蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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悩んだ、今回本当に悩んだ。

今回出てくる歴史の話は無茶苦茶にしてますので絶対に信じてはいけません。


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塵塚怪王


「悪く無い。こころ、貴方は薙刀が合ってると私は思うわよ」

 

「そうかな? そうかも」

 

剣を持った依姫と人型に成って薙刀を両手に持ったこころからは、金属特有な擦れた際に発する音甲高い異音を周囲に響かせる。正直このSE、効果音は好きじゃない。この城、武器庫があって無駄に色んな種類の武具があるんだが、子供達だけではなくこころも鍛えようという話になり今はこころの手に馴染む武器を探す為、一つ一つ試し、試し終えてこころに合わなければ取り替えての繰り返しをしつつ依姫とこころは刃を交えて訓練してる。

 

「そんなに龍神や城が珍しいのか霖之助」

 

「うん。こんな建物見た事が無いし龍神なら尚更だよ。僕は見た事が無い物に好奇心が疼くんだ。蒐集癖があるのかもしれない」

 

「う~ん ここまで興味津々に体を触られると流石に照れるね~」

 

「せめてメスの人間形態になって照れろ。その姿で照れられても恐怖心だけが煽られるだけだぞ」

 

俺が肩車して、龍神の鱗に触ったり周りに目移りしている少年。名は 森近 霖之助 この霖之助は半妖で、草薙剣に主と認められてその力を使いこなしたいと思っている様だ。しかし、あれは諏訪国にあるし主と認められ、使いこなすには血が必要。龍神は本来の姿に戻って人間形態ではなく龍の容姿なので、長い体にある龍神の黒色の片鱗を霖之助は触っていてそれに龍神は照れてるが、龍の姿なので照れられても怖い。照れるにしろ雌の人間の容姿になって照れて欲しい物だ。

 

しかし草薙剣か、草薙剣の話で有名なのはヤマトタケルノミコトと天武天皇。事の顛末、天武天皇は草薙剣の呪いを受けたと日本書紀にある。これはつまり草薙剣は天武天皇が天皇の血を持っていなかったと見抜いたから、天武天皇を呪ったと言える。大海人が本当に天皇の血を持っているかどうかは文が調べていた。ただやり方が少々荒っぽく、草薙剣を使って調べているがこの方法が最も確実だから仕方ない。草薙剣は血を見分ける事が出来るからな。

 

今は呑気に子供達と遊んだりしているが、俺は平将門が朝廷に捕らえられる前に早く東に行かなければならない。そもそも、平将門は天皇の血をその身に宿しているので寿命、つまり時間で死ぬ事はまず無い。それは藤原不比等に妹紅、西行や幽々子。平将門の娘、春姫もだ。だからこそ、西行は死に急いでいる。ただ、首を斬り落とされたら死ぬし出血多量でも死ぬし病でも死ぬ。しかし100年生きるか、それとも永遠の時を生きるかを考えたら気が狂う。普通の人間はそう考えるだろう、普通の人間はな。何せ本来起きるはずの、ニニギが岩長姫を妻に娶らない話、バナナ型神話が起きていないんだ、だから天皇には寿命は無い。が、寿命以外では死ぬ。今や平将門は蝦夷と神国を本朝の東方に作り上げ、大和朝廷に朝敵としてみなされてしまったので、放置していたらいずれ朝敵として殺されて最後には晒し首。 獄門 の結末を迎えてしまうだろう。それだけは避けるべきだ。

 

それで、永琳が言うにヤマメとパルスィがメスの貒を神使にしたそうだ。名は 二ッ岩マミゾウ で能力が化けさせる能力。これは平将門の妻 桔梗、桔梗伝説で上手く使える。例えば永遠の存在である俺が平将門に成り済ませばいい。平将門に成り済ました俺が朝廷に捕まった後は脱獄してマミゾウに能力を解いてもらい、平将門の容姿をマミゾウの能力で変える。藤原純友も歴史では討たれた、または捕らえられて獄中で没したと言われてるが真実は定かではなく、それは捏造なんて言われてるし。藤原純友の実際は海の彼方に消えたとも言われる話があるくらいだ。念には念を入れる為、一応 上方修正の保険は打って置く。隙を生じぬ二段構えで行こう。日本の三大怨霊である平将門、崇徳上皇、菅原道真の平将門を今でも恐れてるのが大勢いる。まあ平将門を殺させはしないがな。そうすると三大怨霊が一つ空白になる。空白には早良親王が入るのかもしれない。弘天の天である菅原道真は、どうしようか。

 

「そうか。霖之助、秋になればお前達とはお別れだ。お前に戦いの才能は無い。が、口は中々達者。その口を上手く活かし、西の人間共に色々吹き込んどいてくれ」

 

「分かってる。でも僕が草薙の剣に、主と認められたいと思ってる事を知ってるのに戦いの才能が無いって酷いな」

 

「違うぞ霖之助。草薙の剣は強い者を主と認める訳じゃ無い、意志の強さでも心の強さでもない。あれは血で主と認めるんだ」

 

霖之助を肩車して話していたら衣玖がいつの間にか隣にいた。そのまま衣玖は頭を下げて来客が来たと告げる。城門で待たせているそうなので、肩車していた霖之助を下ろして後は龍神に任せ、衣玖に来客の事について詳しく聞くと、来たのは天狗の二名だそうだ、間違いなく椛とはたてだろう。何しに来たのかはもう分かっている。毎日、諏訪国にいる永琳が念話で俺の頭の中に話しかけてくるからだ。

 

「来客と話し終えたら、後で撞球室で何か勝負をしようか霖之助」

 

「そうだね、その時は負けないよ。応接間にいるから待ってる」

 

「あ、パチュリーとレイラはどこにいるか知らないか。姿が見えんのだ」

 

「パチュリーはいつも通り書斎か図書室。レイラはガーデンか地下で例の騒霊達と話してるんじゃないかな」

 

いつも通り、ならいいや。レイラはこころのお蔭で良く笑うようになり、順風満帆に生きている。レイラがあの 六の宮の姫君 みたいな事にならなくて本当によかった。そう言えば六の宮の姫君には朱雀門が出て来たな。 しかし騒霊、霊か。霊を妻にしてみるのもありだな。まだ霊を妻にした前例はないし。だが体に触れる事は出来るのだろうか。触れる事が出来ないならセクハラが出来ない。俺は色んな種族を妻にしたり神使にしたり仕えさせてきた、仏に仕える在家者は難しいが、出家した女、比丘尼などはまだ妻にしてない。本来、仏に仕える者、つまり仏教の修行をしている者は煩悩や執着を断つためのもの、僧侶などは原則としてこれはしてはいけないと法のような、戒律、八斎戒、十戒。などなど出家した者、比丘と比丘尼が遵守する具足戒、波羅提木叉もあれば他にもあるが色々決まりがある。だが、これがちゃんと機能していたのか否かどうかと言うと、機能していない時代もある。例えば女犯。女犯とは大まかに言えば戒律により女性との性行為を絶たねばならない仏教の出家者が、戒律を破り女性と性的関係を持つ事だ。これを破れば犯罪者扱いなんだが、しかしこの女犯、ちゃんと取り締まられていたかと聞かれたらそうじゃない。鎌倉時代や室町時代は取り締まりが緩く、仏教の修業をしている者が公然と妻帯もして民と変わらない生活を送る僧侶は結構多かった。まあこれは比丘尼ではなく比丘、つまり男の出家者の話だが、結局の所 何が言いたいかと言うと。仏に仕える女を妻にしても問題は無いと言う事だ。とは言え、肉を食べてはいけない、酒を飲んではいけない、嘘は付いてはいけない、生き物を殺してはいけない。などを守れてる奴がいるとはとてもじゃないが思えん。特に生き物を殺してはいけない、これは特にだ。人間に限らず生物は何かを殺して生きているのが当たり前、稲だって生きてるんだし。

 

もしくはだ、日本書紀の大海人、つまり天武天皇は元 僧侶だが、還俗して在俗者、俗人に戻った。即位の前に俗人に戻っているので法皇ではなく天皇になっている。在家、また出家した者達は戒律を堅持しなくてはならないが、自分の意思で僧侶を捨てる事を選べば俗人に戻る事が出来る。だから出家者の尼などを仏教から引き抜くのもいい。

