蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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次の話で弘天を諏訪国に帰します。


懐妊

「お雑煮を食べて飲むと体が温まるし美味いな。本気で妹紅を妻に欲しいくらいだ」

 

「そう言って下さるのは嬉しいですが、私の一存では決められません。父にお伝えください」

 

「あいつ親馬鹿なんだよなー 妹紅を娶れたらいいんだが」

 

コノハナノサクヤみたいな事を妹紅が言うのを聞きながら餅を噛んでお雑煮を飲み、白い息を吐いてしみじみ。片手に持つ赤色な雑煮椀の中には餅入りのお雑煮が入っている。これは妹紅が作った物で、本来なら御付きの人がするのに自主的にしているそうだ。今の時代、女性は屋敷に籠るのが常識で娯楽があんまりないのでしてるんだと。この場には輝夜、咲夜、妹紅がいるが幽々子はお昼寝中。

 

「愈々輝夜、咲夜。そしてお燐。三人は最澄が開いた天台宗の総本山、比叡山延暦寺の天台座主、並びに本願寺にいる浄土真宗の僧兵。女、酒。放蕩に現を抜かす悪僧を全て殺せ」

 

放逐ではなく鏖殺だから全て攻め滅ぼす。まあ浄土真宗は火宅僧、数ある仏教派生の宗旨では僧に肉食妻帯はOKで無戒なんだが、女や酒に溺れる放蕩は駄目だ。それに僧兵が跋扈や闊歩されては面倒で顰蹙で塵芥。僧兵が不退転だったらいいが、無理だろうな。

 

「か弱い女性にそんな事をさせるのはふざけていますわね。どれだけの人数がいると思ってるの」

 

「永遠、須臾、時を止める。その上、咲夜と輝夜は人間じゃなく月人だぞ。それに怨霊や死体を 自在に操るお燐もいるし死体を操り他の人間を殺して死体を操っての無限増殖だ」

 

仏教や僧を形骸化させ蔑ろにした者は死をもって贖罪させよう。座布団の上で丸くなって寝ているお燐は反応しない。編み物を編んで咲夜はそう言うが、輝夜はお雑煮を静かに食べていてだんまり。輝夜って美人で華奢な身体だから人畜無害や大人しそうに見えるが違う。

今はともかく、昔は妹紅と殺しあってたくらいだし。お燐は幽霊、怨霊、死体との会話できる。1人の僧兵を殺してお燐に操らせ、その死体を操りながら別の僧兵を殺させる。まるでゾンビ映画の様にお燐の能力は伝染していくようだ。剣で斬っても死体でお燐に操られているし、脳天撃ち抜こうにもてつはうも銃も無いしな。脳天を撃ち抜いても脳では無くお燐が死体を操っているから意味ないし。一旦お雑煮を食べるのをやめ箱膳に置き、頸にかけていた御頸珠を渡そうと俺の隣でお雑煮の餅を黙々と食べていた輝夜を見る。

 

「輝夜。神道の神、天津神、地祇。特に隠居生活しているスサノオを使って僧兵を皆殺しにしてくれ。まあ輝夜が頼めば神道の神も天津神も言う事を聞くが、念の為に御頸珠を渡す」

 

「スサノオ達を使うまでもないと思いますけどね」

 

両手を輝夜の頸に回し、御頸珠の繋ぎ部分を結んで輝夜の頸にかける。これでいい。

 

比叡山の僧兵は第72代天皇 白河法皇が この世のままならぬものは山法師 と言わせた者達である。坊主どもは煩悩を絶ち殺生など厳禁だと言うのに僧兵とは、笑える。そして比叡山で有名なのが足利義教、細川政元、織田信長の比叡山焼き討ち。しかし織田信長の比叡山焼き討ちなどは近年の発掘調査により、織田信長は比叡山焼き討ちをしていない可能性が浮上して疑問視されている。織田信長は英雄と言われることもある人物だが、あれはただのゴマすり野郎だ。織田信長が英雄なんてイメージは創作の影響だな。

