憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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書き溜めが少し溜まったので1話多く更新します。


第20話

ーサラ・ヒューイットー

 

「サラちゃん、風邪どうなん?昨日ずっと寝とったみたいやけど?」

 

「心配をおかけしました、亜子さん。ですが、昨日寝ていたおかげか今日はとても調子がいいですよ」

 

修学旅行4日目、やっとのんびりした時間を過ごしてる気がします。

いえ、違いますね。

2日目も3日目の午後もそれなりに時間はありましたが、この旅行中に起こる騒動が原作通りに進むか不安だったんです。

しかし、それも昨日の晩で終わって、一つの大きな区切りができたので安心できているといったところでしょう。

次の区切りは麻帆良祭ですが、今くらいはゆっくりしてもいいですよね。

 

「そっか。よかったね、ヒューイットさん」

 

「ありがとうございます、大河内さん。それにお土産まで買ってきてもらって。いくらかかりました?代金をお返ししますので…」

 

大河内さんは風邪(という設定)で動けなかった私のために、昨日行ってきたテーマパークのお土産を買ってきてくれてました。

本当に優しい人です。

 

「お金は気にしなくていいよ。せっかくの修学旅行なのに風邪をひいて、残念そうだったからね」

 

「そこまで気を使ってもらって…。私、本当に嬉しいです!大河内さんには2日目で稼いだ食券で今度奢らせてもらいますね」

 

「へ?サラちゃん、あれ当たったの⁈」

 

「いやぁ、祐奈さん。いい思いをさせていただきました。のどかさんと5班の一点買いでしたから」

 

「えぇー、同じ班の私達には賭けてくれなかったのー?」

 

「すみません、まき絵さん。ですが、一昨日はのどかさんがネギ君に告白したと聞いたもので。それなら応援してあげたいと思ってしまうじゃないですか」

 

本当は本物のネギ君にキスするのは本屋ちゃんだけというのを知ってたからなんだけどね。

 

「それじゃあ、せっかくなんで学園に戻ったらどこかに4班で食べに行きますか?」

 

「え?いいの、サラちゃん!」

 

「いいですよ。賭け事で手に入った泡銭みたいなものですから。『宵越しの銭は持たない』ですよね?」

 

「サラちゃん、難しい言葉知ってるねぇ。祐奈わかる?」

 

「え?あれでしょ?賭けで儲けたらパーッと遊びましょ、的な?っていうか私に聞かないでよ、まき絵」

 

「サラ、その使い方が違うんじゃないか?それは『その日に得た収入はその日に使い果たす』という江戸っ子の気質を表したものだ。サラはイギリス人だろうに」

 

あら?使い方間違ったかなぁ?

これは、元日本人としてまだまだ勉強が足りませんね。

 

「あ、龍宮さんお疲れ様でした。ですが、パーッと使おうっていうのも似たような感じじゃないですか」

 

「それはもちろん私も参加させてもらえるんだろうな?」

 

「もちろん、参加してください。この間はお世話になりましたからね」

 

「あれくらい、サラなら問題なかっただろうに」

 

うーん、やっぱり麻帆良祭で魔法使いと対立する超鈴音(チャオリンシェン)サイドの龍宮さんは、私の能力とか気になるんだろうなぁ。

龍宮さんがいつから超さんと組んだのかは知らないけど、またしばらくは目立たないようにしとかないと。

 

「いえいえ、私ではダメなんですよ。そういえばバイト代はどこに請求となりました?」

 

「学園長だな。もっとも、そんなに大変な仕事ではなかったから、些か値段は下がるが」

 

「なに難しそうな話をしてるの?」

 

「いえ、何でもありませんよ。まき絵さん。それよりも今日はどうされますか?」

 

「今日はお土産でも買い行こ思てんけど。さすがに4日目となるとみんなだらけモードやし、のんびりしたいやん?」

 

「そうですね。私ものんびりするというのに賛成です」

 

「それじゃあ、早速出かけるわよ!」

 

という祐奈ちゃんの号令のもと、私達は街へと繰り出すのでした。

 

 

 

 

ーエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルー

 

15年ぶりに麻帆良の外に出ることができた。

これには、伝説の鬼神とやらを召喚したあの主犯に感謝しないとな。

じじいは今頃、呪いの精霊を騙すための術式に使う書類に判子を押し続けてることだろう。

だがそれも自身の見通しが甘かったのが招いたことだ。

仕方のないことだろう。

そういえば、今回の騒動の主犯を捜してやろうと思って、従者のチャチャゼロを飛ばしたがすぐに見つかった。

どうも、炫毘古社(かがびこのやしろ)の境内にいたらしい。

私が最後に確認したのは鬼神を壊すときに飛ばされる姿だったが、神社とは違う方向に飛んでいったはずだ。

それが神社に戻ってきて、なおかつ動けないように糸で縛られていたということは…。

これはサラ・ヒューイットの仕業だな。

奴には未来を視る能力があると言っていた。

但し、その未来には奴がいないという、およそ未来視と呼べるのか疑問を持つ能力ではあるが。

ならば今回の騒動も奴の予測範囲内ということだったのだろう。

奴にはいろいろ聞かねばならんことがあるが、いずれ奴から話す日が来るだろう。

あれでも我が弟子なのだ。

それなりに信用しているし、奴もそれに応えようと私の特訓についてきているのだからな。

そんなことより今は目の前のことの方が重要だ。

私を麻帆良に縛り付けたあの馬鹿(ナギ)の別荘へ、私や茶々丸、ぼーややその他とともに来た。

案内はあの馬鹿の仲間だった近衛詠春が引き受けてくれた。

近衛詠春にはスクナの封印という面倒も押し付けてしまったが、娘の安全も確保されるからか、それくらいの労力は気にしていないのだろう。

あのじじいとはえらい違いだ。

 

