蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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前回は20000万文字、今回は30000万文字越えました。新記録達成ですがそんな記録いらない。今回の話を最後まで見てある人物の名に疑問に感じるでしょうが、今回の後書きは長いですけど一応見て欲しいです。
今は春の季節にしてますが一気に冬の季節に変えるかもしれません。

今回ゲロとかエロ話がしょっぱなからあります、地の文と台詞と後書きも多い。



妹紅

宴会を始めるまで時間はあるからキクリを俺の部屋に連れ込んで、無知なキクリに性教育を学ばせようと思った。とりあえず参考資料として、エロ本をほとんど永琳に処分されたがなぜか一冊だけ生き残っていたエロ本を部屋の隅に俺とキクリで詰め寄り、一枚一枚舐めるように丁寧に見る。まあ、エロ本と言ってもただのグラビアだが。流石にいきなりキクリにエロ本は早いかと思いもう少し後にする事にした。

 

「いいかキクリ。これは、そう。女体の神秘を学ぶ時間だ」

 

「何だこれは」

 

「まあまあ、まずは見ようじゃないか」

 

一枚一枚捲ってキクリと共に観賞する。キクリは無知、なので俺が見せたエロ本も何の本だか、そもそも本の意味や女性のあられもない写真を見せても意味が分からないだろうな。つうかキクリ女だし。だが、無知とは純粋で穢れが無い事、そこで少しずつ汚す事にした。真っ白な紙があったら黒いペンキで塗りこみたいじゃないか。しかしここは最初白色に近い灰色の塗料で汚していき、少しずつ黒色の塗料を灰色の塗料に混ぜて塗っている感じだな。いきなり黒い塗料で思いっきりぶっかけてから塗って無い筈だ、と思う。

 

「なぜ女がこの薄い紙の中に入っているんだ。しかも服を、いや布きれ一枚を一部にしか巻いてないぞ」

 

「この中にいる女性は天宇受賣命みたいに露出狂なんだよ多分。だからほとんど裸なんだ」

 

あの時の八百万の神たちは大笑いしていたが。

 

「私には分からないんだが、弘天はそれを見ていて面白いのか」

 

「面白いって言うか、ただ将来の為、キクリに見せて性知識を学んでもらおうと俺の親心というか親切心がだな。決してキクリを辱める為とかやましい気持ちは無いと言えると思う」

 

キクリはキクリって名だが、まるで菊理媛命みたいだな。あの神は黄泉の国に通じる道の番人の一人で確か伊邪那岐と伊邪那美を仲直りさせた神だったか。謎だらけの神の一人。一体菊理媛命に何を言われてかは知らんが伊邪那岐は醜くなった伊邪那美と和解して黄泉に住む事にした様で、その後の和解後、伊邪那岐は三貴神を生み出し、伊邪那岐は俺を指さして三貴神に何か言った、何を言ったかは教えてくれなかったが三貴神を連れて菊理媛神は黄泉の番人をほっぽって菊理媛神は俺と永琳と共に三貴神を世話をして、三貴神が大人に成長したらどこかに行った。菊理媛命は天照の伯母で養育係をしていた女だ。しかし二人共、顔が似てはいる。偶然だろうがまさかな。だが、もし偶然じゃなかったら、キクリは。何を考えてるんだ俺は、やめだやめ。伊邪那岐は伊邪那美と共に黄泉にいる。天岩戸の時に天照を無理矢理出して、活躍した天手力男神は諏訪の国の北には天の岩戸の岩戸が飛来して山になったと言う戸隠山と言うのがある。そこに天手力男神は住んでいたがだいぶ前に伊勢国に行った。菊理媛命が隠居したなんて話は聞いてないから、どこかにはいると思う。何故か古い神は時代が進み、神が増えれば身を隠す、もしくは没した。後は封印されたのもいる。しかし没するや、封印ならともかく何故そんな身を隠す事をしているのだろうか。神としての役割を終えたからか、菊理媛命。お前、一体どこに行ったんだ。自然と一体化してそこにいるが目に見えないだけなのか。

 

「学んだらどうなるんだ」

 

「どうもならん。ただキクリに性に関する知識が蓄えられるだけだ、やったなキクリ。これでキクリも大人の階段を上り始めたぞ。後は誰かに恋をする機会があればな」

 

「恋とは人間や神 特有の男と女がするというやつか。私は女だ、弘天は男だから私は弘天に恋をすればいいのか?」

 

「確かに俺は男でキクリは女だが、別に俺じゃなくてもいい。多分、俺以外の男に恋をするんじゃないか」

 

「この艶本とやらは皆、女しか見えないが男のは無いのか」

 

「キクリ。お前は俺が嫌いなのか。もしくは死んで欲しいのか」

 

キクリは右手で左胸を押さえて隣にいる俺を見る。そして右手を胸から離すが俺への視線は終わらない。キクリは無知だ。だが無知なだけで心が無い訳じゃ無い。だから知らない事を一度でも知ってしまえば後は簡単だ。

 

「まだ恋や好きという感情を完全に理解してはいないが。私は、弘天の事が好きだと思うぞ」

 

キクリが、真顔で告白してきた。だがキクリよ。そのキクリの俺に対する好きって気持ちは恋愛感情ではないと思うんだ。その好きは友達に対しての好きだ、と俺は思う。好きと言われるのは嬉しいがな。

 

「そうか、俺もキクリの事は好きだ」

 

「ん? これは両想いと言うやつか。なら私と弘天は恋人というのになるのか」

 

「どうなんだろうなキクリ」

 

好きと言われて嬉しかったから俺の右手で俺を見てるキクリの左頬を撫でる、左頬を撫でてるからキクリの左目は閉じている。何故頬を撫でられてるかは表情を見るに理解してないだろうがキクリはされるがままだ。これでは悪い虫が付かないか心配だなキクリ。だがそんなキクリも俺も好きだが。あの時の約束、俺は忘れてない。いつかその約束を果たすからな。もしも将来キクリに好きな男が出来たら、性知識が皆無じゃ相手も困るだろうと俺の粋な計らいだ。あ、でもその相手が自分から教えて行きたいと思う男なら俺は余計な事してる事になる。しまったな、その可能性を考えてなかった。キクリと部屋の隅に詰め合ってエロ本を観賞していたら、俺の部屋のふすまが滑る音がして、後ろにいる誰かに頭を多分手で軽く叩かれたが小気味好い、いい音を出した。頭を左手で叩かれた所を擦って誰だと思い後ろを振り返るとルーミアがいた。どうやら俺の部屋に入って来た様だ、なぜ入って来たルーミア。

 

「何をしてるのよ」

 

「何って、キクリと艶本読んでる」

 

「ふーん」

 

俺がキクリと部屋の隅に詰め寄っていたが、ルーミアも詰め寄り混じって来た。どうやら一緒に観賞する様だ。えー・・・・・何だこの展開!? しかし官能小説の方が良かったか。でもキクリに官能小説を読ませても意味が分からないと思う。文字で読み手に伝える物だからな。だが男一人に女二人でグラビアとは言えエロ本を読むとかおかしくないか。三人でエロ本読んでたら、隣にいたルーミアがエロ本に移っていた女性を人差指でエロ本に写る女性の胸を指す。

 

「この女性乳房大きすぎでしょ、いくらなんでもこれは無いわね。こっちは逆になさすぎ、断崖絶壁じゃない」

 

「そうなのか。私にも乳房とやらはあるがたまに邪魔だ」

 

「んー 確かに邪魔ね。でもいつかそれが武器になるんじゃないキクリ。やっぱり掌に収まる胸が一番と思うのよ」

 

右隣にいるキクリは自分の乳房を両手で揉みつつ触りながら邪魔だと言い、左隣にいるルーミアは胸を張りキクリとルーミアに挟まれている俺を気にせず話すが、俺を置いて女性二人で話し始めるのはやめろ。何だか生々しい話を聞かされると気まずいじゃないか。まさか、これがルーミアの狙いか!何て策士、恐ろしい女だ・・・・・

 

「これキクリに見せたら穢れるんじゃない? 無垢なままでいさせるのも悪く無いと思うわよ。それ燃やすから早く渡しなさい」

 

穢れるか、菊理媛命は穢れを払う神だったな。キクリは菊理媛命じゃないだろうが、同じキクリの名がある同士穢れなさそうだ。まあ、そもそもキクリは妖怪だが。ルーミアは俺が持ってるエロ本を掴もうと手を出すが、その前に危機的本能で部屋の隅からふすまの前まで逃げる。ふっ、都市があった時に何度永琳が俺の部屋に部屋に入って、しかもタイミングが悪い時に、俺がエロ本を観賞してる所に来て俺のエロ本を奪って燃やそうとするのが日課だったこの俺が。片手にあるエロ本とは言え親友を守るために永琳から逃げる夫婦じゃなかったが夫婦喧嘩をどれだけしたと思ってるのだ。だが永琳が俺のいない間に俺の部屋に入りエロ本を燃やす変化球は都市の時は無く、諏訪の国に来てからだが。エロ本は月人を奴隷にした時に持ってきました。この一冊以外燃やされたけど。でもこのエロ本に写ってる女性ってなんか永琳に似てる気が。まさか、永琳の奴・・・・・

 

「急に鞍替えるとはどういう了見だルーミア!? 一体何の陰謀があるんだ!無知で無垢な女を少しずつ汚していこうという俺の崇高な目的をなぜ邪魔をする!」

 

「本音が漏れてるわよ、それに崇高じゃなくて低俗の間違い」

 

しかしこれしかエロ本が無い、これを取られたら月に行かなきゃもう永琳のせいで何もないんだ。俺の命と引き換えに死守しなければ・・・・・! そこに、二人の救世主が俺の部屋のふすまを開け、入って来て現れた。俺はこの時を一生忘れない、この救世主達に俺の一生をかけて崇拝することを決めた瞬間だった。

 

「ご主人様、宴会が。って三人で何してるの」

 

「宴会、準備出来たから呼びに来た」

 

「ナズーリンとこころ、お前達は最高の女だ」

 

二人に抱き着くが、背中から舌打ちが聞こえた様な。キクリな訳が無いだろうけど。いきなり二人に抱き着いたからナズーリンは困惑してる。こころは何をされてるのか理解してる様だが、ポーカーフェイスで表情は変わらない。

 

「ご、ご主人様。急に抱き着かれたら危ないよ」

 

「早く行こー」

 

二人から離れて、ナズーリンは俺の左手を、こころは俺の右手を掴んで宴会の場所に向かう。今日の宴会場は決まってる。鳥居から神社まで桜が咲いてるから桜の下で花見をしながら宴会をする事にした。ちなみに石段にもだが桜と同じように鳥居から神社にある参道の途中から灯籠が並んでいるので、夜でもあまり暗くない。薄暗い所で宴会も悪く無いかもしれんが危ないので一応だ。まだ少し寒いがもう春だな。寒くても宴会で騒ぐ、それに熱気も出るし酒を飲んだら熱くなるし問題は無い。こんな宴会 時しか神社に来ないんだよな民って。悲しい物だ。気軽に来ればいいものを。

 

「行こう行こう光の速さで早く行こう。ルーミアにキクリも早く行くぞ」

 

