蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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2話で終わる筈が果たしてここまで来たか。腹立たしいまでに拙劣である。
だがもっとも望ましい形に進んで来ているのは、とても愉快だ。
我が未来改竄素敵計画は、この作品が未完の放置を以てついに完遂されることとなる。
いよいよもってエタるがよい。そしてさようなら。


ただのネタ。


宇宙樹

いつもは三つ編みな髪をストレートヘアーにし、赤と青の服装を着て、その上に白衣を被せながら履いている革靴でコツコツと小気味いい足音を白い廊下で鳴らしつつ、永琳の長髪が揺れながら優雅に歩いている。永琳の背にはる~ことも一緒だ。ここは表の月。もっと言えば月の表側にあるクレーターティコのど真ん中にあるラボラトリー。

物理的な意味ではないのだが。月人や月の民が住む月の都、もしくは月宮殿は隠されて月の関係者以外には見えないようにされ、月の裏側にある。そして永琳やる~ことがいるラボラトリーは月の表側、月のクレーターティコにあるのだが、月の都の様に注連縄を用い、月のクレーターティコを丸ごと結界で隔てられ、月人や月の民も含み、誰にも観測できないようにされている。

 

嘗て自然に対し無知だった古代の人間は、時間の矢が進むにつれ自然を制御できるようになり、

森羅万象に宿る神は、人にその座を明け渡した。

 

「いいえ違うわ。人間は自然を制御できる様になったと勘違いをしているだけ。森羅万象に宿る神は、まだその座を人に明け渡してはいない」

 

永琳は頭に浮かんだ言葉を否定する。人間は一時期、一度知ってしまえば急加速で科学と医学の進歩は進んだ。地学、化学、天文学、生物学、認知科学。何もかもだ。幸か不幸か宗教が存在していたので、急加速で進歩していた科学は遅れる。あの速度を見る限り寧ろ遅れてよかったとも言えるかもしれない。それでも医学や科学の進歩は並々ならぬ速度だった。

特に自然に関する科学。古来より人間の敵は人間ではあったが、その中でも特に自然。自然災害で人が死ぬなんてよくある事だった。時間の矢は遠くに放たれ、不治の病と言われた結核も治せる様になる。

 

「私達の敵は妖怪ではなく、地球か、またはハレー彗星かもね。だからこそまだ地上に都市があった当時。月人の大人は子供の頃の弘天、私、神綺、サリエル、魅魔に…」

 

だが科学や医学が急激に進歩しようと、それでもまだ駄目だった。人間は生物だ、動物だ。ベニクラゲという例外もあるが。生物とは、産まれた時点で根源的に死と時間を内包する存在。人間、動物が老化するのは活性酸素のせいでもある。どれだけ科学の進歩が著しくても、死と時間から逃れる事は出来なかった。時間があるから寿命が尽き、寿命があるから時間に流され、寿命以外でも死因は数えきれないほどあるのだ。そして人間は恐怖を感じる。

人間は 分からない 事自体が恐怖や畏敬の対象になる。恐怖や畏敬と言っても、恐怖と畏敬は似ているようで全く意味が違う。だからこそ人間は、自然災害や天変地異などは何故発生するかを考え突き止めて来た。月の引力に太陽や星の動き、風や雲の流れ、大地や海の様相。病の原因に作物の不作。地震に津波や噴火。それらを知る事によって恐怖の原因を知る事で、恐怖を取り除いて来た。しかし寿命、死についての恐怖を取り除けなく、逃げられなかった。分からないんだ。寿命や死んだ後の事は、死んでからしか分からないから。

 

「人間の視野は単眼が鼻側60度、耳側100度。両眼視野は120度、周辺視野を含めば180から200度に広がる。前方は観測出来ても合わせ鏡などを使わなければ後方の観測は不可能」

 

「つまり時間の矢と同じく人間は前しか観測が出来ない。だけどこれは人間の場合。人間が見る 世界が神や妖怪も同じとは限らない。生理学におけるクリプトビオシスのように」

 

ある人間達は死から逃れたいが為に色々考えた。寿命はダメでも脳さえ機能し、無事なら死ぬ事がないのではないかと脳を機械に移植や、寿命問題が解決しているかもしれない未来へ行く為にコールドスリープ。寿命をなくそうと仙人か、自分の死後死体を尸解して肉体を消滅させる方法、尸解仙の考えもあった。竹取物語、赫奕姫に出てくる富士山の火口で燃やせと天皇に命じられた岩笠や、不老不死の霊薬もその一つだ。

 

「神綺とサリエルは創造を。豊姫と依姫は剣と盾。神奈子は死と再生の永劫を。輝夜は瞬間の永遠と縷縷たる須臾を。咲夜と夢子は揺蕩う時間の矢を」

 

「魅魔とくるみは人間を。ユウゲンマガンとエリスは争いと不和を。夢月と幻月は夢幻館と夢幻 世界を。青娥は不死と回帰を。サグメは…」

 

しかしどれも夢物語で理想で夢で妄想で幻想。不可能だった。寿命から逃れるには、時間の呪縛から解放されることだ。だからこそ過去の人間は不老不死を求めた。沖縄で有名なのがジュゴンという生き物。沖縄には 人魚神社 があり、ジュゴンは妖怪としても扱われ、妖怪の場合はザンと呼ばれている。

このジュゴン。昔は不老不死の薬、または不老長寿として献上され、食されていた。当時の人間も死にたくはなく、長生きをしたかったのだ。

 

「シュヴァルツシルト半径の内側に落ちているとしても、弘天を殺した人物が分かっていながら殺せないなんて。円環時間現象、月の頭脳も形無しよね」

 

シュヴァルツシルト半径とはドイツの天文学者 カール・シュヴァルツシルト によって発見された時空領域の半径。永琳の背に付いて行きながら控えていたる~ことは何も言わない。さっきの言葉も、今の言葉も。誰に言うでもなくただの独り言。永琳はる~ことを連れながら自動ドアの前に立ち、開いた自動ドアからラボラトリーを出る。永琳は辺りを見渡し、月のクレーターにあるティコの見つけた。弘天がサグメから天鹿児弓を借りて放った光の矢で月光の矢。その矢には一枚の葉っぱがくっ付いている。これはアガスティアの葉。光で構成された矢は霊的な雰囲気を漂わせている。永琳はティコに刺さっていた月光の矢を抜き取り、弘天の神力と神気を光の矢として構成され蓄積されていた矢を永琳は取り込んだ。光の矢を永琳は体内に吸収させると、永琳の息が荒くなり恍惚の表情に。

 

「あぁ…! 弘が、弘天が私の中に入って来る…!」

 

弘天の神力と神気で構成されていた光の矢を吸い取った永琳は嬌声を出しながら、両手で自分の体を抱きしめながら身体がビクンビクンと断続的になり、腰が抜け、足の力も抜けてそのままティコへ尻もちを付く。

 

「私の全てを支配しようと弘天の神気が身体中に張り巡らせて、全身が火傷しそうよ。愛してる。私の全てを捧げていい程に、愛してるわ。弘天...」

 

永琳は余談に浸っているが、その隣には地面に植え付けられながらも芽が出始めて成長している。これは世界樹、宇宙樹と言われているザクセン人のイルミンスール、北欧神話のユグドラシル、中国神話の扶桑に似た物。

 

