蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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ここでは付喪神は神、九十九神は妖怪扱いで行きます。ですがこころについては神にするか妖怪にするか未定です。後書きが馬鹿みたいに多いので今回も気を付けて下さい




諏方大明神画詞

誰がこの名を聞いてもおかしくと思う名では無い名だと思う。聖の娘を白蓮と名付けたから俺は白蓮の名付け親になったと言う事だな、聖はひれ伏したまま俺が言った名を 白蓮 と呟いて間を開ける。正直、男と二人っきりで向かい合って間を開けられると困る

 

「弘天様。私めの娘の為に素晴らしい名をありがとうございます。本当にその名を賜ってもよろしいのですか?」

 

「気にせず貰え貰え。聖は俺の義理の父親になるのかもしれんのだからな、今の内にお父様とでも呼んでやろうか」

 

「ご、ご冗談を。そんな事が民に知られたら私は民の皆に何とも畏れ多い事をさせてるなと雷を落とされます。いいえ、最悪私めが民に殺され死の可能性も・・・・・」

 

聖は顔を上げたが真っ青だ。いくら諏訪の国の民は狂信者が多いとはいえそんな事しないと思うが、否定できない部分があるから恐ろしい

 

「じゃあ聖。早速奥さんの所に戻って娘の名、白蓮の名を教えに行け。聖の奥さんも気になってるかもしれん」

 

「そうですね。では弘天様、本日は娘の為に名を授かりありがとうございました。私めの娘は身に余る光栄でございます、諏訪の国の王で神が名付け親なのですから」

 

話を終えたので解散することにした。俺はさっきの喜怒哀楽の仮面から生まれた少女を見に行こうと思い歩き出す。聖の子供の頃みたいに生意気で盾突く人物は諏訪の国にいて欲しいな、生意気な奴や盾つく奴は好きだ。俺は諏訪の国の王で神だから崇拝されて崇められてしまう。だから俺に対して嫌ってくれたり軽く接してくれる人物は貴重だ、もっとそういう人物や子供は増えて欲しいんだが、親が子に教えてるらしい。俺に対しては常に畏れ、敬い、崇拝して崇めるようにと教育、もとい洗脳をしているらしい。そんな事しなくてもいいと言っても民は頷かず頑なに譲らない。民は俺の命令ならどんな事でも聞くがこれだけは全く聞かないから困ったものだ。お蔭で俺の男友達は皆無。部屋に戻ると永琳と諏訪子、紫と幽香が部屋にいて机の上にはお椀などの物が無くなってる。星は食べ終えた様だが部屋にはいないので腹ごなしに散歩にでも行ったのだろうか、少女は布団に寝ころんでいてまだ目を覚ましてない様子。隣の部屋の台所から水が流れる音が聞こえる。藍が皿などを洗ってるのだろう

 

「少女の状態はどうだ永琳」

 

「生まれて間もないから寝てるだけみたいね。時期に目を覚ますわよ」

 

永琳は医療器具を片付けつつ答えた。問題は無いようだ、目を覚ますまで気長に待つとしよう。布団の横にいる諏訪子と幽香の間に入り、胡坐しながら左足の太ももに左手の肘を置いて手のひらを使い顎を支えるようにして眺めているが、この少女は神なのか妖怪なのか。神気や妖気などが感じ取れず、九十九神なのか付喪神なのか今は分からない。はっきり言って、諏訪の国は妖怪は沢山増えたが神は俺と永琳と諏訪子と藍と神奈子しかいないから少ないし神だといいんだが九十九神だと恨みを抱いて妖怪になるが付喪神は違う。付喪神は道具や生き物に神や霊魂が宿った物が付喪神と言われてるからだ、どっちも同じ存在で妖怪と言われてるがな。

 

「幽香、来い」

 

「うん」

 

いつも通りに隣にいた幽香は特等席に入ってきて座る、幽香の頭を撫でつつどうしたものかと考えるが考えてもどうしようもないので考えるのをやめた。向かい合いの永琳の隣にいる紫は少女に顔を向けていたが首を動かして顔を俺に向けて来た

 

「この子、今は曖昧な存在になってるよお父さん。それと誰と会ってたの」

 

曖昧、それはこの少女から神気も妖気を感じ取れないからそう言ってるんだろうか、紫の能力の境界も結構曖昧な物だから感じ取れるのかもしれない

 

「会ってた奴は聖だよ聖」

 

聖の子供の頃はよく紫と幽香と遊んでいて二人の友達、今じゃあ見た目は聖の方が大人になっちまった。紫と幽香はあれから、まだ村で国の名は無名だったあの頃から見た目は変わって無いのに

 

「そう、最近会ってなかったけど聖が来たんだ」

 

紫は正座しながらまた少女に無表情で顔を向けて見てる、隣にいる諏訪子が俺の服の袖を引っ張って来た

 

「この子が神になったらいいけどね。諏訪の国は神が少ないなって前から思ってたから」

 

「確かにそうだな諏訪子、諏訪の国は神が少ない。だが神を増やすにしても中々巡り会わんからな」

 

本当に神は信仰や畏れで生きているのかは山城国、篁の屋敷であの男に話を聞いてからは分からなくなった。例えばだ、言い方は悪いが月人は神として上位互換の存在で、地球で生まれた神は下位互換の存在の可能性も考えられる。吸血鬼で例えるなら吸血鬼は日光に弱かったり、流水が駄目だと言われてる。この場合の吸血鬼は地上で生まれた神と言う事で、吸血鬼の弱点、日光や流水。その他もろもろの弱点が無くなり克服した吸血鬼、信仰や畏れがいらない神が月人ではないかと言う考え。まあ、今の所は憶測だが。

