ロキがやって来た日の翌日、イッセーの家の地下一階の大広間に俺達は集まっていた。
メンバーは家に住んでいる連中とアザゼル、バラキエル、シトリー眷属だ。
今日はサボらずヴァーリ達も来ている。昨日、ヴァーリが帰ってきた時に『何で俺を呼ばなかったのか』と怒られた。
勝手に仕事をサボったお前が悪い。
オーディンのジジイとロスヴァイセは別室で本国と連絡を取り合っている。
今はロキ対策の話し合いをしているが加勢は期待できないらしい。英雄派による神器所有者を送り込んでくるテロのせいで、どこの勢力も戦力を割ける状態ではないようだ。
曹操も禁手使いを増やすためとはいえ無茶な作戦をするよな。そのせいで何人の人間が死んだことか。
まぁ、おかげで邪魔が入らないからラッキーだけど。
「ロキってそんなに強いのか?」
話し合いの途中でイッセーが不意に呟いた。
それに対してアザゼルが質問する。
「どういう意味だ、イッセー」
「いや、昨日のロキを見てるとそんなに強そうに見えなくて……」
イッセーが頭に手を当てながら答える。
俺が弄ったせいでそう見えても仕方ないだろう。
でもゼノヴィアの攻撃がノーダメージの時点でかなり強いだろ。
「油断するなよ。確かに昨日はマヌケそうだったが相手は神だ。イッセーの想像以上に強い」
「それにロキにはフェンリルがいるからな。フェンリルはアザゼルよりも強いぞ」
俺はアザゼルの説明に追加情報を加える。
「そんなに強いのかよ!でもオーフィスより強いってことはないだろ?」
「そりゃオーフィスよりは弱いだろう。だが今回の戦闘にオーフィスを参加させる気はない」
今回の、って言うかグレートレッドでも相手じゃないとオーフィスを参加させるつもりはない。
オーフィスの力技だけでも勝っても面白くないからな。
「……また何か企んでいるの?」
リアス・グレモリーが俺を怪しむように聞いてくる。
神を相手にしてオーフィスを戦闘に参加させないと言えば疑うのは当然か。
まぁ、本当に何か企んでいるんだけど。
「まさか本当にオーディン様を殺すつもりじゃないよね?」
木場が苦笑混じりに言う。
それに対して俺は正論で誤魔化す。
「違う。これがオーディンのジジイと日本の神々の和議を成立させるために一番効率の良い方法だというだけだ」
「どういうことだ?」
「学識のないイッセーは知らないだろうがロキは変身の術も得意なんだ。もしロキが変身してオーディンのジジイに近付いた場合、全員で外を護衛していたら対処できない。だから最終防衛ラインとしてオーフィスをオーディンのジジイの近くに配置するということだ」
もし俺の知らないところでオーディンのジジイが殺されたりしたらフェンリルの牙の性能チェックが出来ないし、他の目的も達成できない。
もしロキが直接オーディンのジジイを襲った場合、俺が到着するまでオーフィスにはオーディンのジジイを守ってもらう必要がある。
「……何となく言いたいことは分かったけど俺を罵倒する意味はあったのか?」
?今、イッセーを罵倒したっけ?俺はただそれっぽいことを言っただけだが。
「まぁ、霧識の言うことも一理ある。オーフィスには直接オーディンの護衛をしてもらおう」
意外なことにアッサリとアザゼルが俺の意見に賛同した。
もし反対されていても俺の理論武装は完璧だから問題ないけど。
「ヴァーリチームもいるし戦力は何とかなるだろう。後は五大龍王の一角である『
確かミドガルズオルムは強大な力を持ちながらも怠け癖があり世界の終わりまで深海で過ごすと宣言したドラゴンだったな。
そしてフェンリルと同じくロキに生み出された存在でもある。
恐らく二天龍と龍王の力でドラゴン・ゲートを開いて意識だけを呼び寄せるんだろ。
まぁ、個人的には寝ているだけのドラゴンになんか興味ない。何もしないんなら存在していないのと同じだ。
「それよりも匙の神器の方が俺は気になるんだけど」
「ああ、それか。それはミドガルズオルムから情報を聞いた後にする予定だ」
アザゼルが性格の悪そうな笑みを浮かべる。多分、俺も似たような表情をしているだろう。
夏休みにやったレーティングゲームでイッセーと戦った時に匙の中のヴリトラが反応した。それに関して面白い仮説がグリゴリであるらしい。
「……何の話をしているんだ?」
匙が少し怯えた様子で聞いてきた。
俺とアザゼルが組めば録なことにならないというのが周りの連中の共通認識だ。
俺が提案してアザゼルが怪しい道具を作る。それのせいでグレモリー眷属を筆頭に色んなところに迷惑をかけているからな。