日本神話には朝日に当たれば四国地方の淡路島に及び、夕日の影で九州地方の阿蘇山を隠すほどの巨大樹と言われていた物がある。ただその巨大樹、日本神話に出てくるが名はない。その巨大樹は昔、切り倒されているがこれはその巨大樹の芽。

では一体何を養分としてその芽は成長しているのか。それは 月 だ。月自体に根を張り養分、糧としてこの芽は大きくなり、成長している。それ即ち、このまま放置していれば月は月としての概念を吸いつくされ、最後には月の消滅を意味する。まるで太陽神の天照が天岩戸へ引き籠り、世界から太陽が消えた岩戸隠れの様に。

そして日本の妖怪であり玉兎と同じく月の妖怪の 桂男 というのがいる。名は呉剛と言い、月にある月宮殿という大宮殿で桂男は月にある巨大な桂の木を伐っているという伝説がある。

 

「…」

 

その光景をる~ことは黙りながら、尻もちをついて色っぽい声を出しつつ貪り、善がりながら身体を痙攣の如くびくびく身悶え、息が荒い永琳を見つめていた。る~ことはアンドロイドでありセクサロイド。だが人間と同じく考える事も出来るし感情はある。創られた生命ではあるが、ゴーレムやホムンクルスなどの類では無い。永琳の隣で根付いていたのがもう芽として出ている。息が荒かった永琳は落ち着いて来たのか平静を取り戻していき、立ち上がり顔をる~ことに向けた顔を見たら、凄くつやつやしている。さっきまで真顔だったのに幸せそうな顔。永琳はそんな幸せな表情で片手に持っているアガスティアの葉をる~ことに差し出す。

 

「る~こと。これをレイセンに当てなさい。当てる部位はどこでもいいから」

 

「畏まりました」

 

る~ことにアガスティアの葉を渡し終えた永琳は満足感、円満に満ち溢れ慊焉とせぬ面持ちに、鼻歌を歌いルンルン気分でスキップしながらる~ことを置き去りにし、先に自動ドアの前に立ちラボラトリーへ入る。欲求不満の永琳は会えない寂しさからフラストレーションが溜まっていたが、弘天の神力を吸い取り満足した様子。会いたいなら会いに行けばいい話だが、永琳の仕事は終わっていないので会いに行けないのだ。る~ことは右手に持つアガスティアの葉を数秒程見つめ、アガスティアの葉を落ちない様に優しく握りながら永琳の後に続いた。る~ことは歩きながら鈴仙の事を想起していた。鈴仙は玉兎であり諏訪国にいるキクリと同じく月の妖怪だ。妖怪なので月の民や月人の様に皆殺しはしない。玉兎の中でもこの鈴仙は優秀で、能力は思った以上に厄介。一度、月人や月の民を皆殺しに月へ向かった際に苦戦をした事がある。原因は豊姫ではなく、鈴仙の能力が原因。それで悩みの種は先に刈って置こうと鈴仙は地下に幽閉されている。

る~ことは永久機関のセクサロイドなので寿命はなく、死に対して恐怖の感情は抱かない。恐怖を抱かないのではなく分からない、理解できないが正しい。そう、これは昔と同じだ。自然に対して無知だったが故に恐怖を感じた人間たちと、無知だったが故に恐怖の対象だった自然を畏敬の念を抱きながら神として崇め祀った事と、同じ。人間はどれだけの時間の矢を進めようとも、死んだ後については絶対理解できない。

このラボラトリーに似つかわしくない古びた扉を両手で開け、下に続く薄暗い階段を壁に右手を当てながら一段一段降りる。永琳は雰囲気の為こんな風に作り上げたそうだが、階段を下り終えまた歩行を始める。奥に到達し、る~ことは錆び付いた扉を開けると耳をつんざくような音が響く。油を指した方がいいかもしれないとる~ことは思いながら、目隠しされ、両手両足を縛られている鈴仙の元へ向かう。

 

「そうでした。鈴仙様のお食事を持って行かなくてはいけません。今頃、お腹を空かせている筈です」

 

方向転換し、台所に向かってシルバートレイに乗せて運ぶ。台所から出たる~ことは地下牢の最奥にある牢まで歩き終え、そのまま扉を開ける。地下牢に鈴仙は閉じ込められていたが、その牢は壁に吊るされている手錠。だが鈴仙は妖怪なので本来なら手錠を力づくで粉砕して牢から出る事は出来るのだが、出来ない。る~ことはシルバートレイを近くの台に置き、鈴仙の口に噛ませている唾液塗れな猿轡の一種、ボールギャグを外す為、ベルトを外してからアガスティアの葉を鈴仙に当てて鈴仙にハンカチを手に握らせる。鈴仙の口元や、地面は何度掃除しても唾液塗れになるが、る~ことは掃除が好きなので寧ろ喜んでいる。アガスティアの葉を当て終えたのでる~ことはまたシルバートレイを取り、鈴仙はる~ことから渡されたハンカチで口元を拭きながら顔を上げてる~ことを見た。

 

「ワッツ暴動やロサンゼルス暴動でも起こす気」

 

「あれより規模は大きいですが似たり寄ったりでしょう」

 

シルバートレイにある両側の取っ手を両手で掴みながら低めの台を鈴仙の目の前に置き、シルバートレイを台に乗せた。シルバートレイに乗せている食器からは湯気が出ている。る~ことはスプーンを使って掬い取り、両手両足を縛られ目隠しされている鈴仙の唇に当てて差し出す。献立はる~ことが作ったシチューだ。鈴仙は大分閉じ込められているが、妖怪なので筋肉などは衰えたりはしない。

一向に口を開けない鈴仙を見てる~ことは傾げたが、鈴仙は手錠を壊していいかどうかをる~ことへ聞いた。大丈夫ですと返答したので壁に固定され、ぶら下がっていた手錠をいとも簡単に引き抜き、目隠しを取ってそのままスプーンを手に取り、鈴仙は逃げる気がないのでシチューを食べ始めた。少々乱暴に引き抜いたので土埃がたったが、鈴仙は気にせずに食べ始める。それを見ていたる~ことは唐突に話す。

 

「鈴仙様が地上に住む者に対して抱く感情は何故湧き上がるか理解していますか」

 

「……そんなの、どうでもいいわよ」

 

「寝ている時にふと天井を見上げると。天井にある木目模様が人の顔に見える時があり、一度そういう風に見えるとそれ以降は顔以外に見えなくなる時があります」

 

「お師匠様に聞いた事があるわ。確か人間にはパレイドリアと言われてる。天井の木目が顔に見えるそれ、人によっては恐怖を感じるらしいけど。はいお終い、その話題終了ー」

 

日本のみならず外国にも神が実在しているが、各国にある神話が過去で実際に起きた。それがたかが数百万、数千万、数億年 経っただけで神が人間に一切の干渉をしなくなるのは考えられない。かつて神がいた座に人間が腰を下ろし座った、それも違う。半神ならともかくただの人間を神が認め、この世界から消えたりはしない。

神話に出てくる神は大概、無駄に人間へ干渉している。多くの神話にある神々に創造された最初の人間の男女や、大洪水。旧約聖書の出エジプト記にあるアロンの杖やギリシャ神話パンドーラーの疫病などがいい例だ。