 

「どうしたの弘、眉を顰めて難しい顔をしてるけど」

 

「ん、ああ。気にするな永琳」

 

永琳に何でもないと首を振り、幽香を抱きしめる。俺の頭では考え付かないな、永琳に頼るか?いや、駄目だ。まだ話す訳にはいかない。無意識に幽香の体を抱きしめる力を強くしてしまい、幽香の口から声が漏れた

 

「すまんすまん、幽香痛くなかったか」

 

「大丈夫よお父様。こんなに激しく求められて私は嬉しいから」

 

誤解を招きそうな発言をしてるが、幽香の体を後ろから抱きしめただけだ。紫は少女を見るのに集中していて気付いて無いし医療器具を片付けた永琳は笑顔のままで俺と幽香を見てる。いつもなら永琳は呆れるんだが今日俺と永琳はまぐわう、レイプするからか笑顔のままだ。隣にいる諏訪子の腰に手をまわし、手のひらを使い諏訪子の体を俺の方に引きずるが、諏訪子の体を引きずったが引きずった感じが軽すぎる。ちゃんとご飯を食べてるのだろうか。諏訪子も抱き寄せたが諏訪子の表情は無表情で変化は無い、何かリアクションが欲しいと思ったのでいま思いついたことを実行することにした

 

「諏訪子、俺は諏訪子が好きだ」

 

「私は別に好きじゃないよ父さん」

 

ぐはぁ!!!!!今の言葉は深く心に刺さった。今まで生きて来た人生の言葉で一番効いたぞ・・・・!!娘から好きじゃないと言われてもう無理だ。立ち直れない。向かい合いにいた永琳はため息出して諏訪子に何か言ったみたいで、腰に手をまわしていた俺の左腕を諏訪子は剥がし、諏訪子は立ち上がってから二人で部屋を出て行く。俺は打ちひしがれて動かず止まっている、咲夜に俺の時間を止められたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の顔を見終えてお父さんの顔を見たけど傷心の表情。幽香はいつも通り無表情、幽香は表情の変化は薄いけどその分言葉にして相手に自分の気持ちを素直に伝える女の子みたい。幽香はお父さんの胡坐した上に座ってお父さんにもたれ掛り後ろから抱きしめられてるから、羨ましい。私がしてもらうと正気じゃいられなくなるから仕方ないけど

 

「ど、どうしたの幽香。お父さん魂でも抜けてるんじゃないかって思うほどの表情だけど」

 

「そうね、紫ってお父様に好きじゃないって言った事あるかしら?」

 

幽香はいつも通りの口調で聞いて来たけどそんな事言える訳が無い。あの頃、初めてお父さんと永琳お母さんと出会ったあの日、お父さんと永琳お母さんが諏訪の国が出来る前の村に来て私と幽香を娘にして助けてくれた。私と幽香は妖怪なのに不自由なく生活できてるのはお父さんと永琳お母さんのお蔭、だからそんな言葉は私だけじゃなく幽香もそんな事を言うなんてあり得ない。私は人間が好きかと聞かれたら好きだと即答できない、むしろ嫌い、大っ嫌い。もちろん諏訪の国の民の皆は大好き。皆大事な家族だと思ってる。諏訪の国にいる神も妖怪も皆 皆大好き。だけど他の国の人間、私は他の国の人間に対して胸に抱いてるこの感情は間違いなく憎悪。私は神と妖怪と人間が手を取り合って本当に生きて行けるのかが疑問、結果論で言えば諏訪の国は生きて行けてる。種族の壁なんて関係なく皆で手を取り合っていける国、神も妖怪も人間も皆仲良く生きてる、神も妖怪も人間もみんな仲良く生きて行けると考える人には理想郷と言える場所。平等ではないけどね、諏訪の国には王がいるから皆 王には逆らわないし逆らう気もない。

 

「そんな事私は言えない。幽香がそんな事言う訳ないし諏訪子が言ったの?」

 

「そうよ、私達の妹 諏訪子が言ったのよ。素直じゃない妹。生まれたばかりの頃は素直だったけどね」

 

私と幽香はお父さんが諏訪の国を作る前の村、諏訪子より先にお父さんと永琳お母さんに出会って娘になったから私と幽香は諏訪子のお姉ちゃんで諏訪子は私と幽香の妹。

 

「素直じゃないって、誰に似たのかな。お父さんと永琳お母さんを見てもどっちも自分に正直で素直な性格だけど」

 

「今はそうでも昔は違ったんじゃないかしら。永琳お母様も昔は素直じゃなかったのかもしれないわね」

 

永琳お母さんが素直じゃない・・・・・頭の中で思い描いてみたけどダメ。思い描けないし永琳お母さんに素直じゃない時代があったなんて正直信じられない。

 

「えー無い無い。あの永琳お母さんに限ってそんな訳が。想像できないわよ」

 

「お父様と永琳お母様は神様だから、その答えは言葉通り神のみぞ知るって事ね」

 

確かにお父さんと永琳お母さんは神様だから言葉通り、そう言えばお父さんは放任主義の様にしてるけど実際は過保護と言えるくらい親馬鹿。多分、お父さんはその事に気付いて無いだろうけど。

 

「時々思うけどお父さんって永琳お母さんより親馬鹿じゃない?」

 

「私もそう思う。親馬鹿だけど私はそんなお父様でも愛してるわよ」

 

「よくそんな恥ずかしげも無く言えるわね。私には無理よ」

 

「紫は照れ屋さんだから、今は無理でも大人の女性になれば今より余裕が出来て言える様になるわよ」

 

大人の女性になりたいけど、まだ私の体の発育は良くない。目標は永琳お母さんみたいな大人になりたいけど私が永琳お母さんの様な大人の女性になる日が来るのかな、その日が来たらお父さんを誘惑して・・・・・考えてみたけどそんな事私に出来る訳ない!!!!

