イリナと花蓮が転校してきてから数日、一緒に住むことになったが大きな問題は起きていない。
ヴァーリがいきなり花蓮に告白してフラれた上に急所攻撃を食らって悶絶したりしたことがあったが、特に問題はない。
花蓮が毎日のように俺のベッドに潜り込もうとしてルフェイ達と対決しているが、特に問題は……あるな。早めに花蓮が部屋に入れないようにセキュリティを強化しないと。
まぁ、他に気になることがあるとすれば花蓮は童顔だがヴァーリの守備範囲より年齢が高いことだな。
それだけヴァーリも追い込まれているのか。この前、ギャスパーにも手を出そうとして逃げられていたし。
そう言えば最近、ギャスパーがモテるな。モテ期か?花蓮にも告白されていたし、俺も性別とか気にしなくていいような気がしてきたし。
それに他のところでも需用がある。
そして今はクラスのHRで体育祭で誰が何の競技に出るか決めているところだ。
「はい。次は借り物競争ね。誰かやりたい人いる?」
黒板の前に立って司会をしている桐生が聞いてきた。
「「はい、俺(私)がする(します)!」
俺とイリナが同時に手を挙げて立候補した。
そして無言で睨み合う。
「……ねぇ、霧識くん。ここは幼馴染みである私に譲ってくれないかな?」
「いやいや、ここは俺に譲ってもらおう。俺が昔、どんだけイリナに苦労したと思ってるんだ?」
いや、マジで大変だった。何か色んなところに連れ回されるし、イッセーとの出来事を隙があれば言うし。
「じゃあ、私がお兄ちゃんを譲ってもらグハッ!」
いきなり教室の扉が開いて花蓮が現れたかと思うと小猫に殴られて倒れた。
もうこれも見慣れた光景だ。
「授業中に教室を抜け出さないでください」
「いやいや、小猫ちゃんも抜け出してるでしょ?」
「私は先生から許可をもらっているからいいんです」
小猫も花蓮の相手で大変そうだな。まぁ、その分、後で甘えてくれるから俺的には嬉しいけど。
「にしても、お姉ちゃんである私に対して酷くない?」
「勝手に私の姉を名乗らないでください。面倒な姉は一人で充分です。それに私が霧識先輩と結婚すれば花蓮が義妹です」
「お兄ちゃんと結婚するのは妹である私に決まってるでしょ」
妹だから無理だと思うぞ。まぁ、花蓮の中では逆なんだろうが。
いや、黒歌と違って性別が違う分、まだマシか。
「ん?」
いきなりルフェイが制服の裾を引っ張ってきた。
「日本で重婚って出来ましたっけ?」
「法律では無理だな。まぁ、法律なんて気にしなくていいだろ」
「それもそうですね」
そう言えばルフェイって日本国籍もってないよな?それにパスポートも持ってないし。
今更だけど不法入国状態だな。結局、日本の法律じゃあ結婚できないような気がする。
まぁ、結婚なんてする必要があるとは思えないが。したところで何も変わらないだろうし。
何か松田と元浜が無言で血の涙を流しながら俺を睨んできている。気持ち悪いので無視だ。
「相変わらず馬鹿なことしか言いませんね。では失礼しました」
小猫は頭を下げると花蓮の足を引きずって自分の教室に帰っていく。
「ねぇ、このままだと私のスカートの中が見えるんだけど」
「知りません」
「じゃあ、このまま保健室に行かない?」
「行きません」
俺の改造人間としての聴覚が、こんな会話を捉えた。
もし保健室に行くなら俺は撮影に行くが。
とりあえず今は花蓮のことを忘れて体育祭の話し合いを再開する。
「じゃあ、俺が借り物競争に出るということで」
「何が『じゃあ』なの!?借り物競争には私が出るの!」
「ワガママだな」
「私が悪いの!?」
どうしたものか。イリナも引く気がないようだし。
「面倒くさいから適当にジャンケンで決めてくれる?」
頭に手を当てて呆れた様子の桐生が提案した。
「……イカサマしないでね」
「イカサマなんかするわけないだろ」
心外だな。俺は勝負事でルールを破ったりしない。
まぁ、ジャンケンに神器を使ってはいけない、ってルールはないから正確にはイカサマではないが。
「どうやってジャンケンでイカサマするのよ……」
桐生が小さな声でツッコんできた。
一般人である桐生には説明できないな。
「だが駆け引きはアリだ。俺はパーを出す」
「クッ……。じゃあ、私はチョキを出すわ」
イリナも駆け引きに乗ってきたか。これで俺の勝ちは確定だな。
「「ジャーンケーンポン!」」
俺が出したのはパーでイリナが出したのはグー。
「まさか霧識くんが正直にパーを出すなんて……。グーならどっちにしろ負けないと思ったのに」
「だから俺はパーを出したんだよ」
分かってはいたけど、俺が正直に言う可能性を全く考慮してなかったのかよ。酷い話だ。
「じゃあ、借り物競争は七瀬で決定ね」
桐生が黒板に俺の名前を書く。
「後、二人三脚は俺とルフェイでよろしく」
「了解」
