蓬莱山家に産まれた   作:お腹減った

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ダウジングロッド

この女が赫奕姫と呼ばれた女か、確かに人形みたいに綺麗な女だ。噂になる訳だな、だがこの中からどうやって夫を選ぶのだろうか

 

「私の様な者を妻にしたいとわざわざご足労頂き、ありがとうございます。ですが私は皆さんの事を深く存じておりません、私の事を本当に妻として来て欲しいのか、失礼な話ですが皆さんを試したいのです」

 

まあ、当然だな。見知らぬ男に言い寄られても困るだろうし、お互いの事を全く知らないのだ。俺以外の男は位が高い身分の男らしいが、やはりそれでも困るだろう。咲夜は自分の事を本当に愛してくれるか知りたいんだろう。この時代夫婦になったら一生付き合って生きていかなくてはいけない、夫婦になったとしてそいつと縁を切ってしまえばいいと思うかもしれないが、さっきも言った通り俺以外の男は位が高い身分だそうだ。もし縁を切る事になったら周りの人間がうるさいだろうな。咲夜は老夫婦に育てられてるんだ、恩を仇で返す事はしたくはないのだろう。老夫婦と咲夜の身分は高くないそうだし、今の時代は男の方が偉く女は立場が弱い、男尊女卑時代だからな。

 

「では今から言う物を次の満月までに持ってきて下さい、1つは仏の御石の鉢。1つは火鼠の裘。1つは燕の産んだ子安貝。1つは龍の首の珠」

 

何だかどれも凄そうな物の名、どれも聞いたことはあるがこの大陸では手に入らない物ばかりだ。殆どは海の向こうにある大陸で手に入るし、この大陸で手に入るのって燕の産んだ子安貝だが燕が産んだのって無いと思うんだが。

 

「そして最後に、蓬莱の玉の枝。今話した物どれか一つで構いません、次の満月までに持って来て下さい」

 

またか、また俺の苗字が関係するのか。山は無いけど蓬莱の玉の枝か、何だこれは偶然か。それともまた誰かが関わっているのか、咲夜に聞いてみよう

 

「話の腰を折って申し訳ない、質問なのだが、赫奕姫が言った蓬莱の玉の枝と言う物はなぜそんな名を付けられているんでしょうか」

 

咲夜は正座をしていて口元を扇子で隠しているが、俺の質問に鼻で笑って答えた。この女、俺が咲夜を妻にして後悔させてやる

 

「それは琵琶湖の近くにある 蓬莱山 にある物です、本当かどうかは知りませんが 蓬莱の玉の枝は大昔に 蓬莱山 で見つけた事があるそうです。だから 蓬莱の玉の枝 と言われていますね。根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝と言われています」

 

そういう事か、本当かどうかは知らないが俺は関わっていないようだ。良かったのかどうかは分からないが、蓬莱の玉の枝以外はどこにあるのか俺は知ってるが海の向こうの大陸でしか取れない物ばかりだし。蓬莱の玉の枝を探すか

 

「私からの話は以上です。私と話をしたい方、妻にしたい方がいるなら次の満月までに一つで構いませんので持ってきて下さい。では失礼します」

 

咲夜は正座をしていたが立ち上がり、上品に頭を下げて奥にあるふすまを開けて部屋から出て行った。取りあえず次の満月までに持って来ればいいんだな。楽勝、楽勝。俺以外の男達は咲夜から話を聞いたら急いで部屋から出て行った。大丈夫だろうか、この大陸の人間に入手できる代物じゃないと思うんだが。蓬莱の玉の枝はこの大陸で手に入るみたいだがあの山は霧が濃いから前が見えないし、枝を探すなんて無理だろう

 

「ナズーリン、篁。俺たちも御暇しようか」

 

「そうですね蓬莱山様。御暇しましょう」

 

「でもご主人様、この後はどうするんだい」

 

「この後か、取りあえず蓬莱山に向かう事にしよう。まずは蓬莱の玉の枝を取りに行こう」

 

屋敷から出て真ん中が俺でナズーリン、篁と並んで歩いてる。風が気持ちいい。そう言えばさっきの咲夜がいたあの屋敷。周りが蓬莱竹や竹林に包まれた屋敷だったな

 

「しかし蓬莱山様。あの山は霧が濃いと聞いておりますが大丈夫なのですか。じゃなかった大丈夫なのか」

 

「大丈夫だ。旅のお供にナズーリンがいるしな」

 

ナズーリンの頭を撫でようと思ったが笠を頭にかぶってるので撫でられない。だからナズーリンの背中を左手で撫でてる、ついでに篁の背中を右手で撫でた

 

「な、何をしてるんだ弘天」

 

「気にするな」

 

「気にするなって、気になるだろう背中を撫でられたら」

 

篁のお蔭で色んな事を助けてもらってるし背中を撫でるのは感謝の気持ちだ、篁の背中を撫でつつ屋敷に戻った。明日蓬莱山に向かうか。今日は篁の屋敷でナズーリンと英気を養おう。琵琶湖がある近江国は山城国の隣にあるからな。すぐに行ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篁は俺とナズーリンを送ったらまた仕事があるとかで屋敷から出て行った。忙しいんだな、屋敷に着いたので部屋に入って蜜柑をナズーリンと食べてたら小町がまた来た、晴れ晴れとした表情で左手でふすまを開けて右手を軽く上げて来た

