オーディン達がやって来た次の日、家のほとんどのメンバーはグレモリー家主催のおっぱいドラゴンのイベントに参加していた。
そして現在は今度出る新キャラとしてイリナの紹介が終わったところで握手会とサイン会をしている。
向こうではイッセーの前に子供の長蛇の列が出来ており、一人一人にサイン色紙を渡して握手をしている。
少し離れたところにいるヴァーリの前には大人の女性が集まっている。まぁ、ヴァーリは変態性を除けば美形だから当たり前か。ただ子供は集まっていないが。
イッセーとヴァーリは時折、お互いを羨ましそうに見ている。色んな意味で真逆な二人だ。
木場も敵役の『ダークネスナイト・ファング』として参加しているが、どうでもいい。
獣ルックの格好をした『ヘルキャットちゃん』として参加している小猫の前には大きな友達が集まっている。だが、あの小猫は俺の神器で認識を操って作った偽者だ。グレモリー家の使用人にお金を払って代役を頼んだ。
この俺が小猫をあんな奴等に触らせるわけないだろ。
「え~と……霧識くん。私、上手く出来たかな?」
天使と魔法少女を合わせたような白い衣装をしたイリナが胸元を隠すようにしながら照れた表情で聞いてきた。
確かにテレビ用だから多少の露出はあるけど似合っていているし、そこまで恥ずかしがる必要はないと思うぞ。
ちなみに役名は『ホワイトエンジェル』。どうしても白は譲れないらしく、それに天使をくっ付けただけの安易な名前だ。まぁ、俺も人のことは言えないし子供向けだから分かりやすい方が良いから問題ないけど。
「ああ、可愛いぞ」
「だから、そう言うことをハッキリ言わないでよ……。恥ずかしいから」
相変わらずイリナは俺の前では緊張するようだが、少しずつ前のように話せるようになってきた。
イリナは弄ると可愛いけど、前のように話せないのは俺も少し寂しかったからな。俺にとっても嬉しい話だ。
「いやいや、本当のことだからしょうがないだろ。後、写真を撮らせてもらうぞ」
俺はカメラを取り出してイリナの写真を撮る。
まだイリナのキャラの写真は撮っていなかったし良い機会だ。 まぁ、後で宣伝用の写真を撮るんだが、それとは別だ。
「私が許可する前に撮らないでよ……」
体をモジモジさせてイリナも満更でもなさそうな様子だ。
やっぱり可愛い。このまま人気のないところに誘導して堕とすのも興奮するな。
「……変なことを考えないでくださいね」
急にレイヴェルが現れて低い声で言ってきた。
「いつからレイヴェルも俺の考えが読めるようになったんだ?」
「霧識さんは嘘つきの割に感情的ですからね。結構、考えていることが分かりやすいですわよ」
マジかよ。俺にプライバシーはないのか?
次からは気を付けないと。
「ところで、そろそろ人間界に戻ってオーディン様の護衛をする時間ですわよ」
「あー、そう言えばそんな仕事もあったな。面倒くさいからサボって監督と次回の脚本の打ち合わせをしてくる」
「相手は北欧の主神ですよ。そんな適当でいいんですの?」
「どうせ録なことはしないんだ。イッセー達がいれば充分だろ」
面倒くさいことはイッセーに押し付けるに限る。
それにオーディンのジジイのことだから日本観光かキャバクラに行くだけだろ。そんな面白くないことに付き合っている暇は俺にはない。
まぁ、ロキが襲ってきてフェンリルが見れたり北欧の面白いものを見せてくれたりするなら護衛してもいいが。
冥界での仕事を終えて、少し木場達の修業に付き合ってから部屋に戻るといつものメンバーとイリナが話していた。
毎度のことだけど何で俺の部屋に集まるんだ?ルフェイ達にもちゃんと部屋は用意してるはずだが。
「何の話をしているんだ?」
「……え?何で霧識くんがいるの!?」
俺に気付くとイリナは顔を赤くしながら少し後退ってそう言った。
「そりゃ俺の部屋だからな」
何を当たり前のことを言ってるんだ?