人間には常識というものが固定概念として組み込まれている。その一つに人間は白人しかいないという固定概念があった。その昔、黒人を初めて見つけた白人の彼らは何と言ったのか。彼らは黒人を人と見なさなかったのだ。そして中世、魔女狩りが起きた原因の一つは。旧約聖書の二番目の書 出エジプト記 に記載されていた 呪いを使う女を生かすな という女の部分をウィッチ、 魔女に訳されたのが原因の一つ。それ以前に人種差別が起こる原因は何だと考えるかだが。

 

「それは恐怖です。人種差別と言っても、差別は自然界でもありますから人間だけに限った話ではありません。人間というのは自分達と違う者を異端者とみなしてきました」

 

「このセクサロイド、私はどうでもいいって言ってるのに。掃除ロボなんだから箒片手に掃除でもしてなさいよ。あの人かお師匠様ならともかく人間に恐怖を感じる訳がないわ」

 

る~ことは鈴仙を無視し。言語、動作、常識、見た目、思想。一つ一つ言いながら、開いていた右手にある五本の指を、る~ことは言葉を口から出して一つ一つ閉じて行く。弘天の場合は女好きと三つ子の魂百までが功を成してあまり効果は無かった。時間の矢は進むにつれ、人類の科学は進歩し。古来の人間達とは程遠い程に自然の脅威は薄れ、神は人間の味方、人間を救済する存在と。人間達に共通認識が生まれしまった。実に遺憾。自分が見ている物は、他の人間と同じとは限らない。神の姿もそうだ。人に見える時もあれば夢見に現れるか霊体、あるいは巫女の人格を乗っ取り顕現する時もある。

 

「恐怖と畏敬は紙一重。地上にまだ都市があった頃、まだ幼い当時の子供達は大人に思想を植え付けられました。妖怪は敵であり黒人であると。宗教を嫌う人のように」

 

「…オウム真理教や坊主は葬式で金をふんだくるせいか宗教に対していい感情はないわ。あの国は宗教を嫌って無宗教なのに無意識で宗教の影響は受けてるけど」

 

「はい。それは日本の伝統や文化、民俗行事を顧みればよく分かります。宗教は文化とも言えますし、日本の文化と刷り込まれ当たり前になり殆どの人間は気付いていません」

 

子供の内に恐怖を植え付ける民俗行事、東北地方の なまはげ はいい例。人間を襲って喰い殺し、畏れられていた鬼も神々の使いとして暴れて酒を飲んで帰るなまはげは鬼の形骸化。

釈迦が僧に葬式は関わるなと言ったのに現代では坊主が関わっている。それは江戸時代の江戸幕府が定めた檀家制度が大きい転機なのだが、始まりは平安時代。平安時代、貴族の葬儀は僧侶が関わっていた。僧侶が葬儀に関わるのは中国の宗教、道教と儒教に由来する先祖供養が仏教に入り交じったからである。だが、これは平安時代の貴族だけだ。仏教が民に広まったのは鎌倉時代に始まる。仏教はインドから始まりそのまま中国へ伝播、そこで中国の宗教、道教と儒教が中国に伝播された仏教に混じってしまった。日本へ仏教が伝来したのは飛鳥時代。

物部尾輿と中臣鎌子は八百萬神を祀っている理由で断固反対したが、天皇は蘇我氏の蘇我稲目に 仏像を授けて試しに礼拝することを許可する。

しかしその後、疫病が流行り、多くの民は死んだ。今と同じだ。疫病が流行り近畿地方から九州地方までの民が苦しみ死んでいるように。その上、飢饉問題は解決していない。宗教と一言で言っても宗教の定義は未だに定まっていないが。

る~ことは右手い持っているアガスティアの葉を見つめ、薄暗い地下に閉じ込められている鈴仙へよく見えるように差し出す。アガスティアの葉の色は、薄い色の褐色だ。

 

「自分が見ている色が褐色だとして、それを褐色だと証明するにはもう一人がその色を見て褐色と認識し褐色だと。声に出して初めて共通認識が生まれます。それが錯覚であろうと」

 

「GOD dyaus daēva ilāh ēl 木目模様が人の顔に見えるように。神や妖怪の本来の意味を失い、未来の人間が認識する神と妖怪の意味はパレイドリア、独り歩きだと言いたいの」

 

「そうであり、そうではありません。ですが地獄や天国に極楽浄土。天界や魔界、前世と来世に 輪廻転生。神と仏に妖怪、天使と悪魔に魔女、精霊に妖精。魂、怨霊、道教と儒教の先祖供養」

 

る~ことはアガスティアの葉をもう一度見てから、そのまま仕舞う。

 

「マニ教 拝火教、ゾロアスター教の善悪二元論に英霊と成仏。他にもありますが信じる信じないは一先ず置いて。宗教の考えに影響されてる時点で日本人が無宗教と一概に言えないでしょう」

 

「無意識に脳へ刷り込まれ、人間は刷り込まれている事に気付いていないだけ、か。滑稽で皮肉ね。無意識もまるであの子の能力」

 

言葉だけが独り歩きをしている 地球は青かった 名だけが独り歩きをしている 聖徳太子 

ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉 神は死んだ も独り歩きをして本来の意味が失われている。

今でこそ神は死んだという言葉、無神論の人間によく使われる言葉だが。本来は直喩としての意味ではない。あくまでも譬喩表現であり、本当に神が死んだと言う意味で言った訳じゃないのだ。そもそも哲学者の言葉を言葉通りに受け取ってはいけない。

 

「量子テレポーテーション、トンネル効果、神はサイコロを振らない、シュレーディンガーの猫

ミトコンドリア・イヴまで本来の意味から独り歩きをしています。神と妖怪も然り」

 

「拡大解釈。人間が考えた皮肉や思想実験、定義付けしたものなんてどうでもいいわよ。

オメガポイントも所詮は詭弁で人間の錯覚でしかない。大体ね」

 

オメガポイントは現在も存命している数理物理学者 フランク・ジェニングス・ティプラー三世 が唱え名付けた言葉。

アガスティアの葉は色の話だったが、ウマやネコなどの哺乳類に起きる フレーメン反応 というのがある。これは臭いに反応して唇を引きあげる生理現象であり、人間の視点から見ると猫や馬が笑っている、もしくは顔をしかめていると見られる時もある。フレーメン反応は人間には起こらないのだが、人間には感情がある。人間にもあるのだから猫や馬にもあるだろうといった固定概念や基準に基づく考えでもあり、パレイドリア。目の錯覚とも言える。

だが猫や馬と会話が出来るならともかくとして、それが出来ないと言うのに何故人間は猫や馬が感情を持っていると思い込むのか。ウマやネコにも感情はあると証明するにはまず馬や猫と言葉を交わし、意思疎通をしなくてはならない。

鈴仙は会話しながらシチューを食べていたが、鼻を鳴らす。

 

「土蜘蛛、鬼、天狗、河童、言語、常識、服装、慣習、文化、生活、政治、国、思想。それらと同じように、神と妖怪の本来の意味も、人間も。時代と共に変わるわ」

 

「勿論。平安時代の清涼殿落雷事件。元は怨霊だった 菅原道真 も天神や学問の神になり。

坊主、僧。弘法大師も敬う程の存在ではなく、元を正せばただの乞食です」

 

人間は誰かと会話をする際、声を使って会話する。だが声なんて言ってしまえば唯のリズムや空気の振動でしかない。そして、その空気の振動を言葉として意味を持たせたのは人間。

文字もそうだ。文字なんて人間以外から見たら意味不明で落書きにしか見えない。文字を言葉と、言語として意味を持たせたのは人間だ。

 

