憑依生徒サラま!   作:怠惰なぼっち

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第12話

ーサラ・ヒューイットー

 

ネギ君にアドバイスを贈った次の日、いつも通りエヴァちゃんの家に向かっていると、茶々丸さんと彼女を尾行してるネギ君とアスナちゃん、エロガモを発見。

ということは一応、ネギ君とアスナちゃんは仮契約できたんでしょう。

一応というのは、原作通りならアスナちゃんが恥ずかしがって、ネギ君のおでこにキスしちゃったんですよね。

なので魔力的効果も通常のものより弱くなります。

まぁ、模擬戦本番で言い方は変かもしれませんが、ちゃんとした仮契約に更新されるはずなので今はいいでしょう。

 

それはともかく、茶々丸さんの移動に合わせてついていくネギ君一行の後を私も追いますが…。

いやぁ、貴女は本当に悪の魔法使いの従者ですか?と尋ねたくなるほど善行を重ねる女性型アンドロイド茶々丸さん。

風船が木に引っかかって泣く女の子のために空を飛んで風船を取ってあげ…

歩道橋の階段に苦労しているおばあさんをおんぶして道路の向かい側に連れて行き…

川に流されてる猫を助けるためにその身が汚れるのも構わずとばかりに4月のまだ冷たい水に浸かり…

止めとばかりに野良猫のために餌を買い与える姿は正しく聖母と言えるのではないでしょうか。

原作を知っていても感動ものです。

でも、そんな茶々丸さんを尾行していたネギ君一行は襲いかかるんですよね。

つまり格上の相手チームの片方を戦闘不能にしよう、この作戦を立てたのはエロガモですが。

相手の戦力を削ぐという意味では間違ってないんですが、エロガモは事を大袈裟にしてややこしくしますからね。

ここは様子を見守ることにします。

 

猫の餌やりを終え片付け中の茶々丸さんと対峙するネギ君、アスナちゃん。

ネギ君は自分を襲わないよう説得しますが、茶々丸さんは主人であるエヴァちゃんの命令には背けませんからね。

そのまま戦闘に突入です。

あ、やっぱりネギ君とアスナちゃんは仮契約をしたみたいですね。

ネギ君は魔力をアスナちゃんに譲渡する呪文を唱え、さらに攻撃呪文を唱え始めます。

アスナちゃんはネギ君の魔力で強化され、茶々丸さんに格闘戦を挑みます。

茶々丸さんはというと、素人とは思えない動きをするアスナさんに驚いて、アスナちゃんの相手で手一杯。

そしてネギ君の呪文は完成し、光の矢11本が茶々丸さんへ襲いかかります。

ここは捕縛用の呪文、"戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)"を唱えたほうがいいと思うんですが、この間襲われた恐怖とエロガモに唆されたので攻撃呪文を撃ってしまうんですよね。

ネギ君が茶々丸さんへの攻撃をキャンセルするなら問題ないんですが、念のため茶々丸さんの盾になれるよう私も光の矢11本を待機させます。

 

連弾(セリエス)光の11矢(ルーキス)

 

しかし、私は光の矢を使わずに済みました。

 

「やっぱりダメ!戻れーっ‼︎」

 

ネギ君は茶々丸さんに迫っていた光の矢を全部自分に戻るように命令。

当然、光の矢が戻ればネギ君に当たるわけで…。

茶々丸さんは少し不思議に思ったみたいですが、アスナちゃんとエロガモがネギ君に駆け寄る間に空を飛んで逃げて行きました。

私は待機させてた光の矢を霧散させます。

 

「な、何で矢を戻しちまったんだよーっ⁈兄貴ー!」

 

「ネギ?大丈夫なの⁈」

 

「ま、魔法が思ってた以上に強くて…。茶々丸さんは僕の生徒なので、やっぱり怪我をさせるわけには…」

 

「それであんたが怪我してどうすんのよーっ!」

 