ナズーリンとこころに引っ張られながら歩く、ルーミアとキクリを読んだら二人も俺の背に付いて来たが、顔だけ振り返ると何かルーミアはぶつぶつ言ってついて来てる。キクリは、待ってくれ弘天。私を置いて行かないでくれ。と言いながら小走りでついて来た。愛い奴だ、可愛いなキクリよ。

 

聖からまだ子供の白蓮を抱かせてもらいながらあやして神社の前に立ち、宴会を眺めている。ぬえが飛び回って暴れているが幽香に取り押さえられた。萃香と勇儀は正座をしながら紫と諏訪子に説教され、河童を見てみるが人間に対しては話そうともしないしまだ駄目なようだ。鳥居の下に天狗と河童が集まって雑談してるが、鳥居の下と言っても少数だけでほとんどが鬼の所にいる。これから八ヶ岳に住んでもらうのだから仲良くする為だろう。あそこに天狗や河童、そして新しく鬼が住む事になるのだから。民は今回取り込んだ鬼の所に誰一人恐れず鬼に対して話しかける。もう知ってる鬼女は驚かないが知らなかった男の鬼は驚いていた。皆友達と話す軽い感じで話しかけるからだ。宴会が始まってるので俺も神社の前にいつまでも突っ立ってないで手水舎の近くに集まってる鬼の所に交流を深める為に向かう、ついたらまず鬼ころしを悪路王達男の鬼と鬼女達に飲ませる。悪路王は静かに飲んでいたが、それ以外の男の鬼。大嶽丸や犬神丸は自棄酒している。あれ鬼には強力な酒だからあの感じの様子だと酔っぱらってるな、自棄酒していて俺には 殺意をむき出しで睨まれていたが、近くにいた華扇は片手に鬼ころしが入ったB升を持ちながら、二人の顔を思いっきり回し蹴りで吹き飛ばしてどこか遠くの大空に飛んで行き星になった。他の男の鬼も自棄酒をしていて、飲み過ぎたせいか一斉に吐いた。鬼ころしは鬼の為の酒だから鬼が飲みすぎれば酔うし吐いてしまう。今吐いたのは華扇に恐怖して胃に緊張やストレスが走った為だろう。パルスィやヤマメにも鬼ころし飲ませていた、鬼ころしは鬼以外には不評だがあれを呑めば鬼はすぐに酔ってしまう酒だ。パルスィも鬼ころしを少し口に含んだ時に、天狗の天魔が来た。その時にパルスィは口に含んでいた酒、鬼ころしを俺に向けて吹き出してきたので俺の顔に被ってるお面はパルスィの唾液と鬼ころしまみれだ。なんかすまんこころ。パルスィは事態を理解して近くにあった拭き物で俺が被ってるお面を拭いて謝る。抱いている白蓮は濡れずに無事だ。

 

「いやー! ごめんなさいごめんなさい!! 今拭くから!」

 

「楽しそうで何よりだね。本当に良かった。ちなみに弘天、何で真っ白な子供の顔のお面被ってるの?」

 

「気にするな」

 

俺はお面を被っているがこれはこころだ。こころはお面になる事が出来ると聞いたので被ってる。藍は今では人型の女性になってるが、かつて狐。金と言う名の狐になる事と似た様な感じだ。今でも金になる事が出来るそうだが。パルスィは俺の顔を布巾で拭いているが顔は天魔に向けていて、天魔は艶笑してパルスィを見つつ片手にある酒瓶をラッパ飲みで呷る。パルスィが興奮してるせいか拭き方が激しくて地味にお面になってるこころは痛そう。近くにいたキスメが問答無用で俺の首を刈って来たが俺は永遠の概念となっていて殺される訳が無いのでそれを無視して話を続ける。パルスィや天魔はそれに苦笑いだ。キスメは問答無用、残忍な面があり今回の元凶である俺を殺しに来た様だが素晴らしい、妖怪らしくていいじゃないか。正統派の妖怪みたいで俺は好きだなそういうの、正統派の妖怪、そんな妖怪を無理矢理 屈服させるのがとてもいい。

 

「あんた。性別が無かったのになんで女みたいに、って 私より胸が大きいし!」

 

「色々、あったんだよ。色々、ね。」

 

パルスィは天魔にツッコミを入れて、天魔は遠い目をして喋るが、俺の顔を必死に拭くパルスィを見ている。パルスィを見る顔が優しくて印象に残った。今まで天魔にはドヤ顔しか見た事が無かったからだ。天魔って魔縁とかいうのだそうだ。魔縁って何だろうな。キスメは俺の首を刈って来てたが俺を殺せず、俺が無反応で無視しているので次第にキスメは涙目になって大泣きした。泣いた後は酔ってる紅葉に抱き着いてあやしてもらってる。ふっ、勝った。

 

「二人が知り合いか知らんが久しぶりじゃないか天魔、丁度いい。頼みがあるんだが」

 

「いいよ」

 

天魔はドヤ顔で俺が何を頼むか言ってないのに承諾した。俺が何を言いたいのか理解してるようだ。流石だ、と言いたいが凄すぎだろ。心でも読めたりするのか、まさかな。しかしまだ俺は一時的とはいえ永遠の存在になってる。永遠の存在から心を読み取る事って出来るのか。そう言えば最初に出会った時もまるで心を読んだみたいな感じだったが。話がスムーズに進んだし。天狗の翼で色んな所に行けると言うのもあるだろうが、もしやその情報力を握ってるのは。

 

「文とはたてと椛、欲しいんでしょ?」

 

「まあ、そうだ。俺達は盟約関係なんだから天魔も何か俺に欲しい物は無いか。ある程度の物ならすぐに渡せるが」

 

「んー そうだねー じゃあ」

 

天魔はいつものドヤ顔だったが背を向け、左手の人差指と中指を立てて無慈悲に言い放つ。

 

「仏教を諏訪の国にも、諏訪の国より東に来させるな。それだけでいい。あれ東に来るのうざいし邪魔」

 

天魔は背を向けて月を見ていたが、中指を折り、人差指だけを立てながら振り返り俺と向かい合う。しかし天魔よ、それがどういう意味か分かっているのか。それをすると言う事はどういう事か、仏教の敵になれと言う事だぞ。まあ俺は構わんが。まずは仏教が諏訪の国と諏訪の国より東の土地に入って来ない様に、俺は仏教派の人間を食い止める。最悪粛清、皆殺しにするか。そっちの方が分かりやすく簡単で丁度いい、小町を迎えに行くついでに出来る。だが殺す以外の手はある。例えば、歴史を食わせ、その食った歴史の部分を新しく創るとか。仏教が大和に来たと言う事実を歴史から抹消する、代わりに、そうだな。不自然が起きないような都合の良い出来事にしてやろうか、あの仏教派か神道派の争いは歴史が変わると宗教争いではなく権力、勢力争いにするみたいな感じ。歴史を編纂する事が出来る者がいればの話だが。

 

「まずはこれ、聞いてくれるよね。我ら天狗の盟約相手、諏訪の国の王よ」

 

「いいだろう。諏訪国の王である我が盟約相手。天狗の長、そして魔縁である天魔よ。謹んでお受けしよう」

 

迷いなく返したので天魔は動転したが、もしかしたら即答で返すと予想してたのかすぐにいつものドヤ顔天魔に戻った。魔縁とか意味は知らないが格好を付ける為に言った。俺は仏教があろうが無かろうがどっちでもいい、俺の邪魔になら無ければ何もしないでいたが同盟相手、天狗の長である天魔に頼まれたら俺に断る理由が無い。仏教があろうが無かろうが俺にとってどちらでもいいのだから。最初に大和、次に月人。今度は人間相手か。仏教は神や仏が広めているのではなく、人間が広めているから今回は人間が敵になる。西は神仏習合されつつあるが東はそんな事は無いから東に住む人間を守らねばならん。まあ、神と仏が習合されるのはまあいい。しかし本地垂迹だけは阻止しなくてはいけない。これだけは認めてたまるか、神々の正体は仏とかふざけんな!

 

「こんなに早く、即答するなんて思わなかったよ」

 

「その方がお互い分かりやすくていいだろ」

 

そうだね、そういう男だったね。と、天魔は左手の人差指を俺にドヤ顔で向ける。神道って元々そんな言葉も無かったが仏教が来るまでは今まで上手く行ってた。まあ、俺は神道の神じゃないし本来関係ない話だが。どこぞの誰かが言った 和を以て貴しとなす と。そんな事は無理な話だ、しかし何もかも混ざったこの大陸、本朝も見てみたい気はする。はっきり言って人間が敵になると言っても今までとあまり変わらない。天魔の話を聞くに、ただ仏教を東に侵食させなければいい話みたいだし。諏訪の国の役目は、仏教が東に来ない様に諏訪の国で抑えればいい。最悪、邪魔なら殺す。

 

「私もただ黙って指を咥える訳じゃ無いよ。平将門は東大陸の全てを治めつつある。でも私は平将門や春姫と協力関係にあってね」

 

「天狗は妖怪なのにそれに西はともかく東の人間が協力するとは思えないんだが」

 

天魔が言うには春姫とは平将門の娘で、春のような陽気さといたずら好きで神秘的な魅力を兼ね備え妖精の様な美しさだそうだ。

 

「私もそう思うけど向こうからそう言って来たんだもん。協力しないかって、利害が一致したから私も一時的に協力してるけどね」

 

「言って来たってまさか、あれを登ったのか。あの高い山を」

 

「んーん。弘天の様に馬鹿正直に登ってないよ。式神とか言うのを飛ばして来て念話して話したんだ」

 

そんなズバズバ言うとか酷いな天魔、しかしそう言う事か。東の大陸は俺と永琳が邪魔したせいで大和はこの大陸を全て統一できていない。俺は侵略行為に興味は無かったから今まで放置していたがどうやらその平将門という人物は東の大陸を治めつつある様だ。そして平将門が天狗と協力しに来たのは仏教に抵抗する為だそうで、その為に東の大陸を治めようと動いているらしい。神仏習合については殆ど人間共がやった事だし、西は人間共が手をまわして神仏習合が侵食しつつある。だが東はその侵食の手に落ちていない。だからこそ東国は神道の国として独立し、大和に対抗する気のようだ。神が出てきたら俺と永琳が行けば大抵の神は終わるし俺や永琳とかが必要なのだろう。西の神を従えてるんだから。その事は平将門は知らないだろうが。そしてその境目として諏訪の国に白羽の矢が立つ事になったようだ。まあ、要はだ。仏教が東に来たら諏訪の国で防衛、食い止めたらいい話な訳だ。懐かしいな、大和が諏訪の国を侵略しに来た時を思い出す。あの時は大変だった、一番大変だったのって大和を従えるより神奈子をどうやって妻にするかが悩んだものだ。

 

「平将門と会った事は無いのか」

 

「いや、会った事はあるよ。えっとね、頭に烏帽子を被ってて、服装は陰陽師に似てる男性だったよ」

 

頭に烏帽子。服装は陰陽師。それって篁の屋敷で出会ったあの男の容姿に似てるんだが。偶然かもしれないが、念の為にもっと深く聞いておこう。関係ないがさっきから白蓮は俺の顔を揉んで遊んでいる、俺の顔は福笑いじゃないんだぞ白蓮。