 

 

「盟主様、お久しぶりです」

 

「早速だけど、あんた 私達が来た理由は分かってるのよね?」

 

俺の後ろに衣玖がいる。後ほどアリスを案内させる為だ。向かい合いにいる椛が頭を下げ、はたてがいつもの調子で俺に話しかけて来たが、何故か椛は紫にあげた紫色の傘を閉じた状態で右手に持っている。まあいい。魔女のパチュリーとレイラを諏訪国に連れて行くからはたてと椛をそっちに寄越すと、永琳から聞いている。だから俺は頷いて肯定。椛とはたての後ろに隠れている少女を見るが、背にいる少女が顔をひょっこり顔を出して俺と目が合うとまた二人の背に隠れる。仕方ないので気にせずそのままはたてと椛を見る。アリス、顔を隠してどうする。数秒アリスの顔は見れたが、相変わらずあまりの可憐さと美しさにミケランジェロや美の女神 ウェヌスやアプロディーテーも嫉妬に狂う程。まずはアリスをパチュリーとレイラに会わせる為に衣玖に案内を任せる。

 

「理解している。まずアリス、久しぶりの再会だがまずは。俺の後ろに控えているお姉さんに城内を案内してもらいつつパチュリーとレイラに会いに行って来い」

 

「ではアリス様、パチュリー様とレイラ様の元にご案内しますのでついて来てください」

 

「う、うん。分かったわ」

 

衣玖が先行して城内へと向かう、アリスは衣玖と俺を交互に見ながら戸惑い、後ろ髪を引かれながらも先に行った衣玖を早歩きで追いかける。これでアリスと衣玖がこの場にいなくなった。では、まずは天智天皇について椛に聞いて置こう。

 

「で、椛。天智天皇はどうなった。死んだか」

 

「はい。天智天皇は崩御しました」

 

そう、か。崩御したか。そうかそうか。

 

ふははははははははは!!!! そうか天智天皇が死んだか! 両手でお腹を押さえても笑いすぎてお腹が痛い。

 

ああ。久々に 阿頼耶識 が疼く。間接的で直接手を下した訳じゃないが天皇を久々に殺した。それは厳然たる事実で 真如 だ。もう何人目だろうか、覚えてないな。天智天皇が死んで、大和にその死体が残ってると言う事はその体にまだ天皇の血が体内に残っている事を意味する。天智天皇の体内は病原菌持ちだとは言え、霖之助は半妖、なので半妖の霖之助に天智天皇の死体を喰わせるか、そうすれば草薙の剣に主と認められるかもしれん。本人は嫌がりそうだがな。妖怪は病に陥ると言った事が基本的に無い。だから天智天皇の体内にいる病原菌を血と共に体内に入れても問題は無い。と、思う。半妖だからもう半分は人間だし。天智天皇の死体が腐敗しない様に咲夜には天智天皇の死体の時を止めてもらおう。

まあ天智天皇はこれで消えた、今頃 霊か神になっている頃。と、言う事はだ。次の天皇は一体誰が即位するのかと言う事になる。弟とされる大海人の情報をはたてにそのまま聞く。

 

「大海人の結果は」

 

「黒。大海人は天皇の血を持っていなかったわ」

 

はたては両腕を組んだままで首を横に振る。分かった。ならもう迷う事は無い。

天皇は天照、またはニニギの血を持っていなければならない。この決まりは神話の頃から無窮だ。

 

天照が瓊瓊杵に下した 天壌無窮の神勅 天皇の血を持っていない者が天皇になるのは面倒でしかない。俺がしなくても結局天武系から天智系に戻るがな。

 

三種の神器の一つで三種の神器の中では天皇の持つ武力の象徴、しかし天叢雲剣、剣は剣でも意思を持っている剣。そして草薙剣盗難事件が起き、本来ならその後、一時的に宮中で保管される。そして大海人、つまり天武天皇の時代、さっきも言ったが天武天皇が病に倒れる話がある。これ、天武天皇の病が神剣の祟りと見なされるんだが、結果的に言えば天叢雲剣の呪いに蝕まれ、天武天皇が病に倒れる話だ。つまりこれは草薙剣、天叢雲剣は天武天皇を天皇と認めなかったので天武天皇を呪った事だと取れる。そして はたて が言うに 文 が天叢雲剣を用い、呪われた大海人、つまり大海人は天皇の血を持って無い事が判明したので生きていても面倒な種、しかも芽が出て育ちつつある。ならばもう育たない様 根元まで刈ればいい。

何故文が天叢雲剣を使えるかと言うと、単純に文が俺の神使だからだ。答えになって無いと思うかもしれないが、ちゃんと答えになっている。

 

「はたてに椛、二人には隠れ蓑をやるから後日、身を隠して大和にある吉野にいる大海人を暗殺し、大友を次の天皇に即位させろ」

 

隠形鬼ならぬ隠形天狗だな。本来 壬申の乱に敗れる大友皇子は自害する。しかし大友皇子は生かし、弘天の名が入っている大友、即位した 弘文天皇 には俺の都合よく動いて貰おう。今 俺が発言した事の意味は天武系が消える事を意味する。つまり天武天皇系、第40代天皇から第48代天皇は邪魔なので消えてもらう。そうなると日本三大悪人である道鏡は使えん。他の手はあるが天智天皇の系統である第49代天皇 光仁天皇 もしくは第50代天皇 桓武天皇 このどちらかを弘文天皇の次に即位させる、桓武天皇を即位させるなら山城国へ遷都し、山城国に平安京が出来て何とも好都合、これで時間稼ぎが出来る。時間稼ぎするもう二つは、三大悪女の一人を使う。あの三大悪女、藤原薬子の事でもあり薬子の変の事だ。それをすると言う事は朝廷が山城国に平安京と大和の平城京、二所の朝廷が二分割。要は平城京と平安京が同時に存在し、二朝の対立は決定的になる。これで時間が稼げるがもう一つ。伊予国にいる藤原純友も使い、平将門と蝦夷に対する戦力を西にも分散させ蝦夷と平将門の持ちこたえる時間を稼ぐ必要がある。後で大和にいる輝夜と咲夜に連絡しておかねばならん。さっさと天皇の代もいい加減 先に行かせる必要がある。

 

そろそろ俺たちが、俺の娘に妻に仕えさせた鬼に神使なども含め、全て関わらせる時期だ。今まで人間の事に関する事に出来るだけ首を突っ込む事はしなかったがもういいだろう。そもそもだ、俺の目的は人間に神や妖怪が実在していると、この先産まれる人間たちを認識させる為に動いている。と言う事は、人間の政治や戦争などにも無駄に関わって行かなくてはいけない。人間共に神と妖怪が人間より劣っていると見られてはこの先困る。だからと言って平等や対等も駄目だ。人間共には神と妖怪には畏敬の念を抱かせる必要がどうしてもある。その上で、将来的には魔女などを使い、人間には科学だけではなく魔法を教えさせて行く。小学、中学、高校などの授業で魔法の授業などが追加される訳だな。

だからこそ、人減共には畏敬の念を抱かせる為には徹底的に人間を痛めつけなくてはいけない。その為に人間を昔から無駄に増やす事に費やしてきたんでな、数万人ほど死んでも問題ない。俺は諏訪国に住んでる者の味方であって人間の味方では無い。人間に限った話ではないがオスとメスがいて、諏訪国以外のそいつらに食い物と飲み物と住処を与えていたら後は勝手に増える。それまで待てばいい。まるで家畜、畜生。家畜や畜生ならちゃんと躾けなくてはいかん。恐怖政治はする気は無い、まあ全て支配するんだし同じだな。