「そう言えば。大阪の通天閣にある幸運の神 ビリケン も元はアメリカでしたね。本来のビリケンは神ではありませんでしたが」

 

日本は何でもかんでも取り込み神格化してしまう。良く言えば度量がいい、悪く言えば流されやすい。だが日本は八百萬神の考えを持っている。今でこそ悪い存在として人間の脳に刷り込まれているが、元は妖精、精霊だったゴブリンを悪魔にした一神教であるキリスト教徒の様な民間伝承排斥をする考えはない。

西洋ではいい印象を持たれない移ろう花の代名詞として知られる日本原産 紫陽花の花言葉 家族団欒 平和 仲良し などでいい印象。他にその内の一つ、紫陽花の花言葉の一つに移ろいがあるのだが。

年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず。釈迦の教えを探求し、真理を模索する本来の僧は 乞食なのだ。昔は僧に対し坊主と呼ぶのは尊称であり、今のように蔑称で坊主とは言われていなかった。

そして平安時代。仏教の考えが浸透していた当時の民は、末法の世が到来するという不安、戦乱も重なり、終末の後の救済を求める人心を反映して、仏教派性の浄土教が浸透していた事もあった。

 

「しかし。それならば玉兎は月人、月の民の奴隷です。それは玉兎の鈴仙様が一番理解している筈。古代ローマ帝国や黒人。奴隷がどんな扱いを受けたかを」

 

「言われなくてもちゃんと分かってるわよ。そうじゃなきゃ抜け出さずに大人しくしてる訳ないじゃない。だから嫌なのよ、あんたと話したら長々話すから」

 

奴隷なのだから痛めつけたり、ウォーターボーディングをしたり、薬でイカレさせようと思えば出来るのだ。鈴仙は呆れながらスプーンでシチューを掬い取り口に運び咀嚼。たまにコップに入った冷たい水を鈴仙は飲み、無くなったら新しい水を注ぐる~ことは、食器を下げる為に鈴仙が食べ終わるのを待つ。る~ことは直立しながら傍に佇んでいるので、見られている鈴仙は食べにくそうにしている。

爾来。宗教はこの世の在り方、寿命、天変地異、死を説明する為、我ら人間が死んだ後はどこに行くのか。それらの不思議な事を説明する慰め、自慰行為的な概念であった。それがいつしか金儲け、紛争、救済へと変わってしまうが、宗教はともかく。宗教を布教する 宗教化 は神ではなく人間が行っているので当然の帰結と言えば当然とも言える。別に宗教に限った話ではない。何事もその時代のニーズに合わせ、変貌していくのだ。

 

「ねぇ」

 

「何でしょう。鈴仙様」

 

口端にシチューが付いてるが、それに気付いていない鈴仙は片手で持っていたスプーンを離し、あと数口で食べ終えそうなシチューを一旦食べるのをやめて、鈴仙は小声でる~ことへ聞いてみる事にした。

 

「態々。私を幽閉する為、私が逃げようと思えば逃げられるこんな旧時代的 地下牢へ閉じ込めて、あの人やお師匠様に何の意味があるのか教えてよ」

 

「永琳様からお聞きした事はないのですか」

 

平将門の件が終わり。鎌倉、建武の新政、室町、南北朝、戦国、安土桃山、江戸、幕末、天皇の血を持っていなかった明治天皇を殺害し、大正、昭和、平成。このまま行けばそうなる。鈴仙はそんな無意味な事をする理由を知りたかった。鈴仙がお師匠様と慕う永琳に何度聞いても、永琳は鈴仙に何も言わない。

 

神が人間を滅ぼす、それは違う。人間から生殺与奪の全権を奪い取り神が人間を管理する、それも違う。人間が神と妖怪と仲良く平和に生きる世界、それは絶対にあり得ない。

最後のはまるで科学者 ニコラ・テスラ が電磁波を使ってエネルギーをどこにもない所から取り出そうと追い求め、生涯を捧げ、費やした夢物語ではないか。今もどこかの国は人間同士で争っている。同じ種族の人間同士がだ。これは人間に限った話ではない、自然界の動物にもあるように。多くの神話でも争いはよくあり、日本神話でも神と神同士が争う話はあるのでざらだ。平和な神話の方が鮮少。

 

「ウロボロス。円環時間現象でいつ聞いてもお師匠様が答えてくれる事はなかった。だけど、アカシックレコードの一部を使ってるんでしょ。なら知ってる筈」

 

「ヘルメスの杖、アロンの杖、二重螺旋。そうですね、アカシックレコードのお蔭で知っています。しかし意味、…意味?」

 

る~ことは謝罪しつつも片手で口元を隠しながらクスクス笑う。る~ことは創られた存在だが、神や人間とほぼ変わらない存在だ。だが人工知能や脳は無い。脳の変わりに アカシックレコード が組み込まれている。る~ことが笑う事を出来るのはアカシックレコードの一部を使われているからであって、感情のシミュレートが組み込まれている訳ではない。脳がない以上中枢神経、神経パルス、電気信号、シナプス、ドーパミン、ニューロンもなく、鈴仙の目をる~ことが覗き込んでも、狂気に堕ちる事はない。

つまり現在も存命している哲学者 ジョン・ロジャーズ・サール が論文の中で発表した思考実験の 中国語の部屋 や 強いAIと弱いAI には該当しない。昔、る~ことが創り出された理由は、当時住んでいた所が大きすぎたので、美人、もしくは可愛いお掃除ロボットが欲しいと誰かが言い出したのが始まり。家事全般は得意なお掃除ロボだが、戦闘用には創られていないので鈴仙と戦えばあっさり負ける。しかしそんな事をすれば鈴仙は廃人にされるだけだ。それが分かっているから鈴仙は抵抗しない。

 

「これは異な事を。鈴仙様は妖怪ですが人間みたいな事を仰います。強いて言うならば、永琳様にとって、マスターや娘達と永劫にいる以外の意味がある訳ないじゃないですか」

 

「…あ、もちろん鈴仙様も含みます」

 

「なにその序でに入れてる感じ。いくら私でも泣くわよ」

 

永琳はともかく弘天はただ愚直に女を侍らしたいだけである。時間とは、嫌な事は時間が過ぎるのが遅く、楽しい事は時間が過ぎるのが早い。つまり相対性理論だ、幸せなのは悪い事じゃない。

幸せな記憶は記憶として残り、思い出の過去として遡れる。幸福を感じる世界の主体は永遠が一瞬であり、一瞬は、須臾は永遠。それを具象化したのが、今。

 

「じゃあ… じゃあ月の都に住む玉兎以外の者すべてを殺す意味はなに。お師匠様に何度聞いても答えてくれなかった。だけど。なにも全員を殺す必要は」

 

「あります。神と妖怪が対等になる為には必要な争いです。それは数ある理由の一つでしかありませんが」

 

「神なら人間を皆殺しにすればいいのに...」

 

鈴仙が食べ終えたので食器を片付け、シルバートレイに乗せながらる~ことは話す。神とは、

恣意性を持ち、人間の弊害であり、濫りに生きてこそ。天津神、国津神、八百萬神はもう人間からの信仰を必要としていない。

神より劣る人間如きの顔色を窺う必要も馴れ合う必要もないのだ。月人や月の民以外を見下している鈴仙も、人間へ無条件で従わないだろう。そんな状況になったら反吐が出ると嘲笑するのは間違いない。鈴仙が幽閉されている理由は、鈴仙が月の都の防衛と監視を兼ねる月の使者がまず一点、鈴仙が豊姫と依姫の愛玩ペットだった事が一点、後は物の波長を操る能力が厄介だからだ。月の都を襲撃する際に鈴仙の能力は非常に厄介なので、今もこうして幽閉している。多くの神は天界、 冥界、魔界、地獄、地上に存在するが、ただ神が地球に留まる以上幾つかの法則に従わなければならない。