確かにアスナちゃんの言う通り。

 

「そうですよ、ネギ君。こんな傷だらけになっちゃって…」

 

「あーっ⁈サラ!あんたまた隠れて見てたの⁉︎」

 

「アスナさん、ちゃんとキスしないと主従の魔力的繋がりが中途半端にしかなりませんよ?」

 

「ど、どうしてサラがそれを⁈」

 

「とりあえず、ネギ君の傷を治しましょう。

リインカーネション

汝が為に(トゥイ・グラーティアー) ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア) 恩寵あれ(シット) 治癒(クーラ)

 

「サ、サラさん。ありがとうございます」

 

「師匠には内緒ですよ。それとネギ君。どうして光の矢を使ったんですか?」

 

「え?」

 

「"戒めの風矢"を使っておけば自身も傷付かずに済んだんですよ?」

 

「サラの姐さん、ちょっと待ってくれよ⁈兄貴は命を狙われたんだぜ‼︎」

 

「黙りなさい、エロガモ。あなたが(けしか)けたんでしょうけど、ネギ君が自分の生徒を傷付けた後、どう思うか考えなかったの?」

 

「「あ」」

 

アスナちゃんとエロガモは思わずといった風に声をあげ、ネギ君も俯いてしまった。

 

「今日の私のアドバイスはここまでです。この先はネギ君自身の戦いになるので、私が口出しすることはできませんが…、負けないことを祈ってます」

 

前日同様、「では」と一言告げてその場を去ります。

ネギ君は今まで優秀だったから、初めてエヴァちゃんという大きな壁にぶつかって、戸惑っています。

だからこそ、こんなところで負けることなく成長の糧としてほしいですね。

 

 

明る月曜日の朝、教室に入ってきたネギ君は迷いを吹っ切ったサッパリした顔つきになっていました。

原作の様に、迷いを抱えたまま闇雲に寮を飛び出したところを、忍者の長瀬楓さんに保護されたのでしょう。

そこで長瀬さんから、人生の先輩としてありがたい言葉をもらって再びやる気になったと。

いやぁ、よかったよかった。

でも、そこで私も巻き込むのは勘弁してほしかったですよ。

 

教室に来たネギ君はエヴァちゃんに果たし状を渡そうとするんですが、その肝腎のエヴァちゃんが病欠です。

それをサボりだと思ったネギ君は何を考えたのか、私に

 

「サラさん、エヴァンジェリンさんのお家をご存知ですか」

 

なんて尋ねてきました。

 

「知ってるか知らないかで言えば、知ってますが…。どうかしましたか?」

 

「すいませんがエヴァンジェリンさんのお家まで案内お願いします」

 

そう言うと私が返事するのも待たずに、腕を掴んで教室から出ていきます。

私も腕を掴まれているので躓かない様、前のめりになりながらなんとかついて行きます。

私はこの後授業を受けないといけないんですが…。

やる気が漲ってるネギ君には何を言ってもダメでしょうね。

私は仕方なくエヴァちゃんの家までネギ君を案内しました。

 

「こんにちはー。担任のネギですが、どなたかいませんかー?」

 

ネギ君はエヴァちゃん家の呼び鈴代わりのベルを鳴らしますが、反応がありません。

 

「中に入ったらどうですか?」

 

「それもそうですね。お邪魔しまーす」

 

エヴァちゃん家のログハウスの中は相変わらず人形でいっぱいです。

 

「エヴァンジェリンさんの家の中ってかなりファンシーですね。どこが吸血鬼なんでしょう?」

 

「ネギ先生、サラさん。こんにちは。マスターに何か御用でしょうか?」

 

メイド服を着た茶々丸さんが薬とコップ、水差しの載ったお盆を持って立っていました。

 

「うわっ⁈びっくりしたー。あ、茶々丸さん。この間はどうもすみませんでした」

 

「いえ、こちらこそ…」

 

