ーサラ・ヒューイットー
シネマ村での闘いから数時間、辺りはすっかり暗くなりました。
私は
いやぁ、本殿までが遠いこと遠いこと。
ですがゆっくり歩いていきます。
本殿ではまだフェイトが暴れてるみたいですからね。
あ、このちゃんを抱えたフェイトの式神が飛んで行きました、
ということはそろそろ…、よし!
フェイトも本殿からいなくなりました。
おそらく水の
本殿から消えたと思ったら離れた場所に同じ魔力が感じられます。
ちょっと急いで本殿へ向かいましょう。
ネギ君、アスナちゃん、せっちゃん達も本殿から急速に離れているのを感じながら本殿にやっと到着しました。
さて、今回の騒動に巻き込まれて、フェイトに石化された本屋ちゃん、和美ちゃん、ハルナちゃんはどこにいますかね?
…さすが、関西呪術協会の総本山。
本殿も広いし部屋数が多い。
目標を探すのも一苦労かなぁって思ったんですが、関西呪術協会の長であり、このちゃんの父でもある近衛詠春さんが廊下で石化しているのを見つけました。
この付近を探せば…、ああ、いました。
しっかり石化されてしまった3人を発見。
石化される前には夕映ちゃんもこの部屋にいたんですが、この部屋にいないところを見ると無事石化を免れて、助けを呼びに行ったことでしょう。
まさか、フェイトが態々夕映ちゃんを追いかけるようなことはしてないと思いますが…。
一応確認しておきましょう。
携帯を取り出して通話ボタンを押し、しばらく待ちます。
「なんだ、サラ?今電車内なんだが…」
「それはすいません、龍宮さん。では手短に。そこに長瀬さんと
「あぁ、いるよ。これもサラの予想通りか?」
「残念ながら悪い予想が当たったというところでしょうか。おそらく苦戦していると思うので急いであげてください」
「了解した」
「では電車内ということですのでもう切りますね。失礼しました」
「じゃあ、後でな」
これで後詰は大丈夫ですね。
私もネギ君達の後を追いましょう。
本殿を出てネギ君の魔力を感じる方へ向かうと、前方に竜巻が見えてきました。
ということは、ネギ君達は既に天ヶ崎がこのちゃんの魔力を使って召喚した鬼達によって囲まれているということでしょう。
天ヶ崎達はこの地に封印された「
それでネギ君達は作戦をたてるために竜巻の障壁を起こしていると。
あの竜巻の中ではネギ君とせっちゃんが仮契約を結んでいるはずです。
こちらも今後重要な戦力となるので、今のうちにパートナーになってもらわなければなりません。
森の中を走っていると竜巻の風が収まり、その起点から今度は斜め方向に竜巻が起こり、召喚された鬼が10数体ほど吹き飛ばされていきました。
その空いた鬼の包囲網からネギ君が杖に乗って飛んでいきます。
このちゃんを追っていったのでしょう。
フェイトも見当たらないので、私が出て行っても問題ないでしょう。
鬼の包囲網の外から虚空瞬動でその中心地へと飛び込みます。
「遅くなってすみません、お二方」
「え、サラ?今空を飛んで来なかった⁈」
「サラさん、どうしてここに来てしまったんですか?」
アスナちゃんもせっちゃんも、ひどく驚いた顔で私を見ています。
「アスナさん、今のはちょっとジャンプしただけですよ。刹那さん、微力ながらお助けいたします」
「これはこれは。勇ましい嬢ちゃんやなぁ」
敵のリーダーと思われる鬼から声をかけられます。
「見たところ、100体ちょっと、といったところでしょうか?せっかく現世に召喚されたところ申し訳ないんですが、すぐにお還りいただきますね」
「そう言われて、わしらも『はい還ります』ちゅう訳にはいかんからのぉ。力尽くでやってみぃ。お前ら相手してやりな」
リーダーの命令で鬼達が得物を手に、包囲網を縮めるように迫ってきます。
「サラ⁈なんで挑発なんかするのよ!」
「アスナさん、どのみちこいつらをどうにかしないと、このかさんを助けには行けませんよ?アスナさんは自分の身を守る程度に。刹那さんはアスナさんを守りながら闘ってください」
「サラさんはどうされるのですか⁈」
「これくらいの有象無象など、どうということはありません。しばらくすれば援軍も来ます。さぁ、行きますよ!」
振りかぶられた斧や鉈、棍棒といった敵の得物を鉄扇で逸らし、身体を半歩ずらして避け、魔力を込めた糸を鬼の腕に絡めて引き絞り、腕をすっぱり切り取ります。
「
鬼の包囲網にくぼみを作りそこに飛び込むと、私とアスナちゃん達を分断するように鬼が私を囲みます。
それが私の狙いと知らずに。
ちょっと距離が離れてるけど、まぁ問題ないでしょう…。
能力発動!