仏教はキリスト教程ではないが面倒。特にキリスト教は叩けば叩く程いくらでも埃は出る。例を挙げるならキリスト教徒がアメリカ先住民に何をしたか、懊悩を無くさねばならん仏教の坊主共も過去に何をしたと思う。妹紅もこの場にいるので、片手を上げて俺に聞いた。

 

「あの。どちらの寺も仏が治める治外法権の地です。特に延暦寺は朝廷や天皇ですら制御出来ないほど軍事力もありますし、僧兵を殺せば仏敵と見られ、民衆から反感を買う恐れが」

 

「それは人間、朝廷、天皇の話だ。俺、輝夜、咲夜、お燐が人間の道徳、常識、秩序に従う理由は無い。それに僧は仏が人間を救済する存在とか伴天連みたいな事を宣っているが違うから。あいつは人間を救済する存在じゃない」

 

今はまだ神仏習合されている、なので神は仏であり、仏は神という考えがあるから普通はそう思うだろう。しかし神と仏は別の存在。輝夜と咲夜の二神が僧を殺すのは神と仏が別の存在だと分からせる事が理由の一つ。だが俺達は神と妖怪で相手は僧兵と言っても人間だ、神と妖怪が決めたルールなら分かるが人間が決めたルールなどに神と妖怪が従う理由も価値も無い。今は病も流行っていて坊主どもでも罹患の者は多くいるし飢饉問題は解決していない。酒も人が作ってるから残りは女くらいだ、まあ病持ちの女なんて抱こうとは思わんだろうが。お燐は僧兵を殺す事は全面的に手を尽くすと言われている。死体を好きにしていいと言っているからだ、何か起きても全て俺のせいにすればいい。

 

「では仏とは。釈迦如来とは何なのでしょう」

 

「天竺にあるネパール地方の王子だったが、妻も子も捨て出家したせいで釈迦族は滅ぼされカースト制を否定した、ただのおっさんだよ。序でに言うがヤマトタケルが誰に殺されたか、妹紅は知ってるか」

 

口に出すと神か怨霊に祟られるのではないかと畏れたのか、妹紅は右腕の袖で口を隠して小声で言う。そうだ、普通は大それと言えないんだ。口に出すのも憚られるのが神であり、神を怒らせたら、罰、呪い、祟り、冥加の作物、天災、病。これらを神から与えられると信じられていたのだから。平将門がいる常陸国の神 夜刀神 はその典型だ。そもそも神社とは神が鎮座する為の場所で、神が怒らない様に畏敬の念を抱きながら祀り、人間が神に対する信仰の度合いによって神は人間に恩恵を授け、人間はその恩恵を授かろうと言う場所だ。作物とかな。嵐が来たり作物が不作、または凶作なら神がお怒りだと考えられ、神を崇め祀って神の怒りを鎮めていた。自分達は悪く無い神が悪いんだ、神なんかクソくらえだと当時の人間は考えなかった。ただ自分たちが神を怒らせる事をしたんだと考えたんだ。当時は食と水関連は死活問題だったからな。そこで 人身御供 が発生する。生贄を用意する代わりに嵐などの天災、または作物が育つよう神様お願いしますと 

溺れる者は藁をも掴む 藁にすがる思いで神様のご機嫌取りをな。若い女の場合もあれば、赤ん坊やまだ年も間もない女、子供を生贄に捧げたりした時もあった。これでも神は味方と言い張る人間はいるのかどうか。楽園に行きたいなら知恵の実を食べる前の人間に戻るしかない。

別に、神 以外でもいい。何かを崇め敬う心は大事だし必要。それがなければ人間は傲岸不遜になる。

 

「…神様でした」

 

「そう言う事だ。神も仏も元から人間を救済する為の存在じゃない、他にヤマトタケルの妃、弟橘媛も海神によって殺されてるしな」

 

これが事実だとして。神裔だからこその天皇は特にだが、人間は神に逆らう事は出来ん。自然を神に握られているからでもあるが、日本の人間は神を殺そうとか、その発想は生まれない。それが当たり前だと考えているからだ。設定が穴だらけな古事記、日本書紀の設定はまあ古事記に比べてちゃんとしているが。ヤマトタケルは神に邪魔されたりして殺されている。そして、涅槃の境地に立つ釈迦はこの世の真理に最も近い存在。言ってしまえば今の釈迦は、ヤハウェが追い出したが、 エデンの園にいたアダムとイヴが知識の実を食べる前に戻っているのだよ。