 

「地上に都市があった頃はマスターの妃は少なく、妖怪と争っていましたが。忙しくても永琳様は幸せそうでした。マスターと豊姫様は仕事を怠けてそれを依姫様が咎めるあの頃が」

 

「…私の飼い主、上司はどうなるの」

 

「お教えしても構いませんが、その前に一言 申しておきます。私の見解で述べますがそれでも差し支えありませんか」

 

鈴仙は頷いて早く言えと目線でる~ことを急かす。鈴仙は戻ったが、中途半端に戻っている。全てが戻っている訳じゃないし、戻った部分だけを消す事が可能。

 

人間はロゴス、言葉に縛られている。人間は言葉がなければ意思疎通は出来ない。だが今、る~こと、鈴仙が本当に言語を使って会話をし、意思疎通をしているのか。今では当たり前に人間は電話で会話をするが、電話で会話をしている人物は本当に本物なのか。本物だとしていたとしてそれをどう証明するのか。

電話で話す場合、声は電気信号に変換される。次に電話回線を通して相手の所へ届き再び声を再変換され始めて聞こえるようになる。つまり最低2回のプロセスが必要。

これがケータイになると、まず音声を電気信号に変換し、電波に乗せて近くの基地局へ飛ばす。そして普通の電話回線を通って交換局、次に電話相手がいる一番近い基地局へ向かい、電波として相手のケータイに送っている。ケータイの場合は結構複雑になる。

 

「綿月豊姫様、綿月依姫様。お二人の優先順位は今更 言うまでもない。ですが月に住む者を一度始末する際、特に豊姫様は抵抗するでしょうが死にません」

 

「そっか、さっきより安心した。だけどあの人も、お師匠様も。自分の親を殺す事に対して何の 感情も抱かないのね」

 

「抱く訳がないでしょう。マスターや永琳様は感情を持つ 人格神 ですが、人間ではありません。神です。道教と儒教の考えもありません」

 

宗教学の用語に人格神という言葉があり、この三文字は色んな意味を持つ。人間と同じ人格を兼ね備える神、人間と関わり交わりを結ぶ神、人間性を持つ超越的存在、人間と同じように意志、感情をもち、行動すると考えられている神。人間の形をもっているだけでなく固有の知性と意志をそなえ、独立した個体的存在としての神という意味など様々。日本神話の神にも人格神という言葉は該当する。

 

「お二人の記憶を戻しているのかは存じませんが。豊姫様、依姫様は感情を上書きしています。

ある女性がある男性を見て恋に落ちたのはそれが原因ですね。 所謂、一目惚れ」

 

「感情か… 諏訪国は歪んでいる。平等とか平和とか皆が仲良くとか。そんな事はどうでもよくて、ただ女性を集めているだけの国だし。あの人、産めよ増やせよ政策でも目指してるの?」

 

「平等や平和なんてマスターが生まれてこの方、一時でも行動した事実は一切ありませんよ。大体、諏訪国はマスターが女性を侍らす為の国。それ以外の理由なんて特にないです」

 

傍に佇んでいたる~ことは急に鈴仙へ近づき、顔を近づけた。

 

「それ以前に。穢れを畏れて月の都で過ごす月の民や、月の民の奴隷に成り下がった玉兎が言える言葉じゃないですね。月の都の方が狂って歪んでいます」

 

弘天は月人である。他に永琳、神綺、サリエル、豊姫、依姫、神奈子、輝夜、咲夜、夢子、くるみ、魅魔、夢月、幻月、青娥、サグメ。他にもいるのだが、これらが月人、月の民と言う事は外部の存在ではなく内部の存在になる。この内部の存在から全員を妻に娶ったとしても、それは内部から妻を娶る事になる訳だ。

しかし異類婚姻譚の話は外部からの嫁入り話ばかり。内部から嫁を娶るのではなく、外部。つまり異分子を受け入れる話が多い。外部から異分子を受け入れるという事は、考え、言語、ルール、常識が違う存在を受け入れる事を意味する。

今でこそ日本人の多くは標準語を話せるが、元々はそうではない。少し前まで各地域に住む人間はその土地特有の方言や各民族語ばかりだったのだ。そして、方言札というのがある。これは第二次世界大戦前の日本、標準語を普及させる手段で当時の子供達に行使した物。皇民化教育の強制的な政策により、多くの人間は標準語を話せている。これは異類婚姻譚と似ている。

 

だが異分子を受け入れる事は、外部のルールを内部のルールに持ち込むと言う事だ。弘天達がまだ子供の頃、月人が培ってきたルールを異分子に変えられる事こそが、地上に都市があった頃の大人は恐れ、妖怪は敵だと。当時の子供達に教育を施した。月人を多く娶るのは別に問題はない、寧ろ大人達は大いに推奨した。だが当時の大人は妖怪だけは妻に娶る事を認める訳にはいかなかった。大人達は妖怪の血を月人に混入させたくなかったのだ。そこで弘天が大人達にとって史上最悪の夢を持ってしまう。

女を侍らすと子供から謳っていた頃の弘天に対しては、当時の大人は、月人ならいくらでも侍らすのはいいが、妖怪だけはダメだと。弘天に何度も言い聞かせたが効果は薄かった。美人や可愛ければOKと。弘天の夢が女を侍らすなどというとんでもない夢だったからである。即ち人型の妖怪も対象に含まれるという事。もしも妖怪に人型がいなければ大人達の杞憂で済んだはずだ。だが当時の大人が予想した通り、大人達にとって最悪な結末になってしまった。弘天の妻は月人も多くいるが、それと同じく弘天の妻は妖怪ばかり。

 

「格差や争いがあるのは当たり前です。格差や争いは多くの神話や自然界にもありますし、世界とは平等ではなく、人間の誰もが想像する楽園も甘いものではありません」

 

「ふん、分かってる。アダムとイヴがいたエデンの園も人間から見たら歪んだ楽園だった。それでも私は、これからも月の民以外、地球に生息する生物や人間を見下すわよ」

 

「構いません。天界でマスターが鈴仙様に仰っておられた筈です。別にそれは気にしないと。ただそれは口や顔に出さずに上手く隠し、内心で人間を見下してください」

 

「…流石アカシックレコード。気味が悪いくらいお見通し」

 

 

 

鈴仙様はそっぽ向き、眠たそうに欠伸を一つ。私が言うまでもなく自主的に目隠しをして、壁にぶら下がっていた手錠を嵌め、また手足、最後に首輪を掛ける。鈴仙様はただマスターと永琳様に従い、受け入れるだけ。ボールギャグは私がベルトで固定した。それを見届け終え、その場を去る。シルバートレイに乗せている食器を洗浄するため、地下牢に設置されている台所へ向かう。

