ある日の昼休み、俺とルフェイは何故か桐生に誘われてイッセー達と教室で弁当を食べている。
「何の用だ?小猫達と合流して屋上で弁当を食べたいんだが」
ちゃんと小猫達には電話で行けなくなったことは報告している。
でも、桐生や変態三人組の相手は速効で終わらせて合流したい。
「何で霧識は常に女の子に囲まれているんだよ!羨ましいんだよ!だが、それはまだ良い!いや、やっぱり良くない!」
松田が腹の底から叫ぶ。うるさい。いきなり何だ?頭が壊れたのか?いつも通りか。
て言うか、良いのか良くないのかどっちだよ。
「問題はイッセーだよ!最近、イッセーもアーシアちゃんと付き合い出しただろ!常にラブラブ光線を出しやがって!イッセーには出来て何で俺には恋人が出来ないんだよ!?」
元浜も松田に続いて叫ぶ。ウザイ。
お前らがモテない理由は変態だからに決まっているだろ。
「そこまで恋人がほしいなら紹介してやるぞ」
「お前はもう信用できん!」
「どうせ、またミルたんみたいなゲテモノを紹介するつもりだろ!?」
いや、さすがの俺ももうミルたんクラスは紹介できないぞ。
こいつらの相手を面倒くさいし無視して本題に入るか。
「何の用だ、桐生」
「で、結局、兵藤とアーシアってどこまでヤっているの?」
桐生が俺の質問を無視して、さっきからアーシアにアーンをされているイッセーを見ながら質問してきた。
まさか、この質問をするために俺達を呼んだのか?
「毎日、おはようのキスとお休みのキスをしているぞ」
「へぇ……」
桐生がイヤらしい笑みを浮かべながらアーシアを見る。
俺の発言で松田と元浜が更に騒ぎ立てる。ぶん殴って静かにさせようか。
「……何で霧識がそんなことを知っているんだ?まさか俺の部屋を盗撮してるんじゃないだろうな?」
「失礼なことを言うな。そんなプライバシーを犯すような真似をするわけないだろ。俺は正義感の塊のような男だぞ」
ルフェイが半眼で見てくる。
いやいや、嘘じゃないぞ。俺がイッセーの部屋を盗撮しているのは行為をヤりそうな時だけだ。
普段のイッセーなんか盗撮しても一銭の価値もないからな。
それに俺は思い付きで生きている人間だ。たまに正義感の塊のような男になることもある。多分。
「合体はしてないの?」
「してないみたいだな。不思議なことに」
「そうなの?本当に不思議ね。どう見ても毎晩、合体しているようにしか見えないラブラブっぷりなのに」
それに関しては俺も同感だ。だが見えない何かが二人の邪魔をしている。
見えない何かが邪魔しているのは俺の可能性もあるが。
「まぁ、良いわ。もし二人が合体した時はその映像を売ってね。言い値で買うわ」
「桐生、何を言っているんだ!?」
「OK。安くしておいてやろう」
「霧識まで何を言っているんだ!?盗撮はしてないんじゃなかったのか!?」
盗撮なんかしないさ。堂々と撮影する。ただカメラが認識できないだけだ。
「……さすがにそれは恥ずかしいです」
アーシアが照れた様子で言ってきた。
「さっきのは嘘だから気にするな」
俺がそう言うとアーシアが安心した顔になった。
「そうですか。だったら良かったです」
自分で言うのもなんだが何でアーシアは俺の言葉が信じられるのだろうか?
俺の言葉を信じる奴なんて他はオーフィスぐらいだぞ。ルフェイですら自分に向けられた言葉と仕事の時以外の言葉はマトモに信じないのに。
「駄目だよ、アーシアさん。霧識くんの言うことを簡単に信じたりしたら。彼は基本的に嘘つきなんだからな」
「おい、イリナ。アーシアに余計なことを吹き込むな」
何でイリナは俺に対してそんなに厳しいのだろうか?俺、何かしたっけ?