 

「お帰りー。どうだった赫奕姫は。攫ったって話を聞いてないし知り合いじゃなかったんだろう。それで赫奕姫を妻にするのかい」

 

「うむ。妻にするぞ、これが偶然の出会いとは思えんのでな。一期一会ってやつだ」

 

「どうやって妻にするか知らないけど気を付けなよ」

 

「そうだな、死んだら終わりだからな。小町も蜜柑を食うか、ほれ」

 

小町に机にの上に数個乗せてた蜜柑を渡して俺は黙々と蜜柑を剥いて食べ続ける、高い蜜柑なのかとても甘い。これならいくらでも食えるな、ナズーリンは蜜柑が飽きたのか煎餅を食べながら熱い茶を飲み始めた。小町が立ち上がり俺の隣に来て正座してから隣にいる俺の顔を見て質問してきた、俺と小町は見つめあってる状態だ

 

「ねえねえ、思い出したんだけどさ 蓬莱山 弘天 って確か諏訪の国の君主の名じゃなかったかい」

 

「そうだな、女好きで有名だ」

 

「気になるんだけど、その君主、王様は私、あたいみたいな女も妻にしてくれるかね」

 

「するだろうな、そいつは好みの女ならどんな手段を使っても女にする男だと聞いてるし。攫ってでも妻にするんじゃないか」

 

「そうかい、その日が待ち遠しいねぇ」

 

小町は顔を俺に向けてたが、微笑の表情で小町は両手に持ってた蜜柑を剥いて蜜柑を食べ始めた、俺も蜜柑を食べるのを再開した、ナズーリンはやれやれと肩を竦めて煎餅を食べた、口が甘くなったそうなのでしょっぱい煎餅を食べたそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中になったあの男は今日もいるかもしれない、見に行こう。井戸の近くまで来たらまたあの男がいた、だが井戸の中に入らず井戸の近くにある柿の木の下でじっとしてる。俺がいるのを気付いていたのか顔は俺に向けてるので俺は男に近づいた

 

「こんばんは」

 

「こんばんは。こんな夜分遅くにこの屋敷に何の用だ、ここは篁の屋敷だぞ。勝手に入ったら捕まるから早く逃げた方がいい」

 

「はっはっはっ 問題ありません、彼女とは知り合いでしてね。今日はあなたに大事な話がありましてこの場にいます」

 

話って俺はこの男とは初めて会うし顔をお互い見た事もないんだが

 

「話とは他でもありません、あなたが神になっている事についてです」

 

「何だ、俺は神だと困るのか」

 

「いいえ、ただあなたは少し勘違いをされているので、訂正しておいた方がいいと思いまして」

 

勘違いって、俺が一体何を勘違いしたのだ。俺は諏訪の国が出来る前の村人を助けて、その村人に信仰されて神になったはずだ。永琳だって俺と一緒に神になってる

 

「あなたは月人が月に行ってから神になったと思っていますね。違います、あなたは最初から神だったんです。八意さんも同じです。と言いますか全月人は最初から神です」

 

馬鹿な、そんな話を信じろと言うのか。突拍子な話しですぐには信じられない、だが今まで信じていたものが崩れていく、信憑性が無い話ではないからだ。だがなぜこの男月人の存在を知っている、地上人では絶対に知りえない情報だ

 

「先ほども言いましたが私はあなたが勘違いしてる部分を訂正する為この場にいます、それ以上についてはお答えできないのです」

 

「おい、自分が何を言っているのか分かっているのか」

 

「もちろんです、月人は寿命が無く穢れで死ぬと言われてましたが、あなたは妖怪の穢れで月人が死ぬ所を見た事がありますか」

 

俺は都市があった時の記憶を掘り返すが、実際には見た事が無い。俺が妖怪の穢れで死ぬと言われたのは大人たちに教わって妖怪の穢れで死ぬと思ってた。だが実際は妖怪の穢れで死ななかったと言うのか。そうだとすれば穢れで死ぬ所を見た事がない事と寿命について納得できる、本来生物は寿命がある、だが月人には寿命が無かった。寿命に関しては辻褄が合う、神は不老だからだ、不死ではないが。だがなぜ月人たちは俺たち子どもになぜそんな嘘を教えていたんだ、そもそも神は信仰や畏れが無いと生きていけないのではないか、いや。この話は確か天照に聞いた話だ、だから神は信仰や畏れで生きるのは真実じゃないのかもしれない。だがそうなら神奈子はどうなる。神奈子は諏訪の国の民の信仰から神になったんじゃないか。いや、そう言えば神奈子は天照の娘でもあったな。だが神奈子は養子として娘になったはず、血は繋がっていない。次は藍だ藍は元は妖怪だが今では神だ。神奈子と同じ信仰されて神になった。諏訪子は俺と永琳の信仰が人型に形を成して生まれた娘なはずだ、考えれば考えるほど分からなくなってくる。一体何が真実で嘘なのか。だがおかしいとは思っていた、月人を奴隷にする前に豊姫と依姫から全月人が神になっていると言う話を聞いてから