平成時代。あの時代は神も妖怪も随分落ちぶれました。昔は食、水、疫病、作物、洪水、水害、天災。それで沢山死に。一時期、人間という種族が滅びかけた時代も実際にありました。それは外国でもです。昔は神祇信仰。畏敬の念を持って自然を神として崇め祀り、恩恵を授かる為に生贄などで自然神のご機嫌を取った。清涼殿落雷事件やマヤ神話はいい例。死活問題を乗り越える為、生きる為に当時の考えであり、常識であり、必要な儀式でした。食と水に不自由しない人間にはこの考えは理解できないでしょうね。マスターが西一帯に天災を起こすのは鎌倉幕府創立や、まだ生きている人間に恐怖を植え付け、忘れさせない為。人間を神や妖怪に畏敬を抱かせるには必要。

日本では地震が頻繁に起きています。古来の人間はその地震を起こすのは日本列島の下に、あるいは日本列島を取り囲む龍。もしくは大鯰が地下に棲み、身体を揺すり引き起こしたものと考えられていましたし、 テレゴニー や 天動説 などが昔は信じられていた時代もありましたが、それもなくなり。昔の人間は空を飛べ、宇宙に行けるとは当時の人間達には信じられず、翼は生えなかったですが鉄の塊で実現されました。

 

「人間が神の失敗作なのか神が人間の失敗作なのか。どちらでしょう。信仰の為とは言え人間如きと仲良くして馴れ合う神も、神に対する人間の畏敬の念も随分と零落しました」

 

神が人間と仲良く馴れ合うのは、畏敬の存在としてはかなり程遠いですね。ですが 神 という名称は既に古臭い名称かもしれません。これからは神ではなく、神に代わる別の名称を考え、新たにした方がいいでしょうか。しかし…

 

「神が人間の味方というのは、クズの代名詞で名高いギリシャ神話 最高神 ゼウス 不動の称号。 クズ、人間に災いを齎し、好みの女性を如何なる手段を用い強姦するレイプ神」

 

邪神や悪神という言葉がありますが、大まかな意味は人間に災いを齎す神。では何故ゼウスは人間にあれだけの事をしておいて、悪神や邪神と言われる事がないのか不思議です。ゼウスは女性関係の印象が強いからですかね。

 

「それが消え、あのゼウスが仁徳になる事と同義。あり得ませんね。仁徳なゼウスなど、もはや ゼウスではありません。そう考えると実に笑えます」

 

たまに、ある人間が神秘体験した話があります。一度死にましたが生き返り死後の世界を見た臨死体験や、人間の目の前に神様が現れお告げ、神が傷ついた場所と同じ部位から血を流したりといった話の宗教的体験。

それを ヌミノーゼ と言います。そういった話は絶食や瞑想などでドーパミンの過剰分泌を促し、それによって起きる現象。身も蓋も無い言い方をすれば一種の幻覚。もしくはただの虚言が大半。自分が見た物が他の者も同じとは限らない場合もありますが、先程のアガスティアの葉の色の共通認識ですね。立ち止まり、右手でシルバートレイを支え、左手を額に当てる。

 

「今回と、今までの回帰で一度も使う機会はありませんでしたが。我々はアカシックレコードを使わなくても人間の脳へ介入できる」

 

月が消えようと大した問題ではない。疑似的な月の偽物でも置けばいい話。本物か偽物かはどうでもいいんです。ただ地球に生息する人間や生物に偽物の、疑似的な月を、月だと認識させる。

新たな月を創り出すなら神綺様とサリエル様にお願いしなくてはいけませんね。あとは数多の神話に登場する月の神を招集する準備もしておかなければ。黙ってフェイクの月を創るとなると色々面倒ですから、まずはツクヨミ様から話しましょう。

 

「嘗てアメリカで発見された極秘文章 SILENT WEAPONS FOR QUIET WARS 沈黙の兵器。

インテリジェント・デザイン、 observer の人間は、特に」

 

人間は視覚と脳の仕組みなどがまだ完全に解明できていない。

長野県の 黒姫伝説を見て黒姫と黒龍が織りなす愛の民話と捉えるのか、黒姫を神に捧げる生贄と捉えるのか。

 

「私はただのセクサロイド、生きるか死ぬかなんてどうでもいい。私はマスターのために動き、

与えられた役目を果たすだけ」

 

鈴仙様は全て戻さず一部だけを戻しましたが。おいたわしや。菊理媛神、神奈子様は覚えておられない。お二人の記憶を戻そうと思えばすぐにでも戻せますが、アカシックレコードを顧みるに諏訪国にいるお二人は幸せそうでした。今のキクリ様は無知ゆえ疑う事を知らずマスターから間違った性知識を植え付けられ、神奈子様はマスターに冷たく当たっていても、あの方は昔から素直じゃないだけです。永琳様は、お二人を戻すかどうかは私に一任すると仰られました。

神奈子様とキクリ姫様。お二人の、自分達の役目を忘れているとはいえ戻した方がいいのか、忘れたままでいいのか。私はただのセクサロイド。誰かに仕え、幸せな日々を送って生けるようにサポートをする存在。幸せに生きているお方に水を差すなんてあってはならない。ならば、私が選ぶ答えは決まっている筈。なのに、今もこうして悩んでしまっている。感情とは合理性に欠け、時に邪魔になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、あるウイルスがドイツで発見された。コンピュータウイルスの一種で カスケード というものだ。これは画面上の文字が滝のように下へと崩れ落ち画面底部に積み重なる。あれは正に文字が下に流れて行くのは時間の矢であり、積み重なった文字は時間だ。時間や時間の矢は下に流れると言っても位置的な下という意味ではなく、宇宙空間と同じで概念的に方向を想定したに過ぎない。

 

「ようシンギョク。時間がないからとっとと行け」

 

スキマを通って平将門の後ろに出現し、有無を言わさず回り込んでシンギョクを蹴り飛ばしてスキマに放り込み、隣にいた妖精の姫君も放り込もうとしたら両手で自分の両頬を押さえながら驚愕。

 

「で、殿中でござるー! って父様が二人!? 最近の私、いい子にしてたから神様からのご褒美かな?」

 

「殿中って刀抜いてないから。早く春姫もシンギョクに続け」

 

「ちょっと待って父様をどこへやったのそもそも貴方っていきなり何するの! やめて入れないでー! この中目玉がぎょろぎょろして視姦されてるよー!」

 

「ええい。時間がないと言うに暴れるな春姫」

 

このままでは質問攻めを受けるのは間違いないので、春姫の腰に手を回しながら持ち上げてスキマに放り込むが、春姫が大声を挙げたせいで様子を見に兵が1人来てしまった。声を聴いたので何かあったかどうか聞かれたが、何も起きてないと返すと帰った。今の俺は平将門で、隣には幻術で作り出した春姫がいる。これは諏訪子と神奈子が、高周波ブレードと光学迷彩を持たせている甲賀忍者部隊の望月千代女と甲賀三郎に引き込むよう頼んでおいた人物 幻術師 果心居士 が幻術で作り出した賜物。果心居士は鼠に姿を変えて俺の肩に乗っている。

 

「征夷大将軍、並びに魂魄妖忌、藤原秀郷、源義仲と義仲四天王へ降伏する。幻術師 果心居士、後は頼んだ」

 

「平将門の死体を幻術で創り出せばよいのですな?」

 

「そうだな。降伏してから始めてくれ。桔梗伝説が合図に 夜刀神 も動く。蝦夷の血を絶やす訳にはいかんし」

 