近江国に園城寺や藤原不比等ゆかりの寺院である大和の興福寺、他に大和の東大寺があるが これらは存在していなく 諏訪国にある諏訪大社は、一応建ててはいるが僧兵はいない。諏訪国、諏訪国より東、東北は神国なのでお寺も僧兵も皆無である。仏教と一括りに言ってもかなりの派生があるんだが、その中に鎌倉時代初期の日本の僧 法然が開祖した浄土宗がある。キリスト教が日本で広まらなかった理由は浄土宗が原因の一つ。仏教は基本的に悟る事、涅槃の境地に立つ為が理由ではあるが、浄土宗の思想は仏教の考えでは無くまるでキリスト教だ。盗賊だろうが悪人だろうが鬼だろうが南無阿弥陀仏さえ言えば極楽浄土へご案内だし。似た様な物で鎌倉時代初期の僧である 親鸞 開祖の浄土真宗とかもあるが、宗名が似た別物だ。お雑煮を食べ終えたのでお椀を置き、美味しかったので妹紅にお礼を言っておこう。

 

「雑煮美味しかったぞ妹紅。俺に嫁げ」

 

「お粗末様でした。私が嫁ぐ為には父の許可を得て下さい」

 

流れで行けると思ったが駄目だった。内心舌打ちして不比等の顔を思い浮かぶ、幽々子は俺が勝手に貰って行くがどうしたもんやら。この先、まともではないからな。

…神や妖怪、天使や悪魔が実在している時点でまともではないな。天竺、唐土、日本。この三国は妖怪と仏教で繋がっている。仏教という宗教によってでもあり、日本の妖怪は中国起源であるが、その中国の妖怪もインド起源ばかりである。

 

「それでお兄様はどうするのですか?」

 

「白蓮と年が近い幽々子を会わせたいし幽々子と明日諏訪国に帰る。で、全ての妖怪引き連れて平将門と蝦夷に会いに行くよ。諏訪国の妖怪を率いて行くしきっと壮観で見ものだぞ」

 

「そんな事をすれば諏訪国は空き巣になるのでは」

 

「その為の民と餓者髑髏。昔から師範の美鈴が武術を教え、実際はただの手合せだが、民は萃香達とお互い殺し合ってきたし大丈夫だ。あ、今の内に輝夜は俺の永遠を解いてくれ」

 

「ですが永遠の魔法が無くなるのですから何かあれば死にますよ、それは忘れないで下さいねお兄様。まだお兄様の妻になる時に交わした私との約束を果たしてないのですから」

 

約束は守る、俺が生きていればな。急に体が肌寒くなって来た、もう俺には永遠の魔法は無くなった様だ。お雑煮を食べ終えたので輝夜の頭を撫でながらこの先のプランを考えているが、どうするか寝ころびながら考える。そうだな、よし決めた。

 

「とりあえず輝夜の寝室に行くか」

 

「え、何故」

 

「天界に行った時に言っただろう、いつか輝夜には俺の子を産んで貰うと。今がその時、だから輝夜を抱く為に行くのだ」

 

咲夜も混ざるかどうか聞いてみた。稗田阿礼の子を貰ったのはいいが、まだ赤ん坊だったのだ。なので咲夜が稗田阿礼の子を面倒を見てくれている事と、手袋の編み物があるのでと編みながら断られた。子の年齢はまだ2歳、もう1人で立つ事も出来る。少し大人し過ぎるのが気がかり。妹紅は夫婦ではないので誘えないし、今は輝夜だけだ。輝夜の手を掴んで引っ張って襖を開けて縁側に出て輝夜の寝室に行く。どうも輝夜と咲夜と妹紅は同じ寝室で寝ているそうだ。

 

「するにしてもまだ日は高いです。それに藍は出産しましたが、今度は 椛 と はたて が懐妊していると耳にしています。なんですか、お兄様は景行天皇を越えようとしているのですか」