白蓮は飽きたのか降りたそうにしたので下ろして二足歩行で悪路王達の所に聖がいるのでそっちに行った。やはり実の父がいいんだな。てかもう二足歩行とか言葉も喋れるし成長速度早すぎじゃね。まるで月人じゃん、かつての都市に産まれた俺の子供の頃を思い出す、あの頃は若かった。

 

「もしかしなくてもその平将門って赤い目で、黒髪で後ろ髪が長くてその長い髪を束ねていたか」

 

「おー 凄い。良く分かったね。もしかして私の心が見えるのかな? もし見えるならあんまり見ないでよね恥ずかしいから」

 

何か いやん、とか キャッ! とか言って恥ずかしがってる天魔をほっとくが、これって間違いないんじゃね。あの男、平将門だったのか。あいつは、月人の事を知ってたしただの人間ではない筈だ。

 

「無視された・・・・パルスィ慰めて」

 

「嫌よ。ってこっちに来ないで近づかないで!」

 

天魔はパルスィに抱き着こうとしたが、パルスィは俺の背に隠れて天魔の抱き着きから逃れた。俺を盾にするなよパルスィ。パルスィに抱き着けなかったから天魔は前から俺に抱き着いて話の続きを始めた。酒臭い。

 

「じゃあ最後にパルスィを借りてもいいかな? ちょっと話したい事があるんだ」

 

そんな事でいいのか。俺は構わないがパルスィにどうするか聞いてみるとぶんぶん上下に頭を振って来たので問題は無いと思いこの話を受けた。天魔とパルスィは空を飛んで八ヶ岳の方に飛んで行った。天魔とパルスィに接点ってあったか、俺は分からんな。ただパルスィが言ってたが諏訪の国に来たのは第六天魔王を探しに来たと言っていた。第六天魔王に天魔って関係あるのかね。あれ?何か第六天魔王と天魔って名を口に出すとどこか似てる気が。ってまんまじゃないか! ただの偶然だろうから気にしないが。八ヶ岳と言えば木花開耶姫の姉、岩永姫が住んでいた。木花開耶姫はニニギの野郎に嫁いだ、その姉の石長姫もニニギの野郎に嫁いだが一悶着あった。お世辞にも美人とは言えない容姿だったからだ。が、何とか今ではニニギの妻になっている。岩長姫、あの女は美人ではなかったが男を立てるいい女だった、俺から見てだがあの女は美人ではなかったが不細工でもなかった。ニニギから見たら醜いと思った顔の様だが。しかし顔を差し引いてもいい女だったと断言できる。もし、ニニギの妻にならなかったらどうなっていたんだろうな。

 

日本神話には『バナナ型神話』と似た話がある。バナナ型神話とは死や短命にまつわる起源神話の物だ。簡単に説明させてもらうなら、神が人間にバナナと石、どちらかを選ばせる。硬く変質しない石は不老不死の象徴、石を選べば不老不死、または長命になれる、バナナは石と違い食べ物で放置すればいずれは腐る。つまり寿命があり、バナナのように脆く腐りやすい体になって、人間は死ぬ。または短命になってしまう話だ。そして弘天が関わった日本神話ではこのバナナ型神話は起きていない。石長姫をニニギに嫁がせ、天孫が岩のように永遠のものとなるように、木花開耶姫を嫁がせたのは天孫が花のように繁栄するようにと誓約を立てたからの為に酒解神は二人をニニギ差し上げた。長々と話したとは言え、この寿命に関する話はニニギの子孫、大和にいる天皇家での話だ。それに天皇家はこの話のせいでニニギ自身とその子孫、天皇達の寿命は永遠から有限に、短命になったと言えるので全部ニニギが悪い。

ついでに人間の寿命について書かかせてもらう、有名な話だが伊邪那美命は死の国の神、人間の寿命を司る神。そして黄泉の国の支配者、黄泉津大神だ。黄泉にいて黄泉の女神としている。伊邪那岐命も一緒だ。今でも仲良し夫婦な兄妹夫婦として存在している。本来の日本神話なら2人は黄泉に一緒にはいないし伊邪那岐は伊邪那美と別れた後は隠居、または隠れた神な筈だ。つまり人間の寿命の起源となったあの話、二人の別れのくだりから、人間の寿命が定められたあの話も起きていない。もうお分かりかもしれないがこの時代の人間の寿命は短い、だがそれは他の種族と比べての話だ。天皇家に限らず100年以上生きてる人間はざらにいる、諏訪の国の人間、例えば聖も100の年齢を余裕で重ねている。しかし不老不死ではないのでいつかは死ぬ、平均寿命は無いので死ぬ時は突発的に死ぬが。日本神話は神と人の区別が曖昧で困った物だ。

 

岩長姫の事を考えてたら、キスメをあやしていた筈の紅葉が急に立ち上がり、足取りもおぼつきながら上擦った声で、どこから取り出したのか両手に装着した赤い琴爪やお琴を出して上機嫌で神社の前に立ち、片手を勢いよく上げて、ちゅうも~くと酔った声で皆の前に出る。キスメにも鬼ころしを飲ませたがキスメは鬼じゃないので鬼ころしは不評だった。紅葉が皆の前に出たのでキスメはおろおろしてまた涙目になり始め、俺の隣にいるヤマメがキスメを呼ぶと、涙を流したままヤマメの右手に持ってた桶に入ってまためそめそする。残忍な性格なのに泣き虫なようだ。

 

「皆、初めまして。私は鬼女で、名は紅葉。今からお琴を弾きます。どうか、談笑しながらでいいので聞いて欲しい」

 

いきなりで何も言えなかったが、神社の前に立つ紅葉が正座をして両手にある琴爪でお琴に触れる。紅葉の言葉を理解したら皆から拍手が起こり、拍手が鳴り止むと紅葉が両手の琴爪でお琴を弾き始めた。談笑しようにもあまりの上手さに皆 静かになってお琴を聞き入る。やるじゃないか紅葉、月並みだが綺麗な演奏だ。お琴も悪く無い、むしろいい。後は居酒屋でもあれば最高だな。俺は胡坐をかいていて隣にはヤマメがいて一緒に聞き入ってるが、俺に質問してきた。

 

「紅葉って容姿端麗、才色備えた美しい女性で、お琴が上手な女性と思わないかい」

 

「第一印象で言うならそう見えるな」

 

「鬼ころしってお酒が凄く美味しいお蔭で軽く酔って上機嫌で弾いてるけどねぇ、紅葉はお琴があまり好きじゃないそうだよ」

 

お琴で嫌な事でもあったのだろうか、しかし紅葉がお琴を弾けるのはとてもいいな。仕えさせて良かった。たまに聞かせて貰おう、嫌がっても弾いて貰うし。ヤマメと話していたその時。何故か俺の隣にいたヤマメは、うっ と片手で口を押え、吐いた。桶に吐けばいいんじゃと思ったが、桶はキスメの家なので駄目だそうだ。吐いたのはいいが胃液まで出て来ていて酸っぱい匂いが俺の元に来た。酒だけを飲んで何も食べていなかったのが不幸中の幸いか、どうやら鬼ころしを飲み過ぎた様だ。今は紅葉のお琴に皆 夢中になっていて気付かれていない。吐瀉物を藍に任せようと藍を見たが何故か藍は一歩も動かずただ正座して俯いている。俺の恐れていたことが、体調でも悪いのかと思い、変わりに俺が雑巾で拭く事にした。畳に吐いたならやばかったが幸い床は畳ではなく木の板だ。匂いが染みつくかもしれんがまた床を作り変えたらいい話だし。ヤマメは吐いて酔いが覚めた様子で俺がヤマメの吐瀉物を床に方膝を付けて拭いていたら酔っぱらってるからかヤマメは顔を真っ赤にして俺の片手にあった雑巾を奪い取る。

 

「い、いいよそんな事しなくて。汚いし私が拭くからねぇ」

 

「俺は気にしないから返せ。まだ拭き終えてないんだ」

 

キスメも桶から出てヤマメの手伝いをしようとしたが、ヤマメは、いいんだよ。と片手でキスメを静止して拭く作業を続ける。桶を除くとキスメはヤマメにしなくていいと言われたからか、落ち込んだ。よく涙目になるなキスメよ。キスメが桶の中を覗いていた俺に気付いて威嚇してきたのでキスメを見るのはやめた。紅葉のお琴演奏が終わり拍手が鳴り響く、紅葉は立ち上がり頭を下げてお琴を持ってこっちに戻って来た。急がねばヤマメが吐いた吐瀉物を見られてしまう。もう一枚雑巾が無いか宴会場を見渡すが無かった。

 

「私が気にするからしなくていいんだよぉ。私が吐いたんだから自分で片づける」

 

ヤマメは吐瀉物を雑巾で拭き始めた。ヤマメは四つん這いなので、俺はヤマメを見下ろして立っている。何か知らんがヤマメが 顔を赤くしてチラ見で何回も俺を見ていたので、何だと思いヤマメを見ると視線が交わり、酔ってるせいで顔が赤いヤマメは俺と目が合ったら俯いて雑巾で拭くことに没投し始めた。きっと吐瀉物を他人に見られて、しかもそれを他人に拭かれたから恥ずかしいんだろうな。ヤマメも女の子な訳だから。後は私がするから宴会に混じってきなとヤマメに言われるが迫りくる紅葉に近づいて足止めする事にした。

 

「綺麗だったぞ紅葉。結婚しよう」

 

「私はもうお前の物ではないか」

 

鳥居から神社にある参道の所で紅葉と会話する。どうやらお琴を弾いて紅葉は酔いが醒めた様だ。足止めの為に、紅葉が嫌がる様な事を言ってみたがもうお前の物だと言われて会話が終わった。ば、馬鹿な。百戦錬磨であるこの俺が一言で終わるなんて。俺はその場に座り話題を変える為にお琴の話をする。紅葉のお琴の演奏を終えたので、今は宴会の騒ぎで結構煩いから声を大きめに出す。

 

「そ、それより。紅葉はお琴をどこで習ったんだ、まさか我流と言わないだろうな」

 

「私は元々、悪路王達といた訳では無い。各地を転々と旅していた所に出会ってな」

 

「旅をしていた頃の私はお琴に興味などなかったが、ある人間が鬼の私を恐れず教えてくれたんだ。この私が言うのもおかしいが、お人好しでいい人間だったぞ」

 

「変わった人間だな」

 

「どの口が言うか」

 

紅葉と二人で座って話していたが、ヤマメの方を見ると片付け終えたみたいなので話を終えて紅葉をヤマメの所に返した。藍の事が気がかりだったので藍の元に向かい声をかける。

 

「藍。お揚げに手を付けてないみたいだがいらないのか」

 

藍の目の前にはお揚げを積んだ皿があるんだが、一つも食べてないようだ。どこか体調でも悪いのだろうか。俺は立っていて、正座してる藍の肩に手を置くが、藍の肩に置いた手を藍は睨みつけて大声をあげて思いっきり俺の手が払われた。えっ、道具の反抗期か。嬉しいと言えば嬉しいが悲しいな。