 

「そうだといいけど・・・じゃあ幽香。今はまだ私達はお父さんと永琳お母さんの娘だから娘としてお父さんを慰めましょうか」

 

「慰めて立ち直ればいいけど、分かったわ紫、やってみましょうか」

 

私はお父さんに近づこうと正座をやめて立ち上がり少女を横目で見ると、お布団で眠っていた少女が目を閉じたまま起き上がった。ちょっと驚いたけど私は恐る恐る話しかけたけど、少女の周りを色んなお面が浮かんで怖いよ

 

「お、お目覚めかしら。気分は悪くない?」

 

私が話しかけたら少女は首を動かして私を見上げた。少女は無表情で何を考えてるか読めない。お互い見つめあってたら少女は口を動かした

 

「私の名」

 

「名?名前がどうしたの」

 

「生まれたばかりで名が無い。だから名を付けて欲しい」

 

この少女、無表情だけかと思ったけど酷く棒読みで言葉を口にしても感情がこもってない。いきなり名を付けろと言われて私は慌てふためくけどいい考えが思い浮かばくて困ってたら幽香が助け船を出してくれた

 

「落ち着きなさい紫、不測の事態が起こると頭が真っ白になるのは紫の困った所なんだから」

 

「そ、そうよね幽香。まずは深呼吸して落ち着くのよ私」

 

数回ほど大きく深呼吸をして落ち着かせる、少しは落ち着いた気がする。名前を付けろと言われてもどうしようかしら、私にいい名を付けるのは自信が無い。

 

「まずは私たちの名を教えましょう。私は幽香でそっちは紫よ。それで貴方の名だけど、どうしようかしら」

 

「幽香と紫」

 

少女は私たちの名を口にして、幽香はお父さんに抱き着かれながら考える、いい名が思い浮かばないみたいだけど。

 

「聞いた感じこの子言葉に感情が無いわね。心が欠落してるのかしら」

 

「幽香、それは無いと思うわよ。キクリみたいな感じじゃないかな、キクリはただ感情、色んな事が無知なだけって感じがしてこの子と似て無いかもしれないけど」

 

少女は無知な感じがしない、最初に名を付けて欲しいと頼まれたからある程度の事は、自分が何者かは理解してると思う。こうなったらお父さんに助けを乞うしかない!お父さんに近づこうとしたけど、お父さんの表情がいつの間にか元に戻ってる。話を多分途中からだと思うけど聞いていたから思慮の表情で名を考えてるみたい、最初から聞かれてたら困る。親馬鹿とか言っちゃったし嫌われたら私は幽香に抱きついて泣くしかない

 

「そうだな、まだ生まれたばかりだからか心を持ってない様子だ、だから心じゃなくひらがなでこころ。今日からお前の名はこころだ。いや、待てよ」

 

「急に喋らないでよお父さん、怖いから」

 

「悪い、怖がらせる気は無かったが。諏訪子の言葉が強烈過ぎた。この俺が言葉で心を抉られるとは恐ろしい娘だ、流石永琳の子だな。そうだ、奏とは品物の種類や形をそろえて、神や君主の前に差し出すと言う意味がある。だから 奏 こころにしよう」

 

まだお父さんの顔は青白いけど何とか正気で気は確かみたい。ここまで弱ったお父さんは初めて見るけどやっぱり親馬鹿なんだね、少女。奏 こころと名付けられた女の子は右手を左胸の、心の臓に手を当てて自分が名付けられた名を復唱した

 

「奏 こころ。心じゃなくてこころ。それが名」

 

「そうだ。今はまだ心が不完全だから平仮名で書くがな。いつか、こころから心になって心を持てる様にだ。後はこころが神か妖怪か、どっちだろうな。」

 

お父さんはこころと喋ってる、さっき言ったお父さんの言葉、奏とは品物の種類や形をそろえて、神や君主の前に差し出す、つまり形をそろえて、心の感情を全て揃えてと言う意味もあるはず。それとお父さんは神で諏訪の国の君主だから丁度いい名だ。とか考えてそう。お父さんとこころは話し終えたみたい。お父さんは用事があると言い部屋から出ようと立ち上がろうとしたけど幽香が特等席に座ってたから、お父さんは幽香に一声かけた

 

「立ち上がるぞ幽香」

 

「分かったわ」

 

幽香は特等席に座るのをやめて私の隣まで来て正座した。お父さんにこころを頼むぞと言われて私と幽香はこころのお世話をする事にした。だけどこころが欠伸をして布団に寝転がりまたこころはまた眠った。そう言えばさっきお父さんは聖と会ってたって言ってた、聖か、聖は友達だけどあれから私達の肉体はまだ成長せず聖だけは大人になってる。私達だけ取り残されてる気分。このまま行くと聖は近い時間に

 

「…ねえ、幽香。諏訪の国が出来る前の村の人間、私達の、あの時の事を知ってる人間は減って来てる。人間以外は私達と幽香、それにお父さんと永琳お母さん。人間はどうしてこうも、脆いのか」