 

「訂正できましたし私は失礼します、これでも忙しいので。あ、八意さんに聞いても八意さんは元から神だった事は知っていませんよ。では」

 

男は走って井戸の中に入って行った。俺も井戸に走り中を見るが今度は地獄じゃない、中を見たら亡霊や怨霊が沢山いる、他の場所には鳥居が並んで参道が見える、奥には大きなお屋敷がある、それとすごく大きい桜が見える。これは冥界か、まさか地獄だけじゃなくこの井戸、冥界に繋がってるのか。あの男、冥界を作ったサリエルとも関わっているのか。だが誰かに教えてくれと頼んでも、誰もがちゃんと教えてくれる訳が無いのだ。だから自分でその意味を探さなくてはいけない、だが意味が分からない、もう寝よう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になった、今日は 蓬莱山 に向かう日だ。さて、考えよう。仏の御石の鉢は確か天竺にあるんだっけ、これは海の向こうにある大陸に行かないと駄目だし行く気はない。龍の首の珠は、龍は天竺や唐土にいると言われてるがこの大陸にも龍はいる。それに龍の首の珠はどこにあるかは知ってる、俺には龍神がいるし。天界にいる龍神が首元にぶら下げてるやつだったな、豊姫に頼んで天界に連れて行って貰うのもいいかもしれない。そしたら龍宮の遣いの 衣玖 に頼んで龍神に会わせて貰おう。俺が豊姫の夫だから俺の従者だって 衣玖 が言ってたし聞いてくれるはずだ。燕の産んだ子安貝か、子安貝は簡単に手に入るが問題は燕が産んだ子安貝だと言う事だ。俺が知らないだけかもしれないが燕が子安貝を生む訳が無い、それに今の季節は冬だ。燕はこの大陸には確か夏に飛んでくるが今は冬なので海の向こうの大陸にいるだろう。燕は北半球に生息する生き物らしいが。だが燕が子安貝だけはなんか簡単に手に入る感じがする。他のは無理難題なんだがこれだけは別だ、どこかで綺麗な子安貝を手に入れて燕が産んだ子安貝って言いながら持ってきたらどうするんだ。咲夜は無理難題を言って誰とも夫婦になる気は無いと思ったが、実はそんな事は無いのかもしれない。難癖をつけるかもしれないが、それと子安貝は安産のお守りとして有名だな。もしやこれは夫になった人との子供の事を考えて燕の生んだ子安貝を持って来いと言ったのだろうか。咲夜、実は夫婦になるのは乗り気なんじゃないか。冷たい態度だったけど

 

考え終えたのでナズーリンと篁と小町で朝餉を食べてる、今日は小町がいるようだ

 

「一体どういう風の吹き回しですか小町。小町はこの時間に朝餉はいつも取らないでしょう」

 

「いいじゃないのさ、たまにはこんな日があってもさ」

 

俺の両隣にはナズーリンと小町がいて一緒に朝餉を食べてる、向かい合いには篁がいる。篁は頭を痛そうに抑えて話し始めた

 

「頭が痛いです、小町。小町の頭の中を見てみたいものです」

 

「見せれるなら見せてもいいけど見られないよ。それとなんだいその口調は、昨日のような口調を聞かせておくれよ。それとも隣にいる人だけの前でしか話せないのかい」

 

「小町!」

 

「おっと、藪蛇だったかい。ごちそうさまー!」

 

小町は食べ終えてたから立ち上がり後ろのふすまを開けて走って逃げた。綺麗に朝餉を食べ終えていているから残して逃げていない、元気でよろしい

 

「騒がしい朝餉だねご主人様、嫌いじゃないけど」

 

「そうだなナズーリン」

 

ナズーリンの頭には笠は今は無いので今回は頭を撫でられた。鼠耳を撫でるのも悪くない、朝餉を食べ終え 蓬莱山 に向かう準備を済ませて屋敷を出た

 

「じゃあ弘天、気を付けて行って来てね。私は弘天がまた来るのを待ってるよ」

 

「うむ、じゃあな篁色々ありがとう。また来る」

 

「あれ?私には何も言わないのかい篁」

 

「気を付けて行ってきてくださいナズーリンさん」

 

「こんな時でも私にはその口調なのか・・・・」

 

俺とナズーリンは篁に手を振りながら 蓬莱山 に向かった。あーする事が多いな、神使、麒麟、鳳凰、咲夜、小町、蓬莱の玉の枝。まずは蓬莱の玉の枝だな

 

「そう言えばナズーリンの能力ってなんだっけ」

 

「私の能力は探し物を探し当てる程度の能力だよ」




一度も月人が穢れで死ぬ所を1人も書いていません
ただ月人の大人たちが月人は妖怪の穢れで死ぬから妖怪は殺す存在だとは書きましたがね


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