俺はマミゾウの能力で平将門に化けているが、それはただの上方修正、保険に過ぎない。

兵の一人を殺害し、その死体を幻術を使う際に利用させて貰おう。甕依姫もこの場にいるが問題は春姫の死体だな、死体の女が都合よくその辺に転がっていたらいいんだが。キョンシーとか。朝廷が最も望む事はこの争いを治める為、平将門の頸を欲している。今回の騒動の原因である平将門が殺された後は、ある事無い事を民に言い触らし、平将門の悪評を広めればいい話。それをするにはまず平将門の頸を貰う必要がある。そう、頸さえあればいい。似ていればいいんだ。それが本物か偽物かはどうでもいい。ただ平将門を殺した事実が必要なのだ。欧州藤原氏は神国側だが、今回は与さずに関わっていない。

 

「次は鎌倉幕府を創設し承久の乱。そして朝廷に勝利し西一帯の仏教を神道に取り込み全てを飲み込む。輝夜、咲夜、お燐、天神地祇が僧兵と放蕩を鏖殺するのはその下準備に過ぎない」

 

我が未来改竄素敵計画は平将門、蝦夷、神綺を以ってついに完遂されることとなる。いよいよもって死ぬがよい。そして、さようなら。と言っても俺は降伏する側だが。

 

まあデウス・エクス・マーキナーであってデウス・エクス・マーキナーではない。

魔界人のシンギョクを今回助けたが、それは魔界人だからであり、俺はヒーローや救世主じゃない。ただ女を侍らせたいだけの男。

しかし日本の神って人間にあまり接触しないと思われがちだが。歴史を振り返ってみると日本の神は結構、人間達へ接触しているんだなこれが。

 

神話なのだから当然、神話に神は無数に存在する。その中でも宇宙にある星、月、太陽を神格化した神は多くの神話にいるんだが。では地球を神格化した神は

 

 

 

 

 

「初めましてシンギョクさん。私は弘天の娘、名は紫と言います。魔界人の貴方に死なれると困るので、荒っぽいやり方で私の父と駆け付けた次第です。申し訳ありません」

 

「いいえ、お気になさらず。あの方に振り回されるのはいつもの事なので」

 

実際は初めましてではないのだが。あの方にスキマの中へ放り込まれたので私の態勢は崩れていたので、立ち上がりながら片手で太ももを叩きながら埃を落として話す。立ち上がった私の隣には目を回してる春姫もいるが、これはあの方にスキマへ放り投げ込まれたからではなく、スキマの中にある目玉に驚いて気絶したのだろう。私は魔界人。今回の騒動は神綺様に頼まれたからしたまで。神国を造り上げたのは、人間達の脳に杭を打ち付ける為にした事。

 

「貴方のお蔭で神仏分離は早く進みそうです」

 

「そう言って下さるなら私も神綺様の命に従った甲斐がありました」

 

「ええ、本当に。それで父が言うに、諏訪国にある地獄谷温泉にでも浸って次女と、長女の娘達と骨休みしたらどうだ。そう言伝を承っています」

 

それはいいかもしれない。ここ最近、戦続きだったのだ。しかし紫殿は何度見てもどこか、八意様に似ている。八意様が所持していた天羽羽矢を紫殿が背負っているからではなく、雰囲気がだ。だが、紫殿が持っているあのインドラの矢は何度見ても心臓に悪い。

紫殿の隣にスキマが展開されているのだが、そのスキマから鴉天狗の 射命丸 文 殿 が身を乗り出してきた。そのスキマは別の所に繋がっているようだ。上半身をスキマから乗り出している射命丸殿は、一目見るだけでも服装が汚れていて、酷くボロボロ。私に気付いた射命丸殿は一度頭を下げ、お久しぶりですと軽く挨拶。私も返答すると今度は紫殿に顔を向ける。

 

 

 

 

 

「紫さーん。偵察してきましたよ…」

 

「お帰りなさい。それでどうだったの」

 

「そ、それが…」

 

スキマから身を乗り出している文は両手の人差指の先を合わせ、目の集点が定まらず一筋の汗が流れた。スキマの中とはいえ秋なのに汗が流れるほど暑いのかしら。今はスキマの中にいるけど、現在地は常陸国。常陸国には征夷大将軍など平安京からの兵が大勢いる。それで私達が下野国に行って全戦力を用いて妖蟲を従わせるにしても、常陸国は下野国の隣国だから事を始めれば征夷大将軍に被害が及ぶかもしれないしお父さんはマミゾウの能力で平将門さんに化けてる。まずは征夷大将軍などが平安京に帰るのを待った方がいいかなと。この先の計画を立てていたら、文の言葉を聞いて頭が痛くなる。

 

「そのー 幽香さんを下野国に待機させていたじゃないですか。それで味方や下野国にある、戦場ヶ原にいた妖蟲達が…」

 

文から詳細を聞いたら、幽香がまた一人で突っ走ってしまって戦場ヶ原にいた無数の妖蟲を壊滅させている真っ最中との事。しかも今日は私じゃなく、幽香の日傘になっている小傘を閉じて傘の先端から極太光線を撃ちまくっているので、敵だけではなく味方にも被害が及びながら、かつて赤城山の神と日光山の神が争った戦場ヶ原が焼け野原になりつつあると。小傘は傘のまま恐怖で泣いていても幽香に気付かれず、小傘が助けを求めた萃香達は止めずに面白がって萃香と勇儀も幽香に続いてしまい、華扇は雷獣と笑いながらその光景をつまみにして、西の妖怪を風靡し、諏訪国から引き連れて来た妖怪たちと鬼ころしを飲んでいるらしい。

 

「お目付け役のぬえは!?」

 

「寝てます。今はお昼ですので眠かったのでしょうね。ぬえさんは夜行性ですから」

 

「な、なんてこと… 呑気に話し込んでる場合じゃない。ごめんなさいシンギョクさん後で迎えに来ますから、行くわよ文!」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

射命丸殿が身を乗り出していたスキマへと紫殿は入って行く。スキマの中で置き去りにされてしまった。ぎょろぎょろ動く目玉が気になるが、このまま待たせてもらおう。私の役目は一旦終えた。気絶していた春姫が体を起こし、立ち上がっている私を見上げる。

 

「ん~? あれ。父様、おはよう~」

 

「おはよう。春姫、突然だが。諏訪国にいる五月姫へ会いに行こうか」

 

「本当!? お姉ちゃんに会える日がやっと来たんだね。嬉しいな~ だけど父様、神国はもういいの? 折角造り上げたのに」

 

「私と蝦夷が消えようとも、平氏の荘園支配はまだ終わっていない。後は東の武士団、魂魄妖忌、源義仲、欧州藤原氏、鎌倉幕府創設に尽力した千葉氏、北条氏に任せるさ」

 

春姫の頭を撫でながら話す。これでいい。布石は十分に打ち終えた。残された行進が止まる事はない。後は鎌倉から承久の乱を起こし、勝利すればいいだけだ。勝てば東だけでなく西に鎌倉の手が伸びる。それに春姫とあの方の子を、孫を見るまでは死ねん。名は春姫で娘は春姫だけではないが、一人娘と春の日は暮れそうで暮れぬ。という訳でもない。春姫の頭を撫でていたら、いつも以上の笑顔になる春姫は、懐かしい事を言い出す。

 

「日本三大怨霊や神田大明神には成れなくなっちゃったけど。首と胴が繋がって良かったね、父様。京で首を晒されたり、首が関東に飛び去る事がないもん」

 

「ああ。そうだな…」

 