 

「私達 妖怪、お父様達 神と比べてもしょうがないでしょう」

 

「分かってる、分かってるよ。でも、私はあの時の人間達とまたお話したい、寂しいよ。あの時の、私達の事を知ってる人間が減るのはやだ、いやだ。まだ私が蓬莱山 紫 じゃなくてまだただの紫だった頃の、私の事を覚えている人は多い方が嬉しい」

 

「全く、紫は妖怪なのに人間みたいな事を。自然の摂理なのよ紫。いくらお父様や永琳お母様でも無くす術があったとしてもそれをしないでしょうね。それに私達は何度も村の皆が黄泉、常世に行く所を見送ったけど、皆、後悔が無さそうな安らかな表情で死んでいったじゃない、本人が幸せそうならそれに越した事は無いわよ」

 

「幽香は何もせずにただじっと皆が亡くなっていくのを見ていろって言うの」

 

「そうよ。これは生きていく上で、生き物として死ぬ事は必要な事なのよそれは私達妖怪も同じこと。私達妖怪には寿命があるんだから気が遠くなるような遠い未来でも亡くなる日が来るわよ」

 

「理解できても私は納得できないよ幽香」

 

私の能力を使えば皆の寿命を、死という概念を無くす事は出来る。だけどそれを使うとお父さんと永琳お母さんは黙ってない。だから能力を使って生き永らえさせることは出来ない、私は人間、諏訪の国の民の皆以外はどうでもいい、皆とずっとずーっと一緒にいたい、ただそれだけなのに。私はどうしたらいいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんに着いて来てと言われたので、母さんの背に着いて行く。部屋を出て廊下を歩く、歩いて分かったけどこの神社広くなってる、何で?一本道の廊下まで来て奥まで歩くと一つのふすまがある。中に入ると畳とちゃぶ台だけがあり他には何も無い。見た感じだと内密の話をする為の部屋みたい。とりあえず座りましょうかと母さんに言われたので正座して座り、向かい合いに母さんが座ると思ったら正座をしてる私の背に来てそのまま腰を下ろし、母さんは座った。と思う、背中だから見られないからね。どうしてわざわざ背に座るのだろうと考えてたら、母さんが後ろから抱き着いて来た

 

「本当に不器用な子。本心を隠して言いたくもない言葉で誤魔化すなんて、あの人似じゃなくて私似ね。私の娘だから似てるのも当然かしら、私の時と違って諏訪子は大人しいけどね」

 

母さんが後ろから私を抱きしめ、右手を使い私の頭を撫でながら次は私の右頬を優しく撫でた。母さんが何の為にこの部屋に私を連れて来たのかやっと理解した。蛙の子は蛙と言う事かな、だとしたら嬉しい。大好きな母さんに似てるなら嬉しいに決まってる

 

「私は母さんみたいに父さんには素直に話せないよ。どうやったらもっと上手に父さんと話せるかな」

 

「私の時はあの人が無理矢理引っ張ってくれたからね。私の時と諏訪子の時と比べて状況も違うからどうしましょうか」

 

母さんは私の右頬を撫でつつ軽く笑いながら語り掛けている。母さんは知恵の神と諏訪の国の神として崇められている。つまり母さんは天才らしいけど天才でも分からない事があるんだね

 

「当然よ諏訪子。私でも分からない事もあるわよ」

 

「す、凄いね母さん、私の考えを読むなんて」

 

「大事な娘の事よ、母親として当然。諏訪子が母親になった時に分かると思うわよ。そんな事になったらあの人は発狂するか、その相手を始末するでしょうけどね」

 

「父さんって冷めてる感じだけど実際は母さんより娘を可愛がってるよね、喋っててそう思うよ」

 

母さんはクスクス笑いながら、私が言った言葉を肯定する

 

「そうね。娘三人持てば身代潰すって言葉があるわ、諏訪子、紫、幽香。この三人は私とあの人の娘だけど絶対に嫁に出さないでしょうね。本当に馬鹿な人よ。お金には今の所困って無いけどね」

 

だけど私にはそんな馬鹿な人でも。と小声で聞こえたけど、それを聞くと惚気話が長引くのでそこは触れずに会話する。母さんは惚気話を喋りたいようで隙あらば会話してる途中に惚気話を振って来るので、私と私以外の皆は極力触れずに会話してるよ。うっかり聞いてしまい延々と惚気話を聞かされ、1日かけて聞き終えたら皆げっそりしてるけどね。母さんはまだ喋り足りないそうだけど。だけど私の姉さん達、紫と幽香は父さんの妻になるのは決定事項らしいから、残ってる娘は私だけだ。だから母さんに聞く

 

「私、誰かに嫁がなくてもいいの?今の時代、今の時代だけじゃ無いけど娘を政略結婚に使うのも珍しくないんだし私を使ってもいいんだよ母さん」

 

母さんは私の右頬を撫でていた右手と空いていた左手を使い私の両頬を引っ張った。結構痛いし怒らせちゃったみたい。父さん母さんに限った話じゃないけど諏訪の国にいる皆が怒った所を見た事が無い

 

「お馬鹿。諏訪子はそんな事気にしなくてもいいのよ、諏訪子の旦那さんは諏訪子自身が見つけるのよ。このまま過ごせばあの人の妻の一人になるのは間違いないけどね」

 