死体の処理が面倒だが トロイア戦争 でも起こすか。しかしある意味、もうトロイア戦争は起きてる。なら終わらせるにはトロイアの木馬か。他に パンドーラー や アトランティス がある。確か人類に災いを齎す為にゼウスの命令で神々に作られた最初の女性の人間がパンドーラー パンドラの箱で有名な女だ。あの女が開けるなと言われた甕を開けたせいで疫病やギリシア神話の エリス が出て来た。まるで竜宮城に行き玉手箱を貰った浦島太郎。しかし思うに、パンドーラーは神々に作られた観測者だな。今パンドーラーは冥界にいるが。それでアトランティスと呼ばれる王国はゼウスの怒りに触れて海中に沈められた、だったな。

 

今の発言を聞いた椛は両目を瞑り黙っている。椛の隣にいるはたても黙っていたが、右手を閉じてポーチの様な物の中からブラシを取り出し爪を磨き、ブラシをポーチに戻してマニキュアの様なのを取り出してから、まずは片目を瞑りながら左手を使って右手の爪にマニキュアを塗り始め、そのまま はたて はマニキュアを塗った右手の爪に片目を瞑りながら息を吹きかけつつ話しかける。

命が尊い、平等、差別。そんな考えは人間特有の考え、神や妖怪にそんな考えは無い。

そもそも神とは古来から人間の味方ではないしな。

 

「皇子があんたに殺されるのって何十人目よ。あ、でも大海人は天皇の血は持ってないし関係ないか。一応言うけど、今ならその発言を聞かなかった事にしてあげるから撤回できるわよ」

 

「余計な心配は無用だ。はたてに椛、必要なら文や俺の妻に神使も使い、もう一度言うが大海人を殺せ」

 

「承りました。それが盟主様のご命令とあれば私は従います」

 

椛は俺に近づいて来て、そのまま跪く。椛は上目遣いのまま片手を胸に、もう一方の手を相手に差し出して来たので俺はその手を掴み握手すると椛は微笑んだ。はたてはマイペースに左手にもマニキュアを塗り始めている。これで天武天皇の系統、延いては第40代天皇から第48代天皇までは事実上 日本書紀などの歴史書から消える。天智天皇と藤原四兄弟は俺が殺したようなものだが、藤原不比等と妹紅が生きていれば、後はどうとでもなるとは言え念には念をだ。別に天武天皇の系統はいなくてもいいんだ、天武天皇の系統がした功績は他の天皇にさせればいい話。天武天皇の系統がしなくちゃいけ無い訳じゃ無い。

 

例えば聖徳太子。旧壱萬圓札や10人が同時に喋っても聞き取れるなど、今でこそ聖徳太子は有名だが、この聖徳太子。古事記にはいるが実際はいない。

古事記の場合 厩戸豊聡耳命 と一回書かれてるだけで事績なんて何一つ書かれていないし聖徳太子の文字すらないからだ。だが、日本書紀には聖徳太子が多く書かれている。そもそも古事記にはいなくて日本書紀に無駄にいる人物ってのはおかしい。都合の悪い人物なら日本書紀にあんなにも多く執筆する訳が無い、かと言って都合がいい人物なら古事記に書かれている筈だし普通に考えてこんな食い違いはありえない。だが日本書紀にいて古事記にいない人物である聖徳太子。日本書紀に聖徳太子の莫大な偉業が多く執筆され、虚構説がある聖徳太子は似ている、そう。まるで第2代 綏靖天皇 から第9代 開化天皇 の 欠史八代 に古事記の一大英雄譚で、架空の人物として扱われることが多く、女装したヤマトタケルノミコトの様に。聖徳太子は実在していない存在で、日本書紀を創作した藤原不比等が虚構の聖徳太子なる者を創作した人物。とか言われてる。他に聖徳太子がして来たとされる過去の偉業は、誰かの偉業を自分の、つまり藤原不比等が創作、虚構した人物の聖徳太子にそれを当て嵌めた、とかも言われてる、だからこそ聖徳太子は虚構説があり、実在しない人物とか。他に聖徳太子の十七条憲法が有名だが、正確に言うなら聖徳太子が制定した ものと されてきた十七条憲法だ。それと小野妹子が遣隋使と言われるが、大唐に派遣したとは書かれている。しかし遣隋使なんて事実は捏造の歴史書である日本書紀ですら小野妹子にはない。それは皇国史観のせい。

 

話が逸れた。要は、誰かがした何か、その何かの事実があったとして、その事実を別の事や他の誰かに当て嵌めてしまえばいい。古ければ古い時代ほど歴史は捏造や情報操作出来るんだ。それは盗作ともいうが。未来の人間が過去の時代に行ける訳が無く、結局過去の考察、推測でしかないし、それが事実だと判明出来る訳が無い。説はあくまでも説。

 

頭に冷たい何かが落ちて来たので、見上げるともう一粒の滴が顔に当たる。どうやら雨が降って来た様だ。

 

「雨か。椛にはたて、後日 大海人を暗殺してくれ。今日は城に泊まって行け、饗応の準備は出来てるし幸い空き部屋が無駄に多いんでな。暗殺前に風邪を引かれたら困る」

 

「はいはい。じゃあ中に入らせてもらうわよ、それにしても無駄に大きいわねこの洋風のお城。私としてはヴィクトリア朝時代の貴族の屋敷の方が好きだけど」

 

「では盟主様。また後程」

 

はたてが言っているのは ヴィクトリアン・ハウス の事か、あれも城と言えると思うが。二人は忌憚せずそれに傾いて返答し、椛が片手に持っていた傘を俺に渡す。傘を俺が受け取ると、椛は軽く笑ってごゆっくりと言いながらはたてと城に入って行く。何だと思い左手にある傘から俺の神力と紫と幽香の妖力を感じた。どういう事だと須臾程の時で考えたが、まずは傘を開いて雨をやり過ごし、俺も城の中に入ってから考えようと歩き出すと持っている傘から声が聞こえ、目の前には大きな舌が視界に映る。これはもしや、から傘おばけか。とは言え少し、いやかなり早い。そうなるにはまだ時が必要だったはずだが、この傘から紫と幽香の妖力を感じると言う事は二人が何かしたのか。前に紫は急に名と同じこの傘を欲しいと言ってきたので、その時は深く考えずに渡したが、ふむ。俺が傘に注いでおいた神力と、紫と幽香の妖力が複雑に混じり合い、神と妖怪の境界線にいる こころ 同様、不明瞭で不安定な存在になっている。これは こころ 同様、この傘を神と呼ぶべきか妖怪と呼ぶべきかは、正直分からん。俺の神力と紫と幽香の妖力が混じりあった存在がこの傘だと思うと感慨深い。言い方を変えれば、この傘は俺と紫と幽香の実の子になるからだ。あの二つの人形にも俺の神力を注いである、それは諏訪国の神を増やす為にしていた。妖怪は増えたが諏訪国に神は少ないんでな。諏訪国の人間が死ねば神になるとは言え、そっち方面の神は諏訪国の人間が死ねば幽霊になるか神なるかの半々だが、ともかく神になる者は確実に出るので、二つの人形に神力を注いだのは道具関係の神が欲しいからそうした。

 

「やっと見つけた。私の所有者の一人さん」

 

「よく分からんがとうとう見つけられたか」

 

左手に持っていた傘が話しかけて来た。俺の目の前には大きな舌を出してる様で視界に入る。多分から傘お化けか。名乗ろうとして苗字を口にしたら、えへへと言いながらもう知ってると言われた。出鼻を挫かれたが、この子の名を知らないので聞くと名は 多々良 小傘 多々良 と 小傘の名を名付けたのは紫と幽香が名付けた様だが。いい名前じゃないか。この傘の形や色から察するに、かつて大和で女将に貰った傘か。あれは捨てられてたのか忘れてたのか真意は不明だが。一体誰があそこに置いていたのだろう。どうでもいいか。それで小傘に色々聞かされた、小傘は捨てられたのか忘れられたのかは不明だそうだが、小傘自身は捨てられたと思っている様で。あの時、傘の時は不気味がられるか、その辺に転がっている小石の様な扱いを人間から受けて、放置され寂寥だったと。だから拾われた時は凄く嬉しく、紫と幽香に妖力を注いでもらい人型に成れた時は感無量だったそうだ。それで諏訪国から西の果てにある日向国まで来て、お礼を言う為だけに傘になってはたてと椛に連れて来て貰ったと言われ。目的は理解した、来年の春頃に西行を殺して諏訪国へ帰るつもりだったが、永琳はその事について皆に喋っていない様子。俺は左手に持っている傘状態の小傘を少し上げて、俺の顔を傘の内側から外側へ顔を軽く出す。雨が降っているので曇ってはいるが明るい。まだ太陽は完全に沈んでない様だ。