途端に範囲内にいた低級の鬼は現世に留まるだけの魔力がなくなり還っていきます。
中級の鬼も少し耐えたものの、すぐに還りました。
「な⁈なんや、あの嬢ちゃん⁉︎ハリセンの嬢ちゃんより危険やないか!槍持っとるんが相手せい‼︎他のは嬢ちゃんに近付いたらあかん‼︎」
「そんなこと言わずに相手してくださいよ〜。お〜にさ〜ん、こ〜ちら〜。手〜の鳴〜る方へ〜」
アスナちゃんやせっちゃんの視界内に入らないよう注意しながら、当たるを幸いと鬼に接近してどんどん魔力を吸収していきます。
いやぁ、麻帆良で侵入者を相手してた時は能力も魔力も封印している状態だったんですが、今回は能力だけですが使えるので楽だし、あっさり鬼が消えていくんで楽しいですね!
テンションも上がるというものですよ。
槍を持った鬼が突いてきますが、操糸術で槍の矛先を無理矢理逸らして相手に接近。
さらに吸収した魔力で魔法を詠唱。
「
アスナちゃんを追いかけてた鬼を撃ち抜いてあげます。
「あ、ありがとうサラ!」
「いえいえ、でもあまり暴れないほうがいいのではないですか?今パンツ履いてないんでしょう?」
「なんでサラが知ってんのよ⁉︎」
「ほら、油断したらダメですよ。
またアスナちゃんに迫っていた鬼の頭を撃ち抜いて還してやります。
そのまま瞬動でちょこちょこ動き回って、魔力を吸収しては攻撃を繰り返し、鬼の数が30くらいになった頃、森の向こうに魔力でできた柱が眩い光を放っています。
「どうやら
「残念ながら月詠さん、あなたの相手はしばらく私です。刹那さんとアスナさんはこれからネギ君のところへ行かねばなりませんので」
「え?サラ、まだ敵は30近くいるのよ?」
「それに月詠はあんななりですが、神鳴流の剣士としてはかなりの腕前ですよ⁈」
「今助けが必要なのは私よりネギ君ですから。それにもうすぐ援軍もやってくるはずですので何の問題もありません。あと刹那さん、貴女の本当の姿を見ても誰も貴女を拒む人はいませんよ。このちゃんとその姿、どちらが守るべき大切なものか間違えないでくださいね」
せっちゃんは烏族と人間のハーフで、しかも烏族の中ではタブーとされる白い翼を持っているせいで、同族から迫害された経歴があり、それで人に近付こうとしないんですよね。
私はあの翼好きなんですが…。
「な⁈どうしてそれを…‼︎」
「ほら、早く行ってください」
「センパイ、行かせまへんえー」
そう言って二刀を持って飛びかかる月詠さんを糸で雁字搦めにします。
さらにアスナちゃんを逃すまいと立ちはだかる鬼に
「
光の矢を当て道を空けます。
「ありがとうサラ!気をつけてね‼︎」
「すいません、サラさん。行ってまいります!」
「はい、いってらっしゃい」
「これは…、糸ですかー?でも、えーい!」
という、いつも通り間の抜けた気合いとともに、手に持った二刀で糸を切ろうとする月詠。
その前に糸を回収して月詠を解放します。
「せっかくセンパイと楽しもう思てたのに…。それを邪魔したからには、そちらさんが相手してくれはるんでしょうなぁ?」
あら?愛しのセンパイとの闘いを邪魔されたからか月詠がちょっと怒ってる?