「大丈夫。運が良ければ死ぬようなことはないから」
俺は諭すように匙に言う。
「運が良ければ、って何!?死ぬ可能性があるのか!?」
「そりゃグリゴリの科学者は変態揃いだからな。何をするか分からない」
ライザーも不死身じゃなかったら死んでいただろう。俺も何で生きているのか不思議だし。
「大丈夫だ。別にかいぞ……トレーニングをするのはミドガルズオルムに会ってからだ。今日のうちに覚悟を決めておけよ」
「先生、今改造って言おうとしなかったですか!?」
「気のせいだ、安心しろ。この俺が可愛い生徒にそんな酷いことをするわけないだろ」
アザゼルが耳をほじりながら適当に誤魔化す。それで安心する奴はいないだろ。
更に匙がビビっているけど無視して俺は言う。
「そうだ。俺も一つ改造してほしいことがあるんだけど」
ロキとの決戦の前日。
ロキ対策は進んでいる。ミドガルズオルムに聞いた結果、フェンリル対策に魔法の鎖グレイプニルをダークエルフに強化してもらい、ロキ対策にはドワーフとダークエルフからミョルニルのレプリカを借りた。
ミョルニルのオリジナルは雷神トールが持っており借りることは出来ない。と言うか、ミョルニルは神族が使用する武器の一つだから借りられても使えるかどうかは微妙だが。
実際、ミョルニルのレプリカを借りたイッセーは使用に手こずっているようだったし。
ちなみに俺は何の準備もしていない。スレイプニルで夜空を飛んでから飛行に対する憧れが出来たのでアザゼルに頼んで俺にも羽をつけてもらった。
その改造手術と術後の検査で時間を食ったのが原因で準備をする時間がなかった。まぁ、今回の目標達成に特にする準備はないからいいけど。でも時間があれば他にも色々と出来たんじゃないかと思うと悔やまれる。
そして俺は今、いつものトレーニング場でレイナーレと飛行の練習をしていた。
「うおっ!バランスが!」
俺の背中には堕天使の羽と酷似した黒い羽がある。普段は体と一体化しているので日常生活に不便はない。
一つだけ不満を言うとするなら羽を広げるたびに服に穴が開くことだな。おかげで何枚も服が駄目になった。これだけは何とか対処策を考えないと。
って、そんなことはどうでも良い。現在、俺はバランスを崩して落下している途中だ。思ったよりも飛行は難しいな。
「ご主人様!右側に重心が寄っているので調整してください!今度は左に寄りすぎです!」
地上にいるレイナーレが俺にアドバイスしてくる。
「んなこと言われても上手く出来ないんだよ!何かコツとかないのか!?」
そんなこと言っている間に地面目前まで来た。調子に乗って結構高くまで上がっていたからピンチだ。普通の人間なら間違いなく長期入院するレベルだろう。改造人間の場合は分からないが怪我をするのは間違いない。
レイナーレが俺を庇うためにこっちに走ってくるのが見える。
「ご主人様!」
「ちょ、危ない!」
俺は咄嗟に羽を羽ばたかせて勢いを殺すことに成功する。だが完全には勢いを止められずレイナーレにぶつかって地面を転がる。
「イテテッ……」
「ご主人様、大丈夫ですアァン……」
勢いが止まって顔を上げるとレイナーレが変な声を上げたので見てみると、俺の右手がレイナーレの胸を鷲掴みにしていた。
何、このラノベの主人公によくあるラッキースケベは。
「……ご主人様、そんなどさくさに紛れて触らないでも言ってくれれば、私はいつでも無茶苦茶に陵辱される覚悟は出来ていますよ」
レイナーレが頬を赤らめて目を逸らしながら言った。
恥ずかしながら言うような台詞じゃないと思うが。
まぁ、中々上手くいかなくて困っていたことだし気分転換するのもアリか。
俺はレイナーレの耳元で呟く。
「……OK。だったら望み通り徹底的なまでに陵辱して快楽に溺れさせてやろう」
「本当ですか、ご主人様!?」
レイナーレが露骨に嬉しそうな顔をする。そんな顔をされると若干、やる気が落ちるが仕方ない。
声だけ欲情したのかレイナーレは少し息が荒い。
「うわー、人前で露出プレイをヤろうとしている変態カップルがいる」
「だから、そういうことは男女ではなく男同士でヤってください」
手始めにキスをしようと瞬間に棒読みな声と呆れた声が聞こえてきた。
顔を上げて見てみると、そこにはジャンヌとアンが立っていた。
アンの神器でここに飛んできたんだろうが、普通このタイミングで現れるか?
ここら辺の話は予想以上にすることがないので少し飛ばし気味でやっています。
では感想待ってます。