 

「強ち間違いではない、だが俺は愛している女しか手を出さんぞ。空のお天道様も輝いている絶好の日。俺は暗い所より明るい所で輝夜の顔を見ながらしたいのでちょうどいい」

 

「嫌と言っても連れて行かれるのでしょう。女好きなのは構いません、ですが。お願いですから 武烈天皇の様にはならないで下さいねお兄様」

 

「武烈天皇。ああ、第25代天皇で、妊婦の腹を割いて胎児を見たり。馬の交尾を女達に見せて、

濡れた女を殺した武烈天皇か。分かってて言ってるんだろうがあれは創作だからな」

 

天津神のサグメはどうするか答えなかったし、鬼人正邪はスクナビコナに鬼退治ならぬ鬼捕縛を任せた。地上に降り立ったサグメなどの天津神は除いて。未だに月の都に住む月人、月の民を皆殺しにしなくてはいかん。だから一旦帰ろう。輝夜と縁側を歩いていたら空から庭に依姫が降りて来る、無事に帰って来たようだ。

 

「お帰り依姫。どうだった。西行は生かしたか、殺したか」

 

「いえ。全ての回答は正解でしたので西行をファラリスの雄牛で炙り焼きはしていません。ですが、別の坊主は炙り殺しました」

 

「そうか。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、って訳じゃ無いんだがな。妹紅がお雑煮を一杯作ってるし、食べるか依姫」

 

「いいですね。空を飛んでいたので少し肌寒く、お腹も空いていましたので頂きたいです」

 

お雑煮を食べるかどうか聞き、微笑しながら頷いて微笑む依姫を見ていると何と言うか、既視感を覚える。依姫をじっと見つめて、体の隅々まで見るが依姫のお腹を見ていると何か、少し膨れ上がっているような気がする。

 

「ところで依姫さんや。さっきから気になっていたんだが、依姫のお腹。少し膨らんでないか」

 

最初は見間違いかと思ったが、お腹だけ的確に見間違えるのはありえない。もし太るなら足とか腕もその影響は受けるはずである。俺の質問に依姫は顔を赤らめ左手を頬に当て、右手でお腹を撫でながら流暢に話す。

 

「やはり分かりますか。遂に私達の愛の結晶が形となりました」

 

「形って何が」

 

「私と弘さんの子を、授かったのですよ」

 

「苦節数億、やっと依姫お義姉様が垂涎の的でしたお兄様の子を授かる事が出来たのですね。おめでとうございます」

 

依姫は輝夜に感謝の言葉を口にするが、俺は言葉にできない声を挙げながら、隣にいた輝夜に抱きつく。体の震えが止まらない。輝夜はそれに気づいたのか輝夜の方からも片手を俺の腰に回して抱きしめ、もう片方で俺の頭を撫でる。

 

「だ、大丈夫ですかお兄様。体が震えていますよ」

 

「子が出来たのは非常に喜ばしい。喜ばしいんだが。俺にはもう永遠の魔法が無いのだ。こんな事が知られたら永琳、特に。と、豊姫に何を要求されるか分かった物では…」

 

「もう知られてますよ弘さん」

 

「なんだと情報をリークしているのは誰だ!?」

 

素足のまま庭にいる依姫に近づいて問い詰めたら、依姫は右手の人差指を上に差したのでそれにつられて見ると、上空には鴉の翼を羽搏かせていた鴉天狗の 射命丸 文 を発見。スカートなので文の下着を見ていたら、俺が文に気付いた事に気付いたのか、文はやばいバレたと表情を変え、天狗一の速さで東にある諏訪国の方角へと飛んで行った。はたてと椛が妊娠したので文にしわ寄せが来ているのではないかと思っていたが、そんな心配はする必要は無かったようだ。永琳の命令で俺の監視をしていたのだろうか、とりあえず

 

「…あの女天狗、泣こうが喚こうが辱めて絶対に凌辱的に犯す」

 

「先カンブリア時代の地球に都市があった時、八意様に何度注意されても変わらない弘さんなので止めはしませんが、私が目の前にいる時にそう言う事を仰るのはやめて欲しいです」