まぁ、エヴァちゃんに比べたら全然怖くないけど。
「私の名前はサラと言います。しばらくはお相手してあげますよ」
「では、サラさん。行きますよー」
そう言ってこちらに近付いてくる月詠。
てっきり斬空閃とか神鳴流の技を使ってくると思ったんですが。
振り下ろされた太刀を鉄扇で逸らし、がら空きのお腹に対して小太刀が迫ります。
が、小太刀を持っていた方の手首を掴み、身体を時計回りに回し、その勢いを使って月詠を鬼がいる方へ投げ飛ばし、
「
月詠と周りの鬼に向けて氷の矢を放ちます。
牽制目的の攻撃なのですぐ弾かれました。
「そんな攻撃、ウチには効きまへんえ」
「もちろんわかってますよ。ですが私もそろそろここを離れなければなりません」
さっき光の柱が立っていたところに、今は2つの顔に4本の腕を持つ鬼神が見えます。
あれがスクナなんでしょう。
ならもうすぐ修学旅行の騒動も終わりですね。
「替わりの人もやって来たみたいですし」
そう言うと、私と向かい合う月詠、鬼達の横方向から銃撃が起こり数体の鬼が還っていきます。
「なんだ、サラ?全部倒してくれるんじゃなかったのか」
「やっとあのオバケと闘えるアルか?」
「龍宮さん、見てたなら早く加勢してくださいよ。古菲さん、ここにいる鬼達と好きなだけ闘っていいですよ」
そうなんです、私が頑張ってる横でそれを龍宮さんと古ちゃんは観戦してたんですよね。
「この仕事料はサラに請求したらいいのかな?」
「やったー!早速闘うアルよ‼︎」
「これは見積もりが甘かった学園長の責任ですね。なので、学園長にお願いします。では月詠さん、申し訳ないんですが、ここで失礼します」
そう言って鬼神のいる方へと走っていきます。
走ってる途中で鬼神の側を飛ぶ白い翼が見え、鬼神の肩にいたこのちゃんをさらっていきました。
烏族としての能力を解放したせっちゃんが、天ヶ崎からこのちゃんを取り戻したのでしょう。
しかし、天ヶ崎にとっての悲劇はまだ終わりません。
顕現していたスクナを抑えつけるような結界が発生し、鬼神は身動きがとれなくなります。
さらに鬼神は氷漬けにされ、その身体はガラスを砕くように壊れてしまいました。
これは、原作通りエヴァちゃんと茶々丸さんが学園から来てくれたということですね。
そして、エヴァちゃんがここにいるということは、学園長が呪いの精霊を騙すために5秒に1回書類に判子を押し続けるという超重労働を課せられているのでしょう。
まぁ、可愛い孫娘のためです、仕方ないですよね。
「エヴァさん、お疲れ様でした」
「なんだ、サラ・ヒューイット。貴様もいたのか?」
「サラさん、こんばんは」
「茶々丸さん、こんばんは。いやぁ、ネギ君達を足止めしようとしていた鬼と
「エヴァンジェリンさん!うしろっ‼︎」
ネギ君が弾かれるように動き、エヴァちゃんを抱えようとします。
が、それは邪魔になってしまうので糸で動きを止めます。
エヴァちゃんの背後には水の扉で移動して来たフェイトがいて
「
と呪文を唱え、地面から石の槍というよりも柱に近い物を生やして攻撃してきました。
さすがに師匠に傷を負わせるわけにはいきませんので、槍の進行方向に魔力を込めた糸で編んだ網を設置。
そして能力発動。
これでエヴァちゃんに迫った石の槍は網にかかった部分が消滅し、無力化できました。
これにはフェイトも驚いたのか動きが止まります。
「これは…どういうことかな?」
その隙を見逃すエヴァちゃんではありません。
手に魔力を込め、一気に振り抜きます。
「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
そう言って、エヴァちゃんに引き裂かれた身体を水に替えて、フェイトはこの場を去りました。
「全く、ぼーやもサラ・ヒューイットも心配性だな。あれで腹を貫かれようと問題ないというのに」