「そうか?私は霧識ほど正直な奴はいないと思うが」
ゼノヴィアが特大の弁当を食べながらイリナに反論する。
何故だろう?まったく頼りになる気がしない。
「そう?」
「ああ。私は霧識ほど欲望に忠実な人間は見たことがない。霧識は自分の快楽のためなら神ですらも貶めるぞ。ここまできたら逆に正直者な気がするんだ」
間違ってはないが全くフォローになってないな。
「それってかなり最悪な奴ってことじゃないの?」
「確かに……。言われても見ればそんな気も。もしかしたら一番の敵は霧識なのかもしれない」
「誰が敵だ、誰が」
二人にはそこまで思われるようなことはしてないぞ。
今はテロ活動もしてないし。
「何か話がずれてきたけど、そろそろ本題に入るわよ」
桐生が脱線した話を引き戻した。いや、脱線する以前に本題が始まってすらいないのだが。
「本題ってイッセーとアーシアの肉体関係についてじゃないのか?」
「もちろん、それもあるわよ。でも一番の本題は修学旅行の班決めよ」
修学旅行って京都だよな。京都って中学の時に何回も行っているんだけどな。
「それなら必要ない。俺はルフェイと組むと決めているからな」
「いや、班って三、四人で組むのよ?あんた達、二人じゃない。しかも男女だし」
「そんなことは知っている。ちゃんと学校側とも話はついている。ちなみに俺達が泊まるのはホテルの最上階にあるスウィートルームだ」
泊まるホテルはグレモリーが経営しているからな。
もちろん、ちゃんとサーゼクスに代金(リアス・グレモリーの盗撮写真)を払っている。最近、写真が通貨に思えてしょうがない。写真が便利すぎる。
「……それって修学旅行なの?ただの旅行じゃない。て言うか、高校生の生活じゃないわよ」
桐生が呆れたように言う。
部屋は自由にやらせってもらっているが他はちゃんと皆と同じように行動するぞ。
「あれ?霧識くん一人なの?」
俺が放課後のオカルト研究部部室でお茶を飲みながらせんべいを食べているとイリナがやって来た。
俺が色々と手回しをして他のメンバーはあと三十分は部室に来ない。三十分の間にイリナを口説いて堕としてやる。
後、俺の隣には認識できないだけでルフェイもいる。俺が本気にならないように見張るらしい。俺は別に必要ないと思うけど。
「他のメンバーは用事があってまだ来れないみたいだ。せんべいでも食うか?」
「ええ、もらうわ」
そう言うとイリナは俺の対面のソファーに座ってせんべいを食べ始めた。
「あ、そうだ。イリナの特撮でのキャラだけど何個か考えてみたから家に帰ったら資料を渡す。それで気に入ったキャラがあったら言ってくれ」
「わかったわ。どんなキャラがあるの?」
「俺が考えた物凄く可愛いキャラと一部のエロオヤジとイッセーが考えた子供の教育に悪いぐらい露出の多いキャラだ」
「どう考えても後半はないよね!?」
当然だ。仮にイリナがそれを選んでも俺が却下していた。
「後、特撮とは関係ないけど一つ頼みがあるんだ」
さぁ、ここからが本番だ。
「頼み?何?」
「天使の羽を見せてほしいんだ」
「天使の羽を?別にいいけど何で?」
「俺、天使の友達が少ないんだよな。だからちゃんと羽を観察したことないんだよ」
ちなみに堕天使の羽はレイナーレ、悪魔の羽は小猫に見せてもらって観察した。
「そうなの?仕事とかで天使にも会ったことあるんじゃないの?」
「そりゃ、天使と会う機会はある。でも天使って真面目な奴が多いだろ?だから俺と気が合わなくて中々仲良くなれないだよ」
て言うか、何故か俺は天使に避けられている節がある。特に女には。何故だろうか?
堕天使の女はむしろ寄ってくるのに。
「……それって私が真面目じゃないみたいに聞こえるんだけど?」
イリナが不機嫌そうにそう言った。
「真面目かもしれないけど変人だからな」
俺がイリナ以外で仲の良い天使はミカエルとデュリオくんだけだ。二人とも変人だな。
「失礼ね。私は変人じゃないわよ。でも、まぁ、いいわ。私の羽を見せてあげる」
そう言うとイリナは立ち上がって祈りのポーズをする。するとイリナの背中から天使の白い羽が生えた。
わざわざ祈りのポーズをする意味はあるのか?