だから、あの人みたいに自由に。好きに生きなさいと。母さんは私の両頬を抓っていた両手を頬から離した両手で私の体を抱きしめて小声で呟いた。私は父さんと母さんの娘だけど血は繋がってない、父さんと母さんの信仰が多すぎて混ざり合い、私は生まれたから血は繋がってるとも言えるかもしれないけどその辺は結構曖昧。私の体は信仰の塊だからね、信仰は親子の血より濃いのか薄いのかが微妙な所だから、いくらあの父さんでも流石に私まで妻にするとは思えないんだけど

 

「そっか。ごめんよ母さん。考えが足らなかったよ」

 

「気にしないで諏訪子。子が悩んでいるなら親はどんな事でも助けるのよ。家族なんだからね。諏訪子は私とあの人に何かあったら諏訪の国の王って言われてるけど、そんな事は気にしちゃ駄目よ」

 

「・・・・・・うん。分かったよ母さん。私、父さんと母さんの娘として生まれて幸せだよ。ありがとう母さん」

 

「それは私の台詞よ諏訪子。諏訪子が生まれてくれて私もあの人も嬉しい、生まれて来てくれて本当にありがとう諏訪子。紫と幽香もだけど、諏訪子も大事な娘なのよ。それを忘れないでね」

 

私は、果報者だ。父さんと母さんは自慢の親だと、父さんと母さんの娘として生まれて来て本当に良かったって思える。だから私は、娘として、父さんと母さんを支えて行かなくちゃ。一番になれなくてもいい、ただ少しでもいいから、父さんと母さんの二人を支えたい

 

「思ったのだけど、諏訪子は今のままでもいいんじゃないかしら」

 

「今のままでいいの?」

 

「さあ、それは諏訪子が考えなくちゃ。ただ私の役目は色んな選択肢を増やす事だけでその中から選り抜きするのは諏訪子なのよ」

 

「私が選ぶの?」

 

「そう、諏訪子が選ぶの。諏訪子が思いつくのが、選択できるのが一つしかないなら私が二つにでも三つにでも増やす。そうすれば諏訪子自身が四つ目の考えを思い付いてそれを選ぶかもしれないでしょう」

 

私はまだ数百年も生きてない小娘だから、そんな考えは無かった。人生経験が浅いから思慮が足らないんだ。母さんは数億年は生きてると聞いたしどう考えても人生経験は豊富そう。容姿も中身も大人の女性って感じだし、亀の甲より年の功って事かな

 

「実はね、これは受け売りなのよ。ただ私が受け売りした言葉を諏訪子に教えてるだけなのよ」

 

「母さんにそんな事言うなんて、その人は母さんより賢いの?」

 

母さんの顔は私の背の方にあるからどんな表情か分からないけど、少し困った表情をしてるような気がする。十中八九父さんの事だろうけどね。母さんは色んな考え、表情みたいな事を隠すのが上手、だけど父さんの事限定だと反応が分かりやすい。

 

「賢くは無かった。でも頭は悪くは、いいえ。馬鹿じゃ上等すぎる人ね」

 

「馬鹿でも上等な人なのにそんな人の言葉が母さん、その人が本当に受け売り言葉の相手なの?」

 

「頭が良ければいいってものじゃないのよ諏訪子。頭が良すぎると人に頼られてしまう、そのせいで私はあの人と一緒にいられる時間が減ったわね。だから今は幸せよ。私が甘えたい時に甘えられるんだから。時間って本当に大事ね」

 

母さんは昔は考えが固く柔軟な発想が無かったのかな、今の母さんは色んな考えが出来る女性だけど、昔は違ったなんて言われても信じられないや。母さんがまた惚気話を始めた、これが始まると長い。だから私は軽く咳払いをして、母さんの気を逸らす。母さんも脱線した事に気付いたのか口を閉じた

 

「この話はお終い。じゃあ選択肢を増やすから諏訪子は私が言った選択肢を選ぶか、それとも自分が考えた物を選ぶか。どっちを選ぶかは諏訪子次第」

 

母さんは私を抱きしめ、耳元で囁きながら私に選択肢を増やした。だけど、どの選択肢も父さんに辛く当たる物ばかりで選ばせる気があるのか気になるんだけど。多分、選ばせる気は無いのだろう。意図的に父さんに辛く当たる考えばかりを出して、辛く当たる真逆の考えを私に選ばせる気みたいだね。何だかんだ言っても、父さんに負けず劣らず、母さんも娘には甘いよ。私は呆れつつそう思ったけど、急に母さんが軽く笑ったからどうしたのと聞いてみたら

 

「話は変わるけど諏訪子。弟か妹が欲しくない?」

 

「いきなり何言いだすのさ母さん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社の中を見回ったけど広いな~ 何だか急に広くなった気がする。もしかして咲夜かな?咲夜と言えばこの諏訪の国にいる月人は、お兄様、永琳お義姉様、咲夜、そして私。豊姫お義姉様と依姫お義姉様は諏訪の国に留まる事は無いけど私の様子を見に顔を出しには来るって聞いた、本音はただお兄様に会いたいだけだと思う。思ったけど月人は銀髪が多い。永琳お義姉様、依姫お義姉様、咲夜、この3人は銀髪だから、依姫お義姉様は薄紫色に近い銀髪、私は黒髪だけどね。後、私は会った事無いけど、神綺さんとサリエルさんはお兄様と永琳お義姉様と幼馴染らしくて、二人とも銀髪だって聞いた。合わせて銀髪が5人だから、こうして数えると私の周りの月の関係者は銀髪が多い。

 