 

「触らないで!」

 

藍は感情に任せて怒声を出したが、自分が誰に何をしたか理解した様で冷静になり立ち上がって頭を下げて、申し訳ありません。疲れているのでもう寝ます。と早口でいい部屋に向かった。藍は大声を出したが、今は宴会でどんちゃん騒ぎをしていて煩いので皆には聞かれていない。安心した、今のが皆に聞かれたら宴会 所じゃなくなるからな。近くに輝夜と咲夜がいたので咲夜に近づいて名を呼ぶ。咲夜は阿吽の呼吸で、返事をしながら時間を止めた。

 

「咲夜」

 

「はいはい」

 

咲夜に時間を止めて貰い、宴会をしてる皆が最高潮で止まっている。時間は止まり、ルーミアがキクリと料理を食べてる所が視界に入って一瞬だが、ルーミアの体全体にノイズみたいなのが出た。何だあれ、ルーミアの正体はまだ分かっていないが今は咲夜に頼んで時間を止めている。そこにルーミアの体全体にノイズみたいなのが出た。もしや時間に関係してるのか。咲夜は今のルーミアを見て訝しんでいたがまあ今はいいやと俺は思い、これなら大丈夫だと俺は項垂れた。今なら落ち込んでも咲夜と輝夜に見られるだけだ。俺はあの藍を怒らせるようなことをした大馬鹿者だったのだろうか。どうすれば許してもらえるだろう。半端じゃないぜこのショックは、俺の言う事なら何でも従う藍に、大声で触らないでと怒鳴られて言われたのだ。ショックに決まってるじゃないか。見方を変えたら女としての人生を歩んでいるとも取れるが、まさかこんな事になるとは。ただ俺は女としての人生を掴んで欲しかっただけなのに。輝夜が近づいて来て項垂れてる俺の頭を撫でる、この子は天使かな? 輝夜に抱き着いて告白した。

 

「輝夜、俺と結婚しよう!」

 

「結婚しようってお兄様は女性になら誰にでも言ってますよね、嬉しいですけど今言う事じゃありませんよお兄様。それと少し抱きしめる力が強くて苦しいです」

 

誰にもは言ってないぞ、好きな女だけにしか言ってない。輝夜に抱き着く力を抑えていたつもりだが、まだ強かったようだ。輝夜に謝るが抱きつくのをやめない。俺は最初失意体前屈だったが、この状態で輝夜に抱き着いたので俺の顔は輝夜のお腹辺りにある。しかし俺の妹は天使だな。俺はシスコンじゃないが輝夜を誰が見てもそう言うだろう。間違いない。俺と輝夜の様子を見ていた咲夜が鼻で笑う。

 

「誰とは言いませんがシスコンにブラコンで似た物夫婦ですね」

 

「私はブラコンじゃないわよ咲夜。お兄様が甘えるんだから仕方がないじゃない!」

 

「反応しましたね輝夜様。自覚はあるんですね」

 

俺は輝夜に抱き着いて言ってるから輝夜の顔が見えない。ただ今の咲夜の自覚云々という台詞を言った時に輝夜の体が止まった。咲夜に何を言われたか輝夜は理解し俺の頭を輝夜の両手を使いながら上から押して俺から輝夜は離れようとしたが、俺が逃がさない様に輝夜の腰に両手を回して抱き着いてるので逃げられない。咲夜は溜息を出して、輝夜を俺から離そうとする為に汚れ役をするようだ。俺は驚いて輝夜を離したら、輝夜は逃げ神社に入って行った。輝夜を離したから今俺は両手両膝を床に付けている状態だ。今は時間が止まっていて動けるのは俺と咲夜しかいない。俺の前に咲夜が来た。

 

「仕方ない。おいでダーリン、私の体に抱き着かせてあげる」

 

「聞き間違いかと思ったらマジか」

 

前にいる咲夜が両膝を床に付け、正座をしてから両手を広げて待つ。顔を動かして極端に短い咲夜の白と黒を基調としたメイド服のスカートを見る、だが目を凝らしても下着が見えない。何故だ、あんなに咲夜のスカートが短い上に正座状態なのに。まさか下着が見えない様に空間を操っているとでもいうのか。俺は正座をしてる咲夜の太ももまで顔を乗せて、スカートの中を見ようとしたが俺の頭を咲夜の両手で押さえられて見られない。悔しいので咲夜の左手で胸を揉もうとしたら見えないのでお腹に手が当たってお腹を撫でてしまった。だが、お腹を撫でられて咲夜がくすぐったそうな声を出した気がする。お腹が弱いのか。次にお腹から左手を上げて胸を揉んだら俺の頭を押さえていた右手で俺の頬を抓られた。未だに揉んでいるがメイド服が邪魔して胸の感触が固い。服の中に手を突っ込んで揉もうとしたが、咲夜のメイド服は前掛けがあり、背に大きなリボンが邪魔で手を服の中に入れられず滑り込ませられない。クソ! 下着は無理でも生の胸を揉みたかったのに! 今も頬を咲夜に抓られてるが胸を揉むのをやめてはいない。メイド服の上からなので断言はできないが、咲夜の胸は形が整っていて美乳の様だ。美乳と言っても貧乳ではない、揉めるほど胸あるし。

 

「お腹はいいけど何どさくさに紛れて胸を揉んでるのよ」

 

「お腹はいいのか・・・・いや女性の胸には男の傷心を癒す魔法の部位であって傷心を癒す為揉んだんだやましい気持ちは無いと断言はできない。だが」

 

「殺してもいいわよね」

 

永遠があるから俺を殺す事は不可能。早口で俺が言い訳してるとナイフをどこから取り出したのか俺の首元に当てるが、咲夜って俺の妻なんだから揉んでも別いいんじゃ・・・・・あっ!胸じゃなくて尻を揉んでほしいんだな! 左手は咲夜の胸にあり、右手は咲夜の膝に当てて置いていたので少しずつ膝から太ももに動かし、スカートの中に右手を入れようとするが右手の咲夜の左手で掴まれて終わった。ガード固すぎだろ。一体誰が咲夜をこんなお堅い女に。俺達は夫婦なんだ、恋人じゃ無い訳でもないのに。

 

「何してるの」

 

「いやー 咲夜の大きなお尻を揉んでこねくり回そうと」

 

咲夜に胸ぐらを掴まれて睨まれた。どうやらお尻が大きいのを気にしている様だ、いいじゃん大きくて。大きなお尻をこねくり回したいです、咲夜ってスタイルはいいんだから大きな尻が後ろから見た時ちょっと目立つ。それに加えてスカートの丈が短いってのもあるだろうけど。スカートだから分かりにくいが、そう言えば、永琳の胸や尻は全く垂れず形は整っている。あれから数億経ってるのに、年を取らないってなんか怖いな。

 

「顔が近いな。これじゃあ少し動くだけでキスできるぞ」

 

俺が冗談で言ったら咲夜が俺も正座をしてと言われたので正座をしたら。俺の顔を両手で掴んで両目を瞑り俺の唇に咲夜の唇が思いっきり押し当て口づけしてきた。舌は入れて無いので絡めてはいないが。こいつ・・・出来る・・・・! 時が止まった気がした、いや時間止まってるけど。やられっぱなしは癪なので、俺の舌を勢いよく咲夜の唇に当てて、無理矢理 咲夜の口内に入れ咲夜の舌を絡めてみたが咲夜はそれを拒否せず受け入れた。周りの時間は止まっていて、輝夜は神社に入って行ってるし、俺と咲夜しかいないから延々と俺の舌と咲夜の舌が絡まっているだけだった。こいつ、何だこいつ!? 俺の妻になるの嫌がってた女が何でこんな熱い口付けしてるんだおかしいだろ!! 俺は動こうにも咲夜の両手で頭を押さえられて動けない。ただ咲夜は顔を赤くし、咲夜は自分の口内にある唾液を舌に纏わり付かせて取り、俺の舌と絡ませる時に唾液を俺の舌に渡しての繰り返しで俺は咲夜の唾液を強引に飲ませられる。さっきから咲夜は俺の舌と咲夜の舌を絡める事ばかりに集中している。後は、鼻で呼吸したらいいのに口で呼吸しようとするからたまに咲夜は唾液の糸を引きながら唇を離して、何回か荒く息をして息を整えたらまた口付けを再開する。このままではまずいと思い、さっきは失敗したがもう一度チャレンジしようと考え、咲夜は正座をしていて今は俺の顔を咲夜の目の前に両手で固定されているし、俺の右手が咲夜の左足の膝にあったのでまずは膝を軽く撫でてすーっと次に太ももから付け根まですりすりと撫で続ける。もういいかと思い膝から太ももの付け根に動かし、そしてそのままスカートの中に右手を突っ込む。そしてそのまま咲夜の尻まで動かして揉みしだき、右手で咲夜の尻を時計回りにこねくり回す。咲夜は正座をしているから尻をこねくり回す時に咲夜の足の裏に当たりやりにくい。が、さっきまでの嫌悪感を咲夜は出してこないしそのまま受け入れている。こいつもしかして、お堅そうに見えて、いざ本番になると我を忘れて夢中になるタイプか。咲夜は正気に戻ったのか俺の顔を両手で掴む力が弱まるがまだ掴んだままで見詰め合いながら俺の唇から咲夜の唇をねっとり離す。やりすぎたせいで舌は疲れるし、唇を離す時に唾液が混ざり合ったせいで混ざり合った唾液の糸が口から引きまくってるし、俺の口回り咲夜の唾液でべっとべと。俺の口回りがべとべとなので自分の舌で口回りにある俺と咲夜の混ざった唾液を舐め取って呑み込む。咲夜も口回りが俺の唾液と咲夜の唾液が混ざったのが口回りにべとべとで付いていたが、咲夜はそっぽ向いて片手で口を隠した。どうやら舐め取る所を見られたくない様だ。咲夜は片手で口を隠しているが、ゴクリと大きな音で呑み込む音がした。舐め取るのが終わり、俺と咲夜の混ざった唾液を呑み込んだらしい。咲夜、お前気付いて無いようだが夢中でキスしてきたぞ。こいつキス魔だな、間違いない。

 

「気が済んだかしらダーリン」

 

「はい・・・・・もう十分です・・・何か吸い取られた気分・・・・・」

 

「そう」

 

このキス魔。クールぶってるが中身は情熱的な女じゃないか。まだ咲夜は俺の頭から両手を離さないのでお互い見詰め合ってる状態。

 

「あのー、お聞きしたいんですが咲夜様は口付けなどの経験はおありでしょうか」

 

「無いわ。でも、キスをしながら唾液交換って気持ちいい物なのね。もう少し、しましょうか貴方」

 

無いからこんなに夢中なのか。一度味を占めたらそれに夢中になるのはよくいるが。

 

「わ、悪く無い提案なんですが俺としましてもいい加減宴会を始めるべきだと思うんですよ。恐縮ですが、咲夜様には時間を動かして頂きたいんです・・・・」

 

「嫌。まだするわ。時間は止まっているんだから私達は延々と出来るわよダーリン」

 

「え、待て!」

 