 

「雨も降っていて、もう 逢魔時 だってのに。辺りはまだ明るいな」

 

「うん? もう夏だからね」

 

そう言うと、小傘は傘から人型に成り俺に抱き着いて来る。しかし小傘が傘から人型になったので、俺と小傘は雨の集中砲火を受けてしまい、急いで城の中に入ろうと左手を小傘の膝裏に、右手を小傘の腰に回し、そのまま抱きあげて城門から城の城内に入る。雨の難から逃れる事は出来たが体がずぶ濡れだ、後で風呂にでも入ろう。小傘も結構濡れてしまったが、当の本人は俺に抱き着いたままさっきから何度もお礼の言葉を何度も繰り返して言っている。だが、だんだんと小傘の声が涙声。俺は体中大雨に晒され、どこもかしこも濡れてしまっているので、涙で服が濡れても泣いているかどうかわからない。だからその場に座り、胡坐をかいたまま小傘を撫で、小傘が落ち着くのを待った。城内で雨音が聞こえる中、雨音と共に小傘の声が耳に入る。涙をながしてるからか胸辺りが、温かい。付喪神と言われる存在でも、涙の温かさはやはり同じなんだな。小傘が顔を上げたので、小傘の顔がくっきり。雲中白鶴で風光明媚。俺は親馬鹿ではないが、小傘を見てそう思った。紫は雲中白鶴で沈魚落雁、幽香は氷肌玉骨で天香国色で綽約多姿、諏訪子は幼窕淑女で閉月羞花と思ってるが俺は親馬鹿じゃない。なにせそれは事実だからだ。白蓮は春風駘蕩で泥中之蓮、藍はどうみても傾城傾国で笑わないし一笑一金。藍と言えば永琳が言うに、藍が妊娠してるそうだがまさかあの時、藍が寝てる時に、結果的に起きたが無理矢理したのが命中するとは思わんかった。溜まってたいた原因があるが流石に中で出し過ぎた。しかし子が出来るのはいい事だ、とは言え。子供からしたらいい迷惑かもしれん、子を作るのは親の自己満足だからだ。産まれた子、産まれた子の皆が皆、産んだ事を親に感謝する訳が無く、その辺を分かってない親が多いし、子を作り、結果的に産むなら子に殺意を抱かれる事と同義、そう考えて子を作って産んだ方がいい。産むなら子に恨まれ殺されるる覚悟をしなくてはな。それが子孫を残す本能、動物の生きる意味だとしても。どんなに綺麗事を並べても子を産むのは結局 自己満足、産んだ子に産んだ事、育てた事について感謝されると、感謝されるべきだと自惚れてはいけない。

 

「ありがとう。ありがとう。こんな私を、不気味だと言われて捨てられた私を拾ってくれて、道具としてまた使ってくれて、私の所有者さん。本当にありがとう」

 

そう言われ、俺は改めて認識。やはり妖怪と言われても神と妖怪は性質的も本質的にも同じ。一部例外がいるが本来、多くの妖怪は自然神で人格神でもある。例えば神だけでなく、妖怪が神社で祀られるのが結構いる。有名なので、『ひょうすべ』 一目連 『河童』 鉄鼠 『鵺』『高入道』鬼女で女神の 『橋姫』 鬼の 『酒呑童子』 三吉鬼 狐の『葛の葉』狸もいるが魔法神社で祀られている魔法様など、化狸は西での例が多すぎるし、妖狐と天狗も例が多すぎる。ともかく妖怪が神社で祀られている所もあれば、大和でした神議るをした大和のあの場にいなかったが、妖怪とは、八百万の神の一種でもある。それは妖怪が自然神だからで、神と妖怪が同一視される例もあるくらいだ。神と妖怪。全てとは言わんが俺達は、人間から見たら別で、呼ばれ方も違うが性質的も本質的にも同じ存在。だから、妖怪を殺す事は神を殺す事に等しい。

 

いつの時代も、人間は夢を見る。人間という、か弱い種族が、強大な敵や悪を倒す話がいつの時代も人間は好きだ。正義や悪なんて考えは人間特有の物だが、酒呑童子、土蜘蛛、鵺、九尾の狐、蝦夷ではないかと言われる鬼八伝説。第7代 孝霊天皇皇子 吉備津彦 に殺され鬼神 温羅 殺されないので言うと 宗旦狐、団三郎狸、一寸法師に出てくる鬼も殺されないが、それでも悪として出て来て痛い目に遭う。今上げた例はあくまでも例。鬼八も温羅も含め、どれも殺されず生きている。物語に出てくる多くの妖怪は人間に殺される妖怪ばかりで、どれもが悪として殺される勧善懲悪、言い方を変えれば王道か。

夢を見る事が好きな種族、人間らしいと言えばらしいが。とは言えそれは、時代が時代だったからとも言える。朝廷の政治や豪族や貴族の人間共がクソだった時もある。そしていつの時代も割を食うのはいつも弱者の民や奴隷。だからそんな弱者は生きる希望や夢が必要、その為の物語として、いつの時代も殺される。出雲族、熊襲、国樔、山窩、隼人、蝦夷もそう。大和にいる天孫族や歴史の犠牲者だな、もし水神や御食津神がいなければ、今頃民は飢えに苦しみ、喉を水で潤す事も出来なかっただろう。本来の歴史なら間違いなくそうなっていた。言い方を変えれば政治、朝廷がクソだったせいでもある。

 

しかし兜と神便鬼毒酒を神に貰った源頼光の手によって酒呑童子が、スサノオは足名椎と手名椎の夫婦に娘のクシナダヒメを助けて欲しいと頼まれ、土着神で祟り神の八岐大蛇などのは酔って弱った所を殺されている。英雄扱いの小碓命、ヤマトタケルノミコトも女装して取石鹿文や熊曾建の寝所に忍び込んで殺した、その際ヤマトタケルの名を貰ったり、他にヤマトタケルノミコトは出雲の 出雲建 に抜けない剣を渡し、出雲建を欺いて殺している。つまりだ、手段はどうでもいい。例えば、日常で人を殺したら犯罪者だが、戦争の最中に出来るだけ敵、その死体が多ければ多い程 殺したら英雄扱いだからな。要は勝てばいいという話で、正々堂々と戦って勝つ話は日本の伝説では案外少ない。それに、酒呑童子も八岐大蛇は神が関わってる話だし、長谷雄草紙は北野天神が、大百足は八幡神が関わってる話でもあるが。

 

酒呑童子はまだ生きてるし殺された祟り神の八岐大蛇は蘇生してる。気になったが、足名椎と手名椎って足長手足と手長足長に名が似てるな。まあ、古事記などは各地にある地方の伝説を集めて纏めた歴史書だから当たり前か。イザナギ イザナミ 住吉や出雲、そして諏訪の神話をぶっ壊し、出雲の大国主 住吉三神 諏訪の神 を大和朝廷の都合がいいよう古事記や日本書紀に編纂されたりな。元々 出雲、住吉、諏訪の神話は全く別の話で繋がりは無い。日本神話は各地の伝説、それぞれの地域にある神話や伝説の話をごちゃ混ぜにするから日本神話はあんなにもカオスになっている。やったもん勝ちだ。

 

大和朝廷の三種の神器もそう、あれは元々、出雲の大国主が持っていた 生大刀、生弓矢、天の詔琴。この三つ。刀、矢、琴の三つを大和朝廷風にアレンジしてパクったのだ。古事記などでその三つはスサノオが最初から持っている事になっているがな。そして大国主がスサノオの娘、スセリビメと逃避行する際にスサノオが大国主にくれてやった事になっている。古事記か、古事記で一番に隠蔽したかったのは 皇極天皇 かもしれんな。

 