「妹様、この神社外から見た時は大きく見えませんでしたが、中に入ると意外と広いですね」

 

「面白くていいじゃないのナズーリン」

 

廊下をナズーリンと喋りつつ歩きながら探検してると、向かい側から誰かが歩いて来た。誰かと思ったら咲夜がこちらに向かって歩いて来てる、咲夜は歩きながら能力を使って時間を止めた。時間が止まってるから隣にいるナズーリンは時間を止められて動けないし喋れない

 

「あら、咲夜じゃない。久しぶりね」

 

「あまり面倒事を起こさないで下さいませ輝夜様、貴方に何かあったら私は、私の使命が」

 

「いいじゃない、従者に面倒をかけるのも主としての仕事よ。そう言えば、咲夜はお兄様の妻になったと聞いたけど。咲夜お義姉様とでも呼べばいいかしら」

 

「そ、それはご勘弁を・・・・・・」

 

咲夜は困窮した表情で私から目線を逸らした。実は咲夜は二卵性で夢子と言う名の身内がいる。どっちが姉か妹かは知らないけど、夢子は神綺さんと一緒にいると前に聞いた。咲夜の髪色は銀、夢子の髪色は金。何だか豊姫お義姉様と依姫お義姉様を彷彿とさせる。咲夜と夢子も姉妹だから。夢子もメイド服を着ていたけど赤と白を基調としたメイド服。もし咲夜のメイド服の色が青と白、そして夢子は赤と白だったなら。赤と青なら永琳お義姉様、豊姫お義姉様、依姫お義姉様と被っていた所だ。咲夜と夢子も姉妹な上に髪色まで被って服色まで被っても困る。

 

「まあいいけど。咲夜、メイド服を着てるわね、しかも色は白と黒 お葬式みたいなメイド服だけど誰かのお葬式でもあるのかしら」

 

「確かに白と黒を基調としたメイド服です、そうですね。輝夜様の兄上、あの方が不慮の事故で亡くなるかもしれませんわね。悲しい事ですが、輝夜様はあの方の死を、乗り越えて下さると信じています」

 

咲夜は嘆き悲しむ振りをしながら、メイド服のスカートのポケットにあったハンカチを取り出して目を拭った。お兄様がお亡くなりになる、ねえ?想像してみたけど、どんな状況でも生き残りそうな気がして軽く嘲笑う。私の髪色は黒、龍神様は私の髪色に合わせたメイド服を咲夜に着せたのかしら。咲夜は私の従者だから、咲夜のメイド服は白と黒を基調としてるのかもしれない。あ、でも龍神様の鱗は黒だった。だから龍神様は黒竜。天界には白龍がいて鱗は白色だって豊姫お義姉様から聞いたからそれでその色にしたのかも。それと咲夜の両足にソックスが履かれていて絶対領域? みたいな感じになってる。今の季節は冬だから寒くて履いたのでしょうね。

 

「そう、そんな日は来ないでしょうけど、来る日を楽しみに待ってるわ。ねえ、咲夜。月人って何なのかしら」

 

「月人は月人ですよ、月人が何者かなんてどうでもよくないでしょうか。その問いは妖怪は何なのか、人間とは何なのかと同義の問いになります。輝夜様は哲学のお話をご所望ですか」

 

「そう、ね。どうでもいいのかもしれない。気にしないで今のは忘れて」

 

「そうでございますか。それより輝夜様、輝夜様が月にいなくなってから私は弱り目に祟り目ですわ」

 

「何言ってるの咲夜。貴方も私と同様 神なのだから弱り目に祟り目な訳が無いでしょう」

 

私は従者の咲夜を月に置いて、豊姫お義姉様に頼んで地上に、竜宮城に住まわせてもらってた。地上の事をよく豊姫お義姉様から話を聞いていて興味があったから。幸い豊姫お義姉さまも地上によく来ていた、だから楽々と私は地上に来られた、でも咲夜を連れてきたら口うるさくなるから連れて行かなかったけど。まさか咲夜が地上に来ていたなんて考え付かなかったけどね。全く、誰に似たのかしら。依姫お義姉様の影響を受けてこうなったんでしょうけど困った物ね

 

「言葉の綾です。輝夜様は従者の私を月に置いて今までどちらに御出ででしたのですか」

 

「月よりも、月人が見下す地上よりも、もっと、もっと。下にいたのよ。良かったじゃない咲夜。お兄様の妻になれたんだから、泣きっ面に蜂な事があってもお兄様の妻になれて相殺、いいえ。プラスでしょう?」

 

「良くないですしプラスになる訳がありません。むしろ損失です」

 

損失だなんて、手厳しい妻ね。お兄様が聞いたら泣いてしまわれるわよ

 

「咲夜。諏訪の国にいる月人。永琳お義姉様、豊姫お義姉様、依姫お義姉様はお兄様の、 蓬莱山 弘天の何だと思う」

 

「八意様は言うまでもないかもしれませんが、あの方と諏訪の国の脳の役割ですね。天才と聞いてますから。豊姫様は能力で考えるなら両足、依姫様は両手でしょうか。最強の称号が相応しいと言える方ですので」

 

「そう。そして私はお兄様の、蓬莱山 弘天 の影。咲夜は」

 

「言わないで下さい、聞きたくありませんわ」

 

「つまらない女ね」

 

「輝夜様の視点で私は面白い女になりたくないですから良かったです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は神社から出てこれからどうしたものかと考えてたら空から何かが飛んで来た。あれは、文とはたての様だ。二人は大急ぎの様子で飛んできて、猛スピードで俺の前に降りて来て、はたてが早口で喋った。文は隣にいて話すのは、はたてに任せるようだ。