「そんなスプラッタなシーンをアスナさん達に見せれるわけないでしょう」
「よかった…、エヴァンジェリンさん」
そう言うと、ついに限界を迎えたのかネギ君が倒れます。
フェイトと闘った時に石化魔法の攻撃を右手に受け、右の上半身まで石化が進行してしまってますね。
このちゃんやせっちゃん、応援を呼んでくれた夕映ちゃん、それに応じた長瀬さん、龍宮さん、古ちゃん、敵だったはずの小太郎君もやってきます。
まぁ、小太郎君もネギ君のライバルみたいなものですからね。
「ど、どうにかできないの?エヴァちゃん⁈」
「わ、私は不死身だから治癒系の魔法は不得意なんだよ…」
「このかさん、ネギ君と仮契約してもらえませんか?」
「そうか!サラの姐さんが言う通り、仮契約をすればいいんすよ‼︎仮契約には対象の潜在力を引き出す効果があるんで、このか姉さんのシネマ村で見せた治癒力があれば…」
「みんな…。ウチ、せっちゃんに色々聞きました。ありがとう。今日はクラスのみんなに助けてもらったんに、ウチにはこれくらいしかできひんから…」
エロガモがネギ君の周りに魔法陣を描きます。
「お嬢様…」
「ネギ君…、しっかり…」
ネギ君とこのちゃんが仮契約を結び、その潜在力によってなんとか石化を解除し
「このかさん…、無事だったんですね。よかった…」
ネギ君も無事、意識を回復することができました。
さて、私は最後の〆をやってきますか。
「エヴァさん、ネギ君も回復したみたいなんで、私は先にホテルへ戻りますね」
「なんだ?他の奴らと一緒に本山には行かないのか?」
「すいません、ちょっと外せない用事がありまして」
「まぁ、いいだろう。貴様がいなくとも、本山の石化解除には近衛木乃香さえいれば十分だからな」
「ありがとうございます。ではでは、皆さん。私はお先に失礼します。ホテルでお待ちしてますね」
それだけ告げてこの場を離れます。
何と言っても私の目標は現在も逃走中ですからね。
さっきエヴァちゃんがスクナを破砕した時に、その衝撃で吹っ飛ばされた目標を探しながら森の中を走ると…、いました。
私達がいたところからひたすら遠くへ離れるように走っています。
ですが、これ以上は逃れられません。
魔力を通した糸でその手足を動かせないよう磔にします。
「な⁈何やこれは‼︎」
「こんばんは、天ヶ崎千草さん」
「お、お前は駅で見たガキどもの中にいた…」
「その前にも会いましたよ、新幹線の中で。私のお菓子までカエルに変えましたね」
と話している間に能力発動。
「あぁ!あの時の‼︎」
「思い出していただけましたか。ところで腕や足から力が抜けてるのを感じません?」
「何を言うて…⁈」
「実はですね、私には魔力や気を吸収する能力があるんですよ。そして私の足下、見えますか?こうやって植物が枯れていくんですが…。さて、今あなたは私に捕まってますね。この後どうなると思いますか?」
「いや…!止め…‼︎」
天ヶ崎が制止する声を無視して近付き、態と腕を広げて抱きつく素振りを見せて…
「ワッ‼︎」
と大きな声を出してやります。
それだけで我慢の限界を越えたのか、天ヶ崎は気絶してしまいました。
まぁ私の能力範囲内にいたから全身から自分の気が抜けていくのを感じていたのでしょう。
それで本能的に私に接触したらどうなるのか悟って気絶をしたと。
能力自体は既に切ってあるんですけどね。
これだけ怖い思いをしたら再起を図ろうなんて気にもならないでしょう。
少し遠回りになりますが、天ヶ崎を本山の境内に置いていけば、誰かが気付いて回収してくれるでしょうし。
そうと決まれば、さっさとホテルへ戻りましょう。
こうして修学旅行3日目もなんとか終えることができました。
ということで鬼と天ヶ崎に八つ当たりしてストレスを発散したサラでした。
サラの無双状態です、一人勝ちです。
これくらいはハッチャケてもいいですよね。