 

「すいません」

 

頭を下げて謝る。頭を下げたので依姫のお腹が目に入り、改めて孕んだのかと再認識。幸せ最高潮に満ち溢れた表情な依姫のお腹を右手で撫でてみようかと思ったが、まずは依姫の許可を得よう。

 

「依姫、お腹。撫でていいか」

 

「いいですよ」

 

依姫の許可を得たので右手で撫でて思うが、生命の神秘である。縁側にいた輝夜も撫でたいと思ったのか、置き石に置いてある履物を履いて俺の隣に来て一緒に撫でながら話す。

 

「不思議ですね。お腹が膨れていくなんて」

 

「どうする依姫。俺は明日平安京を発つ。子を産むとしても平安京で子を産むか、諏訪国で子を産むか、もしくは月の都に戻るか。どこに行くとしても送るぞ」

 

子ってのは意外とそう簡単に出来ないのに出来るとは、未曽有だ。依姫は目線を空へ見て、右手の人差指を右頬に当てながら数十秒、今も依姫のお腹を撫でていた俺に目線を下げ、考えた末で出てきた言葉がパチュリーとレイラだった。

 

「パチュリーとレイラはアリスと共に諏訪国へ移住し、天竺から来た100は超える魔女達と住んでいるのでしたよね? 久しぶりに会いたいですし諏訪国に行き、産む事にします」

 

「そうか。もう一人だけの体じゃないし、明日は歩いて行くより天の磐舟を使って空から諏訪国に行こうか。何かあってからでは遅い」

 

きんちゃく袋に入れていた天の磐舟と打ち出の小槌を取り出し、天の磐舟を地面に置いて打ち出の小槌を何度も振ると天の磐舟はどんどん巨大化。三人は乗れるほどの大きさになってので、庭に天の磐舟を置いたまま依姫にお雑煮を食べて貰う為、依姫のお腹に気を付け、俺はまず裸足だったので庭から足置き石へ行き、玄関に行って履物を履いて輝夜と共に案内。心配し過ぎだと依姫に笑われた。まあ依姫を案内して妹紅が作ったお雑煮を美味しそうに食べている光景を見てからその後輝夜を襲ったがね。

西行の言伝を依姫に聞かされたが、殺すのはやめる事に。西行が記憶で苦しんでいるなら記憶を消せばいいと判断。幽々子に嫌われるのはいやだし軟化。これで溜飲が下がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中。諏訪国に帰る前に、一度シンギョクに会おうと考え藤原氏の屋敷から出て真夜中の平安京を歩く。暗いしごちゃごちゃして迷うし平安京って無駄に広すぎる。クソ、やはり天皇だけ寿命が無い存在にして、神裔は人間と変わらない寿命にするべきだったか。それでも100以上は生きるのだが。えー シンギョクの在地は平安京で言うと西大宮大路の西、冷泉小路の南、二条大路の北だからうろ覚えで歩いていくと見覚えがある塀を発見。そのまま中に入り屋敷の庭まで来ると誰かが縁側に座りながら月見酒をしながら月見団子を食べていた。

 

「月見か、昨日は望月だったから今日は既望の様だな」

 

「んー? あ、お前さんかい。待ってたよ」

 

おいでおいでと、小町の隣の縁側を手で叩いて誘う。俺もご相伴に預かろうかと小町の隣に座ると、月見団子を掴んで差し出してきたのでそのまま口にいれて噛む。中々美味い。諏訪国出身の金太郎の役目は、平安京に住む貴族の姫君を誘拐したり、誘拐した姫君を生きたまま喰ったりしていた大江山に住む鬼の酒呑童子と配下の四天王を頼んでいたが、金太郎は正々堂々の相撲勝負で全員の鬼達に勝ったらしく、酒呑童子やその配下達は金太郎をいたく気に入った様で金太郎の配下になっている。金太郎が酒呑童子達に勝つとは、萃香、勇儀、華扇達と共に鍛錬と言う名の命を懸けた殺し合いをした賜物だな。だがシンギョクについてはまだ聞かされてないのでこうして来たのだが。