「問題はあの白髪のガキだな」

 

「ええ。そちらに関しても現在調査中です。わかっているのは、彼が『フェイト・アーウェルンクス』と名乗っていたこと。一月程前にイスタンブールの魔法協会から日本へ研修に派遣されたことですね。ですがこの経歴も作られたものでしょう」

 

「ふん…」

 

私は近衛詠春の報告に思わずため息をついてしまった。

今回はたまたま私が、ギリギリのタイミングで奴と対峙できたからよかったものの、ぼーやにはまだ荷が重過ぎる相手だろう。

サラ・ヒューイットならば、魔力を吸収する能力やら拡大した魔力を使って、力技でどうにかするかもしれんが、今回目立った行動をしなかったということはその段階ではなかったのだろう。

いずれはフェイト・アーウェルンクスのような人形みたいな奴と戦うことがあるかもしれんとなると、あれに対抗できる魔法を開発しておくのもいいかもしれんな…。

 

「ここがナギの別荘です。10年の間に草木が茂ってしまいましたが、中は綺麗にしてありますよ」

 

何で天文台なんかを個人の家に作ってあるんだ?

あの馬鹿に星を観るなんていうロマンチックなところがあったんだろうか…。

家の中は近衛詠春の言う通り、綺麗に整えてあった。

 

「彼が最後に訪れた時の状態で保存してます」

 

とは近衛詠春の言葉だが、確かにテーブルにはコップや読みかけの本が置いてあって、あの馬鹿がついさっきまでこの場にいたような雰囲気が残っている。

本棚には魔法書の類が豊富に並んでいて、本が大好きな図書館3人組の綾瀬夕映、早乙女ハルナ、宮崎のどかが早速手を出しているが…

 

「オイ、アレはいいのか?」

 

一応この別荘を管理してただろう近衛詠春に尋ねてみる。

 

「素人目には何の本かはわからないでしょう。ほとんどラテン語や古典ギリシャ語ですし。ですが…、お嬢様方!故人の物ですので、余り手荒には扱わないで下さいね!…こう言っておいたら大丈夫でしょう」

 

そうだな、私もしばらく別荘内を見て回るとするか。

 

 

「このか、刹那君。明日菜君もこちらへ…。あなた達にもいろいろ話さなければならないことがあります」

 

近衛詠春が(おもむろ)にぼーやとその従者たちを呼んだので私もその話を聞くことにした。

 

「この写真はサウザンドマスターとその戦友達です。この黒い服を着たのが私で、その隣にいるのが15歳のナギ…、サウザンドマスターです。今から20年前に撮った写真ですね」

 

「わひゃー⁈これ父様?若ーい!」

 

そこには確かに私と初めて出会った時より幼く見えるナギが写っていた。

 

「へー。どれどれ?どれがネギのお父さんなの?」

 

「この人やて。ええ男やー。ネギ君もこうなるんかな♪」

 

確かにぼーやが成長すれば、あの馬鹿同様、いや律儀な分性格はさらにいい男になるかもしれんな。

 

「え…⁈」

 

「どうかしたか?神楽坂明日菜」

 

「いや…。ううん、何でもないよ」

 

写真を見て何か思わずと言った声を上げたみたいだが、何だったんだか…。

 

「私は、かつての大戦で、まだ少年だったナギと共に戦った戦友でした。そして…、20年前に平和が戻った時、彼は既に数々の活躍から英雄…、サウザンドマスターと呼ばれていたのです。以来彼と私は無二の友人同士であったと思います。しかし、彼は10年前に突然姿を消しました。彼の最後の足取り、彼がどうなったかを知る者はいません。但し、公式記録では1993年死亡…。私にもこれ以上のことは…。すいません、ネギ君。そのかわりこういうものが…」

 

近衛詠春にも公式的なことしかわからないか…。

しかし、ぼーやは6年前にあの馬鹿から杖を譲り受けていると。

奴は息子も放ってどこをほっつき歩いてるんだか…。

 

「ハーイ!そっちの皆さん、難しい話は終わったかな?記念写真を撮るよー!下に集まって‼︎」

 

何だ、そんなの。

私は面倒くさいから別の部屋に行こうと思ったのだが…、先に捕まってしまった。

 

「わ、私はいいぞ!そんなもの。っていうか頭を掴むな、朝倉‼︎」

 

結局、私も写真撮影に収まることになった。

これは仕方なくだぞ、仕方なく!

 

 

 

 

ーサラ・ヒューイットー

 

修学旅行5日目となりました。

といっても今日は新幹線に乗って、麻帆良に戻ったら学園駅で解散なんですけどね。

今は新幹線の中です。

出発前は某クイズ番組みたいにテンションが高かったクラスのみんなも、今や眠ってしまって車内はとても静かです。

ネギ君も近衛詠春さんからナギさんの手がかりをもらうことができて、嬉しさのあまり元気一杯だったんですが、疲れ切ったのかアスナちゃんにもたれかかるような格好で眠ってます。

新田先生の評価通りまるで姉弟のような姿でした。

こういう平和な光景が続いたらいいんですが、ネギ君の冒険譚は始まったばかりなんですよね。

せめて今だけはそっとしておきましょう。

車内が静かなんで私も少し眠くなってきました。

これからのことは後で考えることにします。




修学旅行終わりました。
同時にキリがいい20話まで話を書くことができてよかったです。
次は30話を目指します。

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