八岐大蛇、鬼八伝説、八百万の神、八百萬神、八束水臣津野、八百比丘尼、八咫烏、八坂刀売、八大竜王、八乙女、八雷神、八房伝説、八幡神、八瀬童子、八面大王、八面鬼士大王、八意思兼神、八大地獄、八将神、八咫鏡、八尺瓊勾玉、八大夜叉大将、八部鬼衆、八部衆、八卦炉、八示現、八仙、八雲、八ヶ岳、八握剣、八百屋。確か鬼八伝説は肉体を8つにバラバラにされたのにバラバラにされた8つの体が結合する動きを見せ、蘇生しようとした話だった筈。うろ覚えだが。

限界まで思いつく限りでこれだけあれば 八意 永琳 八坂 神奈子 の苗字にも八がある。

どれもこれも八 八 八 八。昔の人間にとって八とはどんな意味があったんだろうな。諸説あるがどれもこれも憶測で推測で信じるに値しない。

そう言えば、8を横にすると∞になる。いや 8 は 8 でも八じゃないか。まあいいや。

 

ギリシャ神話にも言える事だが日本神話、神道の神はアニミズムで汎神論。お米一粒一粒やその辺に転がっている小石にも神が宿っている考えを持ち、万物、自然を神格化した神が多い。祖先崇拝は神道じゃないが、神道の御霊信仰があるせいか人間でさえ神扱いだ。藤原鎌足、坂上田村麻呂、太安万侶、聖徳太子、秦河勝、蘇我入鹿、安倍晴明、稗田阿礼、菅原道真、藤原秀郷、小野篁、平将門、有名どころでこれだけいるがこれはあくまでも一部。そして自然とは天変地異、昔から人間の敵が多く、味方になる時が少ない。本朝に齎した自然災害の例をあげたらきりがないし。暴風、豪雨、雷雲、台風、地震、津波、噴火、豪雪、雪崩、勝ち負けの問題ではないが人間程度じゃこれらの自然に負ける事はあっても勝てない。いくら頭が良くても、運動が出来ても、銃や兵器や核を持っていても所詮 自然に勝てないその程度の存在。人間のキャパシティでは自然相手にもたない。人間が人間を躾て調教していけないなら、神ならいいだろう。祟り神もそう、あれも御霊信仰、人間に祟り神の祟りを怯えさせて、人間を躾、調教していると言える。人身御供とかもそうだ、あれも神が人間を躾けてると言え無くも無い。同じ祟り神の八岐大蛇もそう。祟り神に限った話ではないが、祟り神は人間に恩恵を授けても、人間と慣れ合う事は無い存在。似た様な事を俺はする、しかし俺がする事は人間に神道の神々がお怒りだと西の人間に吹き込む為と人間に認識させる為、だからそれを終えたらまた元通り、な筈だ。多分。

 

いつからだろう、神が人間の味方で、妖怪が人間の敵だと脳に植え付けられたのは。

古事記や日本書紀に出てくる悪樓や八咫烏や八岐大蛇が妖怪扱いされる時もあるが、あれは妖怪じゃない。本朝での土蜘蛛も鬼も元は大和朝廷に従わない人間を異端視した名称だった。

いつからだろう、元は本質的にも性質的にも同じ存在である神と妖怪、その区別がついたのは。神はどう考えても人間の敵だと言うのに。西洋から日本に入って来た宗教 キリスト教などの、神と悪魔の考えを人間は神と妖怪に当て嵌めたのだろうか。

そう言えばかつて、ある人間がこう言った。

 

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか と。

 

そうそう、神道と言えばよく時折 勘違いされるが除夜の鐘は仏教、初詣は神道だ。この二つは同じじゃなく別物。何故かその区別をつけずに除夜の鐘と初詣を同時に行う者が多い。それは昔からして来た仕来りだから細かい事はどうでもいいのかもしれんが。クリスマスはキリストだな。前にも言ったが、こうして考えると日本は外来の文化の影響が受けやすい人間で、面白ければ本朝の文化に混ぜてあまり細かい事は気にしない人間ともいえる。今の時代に多く存在する陰陽道、陰陽師とか。あれも元々は古代の唐土で生まれた道教や儒教の様なものだった筈で、陰陽道は古代の唐土で生まれた自然哲学思想、陰陽五行説を起源として日本で独自の発展を遂げた呪術や占術の技術体系になったものになっているので、本朝の陰陽道は古代の唐土のと比べると、オリジナルと化してもはや別物。

 

「小傘。俺に恩を感じてるなら、一つ頼みがある」

 

「うん! 任せて。道具は命令してくれる人や使う人がいて、初めて意味があるんだよ。だから何でも言って!」

 

「そうか。小傘はいい子だな。実はもう1人付喪神、小傘と同じ神と妖怪の境界線にいる 秦 こころ がレイラの側頭部に面霊気としているんだが」

 

人間の容姿になっている小傘が顔を上げ、小傘の目から綺麗な頬に水が垂れているが見なかった事にして頭を優しく撫でる。子供とはいい物だ。純真無垢な時に少しずつ汚して行くのが特にいい。しかしいい子なのは同時に心配でもあるが、まあいい。小傘にはこころと二人、付喪神同士でして貰わなければならない。俺にはこれが出来ない。俺は諏訪国の神で天狗と河童とは盟約を結び、鬼女の萃香、勇儀、華扇、ヤマメ、パルスィ、紅葉を従えたが、まだ従えてないのがある。それは付喪神たちだ。付喪神を俺が従えるかどうかについて、今まで悩んで考えていた。もし諏訪国に付喪神がいなければ俺がやるつもりだったが、俺にはこころと小傘がいる。二人には重役を頼もう。依姫に教わってだが、こころは大体の武器、特に薙刀を上手く扱えるので結構強い。しかし小傘は見た感じ、強そうには見えない。最弱で脆弱で貧弱が付喪神の王になる、しかも小傘の能力は驚かす能力だけだそうで、それは何とも燃えて面白そう。

 

そう、小傘には全ての付喪神、または九十九神を。 文車妖妃 鈴彦姫 経凛々 白容裔 飯笥 瓢箪小僧 小袖の手 鞍野郎 雲外鏡 囲碁の精 貝児 山颪 木魚達磨 硯の魂 五徳猫 幣六 袋狢 払子守 瓶長 三味長老 などを。

特に 雲外鏡 文車妖妃 硯の魂 この三つの付喪神は特に欲しい。

そして鬼女 紅葉 が持っている お琴 の付喪神 琴古主 にインド神話の女神サラスヴァティー、いや。弁才天に持たせる琵琶、又は平安時代から見られた、琵琶を街中で弾く盲目の僧 琵琶法師 が持つ琵琶の付喪神である 琵琶牧々 それら付喪神、全てを総べる王

諏訪国にいる付喪神で、最も脆弱で貧弱で最弱な付喪神の王に。今までは妖怪を増やす事に専念した、鬼女たちには八ヶ岳に住む妖怪を従えて貰っている最中。ならば次は神だ。小傘は紫と幽香の日傘として使われてるそうなので、紫と幽香には小傘とこころにもしもの事が無いよう見ていてもらう為、後で永琳と話しておこう。

 

俺は全て、天地万物も神も妖怪も悪魔も妖精も精霊も人間も

 

生きとし生けるもの全てを総べる統治者であり支配者だ。

 

日本三大妖怪である 鬼、天狗、河童。この三つを盟約、あるいは仕えさせたり神使にした。つまり、言わばこの日本三大妖怪が諏訪国に揃っている事になり、日本三大妖怪の鬼、天狗、河童が諏訪国の 中枢 と言える。しかし、それ以外の妖怪がこの先どうしても必要。そろそろ河童も動いて貰う時だ。

どうでもいいが人間って三大○○が好きだな。三大悪人、三大悪女、三大怨霊、三大妖怪。世界三大宗教など、挙げればキリがない。

何故か日本の三大悪妖怪、酒呑童子、玉藻前、崇徳天皇。種族で言うと鬼、狐、最後に天狗、または人間になる訳だ。しかしこの中に人間が混じってるがいくらなんでも人間の天皇を妖怪扱いは酷過ぎるだろ。ある意味、概ね正しいが。