咲夜はまた唇を俺に押し当てて、今度は咲夜から無理矢理舌を入れて来た。またそのまま舌と舌を絡める時間が流れる、やられっぱなしだったので両手を咲夜の両肩に置いてそのまま無理矢理押し倒し、口付けしてるから咲夜の舌を絡めながら右手で胸を揉んで、左手で尻を揉む。だが咲夜はキスに夢中で抵抗しない。無理矢理押し倒したのに咲夜は更に息も荒くなり、キスも激しく、舌を絡める速さも増した。無理矢理押し倒されて興奮してるようだ。咲夜の両手は俺の首に両手を回してるがこの馬鹿抵抗しろよな。レイプするにしても嫌がられなきゃ興奮しないだろ! 押し倒した状態で左手で咲夜の右尻を揉んでたら左手の小指が温かく、ぬめっとした液体の温い何かに小指が触れた。こいつ、発情してるからか濡れてるんだが。ベットの上では人が変わるってやつか、もういいだろうと俺は押し倒すのをやめて立ち上がり服の袖で口回りを拭きながら咲夜から離れ立ち上がる。ついでに咲夜の口回りを服の袖で拭いて置く。立ち上がる際、咲夜は両手を俺の首に回していたので立ち上がる時に離れない様に力を込める。まだしたい様子だがどこまで欲情してるんだ。立ち上がったのはいいが咲夜は両手を俺の首に回しているので、爪先立ちして立っている。

 

「もう終わりだし離れてくれ」

 

「嫌」

 

真顔で嫌だと来た。頼み事する感じだと聞かないみたいなので、命令形なら従うかと思い命令口調で言う事にした。

 

「離れろ」

 

「はい」

 

そう言うと間を置かずに返事して咲夜は俺の首に回していた両手を離し、数歩離れた。咲夜、お前はもっと気高い女だと思ってたがお前もただの女なんだな。何だかウメの花言葉を思い出す。艶やかさ、高潔、忍耐、そして忠実。白の花のウメは気品。って 当てはまるの艶やかさと忠実だけじゃん。咲夜は人前だと素じゃないが、二人っきりの時は素になって豹変するんだなーと思いました、まる。まあ周りには宴会途中で動かない神や妖怪や人がいるけど。

 

「咲夜、三回まわってワンと鳴いて見せろ」

 

「嫌よ」

 

「ふむ。ならその両足に吐いてるソックスを脱げ。俺は素足が好きなんだよ」

 

「分かりました。ダーリン」

 

最初の問いを嫌がったので良かった。安堵したよ。と思ったらソックスを脱げと言うと片足を立ててソックスを脱ぎ始めた。そこは変態とか寒いから嫌って言えよ。今の咲夜は元の咲夜の態度に戻ってると思ったらそんな事は無かった。あの時の、燕の小安貝が気のせいならいいが。まあ、いいや。咲夜は両足にあった脱いだソックスを右手に持ち俺に渡して来た。ソックスを咲夜がずっと履いてた様なので人肌に温まってそう。

 

「はい。随分マニアックなのね」

 

「なぜ俺にソックスを渡そうとする」

 

「何故って、欲しいから脱げって言ったんじゃ」

 

「違う!」

 

俺はただ咲夜の素足を見たかっただけだ。他意無い。背に神社があるが物音がしたので振り返ったら、輝夜が玄関から顔を半分出して見ていた。今までの出来事を見ていた様だ、少し輝夜にはディープすぎたのか少し赤らめて狼狽している。輝夜は半分だけ顔を出しながら、その玄関から咲夜に左手の人差指を向けて大声を出す。

 

「咲夜! あ、貴方 お兄様の事が好きじゃなかったんじゃ!」

 

「私は嫌いなどと一言も言っておりませんよ」

 

「好きとも言われてないが」

 

 

死ねとは言われたような気がするが。輝夜は玄関から早歩きで咲夜の所まで来て、咲夜を神社に連れ込んだ。何か歩いてる途中に喋ってたけど。しかし、そろそろ小町に会いに行くか。何だかあれからスゲー時間が経った気がする、小町に初めて会った時からと、今のキス魔の二重な意味で。キス魔の方は時間が止められてるので経ってないが。その前に宴会を再開しようと咲夜に神社の中に入られる前に時間停止を解除してもらった。時間が動き出したのでまた宴会の騒ぎが響く。一時的に永遠の存在になってる筈なのに、キス魔と延々と舌を絡めながらキスしていた事と時間が止める前は酒を飲んでたからか何だか熱くなってきたし、レティに抱き着いて涼もうか。咲夜は輝夜と共に神社の中に行ってもういない。名残惜しそうだったが。レティに抱き着くと今度はレティが暑がるからレティが涼めるように水風呂の用意をしておこう。レティを探していると、レティが鳥居の近くにある桜の下、鳥居から神社に続く桜の下で皆が騒いでいる宴会を見つめていた。どうやらレティは座って桜にもたれ掛り離れた所から見て楽しんでる。騒がしいのは嫌いじゃないが、騒がしい所に混ざるのは苦手なようだ。

 

「あ、貴方様。どうかされましたか」

 

「うむ。体が火照ってな、レティ。膝枕して体を冷やしてくれ」

 

「膝枕も魅力的な提案です。ですが体が火照ってるなら閨で私と涼みますか」

 

「尚更熱くなりそうだな。大量の汗もかくほど。悪く無いが」

 

「私は熱いのは嫌いです。ですけど貴方様の熱を熱く感じられるほどに傍にいて下さるなら熱くても構いません。貴方様の温もりを感じられて、貴方様との子が出来るなら」

 

俺は立ちながら、座って桜にもたれ掛ってるレティに近づき頭を撫でて会話は終わる。レティは頭を撫でられながら俺を見上げて両目を閉じ、微笑して話を変える事にしたようだ。左手で太ももをぽんぽん叩いた。

 

「私の膝でよろしければどうぞ」

 

レティは足を崩していて桜にもたれ掛り座っていたが、正座をして膝枕がしやすいようにしてくれた。俺は寝っ転がって頭をレティの太ももに乗せるが頭から伝わる太ももの感触と雪女の一種だからかレティの体は冷気が出ていてひんやりするから涼しくて気持ちがいい。何で冷たさとか感じるのか、永遠という概念も曖昧だな。そして思い出す。あの時の俺は永琳しかいなかった。が、今はここまで増えた。宴会の中には人間、月人、妖怪の種族で言えば有名なので鬼に、天狗。河童。妖獣は鼠に狼に虎。妖獣ではないが狐に兎もいる。ここまで来ている。ただこの幸せはいつまで続くだろうか、出来るだけ長く続いて欲しい物だ。ちなみに河童はまだ人間嫌いなので妖怪たちと酒を飲んでる。酒を飲んでると言っても飲んでるのは鬼ころしじゃない。河童のあの問題は俺がどうこうする訳にはいかない。今はまだ子供だが白蓮、お前に任せる。無責任かもしれん、しかし俺は人間じゃなく神で河童達との盟約相手だから駄目だ。これは人間からじゃなきゃ駄目なんだ。レティは酒を飲んで騒いでいる皆を見て呟いた。

 

「私は貴方様の妻になれて良かったと。あの時 貴方様の妻になる事を決めた事は間違ってなかったと。この光景を見てそう思います」

 

「河童はあの様子だが気にならんのか」

 

「私は貴方様がそのまま何もしないとは考えておりません。いつかその日が来るでしょう。それにすべての河童がそうではありません、みとり様もいます」

 

そうか、みとりは河童と人間の子だった。どうやら人間、民とは仲良く喋っている様だな。良かった。レティが俺の妻になったのは俺が妖怪を妻に娶る話を他国で噂でだが聞いたからだった筈だ。なら今の光景はレティが望んだものが実現してると言う事だろうか。俺は自分勝手に色んな者を引き込んだ。強引な時もあったが、ここまで増えた。数億年に比べると諏訪の国が出来てからそこまで時間は経ってない。だが今までで一番長い時を、悠久の時間を過ごしている気がする。俺はレティの言葉に何て言うべきか分からずレティの名を呼びながら右手をレティの顎に当て擦った。レティの顎に当てていた俺の右手をレティは右手で取り、そのまま俺が何が言いたいのか分かったのかレティの膝枕に頭を乗せてる俺を見る。今は春でもう冬じゃない。そしてレティは雪女の一種だ。

 

「貴方様の傍以外、どこにも行きません。それは最初 出会った時に申しましたよ、貴方様」

 

それで会話は終わり、俺とレティは恋人繋ぎをしながら膝枕をしてもらいじっと宴会が終わるまでレティと眺めていた。

 

その後は宴会も終わり、後片付けを皆はしている。どうでもいいが二通手紙が届いた、俺はその二通を右手に持っている。差出人はどちらも天照からだった。一通は俺宛てで神在月でもなく、てかもう神在月は過ぎてるのに西の神を集め、本来なら大和の神や西の神も出雲国にある出雲大社に 神集ふ だとさ、今回で第1010回目らしいが。だが今、出雲大社に大国主は封印されている。まあ、出雲の祖神である須佐之男命がいるから、大国主がいなくても須佐之男命を使えばいい話なんだが。だから大和に神を集めて神仏習合の件について神議るとの事。 神議る とは多くの神が集まって相談する事。諏訪の国の東にある大陸の神も来る様だ。面倒なのでいつも通り俺は行かない。今はある目的の為に神社の裏にあるウメを眺めている、俺は後ろに迫って来ている物をあえて、回は避けずに受ける事にした。月人が月に行き、永琳と数億年過ごし、地上に残った時に出来た最初の女だ。氷はいつか溶ける。しかしその溶ける様子を眺めているのは飽いた、だから無理矢理溶かす事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刺した、本当に刺してしまった。こんなにもあっけない終わり方だとは。いつもは避けられて終わりだと言うに、今回は避けずにこいつは今も地面に突っ伏している。私は何故肩肘を張っていたのだろうか。今まで殺してやりたいと思った奴が死んだら、今度はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。今まで殺す事ばかり考えてその後はどうするか考えてなかった。もう一度死体を軽く見て、何かおかしいと思ったが死体に背を向け、神社の裏から参道の方に行こうかと歩き出した。萃香、何故出てこない。私はお前の夫を殺したのだぞ。何故守らなかった、何故私を殺そうとしない。

 

 

 

 

 

 

 

「俺を刺した感想はどうだ」

 

私の背からあいつの声が聞こえて来た。安堵した、この私がだ。あいつをいつもいつも殺してやりたいと思っていたこの私が安堵した。生きていた、死んでいなかった。良かった、本当に良かった。今の私を悟らせない為に背を向けたまま私はいつも通り高飛車な態度と口調で喋る。

 

「不愉快だ、本当に、不愉快」

 

私は右手にある脇差を眺めてる。刃先に血は付いていない、理由は不明だが、あいつに刺さっていないようだ。血が付かないほどの傷にはなっていないだけでもしかしたら刺さったのかもしれないが、今はどうでもいいか。私は振り返りこの馬鹿と向き合う。思えば、初めてだな。お前の女になって私からお前に向き合うのは。

 

「なあ、神奈子。俺達夫婦なんだ、愛には色んな形があるとは言えいい加減夫婦らしい事をしないか。いつまでも俺を殺す為に妻になった関係もいいかもしれないが、その関係はもう終わらせよう。神奈子」