 

「シンギョクはどこにいる。シンギョクはまだ仕事か。もしくは玉藻御前を捕らえ損ねたのか」

 

「今さっきシンギョクはあそこの井戸から地獄に行って、地獄の閻魔の補佐をしてるよ。玉藻御前は下野国の那須野へ逃げちまったみたいだね」

 

それと神綺が最近酸っぱい物を食べたがっていると小町はシンギョクから聞いたらしい。えー いやウサギのメスがする想像妊娠みたいなもんだ気のせいだろ。確かにあの時、永琳と一緒に神綺にも手を出したがまさか。下野国と言えば平将門がいる常陸国の隣国ではないか。なんと好都合、やるじゃないかシンギョク。これで紫と幽香が諏訪国の全勢力を動かす為、リグル以外で東に行く理由が一つ増えた。挙兵ならぬ挙妖をしよう。玉藻前は中国が起源と言われるが、実際はインドが起源だ。中国には妖怪は多くいるが殆どの中国の妖怪はインドが起源だし、仙人で道教の神と言われる孫悟空とかはインド神話のハヌマーンが起源であり、他にゾロアスター教 悪魔ダエーワ などの考えはインド神話の影響を受けている。

 

「それで、お前さんは何しに来たんだい。玉藻御前の話を聞きに来たのが本命じゃないだろう?」

 

「実は小町の夜這いに来たんだ。想定外に小町はまだ起きていたが」

 

「求められる程の美しさを兼ね備えたあたいは自分が怖いよ。縁切寺にでも駆け込んでやろうか」

 

「やめろ。まだ夫婦に成りたてだと言うのに離婚は早すぎる」

 

月見団子をもう一つ貰い、口に放り込んで呑み込み小町に酒を注いでもらって酒を煽る。聞く事はもう聞いたしお暇しよう。縁側に座っていたが立ち上がり、シンギョクに忠告しておくよう言伝を小町に頼む。

 

「夜明けに諏訪国へ帰るが後から来る小町はともかく、シンギョクは諏訪国にルーミアがいるから気を付けるよう言っておいてくれ」

 

「あいよ、伝えておく。なあお前さん。子孫繁栄というと誰が喜ぶのかね」

 

「唐突だな」

 

「ふと思っただけだよ。特に深い意味は無いから」

 

あははーと顔を真っ赤にしてかんらかんら。これ、間違いなく酔ってる。小町の斟酌を汲み取り、答える。

 

「1つは国だな。国としては税を治める人間や田を耕す行為、働く事に何の疑問を抱かない人間、奴隷の家畜が多いに越した事は無い。後は学が無ければ尚いい、扱いやすいからな」

 

「そう」

 

返答を聞いた小町は小声で返し、また酒を煽る。酒を煽り終えると空いた片手を振って上機嫌に別れを告げた。

 

「諏訪国に帰る道中気を付けるんだよー。初夜を迎えずに夫が死んで未亡人の仲間入りは御免だからね」

 

「だな。永遠が無くなった今の俺を殺す事は人間でも出来るし。あ。今 初夜を迎えようか小町」

 

「…あれ。もしかしなくてもあたい墓穴掘った?」

 

俺も片手をひらひらさせながら屋敷を出ようとしたが、初夜に反応して立ち止まって振り返り、小町に近づいて俺の両手を小町の両肩に置いて逃げられない様にして、お互いの目を合わせて宣言。

 

「小町に惚れた。だからお前を抱かせろ。そして俺の子を産んでくれ小町」

 

「お、男らしい告白じゃないか」

 

夜明けには平安京を出て諏訪国に帰るが、依姫だけでなく幽々子も連れて行こうか。年も近い白蓮といい友達になるやもしれん。ならば、自分の母に似ているからと幼女を誘拐して監禁して手籠めにした源氏物語のマザコン男を俺が演じてみよう。




依姫は妊娠しました。現時点で確定懐妊しているのは椛、はたて、依姫です。

永琳は勿論の事、神綺やサリエルは数話前で弘天は手を出していると書いてます。懐妊したかどうかは今は分かりません。今は。

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