 

「危機的状況よ!鬼の大群が諏訪の国に向かって来てる!!しかもその中には三大妖怪で有名な大嶽丸までいて鬼の長は悪路王と来て大鬼人と言われている犬神丸もいる、私達の盟約に従い何とかして!」

 

「鬼の大群とな、悪路王と大嶽丸と犬神丸までいるとは厄介だな。まずは皆をこの場に呼ぶか。今も霧になっていて話を聞いていた萃香。悪いんだが皆を集めてくれ」

 

「うーん。悪路王と大嶽丸に犬神丸、ね。考えても仕方ないし、皆を集めるよ」

 

萃香は霧のまま鬼の名を小声で話して霧のまま皆を呼びに行った。ふぅん。こんな時の為に俺は戦力を増やして置いたのだ。備えててよかった・・・・・時間が惜しいのですぐさま皆を集める様 萃香に言い、文とはたてに顔を向けて仕事を言い渡す前に鬼が今どこにいるか聞いておこう

 

「さて、まず鬼達は今どの辺りだ」

 

「奥三界岳、南木曽岳の山辺りでしょうね。その二つの山を越えたら越百山に来ちゃう。越百山を越えられたら困るなんてものじゃない。それにこのまま行けば私達天狗が住んでる山、八ヶ岳まで来てしまうのよ」

 

奥三界岳、南木曽岳か。どうやら南西から来てるようだな、鬼を俺の支配下に置くべきか。いや、大群と聞いたしな、一桁以上いるだろうから、一桁ならともかく二桁以上もいるんじゃ駄目だな。そうだ、鬼達を天狗と河童が住んでる八ヶ岳に住まわせて萃香、勇儀、華扇に鬼達を管理させるか。鬼達も神である俺の支配下より同族の元にいた方がいいだろうし

 

「成程理解した。ならば最初にお前たち二人は偵察役だ。その機動力を生かし鬼達の視察に向かって情報を集めてくれ。ただし深追いはするな、こちらの動きに気付かれたら面倒だ、それに文とはたてじゃ絶対に鬼に敵わんだろうからな」

 

「それもそうね。分かったわ、指を咥えて見ていて諏訪の国を乗っ取られたら私達もただじゃ済まないからね!行くわよ文!!」

 

「正直面倒だけど仕方ないわねー。命がかかってるから行くけど。あ、それとですね弘天さん、他にも有名な鬼がいます、 鈴鹿 御前 滝夜叉姫がいるそうでして、二人は女性の鬼だそうです」

 

文ははたてに続いて飛び立とうとしたが振り返って、鬼の大群の中にいる女性の鬼の名を教えてくれた。気が利くではないか文よ。文は、では。と羽を羽搏かせて空を飛んではたての後を追い遠い彼方に向かって行った。勇儀と萃香と華扇は何て言うだろうな、同族と戦わせるのは気が引けるが最悪三人だけに任せるかもしれん。月人の問題は月人が片付けるように鬼の事は鬼同士で事を終えるのがいいからだ。神社から勇儀が出て来たが口元は口角を上げてる。表情から察するに萃香に話を聞いた様だな

 

「話は萃香から聞いたよ弘。悪路王に大嶽丸に犬神丸。しかも鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫 までいるとは楽しくなってきたね。」

 

「楽しんでくれるのはいいがこれからどうする。勇儀と同族な訳だが、やれるのか」

 

「愚問だね。あの時弘は言ったじゃないのさ、諏訪の国と民を守って諏訪の国に仕えて欲しいそして国の一員になってくれ。って。私はあの時の言葉を、約諾を忘れてないよ。勿論萃香と華扇もね」

 

勇儀は両手を腰に当てからから笑う。勇儀は今赤い盃を持ってないがあの赤い盃は神社に置いて来たそうだ。そう言えばそんな約束したな、あの時はまだ戦力が俺と永琳と紫に幽香、藍に諏訪子に神奈子だけだったか。そう考えればよくここまで増えたもんだ

 

「それにね。悪路王と大嶽丸に犬神丸。鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫とは私達と昔なじみでね、久々に本気でぶつかり合えるんだ、これ程 心を弾ませてるんだから気にする必要ないよ」

 

鈴鹿 御前は鬼だそうだが、鬼でありながらあの妖怪、土蜘蛛だそうだ。鈴鹿、どこかで聞いたような気がしたと思ったらあの鈴鹿山脈か。それと土蜘蛛は山の民とも言われてるそうだし山関係で繋がっているのだろうか。

 

「そうなのか。じゃあ気にせず前線で戦ってもらおうか。それと、鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫は女性の鬼だと聞いたんだが美人か否か」

 

「同じ女として見ても二人は辨天だよ。ついでに言うと二人共その名は嫌っていてね、鈴鹿 御前 はヤマメと 滝夜叉姫 はパルスィと呼べって煩く言うんだよ。だからそっちの名で呼んでやった方が喜ぶんじゃないかね」

 

「ふむ。ヤマメとパルスィか」

 

確か、海の向こうの大陸にいる者も同じ名、パルスィと言う名があったが海の向こうの大陸から来たのだろうか

 

「そうそう。鈴鹿 御前 ・・・・・・じゃなかった。ヤマメ は桶を常に片手に持っていてね。中にはキスメって女の子がいるんだよ。」

 