 

「ふん。そうだな。それも悪く無いのかもしれない。もう私はやるべき事を終えた、お前を殺す為に刺して殺せないなら私がする事はもう無い」

 

「俺は神奈子が好きだし愛してる、それはあの時、妻にした時からこの気持ちは変わっていない、今回、神奈子が俺をその脇差で刺してもこの気持ちは変わっていない。神奈子はどうだ」

 

そんな事聞かれても分かってる筈だぞこの馬鹿。

 

「私は、私はお前が嫌いだ。だが、しょうがないから情けないお前の事を。1人の女としてお前の事を大嫌いから少しだけ嫌いになってやってもいい」

 

「全く、こんな時でも神奈子はそうなのか。前よりマシだからいいんだが複雑だな」

 

あいつは両手を組んで両目を瞑り、ため息を出している。もう私にはこの馬鹿に対する殺意の感情は持ち合わせていない。私は、あいつを刺してから気付いた、気付いてしまった。やっと殺せたと思う筈なのに、私に歓喜の感情は無く動揺や不安しかなかった。そして殺意の奥に眠る私の感情が、私はかつて、それを認めたくなかった。認めたくないから私は殺意を選んだ。私はいつからこの馬鹿に惹かれていたのだろう、私達が最初に出会った時、私はこの馬鹿に口説かれた。もしやあれか、もしそうだとしたら私はそんな言葉で落ちるほどの単純で軽くて安い女だったのか。それにあの口説きは嘘でないだろうが間違いなく私をからかう為の言葉なのに。だが悪く無い。それも悪く無い。天照様、貴方は私に女として幸せになりなさいと仰いました。その言葉を果たせそうです。まさか、天照様。天照様はあいつの道具とは言え、こうなる事が分かっていて私の様ながさつな女を、諏訪の国に行きあいつの妻になる事を許したのですか。

 

「今までの出来事、これから始まる人生。そして私の夫よ、お前はあの時、最初はお前から私に歩み寄ってくれたな。今度は私がお前、いや。そうじゃない」

 

私はいつもこの馬鹿を殺す時 以外は避けていた。この感情を認めたくなかったから、だけど殺意が無くなったら残っているのは殺意の奥に眠っていた感情しかない。もう奥にあった感情を認めちゃったんだ私は。それを最初に認めてしまったら私は、どうなっていたのかな。この馬鹿に甘えていたのかな。夫婦らしい事をしてたのかな、お互いの手を繋いで、公共の場所で衆目を意識せず甘えていたのかな。考えてみたがありえない光景だ。しかしそんな道もあったのかな、この私にも。疲れた、疲れちゃったよ私は。もう素直になってもいいよね、甘えてもいいんだよね。私達は夫婦なんだから別におかしくないよね。

 

「今度は私が 蓬莱山 弘天、弘天に歩み寄る事にする。ちゃんと見ていろ、弘天」

 

高圧的な喋り方はもうやめよう、女の様に喋ろう。弘天は開いた口が塞がらないみたい、ここまで驚く所を見るのは初めて。余程の事だったんだろうと思う。私もそう思うから。でもすぐには口調が直せなかったけど。だから時間をかけて変えて行こう。また1から始めるんだから。でもあの時から始まった私達の今までの関係を白紙にはしない、大切な思い出だ。ただあの関係を踏まえた上でもう一度始めるんだ。今度はお互いが向き合って行く時。いつも弘天しか私に向き合ってなくて私は向き合わずにそっぽ向くか、どこかに逃げるかだったから。

 

「今回は流石に驚いたぞ。妻になってから初めて、やっと名を呼んでくれたな。長かった、長すぎたこの日が」

 

今まで私は弘天の名を呼んだことが無い。ごめん弘天。待たせたよね、いつも殺そうとした私を笑って気にしないでいてくれてた。本当なら私は殺されても文句は言えないのに気にせずいつも通り接してくれてた。

 

乾を創造するの乾は天の意味もある。天は言わずもがもな、創は物事を始める、造はくっつく、または手間をかけて物事を仕上げる意味もある。だからもう全て仕上げよう。

 

「私達は夫婦になり、私が弘天の妻に。弘天を殺す関係が始まった。だけどもう終わり」

 

「ああ。もういいだろう。いい加減俺の傍にいろ、いつも離れていくからな」

 

「もう離れないから安心して欲しい。だけどまた離れそうならちゃんと捕まえて、無理矢理でもいい」

 

私はあの時、空き地にいた弘天が差し出した右手を掴まなかった、掴めなかった。でも今度こそ差し出された手を掴んで見せる、あの時の始まりを少しだけ変えるんだ。永琳、あの時の言葉が本当に来る日が来るとは思ってなかったよ。天地がひっくり返ってもそんな事にはならないってあの時言ったけどひっくり返った。脇差で刺したのに弘天は死ななかった。ただあり得ないことが起こったんだ。何もかも。

 

「弘天、私達が夫婦になると決めた大和のあの空き地での出来事をもう一度して欲しい。頼む」

 

「空き地って、ああ、あれか。構わんがちょっと待てよ、確か」

 

弘天は思い出したのかあの空き地の時の様に右手を差し出した。後は私だ。

 

「俺の傍にいたら俺を殺す機会が出来るだろう、俺の傍にいる事ができる機会があるが八坂はどうする」

 

始まった、あれから時は流れている。だけどまた同じ事を繰り返す。やり直すんだ、私達の関係を。もう私は弘天を殺す気は無い。ただ一人の女になるだけ。

 

「私は弘天を殺す気は無いし、私は悪魔に魂を売る気は無い。だけど、弘天の傍にいるのはいいかもしれない。その機会を教えてもらおうか」

 

私の言葉に弘天は言葉を失ったけど、すぐに理解したみたい、何故今あの時の出来事を再現しているのかを。弘天は大声で笑って涙目になってる。落ち着いたらお腹を押さえて続きを始めた。まだ頬が動いていて笑うのを堪えているみたいだけど。

 

「そうか、俺を殺す気も無ければ、悪魔に魂を売る気は無いか。ならば」

 

「俺は 神奈子 を妃神として欲しい。どうか、諏訪の国に来てずっと俺の傍にいてくれないだろうか。そして俺を支えて欲しい」

 

弘天は右手を差し出した。私はあの時この右手を掴まなかった。手に取れなかった。だけど今は違う。今度は私が弘天に歩み寄る番、弘天に近づいて差し出していた右手を取り、私の右手と弘天の右手を絡め、弘天の右手を引っ張ったけど急に引っ張ったから驚いてる。そのまま弘天の体に両手を回して抱きしめる。でも女の私じゃ支えきれず少し足に力が足らなくて後ろに倒れかけたけど、弘天が何とか私を抱きしめながら踏ん張ってくれた。

 

「私には至らない点が多々あるかと思います。こんな不器用な私ですが、貴方が望んでくれるのなら私は喜んで妃神になりましょう」

 

時間がかかったけどやっと、言葉にできた。

 

「あ、大和と同盟関係を終わらせてもう一度大和と戦争始めるから手を貸せよ神奈子。まあ今度の相手は人間や仏教とかいう概念だが」

 

この馬鹿、いい雰囲気だったのに台無しよ。嘘を言う性格じゃないし本気なんだと思うけど、また大和と争う事になるなんて。弘天は私の腰に両手を回していたけど腰に回していた右手を腰から離して、右手にある文通を私に見せた。

 

「何、これは」

 

「天照から神奈子にだってよ」

 

天照様の名を聞いたと同時に弘天が持っていた手紙を奪い取る。私も行かなければいけない様ですけど、用件だけ言わせてもらうなら弘天を無理矢理にでも連行しろとの事、諏訪子もこの手紙に必要と書かれています。永琳は弘天が行くと言えば間違いなくついて来ますし、絶対に弘天を連れて行かなければいけないみたいですね。後、輝夜と咲夜も連れて来て下さいとの事。この人選、天照様は一体何をお考えなのか、多すぎな気がします。

 

「これを読んだりはしてないですよね」

 

「ああ。読んでないぞ」

 

私は天照様から届いた手紙を懐に入れ、弘天の右手を掴んで無理矢理 神社に引っ張る。急な事で弘天は面食らったが何故引っ張るのか問われたので私は。

 

「決まっています。向かう準備をするのです、永琳も呼んでおかねばなりません」

 

「は? 向かうって神奈子、お前まさか」

 

「そうです」

 

弘天は察したのか逃げようとするが、私の渾身の力で引っ張っているので逃げられない。これでも私はいつも影で鍛えていたんだ。萃香や勇儀に華扇とも手合せしたし、幽香ともしていた。全ては弘天を殺す為だったがけどもう意味は無いなと考えていた。でも意外な所で役に立ちました。私を殴って無理矢理 離せば早い話なのに弘天はただ右腕を私の右手から離そうともがいて動かすだけです。

 

「何て力だ神奈子。いつの間にこんな力を。あの太陽神め余計な事を書きやがって、離せ神奈子!」

 

「駄目」

 

「えーと、あれだ! 神奈子、俺は神奈子が嫌いだ!」

 

甘い、そんな事を言って私を怒らせて離させる気だろうけど今の私には無駄。もう昔の私じゃないし、それに今回の事は天照様の指示なんだから。

 

「そうですか、私は好きで愛してますからずっと尽くしますよ」

 

私が即答で返す。背にいる弘天の顔は見えないけど絶句してる筈。

 

「すいません、俺は嘘をつきました。俺は神奈子が好きだ、愛してる。だから離してくれ、いや連れて行くのを諦めてくれ。お願いします」

 

弘天は歩きながらですけど珍しく頭を下げて謝りましたけど、余程 嫌なんですね。

 

「そうですか、私も愛してます。でも駄目、さっさと行きますよ」

 

「嘘だろ、神奈子がこんな素直だなんて。俺の右腕を掴みながら神社に入っていく、セミロングのポニーテールで俺好みな、綺麗な女性は一体誰なんだ・・・・」

 

「八坂 神奈子です」

 

「いきなり変わりすぎだろ口調も変わってるし何があった!? 誰か助けてくれー! 相手が神とは言え、何で同盟を解消する戦争相手共と仲良く神議るをせにゃならんのだー!」

 

懐かしい、この状況。あの時と逆です。大和に向かうから祭神が諏訪の国にいなくなる、だから藍に留守神を任せておかなくてはなりません。先程から気になってたけど弘天はお面を被ってます。これ、こころですよね。なんで頭に被ってるのですか弘天。

 

「クソ。か、かくなる上は。大和に向かわせるのは・・・・・そうだ龍神にしよう。龍神を呼び出し全部任せて」

 

「何、馬鹿な事を言ってるんですか」

 

「いや、諏訪大明神は龍神という事にしておけば、あまりの巨体に神共が 諏訪大明神に限っては、大和にわざわざ出向かずとも良い とか言ってくれそうじゃないか!」

 

「馬鹿な事を言ってないで行きますよ。弘天」

 

「何て事だ。神奈子、俺の邪魔をするなら無理矢理 押し倒しておぼこを貰うぞ」

 

「いいですよ」

 

