だとは思いますが少し邪魔してやりましょう。
そんなことを考えてるうちにアスナちゃん達7人がエヴァちゃんの家に入って行きました。
しばらくしてから私も家に入ります。
人気を感じないところを見ると、7人はちゃんと地下にある別荘に行ったんでしょう。
私も地下に行き、別荘に通じる魔法陣を発動させ…。
次の瞬間にはログハウス特有の木の壁しか見えない部屋から、見渡す限り海しかない柱の上にいました。
足下には転移用の魔法陣が描かれてあり、正面の手すりのない橋の向こうにはオベリスクが建っている広場がある柱が見えます。
あちらが居住区画兼修行の場ですね。
みなさんすでにあちらに…、ああいました。
エヴァちゃんにこの別荘の仕組みを説明されてます。
別荘の中で24時間過ごしても外では1時間しか経ってないなんて、魔法って本当スゴいですよね。
「こんにちは、みなさん」
「ん?来たな、サラ・ヒューイット」
「あ!サラさんお疲れ様です」
「え?サラもここを知ってたの⁈」
「サラちゃんも来たんやー」
「サラさん、こんにちは」
師匠であるエヴァちゃんと弟弟子のネギ君は私の存在をさも当然のように挨拶しますが、アスナちゃんは私に驚き、このちゃんはいつものようにニコニコ挨拶し、せっちゃんも挨拶をくれました。
他の4人は私がここにいることに驚いて声も出ないといったところでしょうか。
っていうか、アスナちゃんには私がエヴァちゃんの弟子であると以前伝えたんですから、私がここを知ってるのも当たり前だと思わないんですかね?
逆に、このちゃんにははっきり魔法使いだと告げたわけではないのに、普通に挨拶ができるあたり、将来大物になりそうな予感を感じますね。
驚いて固まってる4人に挨拶しておきますか。
「こんにちは、のどかさん、夕映さん、
「え?サラさん、え?」
「確かに、ネギ先生が石になりかけていたあの場にサラさんがいたことを考えたら…」
「そういえば、あのオバケと戦てたのはサラだたアルな!なら強いに決まてるアル!サラ、私と勝負するアルよ‼︎」
「ええ⁈サラちゃん魔法少女だったの⁉︎これは早速取材を…」
「私はネギ君より1年早く魔法使いの学校を卒業して麻帆良に来てたんですよ。のどかさん、ネギ君と仮契約とかもしてないんで安心してください。夕映さん、私の存在を忘れてたみたいですが、その推察通りですよ。古菲さん、まぁ、時間があって私が覚えてたら勝負を受けましょう。和美さん、取材ならエロガモと契約を結んだでしょう?そちらで我慢してください」
「そ、そうなんですねー。よかったぁ」
「やはりこの学園は魔法使いの作ったものだったんですね」
「約束アルよ!絶対勝負するアルよ‼︎」
「なんでサラちゃんがカモっちとの契約を知ってんの⁉︎」
本屋ちゃん、ネギ君は確かに可愛いんですが恋愛対象にはならないので安心してください。
夕映ちゃんは、本当興味のあることにしか頭を働かせないんですねぇ。
あと古ちゃん、私が言ったことわかってないでしょう…?
和美ちゃん、私は貴女より色々知ってますからね。
「今日は特に稽古をする予定はなかったんじゃないのか?」
「そうなんですが…、寮に戻る途中で面白いものを見かけて」
「ほほう」
「あぁ、エヴァさんには面白い話ではないと思いますよ。ただ、アスナさん達にアドバイスです。あんなに固まって動いてたら怪しさ全開でしたよ」
「っ⁈また、サラはこっそり見てたのね!」
「たまたま見かけただけですよ。ネギ君が心配でここまで尾行したんでしょうけど、修行が厳しくてああなってるだけですから、いずれは元に戻りますよ」
「そ、そうなの。なんだ心配して損したじゃない」
なんて言うアスナちゃんですが、立派にネギ君のお姉さんになってますよ。
「ところでサラさん」
「なんでしょう、夕映さん?ひょっとしてのどかさんも私にご用ですか?」
「はい。私たちに魔法を教えてほしいんです」
あー、やっぱりその話きますよね。
ですが、私に習うよりはネギ君に教わってもらったほうが物語的にはいいはずなので遠慮させていただきます。
「すみません、私も未だ修行中の身ですので。エヴァさんに聞いてみてはどうでしょう?まぁ、あの人は面倒くさがりなところがあるので断るかもしれませんが、そのかわり先生であるという理由だけでネギ君に魔法を教えるよう指示してくれるかもしれませんよ」
「わ、わかりました。さっそくエヴァンジェリンさんのところに行ってきます」
いやぁ、焚きつけた私が言うのもなんですが、本屋ちゃん。
原作より少しアグレッシブになってませんか?