「こんにちは、茶々丸さん。エヴァさんはいます?」

 

「マスターはご病気です」

 

「またまたぁ、不老不死のエヴァンジェリンさんが風邪なんてひくわけないじゃないですか」

 

「その通りだ、ぼーや。ぼーやみたいなひよっこなぞなんともないからな。まぁ、ぼーやが来るのはどうでもいい。何でサラ・ヒューイットまでここにいる?」

 

「ネギ君に拉致られました」

 

「ええ⁈拉致だなんて…」

 

「私は授業があったのに無理矢理ここに連れてこられて、これが拉致でなければなんですか?」

 

「うっ…、それは…」

 

「とりあえずそれは後にして。ネギ君はエヴァさんに用事があったみたいですよ」

 

私がそう言うと、ネギ君は懐からさっき持っていた果たし状をエヴァちゃんに突き出します。

 

「エヴァンジェリンさん!僕ともう一度勝負してください!そして僕が勝ったらちゃんと授業に出てください‼︎このままだと卒業できませんよ⁈」

 

「だから呪いのせいで出席しても卒業できないんだよ…。まぁいいだろう。ここで決着をつけてやる」

 

そう言って2人は臨戦態勢に入ります。

その間にはオロオロする茶々丸さん。

緊張感が最高潮に達したところで…

 

ぽてっと倒れるエヴァちゃん。

 

いくら真祖の吸血鬼といえど呪いで魔力の減少した身体は元の10歳の肉体と変わりません。

私と茶々丸さんでエヴァちゃんを2階の寝室に運んで寝かせます。

 

「ネギ先生、サラさん。私はこれから伝のある大学の病院で薬をもらってくるので、マスターを見ていていただけませんか?」

 

「ぼ、僕がですか⁈」

 

「先生にならお任せできると判断しました」

 

「わかりました。でもなるべく早く帰ってきてくださいねー。僕、この後授業がありますから」

 

いやいや、ネギ君や。

私も授業があるんですが…。

 

「まぁ、師匠が病気なら私も面倒を見てあげるしかないですね」

 

茶々丸さんはお辞儀をして、薬をもらいにログハウスを出て行きました。

 

「うぅ…、コホンッ、コホンッ」

 

「あ、あわわっ!大丈夫ですか⁈エヴァンジェリンさん?僕の治癒呪文は擦り傷にしか効かないし…」

 

「私は氷嚢を持ってきますね」

 

そう言って私は1階の台所から氷と氷嚢を用意して寝室に戻りました。

そこではネギ君がエヴァちゃんに自分の血を吸わせてます。

まぁ、吸血鬼ですから喉が渇いても水よりは血の方が良かったのでしょう。

その後もエヴァちゃんが

 

「うぅ…、熱い…」

 

と言ったらネギ君がカーテンを閉め、今度は

 

「ハァハァ…、寒い…」

 

とエヴァちゃんが言うので、仕方なく私が汗で濡れたパジャマを着替えさせてあげました。

着替えの時はもちろんネギ君はシャットアウトです。

やっと落ち着いたと思ったら、今度は悪い夢を見てるのか寝言が出始めました。

 

「うぅ…、やめろ…。サウザンドマスター…。ま、待て…。やめろ…。」

 

「これってサウザンドマスターの夢⁈だとしたら…、でも…」

 

「気になるんでしたら見てきたらどうですか、ネギ君?」

 

「いえ、でも女の子の夢を覗き見るなんて…」

 

「敵の弱点を知るチャンスだと思えばいいんですよ。ただし、私は師匠のプライベートなところは覗けませんから、ネギ君1人で行くことになりますが」

 

「わかりました。ちょっと行ってきます。

ラス・テル・マ・スキル・マギステル

夢の妖精(ニュンファ・ソムニー) 女王メイヴよ(レーギーナ・メイヴ)

扉を開けて(ポルターム・アペリエンス) 夢へといざなえ(アド・セー・メー・アリキアット)…」

 