 

 

「こころを参謀、は出来ないので。お供としてこころをやる。だから小傘には、諏訪国の塵塚怪王として付喪神たちを直轄して欲しいんだ」

 

ドイツの哲学者ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルが言った。

 

             世界精神が馬に乗って通る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「春ですよー って言おうとしたらいつの間にか春が終わってました」

 

「今や初夏だな」

 

「なら春がもう一度来るまで待ってる!」

 

夏真っ盛りだと言うに我が娘ながら気が早い。もう少し構ってやりたいがそのまま背を向け、歩き出す。やる事が山積み、しかし、そのやる事を片付けてはならん。これは時間を稼ぐ為、均衡状態を最優先させるべきだ。勝つ事も、ましてや敗北などしてもさせてはいかん。私はその為、神綺様の命により神国を。

 

「まだ秋と冬が残っておる。しかし、私と蝦夷が協力体制でも相手は中々手強い。流石、魂魄妖忌。この現状、あの方はどう動くのか、後で神綺様と天魔に聞いておかねばな」

 

「そう言えば天魔さんは諏訪国にある八ヶ岳の頂上に住んでるんだよね。諏訪国かー お姉ちゃん、諏訪国で元気にしてるかなー」

 

「む。あやつは鬼女だが蜘蛛の妖怪でもある。喰わず女房みたいになっておるかもな」

 

「お姉ちゃん鬼女でも蜘蛛の妖怪でもあるけどその話、雪女みたいにいきなり夫婦になっても結末が大違い。喰わず女房の話は最後喰われかけるよ父様!」

 

「あのお方は永遠で死なん。蓋し大丈夫であろう」

 

その永遠は一時的だそうだが。しかし神綺様の魔界人とサリエル様の半人半霊が敵対関係になるとはな。後で魂魄妖忌の動向を式神の白虎に探らせておくべきか。魂魄妖忌はあの中で特に厄介だ。蝦夷の阿弖利爲に磐具公母礼。二人も疲労している、このままでは少し不味い。何か打つ手は無いか。せめて集中砲火されているこの現状、相手の戦力を分散させる打開策が欲しい所だ。

背から娘の制止の声が耳に入るが足音がしない。もしやと思い立ち止まり、振り返ると予想通り。妖精特有の羽根を背から出して飛翔しながら私の傍へと来る。

 

「待って、置いてかないで父様ー!」

 

「馬鹿者。こんな所で羽を出すでない、誰かに知られてしまうだろう。せめて何か羽織りなさい」

 

「怒らないで父様! 春姫反省してるからー! ごめんなさーい!」

 

「怒っておらん」

 

「そうなの? 父様、いつも顔がムッとしてるから怒ってると勘違いしちゃうよ」

 

そうだろうか、普段は無表情で過ごしている筈なのだが。まあよい。上野国を占領し、藤原尚範を追放し終え、その後、本来私はかんなぎ、つまり巫女。その者が 自分は八幡大菩薩の使いである と言いながら、神の使いとして将門に天皇の位を授けると応神天皇は言い。私は蔭位を授かる資格を得て、新皇を自称するが、興味は無い。

八幡大菩薩というのは神仏習合の結果だろう。そうなると神は仏の弟子とみなされる意味。しかしそれを認める訳には行かん。抑々、諏訪国、又は諏訪国より東は神国なので仏教は無い。仏教が無いのではどのみち新皇を自称できんがな。ただ、神仏習合ではなく。神道の為に私は蝦夷と共に身を粉にしてやるのだ。

 

「父様ー また兵が女性に生き恥を受けさせてるよー」

 

今は合戦の最中、春姫に言われ見ると、涙を流している美女は裸体に引ん剝かれ、兵から生き恥を受けている。この光景は見慣れているので別段おかしくはない。よくある事だ。それ目的で兵になった者もかなりいる。しかし、今は合戦の最中。辱めを受けさせるにしても合戦を終えてからでも遅くは無い。理性が本能に負けたか、腰を打ち付けていた兵の動きが断続的になり、そのまま一息つく。中で果て終えた様だ、女性の目から色彩が消えている。ふむ、まずはこの痴れ者は殺すか。

 

「私の命に従わない兵はいらん。殺してしまおう。春姫、日本刀を渡しなさい」

 

「駄目だよ父様。兵も蝦夷も数がだいぶ減って来てる。これ以上減らすのは得策じゃないし、それにね。あんなのでも肉壁に使えるんだから」

 

「ならばあいつは逃げられんように最前線に配置しよう、頼んだぞ春姫」

 

「はーい!」

 

邪魔な兵を蹴り飛ばし、動かなくなった女性に私は着ていた狩衣を脱ぎ、女性の裸体を隠す為に狩衣で体全体を被せる。こんな世の中だ、せめて、娘だけは春姫の姉と共に諏訪国で平和に暮らして欲しい。あの方は春姫が住む事を認めてくれるだろうか、親である私の目から見ても春姫は美人だと思うのだが。いかんせん、これは親である私の主観に基づいた認識だ。この血生臭い場所から娘を離すにはどうしたものか。そしてこの血生臭い場所で嬉々としている娘もどうしたものか。育て方を間違えのかもしれん。女の方である小野篁に預けておけばよかったと後悔先に絶たず。上空から生命反応を感知し、敵襲かと思ったが早とちりをしてしまい徒労。

 

「どもどもー お久しぶりです魔界人さん」

 

「デンジャー! デンジャー!」

 

「射命丸 文 殿ではないか、何が危険だこのバカ娘」

 

「娘に対して冷たい上に酷い!」

 

「相変わらず親子仲は良好なようで何よりですね。実はお二人に朗報でして、急いで常陸国に来ました次第です。実は大和の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して疚しい気持ち等はあるが、高千穂峰の山頂に突き立てられている天逆鉾を諏訪国に持って行って欲しいのが一点、もう一点は一筆認めたこの手紙を椛とはたての二人には東の諏訪国に戻る最中ついでに、伊予国にいる藤原純友に渡してもらう為にだな、こうして椛とはたてが泊まる部屋の前に来ている訳だ。そうこうしてドアノブに手をかけて開けようとドアノブを回すが、施錠されていた。 Damn it!

まあ予想していた事なので問題ない、隣にいる衣玖に予定通り奥の手を使う。衣玖にはまだ手を出さない。てか出せない。あの龍神めが、衣玖に手を出そうとしたら悉く邪魔するからだ。まったく辟易だ。

 

「衣玖、例のブツを」

 

「かしこまりました旦那様、これをどうぞ、マスターキーです。ですが、本当にいいのでしょうか」

 

「是非に及ばず」

 

隣にいた衣玖から何故いるのかと疑問を抱かずマスターキーを受け取り、そのまま鍵穴に差し込んで鍵を開け、そのまま中に入ると椛はベッドに座り、はたてはテラスの傍にいる。開けているのか風が入り込み、カーテンが風に当てられ揺られているが。そんな事はどうでもいいと俺は気にせずいつも通りに行こう。

 

「明日 大和の吉野に行き、大海人を暗殺する前に今すぐ犯らせろ。今この時。ここが椛とはたてのターニングポイントだ」

 

「盟主様が私の肉体を求めている意味でしたら、私としましては構いませんが」

 

「私も別にいいわよ」

 

「いや待て、その返しはどう考えてもおかしい... せめてもう少し狼狽や嫌がる反応とかをだな」

 

あんたは諏訪国の王で氏神、女の私達を女好きなあんたの神使として仕えさせた天魔様の思惑の一つは、仏教を諏訪国より東、本朝の東に来させない契約をあんたにさせる為でもあるけど、私達 天狗にあんたの血を入れさせる為だからね。あんたに仕えた時点でこうなる事は予想通り、だからこそ私や、椛も文も覚悟はとうに出来てるのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、一体何のつもり。私の地獄に無断で侵入しただけでなくカンダタに蜘蛛の糸を垂らすなんて。答えろ ゴータマ・シッダールダ」

 