まぁ、元気なのはいいことですよね。
すでにエヴァちゃんに魔法を教えてもらえないか交渉に行ってます。
そして、案の定ネギ君が本屋ちゃんと夕映ちゃんに魔法を教えることとなりました。
初心者用の杖を2人に渡し、ネギ君の魔法の授業が始まります。
「では一番簡単なものからいきましょう。お2人には初心者用の杖をお渡しします。お好きなものを取ってください」
テーブルには杖の先に星や月、翼を象ったものがついたまるで玩具のような杖があるけど、紛れもなく初心者用の杖なんだよねぇ。
「いいですか?これを振りながら
"プラクテ ビギ・ナル
と唱えてください。いきますよ、
"プラクテ ビギ・ナル
ネギ君の持つ杖の先に火が灯ります。
「こんな魔法よりライターの方がずっと早いんですけど、これが初心者用の呪文です」
「へぇー、面白そうなことやってんじゃん」
「私も混ぜるアル!」
「あーん、ウチもー!」
「えー⁈ちょっと待ってください、杖足りるかなー?」
そこから「
まぁ、いくらこの別荘に魔力が充溢していて、練習しているのが初心者用呪文とはいえ、今まで魔法を扱ったことのない人がそう簡単に成功させられるはずがありません。
私が憑依する前のサラも随分苦労したみたいですし。
このちゃんなんか
「えいっ!てやっ!あーーーん、出ーへん〜〜」
と言いながら杖をブンブン振り回してます。
いや、杖を振ればいいってものじゃあないんですよ…。
せっちゃんは陰陽の術なのかわかりませんが、一言
「ラン」
と唱えただけで指先に火が灯りました。
一言で済むのはすごいですね。
「オオっ⁉︎できたアルよ‼︎」
「何ですと⁈」
「マジで⁈」
古ちゃんが魔法を成功したといって、みんなに火を見せます。
夕映ちゃんと和美ちゃんはとても驚いてますが、火の位置がどう見てもおかしいんですよね。
成功すれば杖の先に火が灯るはずなのに、杖を持った左手の上に火が点いています。
実際は左手で隠した右手に100円ライターを持って、それに火を点けたというオチでした。
初心者用の魔法とはいえ、そう簡単にできるわけないんですよ。
別荘内の日もとっぷりと暮れ、丸い月が夜空に浮かんでいます。
あれだけ騒いでいたのに外の時間はまだ20分くらいしか経っていません。
みんなも疲れて眠ってると思ったんですが、物陰に集まって何やら覗き込んでます。
おそらくというか確実にネギ君の過去の話を、本屋ちゃんのアーティファクト"
物陰の向こうではネギ君とアスナちゃんが魔法陣の中でおでこを付き合わせてますし。
これによって意識をシンクロさせ、片方の記憶を追体験できるという魔法です。
ネギ君のトラウマでもあり、お父さんを追いかける要因となった6年前のお話です。
その頃のネギ君はお父さんが死んだということが、どういうことか分かっておらず、遠くへ行ってしまったという認識しか持っていませんでした。
そのため、自分がピンチになったらどこにいてもお父さんが駆けつけてくれると信じていたので、犬にイタズラしたり、木から落ちたり、冬の湖に飛び込んで溺れるなどして、お父さんが来ることをひたすら待っていました。
さすがに冬の湖で溺れ、40℃の熱を出したことには、従姉のネカネさんも心配のあまり泣いてしまい、これ以後はネギ君も大人しくなります。
ここまでは田舎のちょっと元気すぎる子の長閑な風景で済んでいたんですが、ついにその日がやってきました。
ネギ君の村を悪魔の大軍が襲いかかったんです。
村人はほとんどが石化されてしまい、残っていたネギ君にも追っ手が迫ります。
ネギ君は自分がピンチになればお父さんが来てくれると思っていたせいで村が焼け、村人は石になってしまったんだと考えて、その場を動けなくなりました。
そんなネギ君にも悪魔の攻撃がまさに当たろうとしたその時、1人の男がネギ君の前に立ち悪魔の攻撃を受け止めます。
そこからは男による一方的な蹂躙が始まりました。
得意だと思われる雷系の魔法で悪魔の大軍をあっという間に瓦解させてしまいます。
しかし、悪魔を一方的に倒していく男に怯えたネギ君はその場から逃げ出しますが、逃げた先にはまだ悪魔が残っており、ネギ君へと石化させるビームを放ちました。
そのビームはネカネさんと、いつもナギさんに悪態を吐いていたスタンというお爺さんに防がれます。
さらに石化ビームを吐いた悪魔と他の悪魔を専用の瓶へ封印しますが、ネギ君を守る為に自身の身をビームへ曝した為、スタンさんは石化してしまいます。
そこへ悪魔を倒し尽くした男が戻ってきてネギ君とネカネさんを村から離れた安全な場所へと連れ出し、石化したネカネさんの脚の応急措置も施します。
その男は自分の杖をネギ君に託し、その場を離れていきますが、ネギ君はそこで初めてその男が父であるナギさんだと思い至ります。
ですが時すでに遅く、ナギさんはどこへともなく消えていたのです。
その後は魔法学校で過ごすこととなりますが、事件が起こった雪の日の夜が怖くて、勉強に打ち込みながら、お父さんにもう一度会いたいと希うようになります。
ただ、あの事件は「ピンチになったらお父さんが助けてくれる」と考えたネギ君自身への天罰だったのではないかと後悔しながら。
ネギ君の悪いところは何一つ、これっぽっちもないんですけどね。
その原因については夏休みに知ることとなるでしょう。
それはともかく、ネギ君の記憶を盗み見ていた私以外の皆さんは涙を溜めたり、あるいは滂沱のごとく涙を流してネギ君の側に立っていました。
チャチャゼロさんだけ楽しそうにしており、茶々丸さんは本当の意味で可哀想な子を見る目をしてネギ君を見ており、エヴァちゃんもネギ君の以外と重い過去に鼻をぐずらせてます。
エヴァちゃん、ちょっと泣きました?
まぁ、石化だったり命の危険があるとか危ないことも起こりかねないんですが、ネギ君のためにナギさん捜しを協力するという3-Aの皆さんはいい人すぎるというか、身の程知らずといいますか…。
私ももちろん協力しますよ、できることは原作終盤くらいしかありませんが。
そして寝る前に騒ぎに騒ぎまくったみんなは、また宴会騒ぎを始めるのでした。