憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第16話

ーサラ・ヒューイットー

 

ロビーでネギ君やアスナちゃん、せっちゃんと話をして解散しましたが、部屋に戻って10分ほどしてせっちゃんから電話がかかります。

 

「サラさん、このかお嬢様が敵の手によりさらわれました!」

 

「了解です。とにかく外で合流しましょう」

 

「ん?サラ、どうかしたのか⁈」

 

あら、4班の皆さん寝ているかと思ったんですが龍宮さんは起きてましたか。

さすが凄腕スナイパーさんですね。

 

「いえいえ、ちょっとした野暮用ですよ。あぁ、龍宮さんが出るまでもないので安心してください」

 

そう言って、ベランダに出ながら靴を履きます。

 

「それならいいが、何かあったら遠慮なく言ってくれ。もちろん有料だがな」

 

なんて言う龍宮さんはとびっきりの笑顔です。

 

「まぁ、今回依頼が入るとしたら学園長か、今回の件の関係者にツケますから」

 

この一言とともに、私は外へと飛び出しました。

虚空瞬動で上空へと跳び、周りを見渡すと…、いました!

ネギ君は天ヶ崎が残した猿の式神4体にとりつかれ、身動きが取れないみたいです。

とりあえず、ネギ君を助けましょう。

糸を繰り出して式神達の首に巻きつけ、一気に引き絞ると簡単に式神達は元の紙型へと戻りました。

紙型の頭と胴体は切り離されてますが。

そこにアスナちゃんとせっちゃんもやってきたので、私もネギ君のもとに虚空瞬動で駆けつけます。

 

「ちょっと、サラ?今の猿達どうやって倒したのよ⁈しかも何で空から降りて来んのよ⁉︎」

 

「説明は後でするので、今は誘拐犯を追いますよ」

 

「そうです、神楽坂さん!今は一刻も早くお嬢様を取り戻さなくては」

 

せっちゃんは誘拐犯が逃げた方へと走り出します。

 

「あぁ、もう!仕方ないわね、行くわよ。ネギ‼︎」

 

「はい、アスナさん!」

 

2人もせっちゃんが走って行った方へと駆け出しました。

その後を私も追うとすぐに3人に追いつき、誘拐犯の姿も見えてきました。

一言で言うと猿の着ぐるみです。

誘拐犯である天ヶ崎は術で召喚された猿を着ることで、人質でもあるこのちゃんを抱えてもなお速いスピードで逃げることができていました。

しかし、やはり人質を抱えているからか、私達もだんだん天ヶ崎に追いついてきます。

 

「待ちなさーい!このかさんを放しなさい‼︎」

 

ネギ君、待ちなさいと言われて待つ犯罪者はいないんですよ…。

天ヶ崎はホテルから最寄りの駅へ駆け込んで行きました。

私達も駅へ入ると、天ヶ崎はすでに電車の中にいて、その電車も発車ベルを鳴らしています。

ネギ君達もギリギリで乗車することができました。

私は電車の屋根に乗ってネギ君達の後を追います。

電車の中に乗ることもできたんですが、このあと天ヶ崎が札を使って電車の中に洪水を起こすのを知っていたので、他の人には悪いんですが屋根に乗ることにしました。

すると案の定、ネギ君達の乗る車両の窓や乗車口の隙間から水が溢れ出します。

これはいけませんね。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ) 光の11矢(セリエス・ルーキス)

 

光の矢10本で車両左右にある窓を5枚ずつ割り、最後の1本を水の発生源であるお札に命中させ、これ以上水が溢れないよう、その効力を失わせます。

すぐに次の駅へと到着し、車両の扉が開かれると残っていた水とともに天ヶ崎とこのちゃん、ネギ君達が吐き出されました。

 

「み、見たか…。着ぐるみ女。嫌がらせをやめて大人しくお嬢様を返せ」

 

「ハァ、ハァ…。なかなかやりますな。しかしこのかお嬢様は返せまへんえ」

 

少し水を飲んでしまったのか、せっちゃんが咳込みながらも告げると、天ヶ崎はまだ諦めるつもりがないのか一言返した後、またこのちゃんを、抱えて逃げ出します。

それを追いかけながら、ネギ君とアスナちゃんが疑問を口にします。

 