呪文を唱えたネギ君はエヴァちゃんが眠るベッドの横に座ってもたれかかるように倒れます。

本音を言うとエヴァちゃんの夢を覗き見なんてしようものなら、後が怖いのでパスしたんですが。

どうせ夢の中身も知ってますし。

エヴァちゃんが想い人であるサウザンドマスターと対決するんですが、サウザンドマスター…面倒臭いからナギさんはエヴァちゃんを罠に嵌めるんですよね。

この罠が酷くて、落とし穴の中に水と玉ねぎ、ネギ、ニンニクがたっぷり入ってるんですが…。

これらはエヴァちゃんの弱点なんですよね。

しかもナギさん、千の呪文の男(サウザンドマスター)と名乗ってる割に使える魔法は5、6個で魔法学校も中退というネギ君のイメージを崩しかねない人なんです。

エヴァちゃんはナギさんに容姿でガキだと馬鹿にされ、歳ではオバハンと詰られ、でも悪事から足は洗わないと言ったせいで登校地獄という呪いをかけられた、という感じです。

なんかエヴァちゃんの自滅みたいな気がしますね。

 

「う…、うわあぁぁあっ!」

 

「あら?エヴァさん起きられましたか」

 

「なんだ…、サラ・ヒューイットか…。全く嫌な夢を見てしまった」

 

「調子の方はどうですか?」

 

「ああ、だいぶ良くなったようだ。世話になったな」

 

「それはそこでくたびれてるネギ君に言ってやってください」

 

「なんだ、ぼーやはこんな所にいたのか…。これじゃあ殺れと言ってるようなものだな…」

 

「喉が渇いてたエヴァさんに血を分けてくれたのはネギ君なんですから、それはどうかと思いますよ」

 

あ、ネギ君も目が覚めたみたいですね。

 

「っは…、しまった。寝ちゃってた…⁈大丈夫ですか、エヴァンジェリンさん?」

 

「ちっ…、大丈夫だよ。サラ・ヒューイットから聞いた。随分世話になったみたいだな。今日のところは見逃してやるから、さっさと帰れよ」

 

「そ、そうですね。じゃあ今日はこれで。果たし状もとりあえずしまっておきますので。で、では」

 

そう言ってペコペコ、あたふたしながら慌てて去ろうとするネギ君。

実際慌ててるんでしょう、エヴァちゃんの夢を見たから。

それがバレる前に逃げようとしたんですが、バレたみたいですね…。

 

「待て、貴様…。何故寝ながら杖を握っていた?…まさか、私の夢を…?」

 

びくりと思わず身体が反応したネギ君。

あぁ、ご愁傷様です。

 

「何を見た⁈どこまで見たのか言え、貴様ー!」

 

「ぼ、僕は何も…」

 

「嘘をつけーっ!き、貴様ら親子は…。殺す!やっぱり今殺すーっ!」

 

いやぁ、元気になって何よりです。

 

「サラ・ヒューイット?貴様、何を無関係みたいな顔をしている?」

 

「え?私は無関係ですよ。これはネギ君とエヴァさんの戦いで、ネギ君が呪文を唱える際、私は手出しできなかったんですから。手出し無用と言われてましたし。しかも私は夢も見てませんよ」

 

「ほっ、本当だな⁈」

 

「はい、私は見てません」

 

知ってはいるけどね。

 

「ならやはりぼーやだけをどうにかすれば…」

 

「いやいや、もう逃げちゃいましたよ…」

 

「あんの、馬鹿親子どもがぁー‼︎」

 

本当に元気になられて何よりですね…。




サラちゃんは嘘は言ってませんよ。
ネギ君を生贄にしただけです。
茶々丸さんってさん付けせざるを得ない位聖女ですよね。

追記 2015/2/13
gmgnさんの指摘で始動キーを書き直しました。
ご指摘ありがとうございました。

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