釈迦に聞いてもだんまりで反応すらない。ふん。黙秘か、相変わらず気に喰わない。この両目を閉じ悟った様な顔も坐禅も何もかもが気に入らない。答えない釈迦を睨んでいたら釈迦は消えた。六神通の神足通を使ったようね。あー やだやだ、気が滅入る。仕事に戻ろうとしたら一匹の ラウム でもある地獄鴉が私の元へ来る。

 

「神綺様! 地獄のダエーワと天界のデーヴァがまた戦争勃発したよ! 早く逃げよう! もしくはいつもみたいに止めて!」

 

「やる気出ない。魔界人を増やしたり、パーターラやタルタロスも地獄と冥界に結合しなくちゃいけないしでこう見えて私 忙しいのよ。デウスとヤハ、ヤハウェに仲裁でも頼んどいて」

 

八大地獄はやっと造り終えた。次はそうね、カローンには地獄の三途の川に、冥界の河ステュクスなどの支流を渡し守をしてもらう、ナベリウス、ケルベロスとマルコシアスにボティス。ゴエティアの悪魔たちを半殺しにして躾けなくちゃいけないし、ウィルオウィスプにアラストル、牛頭と馬頭にもやって貰う事がある。それと魔界人もかなり増える。

小栗判官やドン・ファンはもう少し後でだけど、藤原良相、慶心坊尼、妙達、武帝、衛元嵩、魔界人にし終えた。藤原良相は地獄じゃなくて冥界の方の話だから半人半霊だ。地獄にいるピクラスは相変わらず不幸をまき散らしてるし、サタンも地獄の妖怪や獄卒を従え地獄の長になったりして大変、ではないわね。慌ただしいのはいつもの事だし。あ、気晴らしに地獄花の種を植えて手塩に掛けて咲かそうかな。

 

「良く分かんないけど仲裁して貰えばそれで戦争が止まるの?」

 

「無理。元々 デーヴァ に ダエーワ は同じ存在だったのにねー どうしてこうなるのかしら。本来の形からズレるって仏教や毘沙門天みたい。あれ、元々はインド神話の財宝神クベーラだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これを服用すれば一日は下半身が脚になるから、陸を好きなだけ歩いて好きな場所に行って楽しみなさい。そうそう、脚に変わる際に激痛が走る事は無いから安心してね」

 

「あ、ありがとうございます。ですが、本当に貰ってもよろしいのでしょうか」

 

「気にしないで。その代り貴方はあの人の神使になって欲しいの、その対価として出歩きたい時は影狼か天狗達か萃香に言いなさい。薬のストックはあるから遠慮せずいつでもいいわよ」

 

逢魔時、人魚のわかさぎ姫と永琳は諏訪湖にいた。目に見えないが霧になっている萃香と八ヶ岳に住む天狗達に、わかさぎ姫に危険が及ばない様、永琳は見守っておいて欲しいと頼んでいる。影狼についてはよく八ヶ岳に散策する事が多く、その序でにわかさぎ姫の事を頼まれている。わかさぎ姫の事を 蘇我 入鹿 である 豊聡耳 神子 には神使としてわかさぎ姫を諏訪国に住まわせて欲しいと諏訪子、永琳に頼んだ。諏訪子は弘天が諏訪国にいない場合は諏訪国の王で、永琳は比売大神だからだ。勿論ただでとは言わず神子は女である事を取引材料に使ってだが。諏訪子と永琳はそんな取引材料を使わなくても頷いていただろうが二人はこの話を承諾。その後 神子は半神、半分神だが半分人間でもあるので神子の役割は諏訪国の政治を任せる事に話は落ち着いた。 蘇我 屠自古 は神子の補佐、物部 布都にも諏訪国の政治をしてもらうが本命は別にあり、それはあくまでもおまけだ。今、永琳とわかさぎ姫は諏訪湖にいる。諏訪湖は八ヶ岳から緩やかに流れてくる上流の河、河童が住む玄武の沢と九天の滝に繋がっていて人魚であるわかさぎ姫は泳いで行き来できるので、諏訪湖にわかさぎ姫、そしてにとりなどの河童がいる。わかさぎ姫や河童が諏訪湖にいるのは百鬼夜行が八ヶ岳の妖怪を従えている中頃。だから巻き込まれない様に諏訪湖へ避難している訳だ。河童は人間を嫌っているがわかさぎ姫に関しては喜んで受け入れた。河童と人魚、どちらも人間に苦労させられている妖怪だからだ。

 

「人魚のあんたも苦労したんだね~ 我ら河童一同は人魚のあんたを歓迎するよ、まずは親交を深める為に胡瓜を進呈しようと思うんだ」

 

「新鮮そうでとっても美味しそう、ありがとうございます。河城さん?」

 

「そんな他人行儀な。河城じゃなくてにとりでいいよ。でも何で疑問形なの」

 

河童と人魚の交流が始まった最中、永琳の隣でそれを見つめる影狼。しかし影狼の視線の先は水の中に隠れているわかさぎ姫の下半身。わかさぎ姫の下半身は魚で、魚の鮭が好きな影狼は口から涎が垂れている。

 

「女神さま。あれ、鮭が擬人化したの? 美味しそう。食べていいよね、食べていいよね!?」

 

「駄目に決まってるでしょ影狼、星。悪いけど影狼を見といてくれるかしら」

 

「はぁ。やれる範囲ですがやっておきますよ」

 

星は面倒事を頼まれたと思い溜息。永琳は念の為 影狼に向け言葉を紡ぐ。わかさぎ姫に何かしたら萃香が、または鮭を二度と食べさせないと言い、それを聞いた涙目の影狼に脅してから、永琳はスキマを通って諏訪国に戻る。永琳が戻った先は諏訪国にある一軒のだんご屋の屋台。屋台の前には赤い布を被せた床机に紫と幽香が団子を食べながら優雅に寛いでいる。紫と幽香の間には白蓮が一緒に団子を食べているが、だんご屋の前を通る民は永琳達を見ると挨拶してから談話。諏訪子様だけでなく、私達が死ぬ前に弘天様と永琳様の子を見せて下さいね。と言われ永琳は はにかむ。花より団子の子供たちは紫と幽香から団子を貰って食べている。紫と幽香は子供たちの頭を撫で、自分達にもこんな頃があったと懐かしむ。永琳が子供たちの親と他愛ない話を終え、そのまま親御と子供たちが永琳達に頭を下げ、紫と幽香にお礼を言いながら家に戻った。白蓮はお団子を食べる事に夢中だったが、流石に10本以上食べたせいか団子が刺さっていた串を舌でぺろぺろ舐めて皿に戻す。紫は白蓮の頬に付いた団子のタレに気付き、指で白蓮の頬に付いたタレを拭い、そのまま口に舐め取ろうとしたが、幽香に腕を掴まれ静止させてもう片方にある布で紫の指に付いたタレを拭く。紫は別にいいじゃないと思ったが、幽香ははしたないと思ったのか駄目な様だ。指でだが、タレを拭いてくれた紫に白蓮は笑顔でお礼を言うが、それを見た紫と幽香はアルファ波が出ていそうな白蓮に癒され、白蓮を抱きしめたり撫でたりして和む。どうでも良くないがまだ子供の白蓮の胸が驚異的な速さで育ちつつあり、このまま行けばどうなってしまうのか。セクハラされるのは確実だろう。

 

永琳は後にしようと思っていたが、今渡す事に決めて右手に突如現れた物を娘である二人に差し出す。永琳が開発し、媒介の役目である魔方陣の転移装置は、アメリカの ジャンプルーム を更に改良し、いつでもどこでも使える様に、携帯化しコンパクトにした感じだ。他に素粒子物理学における粒子反粒子振動が、媒介の役割を果たす魔方陣に関わってるがその説明は省かせてもらう。

 

「紫に幽香。これを貴方達に託すわ」

 

まず紫が受け取ったのはなんの変哲もないただの一本の矢とあの天羽羽矢の弓。矢の見た目はただの矢だがこれはあのインドラの矢だ。次に幽香に渡したのは破壊神 シヴァ が持っていたトリシューラだ。永琳はもう一つ持っているがそれはチャクラム、これは諏訪子に渡そうと思い永琳は片手に持っている。チャクラムはともかく。インドラの矢、そしてトリシューラ。どちらも破壊に擢んでている。パスパタも用意しているが必要なら出すだろう。