「刹那さん、あのお猿さんが言ったのはどういうことですか?」

 

「ただの嫌がらせじゃなかったの?何であのおサルはこのかを狙ってるのよ⁈」

 

「実は、関西呪術協会の中にこのかお嬢様を東の麻帆良学園に渡したことを心良く思ってない輩がいて…。おそらく、奴らはこのかお嬢様の力を利用して、関西呪術協会を牛耳るつもりなのだと思われます」

 

話のスケールが大きくなったことにネギ君とアスナちゃんは驚きを隠せません。

それもそうですよね、修学旅行と親書を届けるだけの京都旅行だったはずが、一組織の存亡を巡る戦いに巻き込まれつつあるんですから。

せっちゃんの説明は続きます。

 

「私も学園長も奴らを甘く見てました。まさか修学旅行中に誘拐という暴挙にでるとは…。しかし関西呪術協会は裏の仕事も請け負う組織、このような強硬手段を取る者がいないわけではなかったということです!私としたことが…」

 

話をしている間に駅の出口に辿り着きました。

すると着ぐるみを脱いだ天ヶ崎が私達を待ち構えるように階段の上から見下ろしています。

 

「よーここまで追ってこれましたな。そやけどそれもここまでですえ。3枚目のお札ちゃんを使わせてもらいますえ」

 

「おのれ!させるものかっ‼︎」

 

せっちゃんが抜刀の構えを取りながら天ヶ崎へと近付きますが

 

「お札さん、お札さん。ウチを逃がしておくれやす…。喰らいなはれ!

三枚符術 京都大文字焼き‼︎」

 

天ヶ崎の術が先に発動し、五山送り火と同じような「大」という文字の炎が上がり、せっちゃんの行く手を遮ります。

 

「ホホホ、並の術者ではその炎を越えられまへんえ。ほな、さいなら」

 

天ヶ崎は随分自信があるみたいですが、残念ながらそうはいきません。

 

「ラ・ステル・マ・スキル・マギステル

吹け(フレット) 一陣の風(ウネ・ウェンテ)

風花(フランス) 風塵乱舞(サルタティオ・ブルウェレア)‼︎」

 

ネギ君の魔法が風を巻き起こし、炎の壁を吹き飛ばします。

 

「逃がしませんよ!このかさんは僕の生徒で…大切な友達です‼︎

契約執行(シス・メア・パルス) 180秒(ペル・ケントゥム・オクトーギンタ)(・セクンダース)

ネギの従者(ミニストラ・ネギィ)神楽坂明日菜(カグラザカ・アスナ)』‼︎」

 

ネギ君からアスナちゃんに魔力が渡され、アスナちゃんから光が溢れます。

せっちゃんはその様子を呆然と見つめるだけです。

 

「桜咲さん、サラ。行くわよっ!さっきの火、下手したら火傷しちゃってたわ。冗談じゃ済まないわよ‼︎」

 

「え…。は、はい!」

 

「了解です」

 

せっちゃんも我に帰ったのか、3人がこのちゃんを取り戻さんと天ヶ崎へ駆けていきます。

 

「アスナさん!パートナーだけが使える専用アイテムを出します‼︎アスナさんのは"ハマノツルギ(エンシス・エクソルキザンス)"という武器だと思われます。受け取ってください!」

 

「武器⁈そんなのもあるのね…、いいわ。ネギ、頂戴!」

 

そうなんです、パートナー契約を結んだ際、従者が描かれたカードが出ます。

特にマスターの魔力や気が高いとパートナーに対して、アーティファクトというパートナー専用のアイテムも出現するんです。

アスナちゃんのカードには「ハマノツルギ」という剣を持ったアスナちゃんの姿が描かれているので、当然剣が出てくるはずなんですが…

 

「ちょっと何よこれー⁈ただのハリセンじゃないの!」

 

何故か出現したアイテムはハリセン。

 

「神楽坂さん!」

 

「えぇーい!それで行っちまえ、姐さん‼︎」

 