桐生が更に俺とルフェイの名前を黒板に書く。
「二人三脚はもう一組必要なんだけど、誰かやる人いない?」
もう一組必要なのか。
俺はさっきから机に突っ伏して、ため息をついているイッセーを見る。どうせエロいことでも考えているのだろう。
「おい、イッセー。脇のところが破れてるぞ」
「え?マジか」
イッセーが俺に言われて自分のワイシャツの脇を見る。もちろん破れていない。
よし、片手を上げたな。
「と言うわけでイッセーとアーシアがやるらしい」
「はい、決まりね!」
桐生が俺とルフェイの名前の横にイッセーとアーシアの名前を書く。
「霧識、騙したな!」
「真面目にHRを受けてない奴が悪い」
「普段サボってる霧識には言われたくない」
俺がサボっているのは出席しなくても出来る科目だけだ。
「それにアーシアはこれでいいのか?」
イッセーがアーシアに確認する。
その確認は無駄だと思うぞ。
「はい。私はイッセーさんと一緒なら大丈夫です」
アーシアが少し恥ずかしそうにしながらも答える。
こういうのを見るとリアス・グレモリーよりもアーシアの方を応援したくなるな。
次の日の放課後から学園全体で体育祭の練習が始まった。
俺のクラスも体操服に着替えて男女合同でグラウンドで練習している。
正直、練習とか必要ないけどルフェイと二人三脚をするためだけに参加している。終わったら生徒会の方でも手伝うか。
「勝負よ、ゼノヴィア!」
「望むところだ、イリナ!」
イリナとゼノヴィアがグラウンドで爆走している。人前ではもうちょっと抑えた方が良いと思うんだが。
そして二人の揺れる胸を観察している変態三人組がいる。あれは無視でいいか。
「意外と難しいですね。私が霧識さんに合わせられないのがいけないんでしょうか……」
ルフェイが落ち込んだように言う。
思った以上に二人三脚に苦戦している。
当たり前と言えば当たり前だが、コンビネーション以前に体格が違うから歩幅が合わない。これは俺が上手くルフェイに合わせないといけない。
「大丈夫大丈夫。もう一回するぞ」
俺はルフェイを安心させるために頭を撫でる。
「それで……あの、練習を再開する前に一つお願いがあるのですが……」
ルフェイが顔を赤くしながら俯いて言う。こんな可愛い姿を見せられたらお願いなんて無条件で聞くに決まっている。
「何だ?」
「キスしてもいいでしょうか?」
「別にいいけど今か?」
「はい。ずっと霧識さんと密着していたら興奮してしまって我慢できそうにないんです……」
まぁ、それは俺も同じだが。
仕方ない。俺とルフェイの行動を周りに認識できないようにした上で舌を絡めて激しいキスをする。
とりあえず一分ほどしたところでやめる。
「じゃあ、頑張るぞ」
「はい」
ルフェイが笑顔で返事をした。
そして練習を再開する。
思ったよりも慣れるのは早くて十分ほどの練習で普通に歩けるようになった。これも俺とルフェイの相性の良さが為せる技だな。
練習しているうちにイッセー達の近くに来たので話かける。
「……いつまでやってんだ?警察に通報するぞ」
「そこまで俺達は悪いことをしているのか!?」
してるだろ。覗きは犯罪だ。
まぁ、警察じゃなくても生徒会には通報した方が良いな。
「何やってんだ?」
メジャーやら計測するものを持った匙が現れて話かけてきた。
「二人三脚の練習」
「揺れるおっぱいの観察だ」
「七瀬が真面目に練習しているだと!?」
どこに驚いているんだ?後、イッセーは無視でいいのか?
ん?匙の右腕に包帯が巻かれている。
「その包帯はどうしたんだ?」
「ああ、これな」
そう言うと匙が少しだけ包帯を外す。すると、そこには黒い蛇みたいなアザが幾重にも現れていた。
「呪いか。ヴリトラは邪龍だし録な伝説を残してないから気を付けろよ」
「気にしてたことを言うなよ。アザゼル先生に聞いたら、この間のゲームで禁手に至っていた赤龍帝にラインを繋いで血を吸ったのが俺の体と神器に影響を与えたらしい」
「大丈夫なのか?」
「特に悪影響はないようだ」
それは残念。何か悪影響があった方が面白いことになりそうなのに。
「匙、何をしているのです。テント設置箇所のチェックをするものですから、早く来なさい」
「我が生徒会はただでさえ男手が少ないので働いてください」
会長と副会長が現れて匙を呼んだ。
「は、はい、会長!副会長!」
匙が慌てて二人のもとへ戻っていく。
生徒会は色々と準備で忙しそうだな。
「俺は生徒会の手伝いをしようと思うがルフェイはどうする?」
「じゃあ、私も手伝います」
俺達は足を結んでいる紐をとって会長達を追い掛けた。
イッセーのヒロインはアーシアにしようかと思っています。ただ、くっ付ける方法が思い付かない。とりあえず最終回までにはどうにかしたいです。
では感想待ってます。