弘天はもう何も言わなくなった。永琳は弘天に従順、弘天が白と言えば白、黒と言えば黒にする女。なら私はその逆。永琳が肯定者なら私は否定者です、この私が無理矢理弘天を引っ張る。永琳に出来ない事は私がする事にしましょう。そしてさっきの問いですけど。

 

「嘘に決まってるだろ弘天」

 

「おい、どこからどこまでが嘘だ神奈子よ。そうか分かった、やっぱり行かなくていいんだな。流石俺の妃神」

 

「それは嘘じゃないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会も終わり、真夜中にちょっとお腹が空いたから台所で何かくすねて食べようと思い部屋から出て台所に向かう為に廊下を歩く。祭神様とお師匠様に神奈子 諏訪子。祭神様の妹と咲夜は紫のスキマで大和に向かって諏訪の国にいない。台所に向かう途中に藍とすれ違った。いつもと藍の様子が違う。早歩きだし、私に気付かず表情に余裕が無かった。悪いと思っても気になって後を付けた。藍が台所まで来て、流しの所で嘔吐して咳をする。体調でも悪いのか、さっきの宴会では藍はお酒を飲んでいなかったから酔って吐いた訳じゃ無い筈。今の藍を見てるとどこかで聞いた症状だと思い藍に声をかける。決して、藍に何かあったら私の仕事が増えるとかそんな心配はしていない。

 

「藍。どうしたの、大丈夫」

 

私が藍に声をかけると私に気付いていなかったのか狐なのに鬼の形相で振り返る。台所の水は止まらず今も流れていて、水の流れる音だけが響く。怖かったけど、この嘔吐、症状に思い当たる事があるから藍に問う。

 

「あんた、まさかおめで」

 

「言うな!」

 

初めて藍の怒声を聞いて、私は戸惑いを隠せなかった。藍は大きな声を上げた事を謝るけど、初めて見たよこんな藍。8本の尻尾も逆立ってるし警戒心が半端ないね。もしかして私は殺されるのかな? 冗談だけど。

 

「すまん。でもてゐ、何も言うな」

 

「だけど」

 

「いいから。お願いだから何も、誰にも言わないで」

 

藍は台所の水を流し、水を口の中に含んで濯ぎ、水を口から流しに吐き出したらすれ違い様に私に口止めして辛そうに部屋に戻った。でも、藍。私はお師匠様からおまけとは言え医学を学んでいるんだ。その症状、お師匠様に聞いた妊婦特有の症状、まるでつわりじゃないか。今はもう春だけど、冬の季節に藍は何の為か知らないけど毎晩 祭神様の部屋に行ってたって聞いた。もしかして、その時に祭神様の子を孕んで。妊娠、してるの、藍。台所の周りを見渡して、今までの一部始終を見ていたもう一人の名を呼ぶ。

 

「聞いてたでしょ萃香」

 

「まあ、聞いてたと言うより一部始終見てたよ」

 

台所に霧が立ち込めて来て萃香は霧のまま話しかけてくる。やっぱり一部始終見てたね。萃香の能力は便利だけど、隠し事がこれじゃあ出来ないじゃないか。

 

「どうしようか萃香」

 

「どうもこうも素直に弘に話せばいいじゃない」

 

「そんな事したら私が藍に怒られるじゃないか! 口止めされるんだから言えないよ」

 

このまま見て見ぬ振りをしても、もし祭神様の子を孕んでいるならいつかお腹が大きくなっていく。そんな事したら妊娠してるのは一目瞭然だし、お腹が大きくなる前にお師匠様に気付かれると思う。諏訪の国全体を霧になって監視してる萃香なら何で藍が孕んでいるのか、まだ妊娠してるって決まってないけど萃香なら知ってるかなと思い聞いてみる。

 

「ねえねえ。萃香ってどこにでもいるんだよね、じゃあ祭神様と藍が何があったか知ってるんじゃ」

 

「知らないわよ私は」

 

萃香は霧のまま喰い気味に知らないと言ってきた。鬼は、嘘はつかない。だから本当に知らないのかと私は思ったけど、やっぱり何か知ってる気がしてならない。祭神様が酔った時に聞いたけど萃香達を引き込んだ時に、勇儀は鬼は嘘は付かないとか紫には手を出さないとかそんな約束を交わしたと聞いている。そしてその時、萃香の台詞は確か。何だっけ、まあいいや。萃香は知らないと否定してからそのまま台所漁りを続ける。私は嘘をついた事がかつてあった、その嘘で祭神様に連れて来られた訳だけど。

 

「私は嘘は言えないからどうする事も出来ないけど、聞かれない限りは何も話さないでおくから。じゃあね、てゐ」

 

じゃあねって、萃香は諏訪の国ならどこにでもいるじゃないか、今も台所に霧が立ち込めてるし。台所に何か食べ物が無いかと思い漁りながら藍の事を考える。藍、隠すのはいいけどいつまでも隠し通す事は出来ない、いつか絶対悟られる。私の能力じゃ役に立たないか、私と人間限定だし。祭神様が聞いたらどんな反応をするか、私が祭神様を落とし穴に落とした時の表情より面白いのか、つまらないのか気になるね。

 

藍のあの様子は動揺、してるんだよね。藍の性格から考えるに道具の自分が最初に祭神様の子を孕んでしまった。自分は永琳様や神奈子様を差し置いて不埒を働き主や永琳様の道具の価値が無いのではないかとか考えてそう。いや聞いた話じゃ紫と幽香は娘でも養女みたいなもので、諏訪子は祭神様とお師匠様の子なのは間違いないけどお師匠様が妊娠してお腹を痛めて産んだ子じゃない。だから藍が初めて妊娠した妻になる訳。藍の頭はいいし頭の回転も速い、でもはっきり言って祭神様に似て馬鹿だね。そんなのだれも気にしないってのにさ、驚きはするだろうけど。それに祭神様は妻を増やすけど側室が一人もいない。皆、祭神様の正妻だ。だからあんたは道具の前に正妻の一人で順番なんか気にしなくていいんだからね。無茶だけはしないでよ藍。あんたに倒れられたら私の仕事が増える、だから早く、全部祭神様に話してしばらく休めばいい。今まで休まず働き詰めだったんだ。誰にも悟らせず色んな事を溜めこむ性格なんだからいい加減楽になったら? 溜めこんでるのを自覚してないだろうけどね。誰かに似て、自分の事より他人の為に動くんだから。道具って言ってるけど、結局は道具の前に一人の女なんだ。甘えたいなら祭神様に甘えればいい、辛かったら祭神様に辛いって言っていいんだ。私はいつも祭神様に愚痴言ってるし祭神様はいつも黙って聞いてくれてる、たまに寝てる時もあるけど。

 

何の為に祭神様が私や、ナズーリン、影狼、星を神使にしたと思ってるのさ にぶちん。妻を増やす為? いいや違うね。それなら藍の次である私が神使になった時にこの美少女。すれ違う男、10人中10人があまりの美貌に振り返る女神に愛された私を無理矢理でも妻にしていた。だけどしなかった。それはナズーリンや影狼や星もだ。女を侍らす為ではある。それ、少しは本音も入ってるだろうけど、神使を増やすのはそれが建前。本音は藍の為だ。そうじゃないからあんた以外の神使は妻にせず一度も手を出していないんじゃないか。けッ! 藍。誰かさんに好意をいつも向けられているし、自覚が無いんだろうけど傍から見てるとうざいくらい愛され過ぎ。私の様な健気で見目麗しく、夫の為に働き、夫を立てる妻の鑑で純情可憐な乙女であるこの私を妻にせず私の唇を人差指でなぞるか頬を撫でるか尻尾を引っ張るくらいしかしない。それ以外の他は一切手を出さないんだからそうに違いない。多分。いや絶対そうだ。とは言え、今だけの話だ。ただ今は藍の事で頭が一杯で妻にしようとする考えが無いだけだろうけど、藍の様に藍以外の神使にもいつかその日が来るかもね。私の体型が問題で妻にしない事は無い筈。確かに私の胸は慎ましやかで体の発育が良くない、でもまだ成長段階だし、体型を差し引いてでも大きくあり余るほどの素晴らしさと誰にでも愛される性格と愛らしい容姿がある。それに体型を言うなら萃香はどうなるのさって話だし。おや、藍の話してたのに何か途中から私の愚痴の話になってない?

 

「何をやっている」

 

「え」

 

私は考えながら台所を漁ってたけど、背中から聞き覚えがある声がした。て言うかさっき聞いた声だ。後ろにいる人物は私の頭を右手で鷲掴みにして力を込める。痛い痛い!可愛い私の頭に何かあったらどうするのさ!

 

「い、いやね藍。私は台所の掃除や整理整頓をしようと思って。邪魔な食べ物があれば慈悲深いこの私が片付けようと」

 

「掃除も整理整頓も常に私がしている」

 

「で、ですよねー」

 

「てゐ。台所にある大事な食料に手を付けようとしたな、これは言い逃れは出来ん。そして今の私は珍しく機嫌が悪い、てゐで憂さを晴らさせてもらうぞ」

 

「うさぎだけに?」

 

「いたたたたたたたた!! 痛いって藍! 兎は物理的にも精神的緊張にも弱いんだからもっと労ってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうさ、俺が天皇になって大和を統治したらいいんじゃないかな、または俺の息がかかった奴を天皇にするとか。もし俺が天皇になるなら名は応神天皇。弘文天皇とか弘天天皇。あ、天が二つあるし弘天は駄目だな。やはり応神天皇とか弘文天皇とかいいんじゃね、俺が天皇なったら摂関政治とかは絶対させないが。どうでもいいが今の天皇は皇極天皇の息子、天智天皇だ。

 

「何でこの俺が天岩戸以来とは言え八百万の神共とまた顔を合わせなければならんのだ神奈子」

 

「いいからきりきり歩け、仮にも諏訪の国の王がだらしない。もっと神としての威厳を持て。威風堂々としろ」

 

「俺に威厳なんて言葉は似合わないだろ神奈子。俺達夫婦なんだからもう少し夫には優しくだな」

 

「夫婦だからこそだ。飴は永琳、鞭は私。私はお前を蹴ってでも無理矢理連れて行く」

 

「永琳。助けてくれ、神奈子が鞭で俺を叩くんだよ」

 

「じゃあ私は飴ね、さあ、来て。私の豊満な胸で甘えていいのよ。癒してあげる」

 

「私がいるのにやめてよ母さん・・・・」

 

紫に頼んでスキマに入り、今は真夜中なのに大和に無理矢理連れて来られた。天照め余計な事をしてくれたな。大和に来たが真夜中だし皆 寝静まってる様で周りには誰もいない、雑談しながら神社に着くと、提灯を灯し持っていかにも偉い人って感じの服装をした男と中性的な計二人が神社の前で待ち構えていた。男の名は不比等、中性的な容姿の方は稗田阿礼だとさ。稗田阿礼は舎人ではないそうだ。不比等と稗田阿礼は先行して案内をする仕事らしいので俺達もついて行く。こんなぞろぞろと行く必要ないと思うんだがな。俺と永琳、神奈子はまだ分かる。あの時の関係者だし、諏訪子も、まあ俺がいない時は諏訪の国の女王だし分かる。だが今回輝夜や咲夜も連れて来てるし。輝夜にとってつまらん話しかしないから、連れて行くのは渋る。それに輝夜は両目を瞑り口元を袖で隠して見られ無い様にしたが欠伸をした、間違いない。天照が煩いかもしれんが俺にとって輝夜は大事だ。輝夜のお蔭で鬼女たちを仕えさせる事が出来たし、輝夜のお肌に何かあったらどうする気だ。神は老化しないが。