そう、アイテムが何であろうと敵は待ってくれません。

せっちゃんとエロガモの叫びに覚悟を決めて、アスナちゃんは天ヶ崎へと斬り?かかります。

せっちゃんも自身の愛刀、夕凪を振るいますが、天ヶ崎が素直にそれを受けるわけもなく、猿と熊、2匹の着ぐるみのような式神を召喚し、アスナちゃんとせっちゃんの武器を受け止めました。

猿は天ヶ崎が着ていたものなので、熊を新たに召喚したというのが正しいですね。

 

「ホホホホ、ウチの猿鬼と熊鬼(ゆうき)はなかなか強力ですえ。一生そいつらの相手でもしなはれ」

 

そう言って天ヶ崎はこのちゃんを抱えて逃げる体勢に入りますが、アスナちゃんが持つアイテムは「ハマノツルギ」。

即ち、「破魔の剣」。

呪術で召喚された鬼との相性は最悪と言ってもいいでしょう。

アスナちゃんの気合のこもった一撃は猿鬼を一発で送り還します。

ちょっと私も仕事をしますか。

熊鬼の首にさっきの猿同様糸を巻きつけます。

但し、私の魔力を込めて。

そして能力発動!

糸を介して熊鬼を現世に留めていた魔力を吸収し、あっさりと熊鬼も送り還しました。

天ヶ崎もせっちゃんも、ネギ君でさえアスナちゃんが猿鬼を送り還したことに驚いていたので、私以外には熊鬼が急に消えたようにしか見えなかったでしょう。

 

「な?何で熊鬼も消えたんや⁈」

 

「このかお嬢様を返せーっ‼︎」

 

せっちゃんが天ヶ崎にできた隙を見逃さず斬り込みますが…

 

「え〜〜い」

 

という気の抜けた掛け声とともに現れた二刀流の剣士。

人形みたいな容姿とは裏腹に闘うことが大好きで大好きで仕方ないという戦闘狂(バトルジャンキー)

魔法世界でもネギ君と、というかせっちゃんと対峙する月詠の登場です。

 

「どうも〜〜。神鳴流です〜〜。月詠いいます〜〜。おはつに〜〜」

 

月詠はせっちゃんに任せましょう。

アスナちゃんは…、新たに召喚された猿達に手間取ってますね。

 

「ホホホ、これで足止めOKや。しょせん素人中学生に見習い剣士や。さっさと帰りましょ」

 

天ヶ崎はこのちゃんを猿達に担がせ逃げようとしています。

が、そうはいきませんよ。

 

「ネギ君!」

 

「兄貴!このか姉さんをおろした今がチャンスだ‼︎」

 

「はい!ラ・ステル・マ・スキル・マギステル

風の精霊(ウンデキム・スピリトゥス) 11人(アエリアーレス)‼︎

縛鎖となりて(ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニミムクム・カプテント)

魔法の射手(サギタ・マギカ) 戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)‼︎」

 

ネギ君の放った矢が天ヶ崎に向かいますが…

 

「あひぃっ⁈お助けー‼︎」

 

そう言ってこのちゃんを盾にするかのように身を隠します。

さすがにこのちゃんを傷付けるわけにもいかず、ネギ君は矢を明後日の方向に曲げました。

 

「こ、このかさんを放してくださいっ!卑怯ですよっ‼︎」

 

「はは〜〜ん、なるほど…。読めましたえ。甘ちゃんやなぁ…。人質が多少怪我しようと、気にせず撃ち抜けばえーのに。ホーホホホ!この娘は本当に役に立ちますなぁ!この調子で今後も利用させてもらいましょ!」

 

その言葉に猿達にまとわりつかれてるアスナちゃんが反応します。

 

「ちょっと⁈このかをどうするつもりなのよ⁉︎」

 

「せやなー…、まずは呪薬と呪符でも使て口を利けへんよーにして、上手いことウチらの言う事聞く操り人形にでもなってもらうのもえーなぁ…」

 

この言葉にネギ君、アスナちゃん、せっちゃんの怒りが頂点に達します。

特にせっちゃん、あまりの怒りに血管が浮かび上がってます。

私だって気分がいいわけありません。

天ヶ崎はこのちゃんを肩に担ぎ、

 

「ウチの勝ちやなぁ。このかお嬢様…、なまっちょろいおケツしよってからに。かわえーもんやなぁ。ほななー、ケツの青いクソガキども。おシーリ、ペンペーン♪」

 