と言うよりイリナが俺の部屋にいる方が不自然だろ。前はたまにやって来て一緒にゲームをしたりしていたが口説いてからは一度も来ていない。
「いや、そう言うことじゃなくて!この時間はイッセーくん達と修業じゃなかったの!?」
「それなら最初にちょっと参加して抜けてきた。で、何の話をしているんだ?」
俺はベッドに移動して座りながら最初の質問を繰り返した。
それに対してルフェイが答えてくれた。
「今から霧識さんの昔の話を聞こうとしていたんです」
「俺の昔の話?そんなことだったら別に隠したりしてないし、俺が普通に教えるぞ」
と言うより今までにも、ちょくちょく教えていたし。
黒歌が擦り寄って膝の上に乗ってきたので顎を撫でると「ニャー」と気持ち良さそうに蕩けきった顔になる。
小猫が何も言ってこないところを見ると事前に話し合っていたのだろう。
イリナがまた顔を赤らめながら黒歌を羨ましそうに見ている。
「いえ、今回は周りから見た霧識さんの話を聞いてみたかったんです。同じ話でも本人と周りの人では認識が違ったりすることも多いですし」
「なるほど。俺も昔、イリナにどういう風に見られていたのか気になるな」
ちなみに俺から見たイリナは意味もなく元気な奴という感じだ。
もしかしたら俺がこんな性格になったのは超放任主義……というより放置主義の両親以外にもイリナに振り回された影響があるかもしれない。
まぁ、関係ない可能性も高いけど。本質的には今も昔も変わってないし。
「で、昔のお兄ちゃんはどんな感じだったの?」
花蓮が我慢できないと言った感じで目をキラキラさせながらイリナに詰め寄る。
「え~と、私の霧識くんに対する第一印象は女の子だったかな」
「女の子?」
「うん。常に可愛い人形を抱いていて女の子みたいな服を着ていたの」
「「「女の子みたいな服?」」」
小猫とオーフィス以外の全員がその言葉に反応した。
皆、どんだけ俺の女装に興味があるんだよ。
「何で白音は普通にしているのにゃ?普段なら一番反応しそうなものにゃのに」
「私は前に先輩の女装姿を見たことがありますから」
黒歌の質問に小猫が何故かドヤ顔で答えた。
夏休みの時の話だな。ミリキャスの女装が可愛かった。
「小猫ちゃんだけズルいよ!これは私にも見せてもらうしかないね!」
そう言いながら花蓮がいきなりパジャマを脱ぎ出した。
ちなみに花蓮のパジャマは花柄のもので前に俺が買ってやったヤツだ。やっぱり似合っていて可愛い。
て言うか、何故パジャマ?寝るにはまだ早いぞ。
「……何でいきなりパジャマを脱いでいるんだ?」
「私の服で女装してもらおうと思って」
「女物のパジャマを着たところで女装にならないと思うぞ」
て言うか、まず花蓮は羞恥心を覚えろ。すでに全裸になってるし。
ん?全裸?もしかして下着をつけてなかったのか?
まぁ、露出狂の花蓮に言っても無駄か。
「あ!確かにそうかも!」
今、気付いたのかよ。
すぐに花蓮がパジャマを着始めた。
「じゃあ、女装グッズないの!?確かお兄ちゃんって仕事と趣味用に色んな衣装を持ってたよね!?」
「ああ、それなら私がどこにあるか知っているので持ってきます」
そう言うとレイナーレが立ち上がって部屋から出ていこうとする。
「おい、せめて俺の意見を聞いてから動け。て言うか、イリナから俺の昔の話を聞くんじゃなかったのか?」
「そう言えばそうでしたね。でしたら、代わりにご主人様のアルバムを見ましょう」
そう言ったレイナーレはいつの間にか俺のアルバムを持っていた。
何?手品でも覚えたのか?