この二つがあれば注連縄を使い、結界で隔てられた 月宮殿 または 月の都 の結界を打ち破る事が出来る程の威力を持っているので必要だった。月の都は月の裏側にあり結界に隔て、都は隠されて月の関係者以外には見えない様にされているが。

 

「私とあの人の娘、紫と幽香。貴方達があそこに住む玉兎以外、その全ての生物を」

 

そう言いながら逢魔時を過ぎ、真夜中の青空に輝く満月の衛星を指す。かつて月に住み、輝夜の能力で永遠になった天津神は月に住まなくなり、地球、本朝に降り立っている。この先、神も妖怪も対等じゃなきゃ駄目だ。その為に妖怪が月に住む者達に一度だけでも勝たなければならない。だからこそあの人は妖怪を集める事に専念していた。

もう、ずっと前から考えていた事。

 

そして私は笑顔を娘たちに向け、娘達にいつも通り、とんでもない面倒事を娘達に託す。

 

「殲滅して根絶して撲滅して鏖殺して来て欲しいの」

 

「お母様、どれも同じ意味よ」

 

「それもそうね。じゃあ出来るだけ惨たらしくお願いね、遠慮は無沙汰」

 

「その使い方おかしいよねお母さん」

 

幽香と紫は指摘するけど私は聞かなかった事にしよう。月に住む者達が平和ボケしている今が好機。弘の親と私の親。みんな死んでも、蘇生させたらいい話。サグメはいいとして問題は、豊姫と依姫。あの人が頓に神話の道具を集めているのは妖怪が月人と月の民に少しでも勝てる確率を上げる為。どんな手段だろうと使う、古来からある昔話の様に。

 

「貴方達は琉球王国から北海道までの妖怪を全て従え、妖怪の王として顕現するのよ」

 

「流石にいきなりすぎて話が呑み込めないよお母さん。あれ? お母さーん?」

 

「聞いてないわね。だけど全ての妖怪を従えるのは面白そうだと思わない紫? 退屈してたし丁度いいと思うの」

 

「私としては諏訪国で日々穏やかに過ごしたいんだけど。夏だし暑いし、正直 何もしたくない。後で水浴びして西瓜を食べたいわね」

 

「呼んだかい」

 

「呼んでないわよ萃香」

 

西の妖怪を率いる魔王は二人いる、妖怪の眷属たちを引き連れる頭領の1人は山本五郎左衛門。もう1人は神野悪五郎。この二人に西の妖怪の殆どが集まり、眷属になっている。両者には派閥があり、どちらかが勝てば妖怪の魔王として君臨する。つまり、この二人を倒し、従える事が出来れば西の妖怪の殆どが諏訪国に手に入る。舞台は整った、永遠の百鬼夜行も無事に作り終え、天狗に河童もいる。戦力としては先ず先ず、いや。十分すぎるだろう。後は、諏訪国に来るよう仕向けるだけだ。その仕事、はたてと椛が日向の国から諏訪国に帰る途中にある備後国に寄り、山本五郎左衛門は椛が、神野悪五郎にはたてが諏訪国へ来るよう挑発し、焚きつける様にと言ってある。簡単な事だ、要は先に諏訪国を落とした方が魔王になり、負けた方は勝った方に従うといった内容。魔王の座を賭けながらいつまでも争っていい加減、魔王を決めて欲しい所。

 

大旱の雲霓を望むがごとし。あぁ、楽しみ。全てを従えた娘たちの晴れ舞台、早くこの目で月に住む玉兎以外の者が私達の娘に ジェノサイド され、凱旋の日が待ち遠しい。急転直下に動き、月に住む者が死屍累累。その情景、ビジョンが脳に浮かぶだけで昂ぶりが抑えきれなくなる。そう思わないかしら。ねぇ、浮気者だけど寵愛して止まない恣意的なあなた。男は船、女は港。そんな言葉があるけど、娘たちが傍にいてもやっぱり、あの人の温もりが欲しい、会えないのが物佗しい。だからあの人と会話だけでもと考え、私は行きたくもない月に行き、月の技術を。

 

アルファでオメガ。世界が終末を迎えたとして、かつての、昔の様にまた創ればいい、月に住む玉兎以外の者がみんな死んでもまた蘇生させたらいい、土地、大地が死ねば諏訪子の能力を使えばいい。カルキにカリ・ユガ、フィンブルの冬や最後の審判。今もこうして、刻々と近づいている。いつか判決は下るだろう。

 

判決によって、その時はまた、また 世界は回帰する。思い出すとはいえ、再びあの人と初めまして。それも悪く無い。何度でも、あの初めてを味わえるなら。

時が砌でも、繰り返される度、あの人への初恋を何度でも迎えられる。あの時、公園にいた私を引っ張って行く日を、また、あの日が永遠に訪れる。

 

だけど今は時期早尚、遅効性の毒の様に、時間をかけて月の生物を窮して蝕んで、窮地に追い込もう。私達の奴隷にしたと言ってもそれは元 月人の私達がした事。それでは駄目だ、月人が月人を奴隷にしてもあまり意味は無い。あれは放置しているとこの先邪魔だ。過去の負の遺産、そうだ。負の遺産を誰かが断ち切らなければならない。どんな手段を用いても。誰かが。

 

後で私も月面の南部に位置するクレーター ティコ と、月の海 賢者の海 や 月の湖 死の湖 忘却の湖 にも行かなくてはならない。それに調査部隊の中で情報管理、名は鈴瑚、だったかしら。ジャミング、ハッキングしてウイルスを撒いておけばいい。だけど今は母として娘たちと一緒に過ごしましょう。ただトリシューラの扱いは簡単でもインドラの矢は制御が難しい。後で紫にちゃんと使い方を教えておかなくちゃね。

 

       

 

      いつか月人と月の民に玉兎。そして妖怪の戦争を始める為に。




実際に妖怪が神社で祀られてる所は多く存在します。有名なので鵺や酒呑童子や葛の葉とか。つまりそれは、妖怪も八百万の神の一部と捉える事も出来る、と私は考えてます。
そもそも妖怪の定義は人によってばらばらで纏まりが無いんですよね。
だからと言う訳ではありませんが、葛の葉の話を混ぜた藍を妖狐から神にしたのもそれが理由の一つです。

ちょっと紛らわしいんですけどこころは面霊気と書いていますが、こころと小傘は神と妖怪の境界線にいるので神でも妖怪でもあり、どちらでもない存在にしてます。
それといつかの前書きで書きましたがこころと小傘は除いて、ここでの付喪神は神扱いで九十九神は妖怪扱いです。ですが、人間からは九十九神も付喪神も同じ存在と見られて妖怪扱いされていると言う事にしてます。ざっくり言えばこの作品での扱いは恨みを持っているのが九十九神で持ってないのが付喪神です。

それと塵塚怪王というのはゴミの付喪神の王と言われる妖怪の事ですね。小傘、もしくはこころもですが二人には諏訪国の塵塚怪王になってもらう為に早めに出していました。

月にあるクレーターの ティコ と月の海 賢者の海 や 月の湖 死の湖 忘却の湖
は実際にあります。アメリカのジャンプルームもね。転移装置の役割を担う魔方陣についてはそれが元ネタ。

釈迦が地獄にいるカンダタに蜘蛛の糸を吊るす話は有名な芥川龍之介の奴です。皆さんも地獄に一本の蜘蛛の糸を吊るす話は多分 聞いた事があると思います。
ついでに言うと六の宮の姫君も芥川龍之介の話。

小栗判官、ドン・ファン、藤原良相、慶心坊尼、妙達、武帝、衛元嵩、これらは地獄、または冥界に関係する話を持っている人たちですね。

このまま行くと月面戦争勃発。紫と幽香を娘にしたのはこれが本命。妖怪の王にして月との戦争をしたかったんです、月の負の遺産がこの先邪魔なんですよ。書くかどうか未だに悩んでいますので書くか分かりません。

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