そう言って浴衣がはだけてパンツが見えてるこのちゃんのお尻をペチペチと叩いて挑発する天ヶ崎。

この場面を知っているとはいえ、実際にやられるとムカつきます。

しかも天ヶ崎如きがエヴァちゃんにシゴかれてる私を見下してるのもムカつきます。

何より原作通りに事を運ぶために必要以上に手出しをできない自分がムカつきます。

 

ちょっと反省してもらいましょう。

操糸術で天ヶ崎の両手首、足首を縛って大の字になるよう引っ張ります。

別の糸で支えを失って、天ヶ崎からずり落ちようとしているこのちゃんを一本釣り…、から引き寄せて抱きかかえます。

はい、このちゃんの回収成功。

その間に猿を送り還したアスナちゃんと、月詠をぶっ飛ばしたせっちゃんが未だ磔状態の天ヶ崎へと向かい、

 

風花(フランス) 武装解除(エクサルマティオー)‼︎」

 

ネギ君の魔法で素っ裸にされ、アスナちゃんにハリセンで引っ叩かれる天ヶ崎。

もちろんこの間も磔です。

さすがにせっちゃんの技を磔のままで受けさせたらマズいので糸から解放します。

 

「秘剣 百花繚乱‼︎」

 

せっちゃんの技を喰らって吹っ飛ばされる天ヶ崎。

人質も失い不利を悟ると

 

「なな…、なんでこんなガキどもが強いんや…。おぼえてなはれー!」

 

という捨て台詞を吐き、どこに隠し持っていたのか呪符で猿鬼を召喚し、月詠とともに撤退していきました。

これで今日明日は大丈夫ですね。

 

「あいつめー!」

 

「深追いは禁物ですから、追う必要はありません。神楽坂さん」

 

アスナちゃんは逃げられて悔しいみたいですが、せっちゃんの言う通りです。

 

「それより、あの女…。薬や呪符を使うとか言ってたな。このか姉さんは大丈夫か⁈」

 

「…まさか⁉︎」

 

エロガモの言葉に思わずせっちゃんが固まります。

私は抱えてたこのちゃんをせっちゃんに渡しました。

原作とは異なり、ネギ君の魔法が当たらなかったので、このちゃんは浴衣のままです。

 

「このかお嬢様!お嬢様‼︎しっかりしてください‼︎」

 

「ん…。…あれ、せっちゃん…?ウチ…、夢見たえ…。変なおサルにさらわれて…。でも、せっちゃんやネギ君やアスナ、サラちゃんも助けてくれたんや…」

 

「…よかった、もう大丈夫ですよ。このかお嬢様…」

 

そんな昔と同じように笑ってくれたせっちゃんを見てこのちゃんも思わず涙を浮かべます。

 

「よかった…。せっちゃん、ウチのこと嫌ってるわけやなかったんやなぁ…」

 

「えっ…、そ、そりゃ、私かてこのちゃんと話し…。し、失礼しました!わ、私はこのちゃ…。いえ、お嬢様をお守りできれば、それだけで幸せ…。いや、それも陰からひっそりお支えできれば…。その…、あの…。御免‼︎」

 

このちゃんの笑顔を見て、つい素の部分が出てしまったせっちゃん。

それに気付いて、元のお堅い口調に戻り、恥ずかしさのあまり逃げ出してしまいました。

 

「あぁ…、せっちゃーん!」

 

「いきなり仲良くしなさいというのが難しいのかもしれませんよ」

 

私がそう呟くと、何か思いついたアスナちゃん。

 

「桜咲さーん!明日の班行動、一緒に奈良回ろうねー!約束だよーっ‼︎」

 

アスナちゃんの言葉に振り返ったせっちゃんはまた走って行っちゃいました。

「私達も早く戻りましょう。いつまでもホテルから離れていると心配をかけてしまいますよ?」

 

こうして修学旅行1日目は終了しました。




サラちゃんはイライラを天ヶ崎にぶつけますが
フラストレーションはたまったままです。
天ヶ崎はまたサンドバッグかもしれません…。
あまりやりすぎないことを願うばかりです。

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