「何でアルバムを持っているんだ?」
「私がご主人様の部屋を掃除している時に見付けたからです」
俺が聞きたかったのは何で今持っていたかなんだが。まぁ、レイナーレのことだから何をしても不思議じゃないか。
皆がレイナーレの取り出したアルバムに集まっていく。黒歌も少し名残惜しそうにしながら俺の膝の上から離れてアルバムを見に行く。
するとオーフィスが自然な流れで俺の膝の上に乗ってきたので頭を撫でる。
「小さい霧識さん、可愛いですね……」
いや、アルバムをうっとりした表情で見ているルフェイの方が可愛い。
「ちっちゃいお兄ちゃん物凄く可愛い!食べちゃいたいぐらい!」
おい、花蓮を涎を垂らすな。顔が本気で怖いぞ。
「私、兄しかいませんからこんな可愛い弟……いえ、妹がほしいですわ」
レイヴェル、何で言い直して妹にしたんだ?弟のままでいいだろ。
「でも、女装なんてしてたら学校とかで苛められたんじゃないかにゃ?」
黒歌がらしくもなくマトモな質問をしてきた。
「女装していたのは家の中だけで外では普通の格好をしていたぞ」
俺の女装癖はギャスパーほどじゃなかったからな。
いくら可愛いもの好きでも外で女装するのは恥ずかしかった。
「まぁ、それでも少女趣味で女の子とばかり仲良くしていたせいで小学校に入ったころは苛められていたな」
後は家族がいないという理由でも苛められたような気がする。
「それでどうしたんだにゃ?」
「人気のないところに呼び出して俺に逆らえないようにボコボコにした。もちろん先生に報告できないように弱味を握ることも忘れていない」
やり過ぎたせいで何人か転校していったが興味ない。
表向きは普通に生活していたので孤立したり先生に目を付けられることもなかった。
「……先輩は昔から性格が悪かったんですね」
「ちょっと待て、小猫。俺は別に性格が悪い訳じゃないぞ。こっちから仕掛けたことは一度もない」
て言うか、今も性格は悪くないし。遊ぶ過程で人が嫌がることをすることがあっても、嫌がらせを目的としたことは一度もない。多分。
小猫は俺のツッコミを無視して、またアルバムに見入っている。少しは俺の話を聞いてくれ。
ん?イリナがまた羨ましそうにオーフィスを見ている。
「なぁ、オーフィス。明日の午前中、何でも買ってやるし言うことを聞くから俺の膝の上からどいてくれないか?」
明日の午前中は何の用事もないし問題ない。むしろオーフィスとのデートに使えるならラッキーだ。
「どうして?」
オーフィスの質問に俺は無言でイリナを指差す。
「代わりに本当に何でも言うこと聞く?」
「当然。俺がオーフィスとの約束を破るわけないだろ」
「分かった」
そう言うとオーフィスは俺の膝の上から退いてアルバムを見に行った。本当、オーフィスは素直で可愛いな。
「イリナ、撫でるから、こっちに来い」
俺は手招きしながら言った。
「え!?いや、さすがにそれは……。恥ずかしいし……」
「遠慮するな。さっきから羨ましそうにこっちを見ていただろ?」
「うぅ……。見てたの?」
イリナが恥ずかしそうに少し涙目になりながら上目遣いで俺を見てきた。
物凄く可愛い。思わずドキッとしてしまった。
だが俺は冷静を装って普通に返事する。
「そりゃ、あれだけハッキリと見てきたら誰でも気付く」
「私、そんなに見てたかな……。出来るだけ見ないように気を付けていたのに」
そしてイリナは少し考えると覚悟を決めた顔でこっちにやって来た。
「じゃあ、少しだけお願いしようかな……」
そう言うとイリナは俺の膝の上に頭を乗せてきた。
最初は緊張していたが俺が頭を撫で始めると、すぐに気持ち良さそうな顔になった。
次回はロキか。ロキ戦はまだ話がまとまってないけど大丈夫かな。
では感想待ってます。