アマテラスがニニギに下した 天壌無窮の神勅 がある。これはニニギの子孫が日本を治めろという意味だ。そして私は平氏。平氏と源氏は薄いが天皇の血があるということは。鎌倉幕府が創立されようと 天壌無窮の神勅 は潰えていない。

鎌倉幕府を創立するのは天皇の血を持つ源氏、源義仲なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の少女が山城国にある平安京へやって来た。平安京に入るには羅生門を通るのだが、少女は巨大な羅生門を見て目を輝かせて暫く眺めていた。だが平安京に来た理由を思い出し、気を取り戻して頭を数回横に振る。羅生門を通り平安京に入る途中、1人の男とすれ違ったが呼び止められた。

 

「少女、悪いがちょっと待ってくれないか」

 

「な、何だ」

 

非違を検察する天皇の使者、検非違使に呼び止められたのだろうかと、心配な気持ちに蝕まれながらも少女はぎこちなく返答して振り返った。少女を呼び止めた男は右手を顎に添えて少女を見つめた。すると思い出したのか右手を握って左手にポンと、一度置く。

 

「やはり。君は妖怪のようだな」

 

男にそう言われ少女は身じろぐ。少女は親に、平安京に入っても殺される心配はない。そう言われていたのだが。怖くなった少女は逃げようと一歩一歩後ずさり、首を動かして後方を確認する。この平安京、結構複雑で迷路状になっている。逃げるにはうってつけだ。少女は逃げるルートを考えていたら、男は慌てて両手を上げた。

 

「待った。いや、申し訳ない。先程の無礼はご容赦の程を。別に取って喰おうという訳ではなく、聞いていた妖気と容姿に貴方が一致したので声を掛けた旨です」

 

「なら何故妖怪と言った」

 

「失礼、順序が逆でした。自分、諏訪国出身で名は金太郎と申します。お諏訪さまの妃を藤原氏の所へ案内しろと仰せつかっているのですが。失礼ながら、貴方の名は慧音ですか」

 

バツが悪そうにする男に慧音は驚いた。親が勝手に決めたとはいえ、自分が諏訪大明神に嫁入りが決まっている事を目の前にいる初対面の男が知っていたのだ。少女と金太郎は羅生門近くの坊城小路で東寺の近くにいる。慧音の反応に確信を持った金太郎は、目の前にいる少女が慧音だという前提で話し始める。

 

「案内を仰せつかっているのですが。この山城国はまだ無名の妖怪が蔓延っており、熊坂長範と共に鎮圧するため自分は向かわなければなりません。そこで別の方へ案内を」

 

「案内役はあたいだよ」

 

少女の背から女性の声が聞こえ、咄嗟に慧音は振り返る。声の人物は頭に深めの笠を被り、ロングの外套を着用。金太郎に片手をひらひらさせながら少女に近づいて少女の手を握り、金太郎は慧音と案内役に頭を下げてその場を去った。まだ慧音は子供なので身長は低く、女性の声を出す人物を慧音は見上げている。いきなり手を握られたのに不思議と安心感を覚えたからだ。慧音の視線に気づいていない案内役は慧音に聞いてみる。

 

「日本書紀の編纂に来たんだっけ?」

 

「初対面なのに、私を知っているのですか」

 

「まあね。名は慧音。白沢の一人娘で、秋の日と娘の子はくれぬようでくれる。そのことわざ通り親に嫁入り相手を決められた。どうだい、当たってるだろう」

 

慧音は凄い凄いと連呼。慧音は親に無数の知識を教えられたが、全てお見通しにされているのは教えられた知識を以てしても分からなかったからだ。案内役の人は親に自分の事を聞いたのだろうかと考えてもう一度、慧音は案内役を見上げた。外套を着用して笠を頭に被っているので怪しさ満点なのだが、全て言い当てられて慧音は感心してしまった。手を繋いでいる人物は声から察するに女性だと分かっていたので、慧音は案内役の名を聞いた。慧音と手を繋いでいない左手の人差指以外を閉じ、自分を指しながら名乗る。

 

「あたいは小町。じゃあ左京北部へ向かうよ」

 

慧音は小町の名を忘れないように頭の中で反芻していたら、小町に連れられて一歩だけ歩き出すと周りの景色が一変した。さっきまで薄暗く、狭い通路にいたのにいつの間にか屋敷の塀の前に立っていた。慧音はどういう事かと考えたが、小町に中へ入らないのか聞かれ、後で考えようと一旦考えるのをやめ屋敷に入る。屋敷へ勝手に入っていいのかどうか慧音は内心不安だったが、手を繋いで一緒に歩いていた小町は全く気にせずに玄関の戸を開けて中に入って行ったので、もしかしたら顔見知りなのか小町を見上げた。慧音の視線に気づいた小町は綺麗な歯を出して一笑し、藤原不比等と妹紅がいる奥の間へ到着。慧音は襖を開けて中に入り、小町は奥の間にいる妹紅へ声をかける。

 

「お待ちどうさん。慧音を連れて来たよ妹紅」

 

「ありがとうございます。お待ちしておりました」

 

慧音が来るのは藤原不比等と妹紅は弘天に聞かされ知っていたのでまずは座って話そうと促し、慧音は傾いて対面しながら座る。この奥の間には小町や稗田阿礼の子も同席だ。稗田阿礼の子は妹紅に抱かれながら寝ているが、少しの沈黙の後、慧音は一度おじぎをして本題に入る。

 

「初めまして、私の名は 上白沢 慧音 です。母と、私の良人である弘天、諏訪大明神に言われ。30巻以上の歴史書、日本書紀を編纂するため天界から平安京に来ました」




小町は成人していますが慧音はまだ子供です。慧音の能力は日本書紀に使ったとしても拡大解釈して使う事はないと思います。多分。

青娥ですが、ここでは中国神話の月の女神 嫦娥 です。そして桂男と関わりが深く、中国神話の月の女神 嫦娥 は月の象徴であるヒキガエル。蛙、カエル、帰る、つまり回帰。不死は仙人、仙女。
神奈子が背負う円形状の注連縄の象徴は蛇。しかし神奈子は海神に近いのでヘビではありませんが、根源的にはケーリュケイオン、ウロボロスですけど神奈子は弘天と同じく龍に近いです。それで神奈子は死と再生の永劫。あと諏訪子も回帰の意味を含んでます。

今回の前半、日本神話に出てくる巨大樹、妖怪の桂男のお話が混ざっています。その日本神話に出てくる巨大樹、または世界樹は。月の表から月の裏側にまで根を張り、月の生命力を吸い取って成長しつつ。月だけではなく月の民も巨大樹の芽に吸い取られて糧にされ、月の民は養分にされている事に気付いていません。それと、玉兎は妖怪ですので皆殺し対象には含まれてないです。

それとインドに住むゾロアスター教の信者はパールスィーと実際に呼ばれているのですが。45話のサブタイトル 第六天魔王波旬 の後書きで書きましたが鈴鹿御前(立烏帽子)は天竺にいた第六天魔王の娘説があります。
パルスィを天竺にいた第六天魔王の娘である鈴鹿御前にしたのはそれが理由の一つでした。

幽香は傘になっている小傘を使い、栃木県の戦場ヶ原でマスタースパークを連射しています。本当は幽香に持たせているパスパタやトリシューラを使おうかと思いましたが流石にやめました。そんな事したら地球から日本が消えてしまう!

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