 

「すまない稗田阿礼。輝夜についてはどこかで寝かせてやってくれないか」

 

「分かりました。では私の屋敷で恐縮ですが、そこでお休みになられてもよろしいでしょうか。1人、私の屋敷で休んでいる子もおりますのでそこはご了承ください」

 

「ありがとう。無茶言って済まないな、じゃあ輝夜。早速」

 

「お兄様。私は眠くありません」

 

「無理をするな、咲夜。輝夜の付き添いを頼むぞ」

 

「ええ」

 

言われなくともと咲夜は輝夜と共に阿礼について行った。これで安心だ。何かあっても咲夜がいれば事たりる、時間を止めるとか凄すぎだろ。輝夜も輝夜で凄いが、永遠と須臾を操るんだし。もう一人いた不比等に案内してもらいあの神社の中に入るが、いつもと違う部屋で集まる様なので神社の中を案内する案内役がいる様だ。殆どの神が大和に集まる訳だから相当広い部屋じゃなきゃいかんな。とは言え、全部の神が来る訳じゃ無いし、神の中には神通力を用い、時間空間を飛び越えて、意識のみ集う神もいる。歩いて考えてたら先行する不比等が振り返るといきなり平身低頭をしながら話しかけた。

 

「不肖、藤原 不比等 私如きの様な者が、神と会話するなど恐れ多い事で僭越です。しかし何卒、私めの。発言の許可を頂けないでしょうか」

 

「いや固すぎだし。平身低頭とかやめろ、立ったままでもいいからもっと楽にして気にせず話してくれ」

 

「おお。何と慈悲深いお方。流石は諏訪の国の神、懐も大きいのですね。ところでなぜお面を」

 

「それは気にするな」

 

不比等は立ち上がると先行しながら歩きながら不比等と話すが、どうやら話の内容は諏訪子の様だ。さっきまでいた輝夜と咲夜にもだが、永琳と神奈子と諏訪子の事をお美しいとべた褒めし始めたが、娘と言えば。と急に不比等の娘の話になり話を聞いていると、俺と同じく娘がいるらしいが可愛くてしゃーなくいつも誰かに聞いてほしくて話すそうだ。永琳達が美しいとは本気で思ったようだがそれは娘の諏訪子から自分の娘の話に繋げる為だったらしい。まさかその話を神にまでぶっちゃけるとは将来大物だな。永琳は諏訪子を褒められて嬉しそうに、諏訪子は複雑そうな顔で。神奈子は親馬鹿な不比等の話を聞いて微笑してる。義父が龍に喰われて死んだようだが仲が悪く考え方が相容れなかったのでそれについてはどうでもいいらしい。俺もそんな事はどうでもいい。

藤原氏の始祖は天児屋命、月読命の子孫が藤原とも言われている、それが本当ならの話だが。そして稗田氏、猿女君の始祖は天岩戸の時に活躍した1人、胸、陰部を晒した露出狂。天宇受賣命が始祖だ。流石に大和には神の末裔が多い。大和に貢献していた有名な入鹿は死に、物部は滅んだらしいが。後、昔 神道派の中臣勝海とかも死んだな。

 

この不比等は青竜に喰われた中臣鎌足の実の子ではない、天智天皇の落胤だ。だからこの不比等は天皇の血縁者と言う事になる。とは言え落胤なら父親に認知されない事なので正式な血統の一族ではないが。しかし不比等が天皇の正当な血統を継承する者として利用は出来る。

 

「娘が褒められる所を聞くのはいいものね」

 

「母さん。私は恥ずかしいんだけど」

 

「あら、いいじゃない。褒められてるんだから喜んでおきなさい」

 

俺の左手側に永琳は右手に弓、背に矢。左手で諏訪子は手を繋いで喋りながら歩いている。さっきから俺の左手で永琳の尻を撫でているが二人っきりじゃないから無反応。右手側に神奈子がいるから俺の右手を神奈子の右肩に回してついでにそのまま神奈子の右胸を軽く揉みながら歩く。神奈子は流し目で俺を見るが何も言わなかった。えー そこは殺すぞとか言ってほしい。永琳にその事を言っても微笑して。そう、やっとね。とか意味深な発言をするし。仕方ないから神奈子の胸を揉むのはやめて永琳同様、神奈子の尻を撫でながら話の続きを話をする。が、急に永琳が右手を使って永琳の尻を撫でていた俺の左手を掴んで恋人繋ぎをした、甘えたくなったようだ。

 

「それでその娘の名は何て言うんだ」

 

「私めの娘の名を聞いて下さいますか神よ! 感謝感激雨あられでございます!!」

 

先行していた不比等は振り返り、親馬鹿丸出しのとびきりの笑顔で俺に近づいて俺の両肩に両手を置いて、俺を揺さぶって話し始める。永琳は手を繋いでいたが離して、そのまま俺を気にせず諏訪子と先に進んで行く。危機を感じたのか小走りで先を行く永琳を追って神奈子は逃げた。首や頭が振られているが永遠のお蔭で何ともない。やっぱりいいな、こういうの。神とか人間とか関係なしに話すってのはやはりいい。いい友達になれそうだな不比等よ。ちなみに娘の容姿も話したが髪色は黒髪だそうだ。永琳達は俺と不比等を置いて先に行った、場所分かるのか。この神社複雑な構造で迷路なんだよな、無駄にデカ過ぎなんだよこの神社。

 

「娘の名は 妹紅 です。弘天様、もう娘の妹紅が可愛くて、可愛すぎて神相手だろうが娘の話したくて自慢したくて仕方ないんですよ!」

 

「お、OKOK。分かったから、気持ちは痛いほど良く分かるから落ち着け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何で豊姫と依姫が大和にいるのかしら」

 

「色々ありまして。八意様、その子は弘さんと八意様のお子さん、諏訪子さんですね。初めまして、私の名は豊姫と言います。貴方のお父さんの愛人です」

 

「何馬鹿な事を言い出すのですかお姉様」

 

「いいじゃないの依姫。場を和ませる為よ」

 

「お姉様、気付いて無いならお教えしますが滑ってます」

 

輝夜と咲夜に弘さんは八意様達とはいないようですね。弘さんと八意様の娘、諏訪子さんは八意様の袖を引っ張り本当かどうか聞きましたけど八意様は、嘘であり本当よ。とややこしく諏訪子さんに伝えて、諏訪子さんは混乱して目をまわしています。そして、もう一人の方を見る。変わって無い、あの時から見た目だけは何も。ただ中身は変わったまま。

 

「でも、懐かしい顔を久しぶりに見ましたね」

 

「なぜ私を見る。私達は初対面の筈だ」

 

「気に障ったらすいません。身内に似た顔で懐かしくなったものですから、初めまして。私の名は 綿月 豊姫と言います、隣にいるのは私の妹、綿月 依姫です」

 

「初めまして、依姫です。よろしくお願いします」

 

私達は初めましてじゃない、貴方は忘れている。とても大事な事を。太陽神に今まで任せていましたけどまだ、戻ってないのですね。私達、都市があった時は私と依姫で二姉妹でしたけど月では私と依姫で二姉妹ではなく、三姉妹。そして貴方はその三姉妹の末っ子、私と依姫の可愛い可愛い妹、その子の名は

 

「ご丁寧に痛み入る、私の名は神奈子だ こちらこそよろしく」




最初に言って置くなら私は鳳凰の事を忘れてません。そして最初から神奈子はこうする気でした、その為に最初 天照を無駄に絡めてましたけど、まあ、この神奈子の話は全てが私のオリジナルではありませんが。

永琳は赤と青。豊姫は服装が白と青、依姫は赤と白。本来の咲夜のメイド服は白と青を基調としたメイド服、夢子は白と赤のメイド服。神綺は白と赤色のローブみたいなのを、サリエルは白と青の服装をしています。そして神奈子は。キャラに説明させるの面倒ですから後書きに書いて置きます。神奈子の神気はどうやって隠していたんだと思うかもしれませんが、天照が神力を用いて神奈子の神気を隠しました。要は入鹿と同じ事をした訳です。豊姫と天照を初めて出した頃から思ってたんですけど二人はこの作品の影の黒幕か何かですかね?

やっと藍の話だ。あの話、藍を巫女にした話からだいぶ経ちましたね。何の為に巫女にしたのかはこの話の為です。藍は最初の巫女で最初の神使、そして藍の種族は狐です。巫女で狐というのが後で必要でしたので藍を最初の方に出して巫女にしました。

戦争始めるとか書きましたけど相手が人間なので基本今までと変わりませんし、そもそも私は必要じゃない限り政治とか宗教とか戦闘関係は書くの面倒であまり書く気無いです。戦争始めると相手が人間ならすぐに終わっちゃいますから。そして私はかぐや姫の話を書きました。ですが私の書いたかぐや姫、男5人は全員別人ですから不比等も今回初めて出ました。私が書いたかぐや姫の話、あの5人の中に車持皇子も不比等はいません。だからかぐや姫の話で出て来た5人の男は誰一人名を出してないです。オリキャラで別人ですので。

ここの歴史、日本神話は相当変えています。今回の話でも書いていますけどね

で、何故ニニギのバナナ型神話の話、天皇家の寿命の話をするかと言えばかぐや姫に出てくる車持皇子。架空の人物と言われてますが車持皇子は藤原不比等ではないかと言われ有名ですね、そもそも車持皇子のモデルではないかと言われているだけで直接関係はありませんけど。藤原不比等は天智天皇の落胤説があります。もう何の為にニニギの話をしたかお分かりかもしれませんが、私が言いたいのはまず大前提に、藤原不比等の天智天皇の落胤説が必要ですが、藤原不比等には天皇の血があるという事になり天皇の始祖はニニギと言われてるのでその子供もそう言う事に。全く、これっぽっちも関係ないけど火と太陽って似てる。火と太陽は昔は神性な物として見られたそうですので。

神仏習合してからですけど日本には第六天魔王を祀る第六天神社と言うのがあります。第六天神社は関東にあり、西には殆ど見られない神社だそうです。それでその神社は長野県にもあり、第六天魔王は天狗説もありますね。ついでにいうなら八雲神社も長野県にありますけど。長野県の神社と言えば、穂高神社があります。福岡県志賀島の志賀海神社が発祥地と言われて、志賀海神社には摂末社ですけど弘天神社があります。前にも書きましたが弘天神社は実在する物です。穂高神社の祭神は穂高見命、綿津見命、瓊々杵命、天照大御神がいます。他にもいますがこの場では省きます。

それと紅葉がお琴を弾く話ですが、鬼女紅葉は琴の名手と言う話があるので紅葉はお琴が上手な事にしてます。違和感無く諏訪の国に上手くお琴を潜りこませられました。多分。

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