とりあえず俺も立ち上がってイリナの羽を観察する。
ふーん、天使の羽ってこんな感じなのか。色以外にも堕天使の羽とは細かいところが違うな。
俺的には堕天使の羽の方が好きだな。
「どう?私の羽は?霧識くんも私の聖なる天使パワーで真人間に……って何で私の顔を見ているの!?」
俺が羽の観察を終えてイリナの顔を凝視していると、イリナは顔を真っ赤にしながら少し後退る。
て言うか、聖なる天使パワーって何?胡散臭い響きだ。
「そりゃ、綺麗だから観察しているんだよ」
俺はイリナが後退った分、近付きながら雰囲気を変えて真剣な調子でそう言う。
「そうでしょ!?何たって私はミカエル様のAなんだから!」
「いやいや、羽もそうだけどイリナ自身のことを言ってるんだよ」
イリナは更に顔を真っ赤にして後退る。
女の子と仲良くなることには慣れているけど口説くなんて初めてだ。これはこれで面白いかも。
「何、いきなり冗談を言っているのよ!?私がイッセーくんのことが好きだって知ってるでしょ!?」
「知ってるさ。でもイッセーはアーシアと付き合っているぞ」
「それを言ったら霧識くんだってルフェイさん達と付き合っているじゃない!?」
う~ん、それを言われると痛いな。ちゃんと考えてから発言するべきだった。
「大丈夫だ。俺はイッセーと違って甲斐性があるから複数の女性を同時に愛することも出来る」
本来ならもっと気の利いた台詞を言うところなんだがルフェイが見ているせいで言えない。
まぁ、ルフェイが見ていなくても下手なことを言って人間関係に影響が出ても困るから言わないけど。
後で冗談でした、って笑って誤魔化せる範囲に抑えないと。
「でも……そういうのは女性に対して不誠実だと思うの……」
「でもイリナが好きだって言うイッセーもハーレムを目指しているぞ」
「それは、その……」
ずっと後退っていたイリナが壁にぶつかった。俺はすかさず右手でイリナに壁ドンをする。
「それに俺は昔からイリナのことを可愛いと思っていたんだ」
お、イリナの羽が白黒に点滅し始めた。後少しだな。
「昔の私はイッセーくんに男の子だって勘違いされていたぐらいだし……可愛くなんてないよ」
イリナが俯いたので空いている左手で顔を押さえて俺の顔と正面から向かい合わせる。
すると、すでに真っ赤だったイリナの顔が煙が出そうなほどに真っ赤になる。
何かいつもは無邪気なイリナがこういう女性の顔をすると、いつもとのギャップで妙に色っぽく見えるな。
「それは男の子みたいな格好と言動をしていたからだ。イリナは昔から美少女だよ。そうじゃなきゃ人形大好きの大人しかった俺がイリナのわがままに付き合うわけないだろ?」
まぁ、真実は無視してもイリナが勝手に俺を振り回しただけだが。
「…………」
俺は無言でイリナにどんどん顔を近付けていく。
これでキスが成立すればイリナは堕ちるだろ。
「ごめん!ちょっと考えさせて!」
そう言うとイリナは俺を突き飛ばして凄い勢いで部室の外に走り去っていった。
考えさせて?
あれ?逃げられるパターンも予想はしていたけど、これは何か予想していたリアクションと少し違う。
笑って誤魔化せる範囲に抑えるつもりだったけど、もしかして失敗した?
「……あれ、大丈夫ですか?」
ルフェイが心配そうな声で言う。
「う~ん、どうだろう?」
このままだったら女心を弄んだ最悪な奴になってしまう。それこそ昼休みにイリナが言っていたみたいに。
さて、勢いで書いたは良いけど今後のイリナの扱いをどうしようか。
まぁ、結局は話の流れ次第なんで深くは考えないことにしよう。
では感想待ってます。