桶にキスメって女の子が入っているのか。世の中には色んな妖怪がいるんだな。鬼達をどうやって屈服させるか。今パッと思いついたのがレティを使う案がある。今は冬だしレティの能力は寒気を操る程度の能力だ。つまり、冬の季節限定で寒気、気温を操る事が出来る訳だが、気温を操ると言う事は無差別攻撃な訳だから味方に被害が出るのでこの考えは無しだな。しかしだ、卑怯な手を使って勝っても鬼達は納得しないだろう。と言うかそんな事したら俺は萃香と勇儀と華扇に殺されるからしないが、鬼に横道はない、ただ、真っ直ぐにだ。だからここは今まで避けてしなかった、力で屈服させるか。まずは、そうだな。天界から持って来た羽衣を使う時が早速来た様だ。

 

「おやおや、私の亭主は一体何を考えてるのかね」

 

「どうやって叩きのめすか考えてるんだが、どうしたらいいと思う勇儀」

 

「私にそれを聞くと言う事は、勿論分かってるよね」

 

勇儀は両手を握り締めた状態で右手を俺に向けて来た

 

「無論だ。分かっているとは思うが萃香と華扇も連れて行け、置いて行ったら拗ねるからな。鬼達の場所は奥三界岳、南木曽岳辺りだそうだ」

 

幽香と美鈴を俺の護衛につけて、紫には他の仕事をして貰おう。これから始まるのは天下泰平でもなければ和平交渉でもましてや今までして来た様にお互いが得する様、穏便に交渉して済ます気もない。鬼に対して卑怯な手を使わず正々堂々と力で屈服させる、そう、これから始まるのは諏訪の国と鬼族との命運を賭けた、食うか食われるかの戦争だ。




今回の話は諏方大明神画詞に出てくる悪路王と橋姫が鬼女になる話と鈴鹿御前と食わず女房、別名二口女と滝夜叉姫と夜叉丸の話が混ざってます。諏方大明神画詞は坂上田村麻呂が諏訪大明神に祈った話しと安倍高丸を討伐する話、悪路王を安倍高丸と同一視される事があるのでその話を使いました。悪路王は他にも異称は多く存在してますがね。もう一人の鬼、犬神丸についてですが犬神丸は坂上田村麻呂が鬼人征伐に向かうんですが。鬼人の頭目犬神丸は、手下に夜叉丸がいましてね、あの鈴鹿山に出てくるんです、だから出しました。鈴鹿 御前 を出したんでね。夜叉丸も鈴鹿山に出てくるのでパルスィはあの有名な滝夜叉姫と夜叉丸を混ぜています。

ヤマメは食わず女房の話を混ぜてますね。食わず女房の正体は鬼だったり山姥だったりと言われてますが、地域によっては食わず女房の正体は蜘蛛だったりしますのでもうヤマメは土蜘蛛でありつつ鬼でいいんじゃね?と思って鈴鹿 御前 になりました。鈴鹿 御前と土蜘蛛は山に関係する者 同士ですからね。土蜘蛛の名の元は山の民だったと言われていますし、鈴鹿 御前は三重県と滋賀県の境にある鈴鹿山に由来した名ですから。それと土蜘蛛は人前に出てくるときの顔は鬼の顔、虎の胴体に長いクモの手足と言われて山に住んでると言われていますから鈴鹿 御前に丁度いいと思い、顔は鬼で出てるから鬼でも問題ないでしょう。ヤマメはあの有名な話源頼光のお話に出てくる土蜘蛛のお話で出そうと思ってましたがよく考えたら源頼光のお話は萃香と勇儀と華扇を仲間にする時の話で使ったのでやめました。使った話は大江山の鬼伝説です。

鈴鹿 御前はパルスィにしようと思っていたんですがパルスィは滝夜叉姫にしました、公式がそう言った訳ではありませんけど、パルスィの元ネタは橋姫だと思いますが、橋姫が鬼になる話がありますし、滝夜叉姫は怨念の塊で鬼になり滝夜叉姫は宇治の橋姫に関係してますし、夜叉丸も鬼なので滝夜叉姫と夜叉丸の話を混ぜてます。夜叉丸と滝夜叉姫は名が似てますが同じ人物ではありません。実は宇治の橋姫の橋姫は瀬織津媛と同一視されていまして、その瀬織津媛は木花開耶姫とも同一視されています、その話を最初書こうとしたのですが断念しました。咲夜とパルスィは姉妹の関係にでもしようと思ったんですが夢子と同じ金髪で被るので諦めねばなりませんでした。非常に残念です

キスメについてですが食わず女房には桶の話が出るんですよ。だからもうヤマメが桶を縄で括って縄を手のひらに持ってキスメを持ち歩いてる事にしました。ヤマメには食わず女房の設定も混ぜてるので。それと食わず女房は雪女の話と似てますよね、

諏訪の国(長野県~山梨県)にある八ヶ岳に天狗が住んでるのは公式設定ですし八ヶ岳の名を出しました。これで天狗がどこに住んでるか分かりやすくなったと思います。それで神話でですが富士山と八ヶ岳の背くらべと言う話で、その名の通りどっちが高いかと言う話ですが、八ヶ岳は富士山より高かったそうですが富士山の女神・木花開耶姫がそれに憤怒して八ヶ岳は富士山に蹴り飛ばされて八つの峰になったと言われていますがここではその話は起きていないので、八つに分かれず一つの山としてあります。他の話ではでいだらぼっちが蹴散らした話なんてのもありますがね、ですから富士山より高いです

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