ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第63話 仲直り

撮影の翌日、俺はやっと小猫が修行している場所に来ることが出来た。

にしても、昨日の撮影は大変だったな。何故か急に現れた『天空の魔鳥』ジズと黒の戦闘が開始したりして。しかも悪乗りしてレヴィアたんまで参加するし。撮影は無茶苦茶だった。まぁ、監督的にはアリらしくて採用していたけど。

そして今、俺の前では信じられない出来事が起きていた。

 

「ふふ、白音。私のものになってもらうにゃ」

 

「……嫌です。私はお姉さまにはついていきません」

 

悪役みたいな笑みを浮かべている黒歌と困った様子の小猫が対峙していた。気配を消して近付いて小猫を驚かせようとしたら、こんなことになっているとは完全に予想外だ。

冥界に来るなと言った時、妙に聞き分けが良いと思ったらこんなことを企んでやがったのか。

 

「……ここなら誰も邪魔は来ないにゃ。大丈夫、白音。優しくしてあげるにゃ」

 

黒歌が嫌らしい手付きと嫌らしい表情で小猫に徐々に迫っていく。

小猫はそんな変態の姿を見て怯えている。あれは俺でも怖いな。完全に頭がおかしい奴にしか見えない。

 

「あれ、助けた方が良いんじゃないですか?」

 

「そうだな、助けるか」

 

小猫に俺が黒歌と繋がりがあるのがバレるのは嫌だが仕方ない。それにこういう事態も予想して小猫を説得する方法も考えているし。

 

「いや、です……。誰が助けて……」

 

「……助けを呼んでも無駄にゃ。この近くに人がいないことはすでに仙術で確認しているにゃ」

 

黒歌は本当に妹と仲直りする気があるのだろうか?そんなことしたら余計に嫌われるだけだぞ。

それとも我慢のしすぎで頭が壊れたか?

 

「そうだ、黒を召喚しといてくれ」

 

「分かりました」

 

俺は能力を使ったまま二人に近付く。そして後ろではルフェイが魔方陣を展開して黒を召喚している。

 

「心配しなくてもお姉ちゃんが気持ちよくしてあげるにゃ」

 

「助けて、先輩!」

 

小猫がここにはいないはずの俺に助けを求める。こういう時に頼ってもらえるのは男として嬉しいな。

 

「OK。助けてやる」

 

俺は能力を解除して黒歌を思いっきりぶん殴る。聖剣でぶった切ろうとも思ったが、さすがにやめた。

 

「……先輩」

 

小猫が俺を見ると安心したのか泣き始めた。そして俺に抱き付いてきた。

俺はそのまま小猫の頭を撫でる。

ルフェイが頬を膨らませながら可愛く嫉妬したように俺を見てくる。かなり幸せすぎてヤバい。

「くっ……。誰にゃ。この近くには誰もいないはず」

 

黒歌が立ち上がると自分をぶん殴った人物を確認する。そして俺を見ると驚いた顔をした。

 

「げっ!霧識!何でこんなところにいるのにゃ!」

 

「そりゃ、こっちの台詞だ、野良猫」

 

「……え?」

 

小猫が俺と黒歌が知り合いだと知ると泣くのをやめて驚いた顔をする。

 

「……もしかしてお姉さまと知り合いなんですか?」

 

「ああ。前に小猫にストーカーしているのを見かけてな」

 

まぁ、本当に小猫にストーカーしているところを何回か目撃したことがあるけど。その度にバレる前に黒歌を追い払っている。

 

「ちょ、さらっと嘘をつくのはやめてほしいにゃ!」

 

「……お前こそさらっと嘘をつくなよ」

 

よく考えたら昨日と合わせてシスコン二連戦か。何とも面倒くさい話だ。

そういや明日はサーゼクスと会う予定だな。何もなければ良いが。

 

「さて、行け、黒。罪には罰だ。あそこにいる野良猫をベーコンするんだ」

 

俺の合図で黒が黒歌に向かって炎の塊を放つ。それを黒歌は魔力の塊で相殺した。

 

「いきなり何するにゃ!?」

 

「それはこっちの台詞だ。何でこんなところにいる?」

 

「そりゃ、霧識が小猫と仲良そうにしているのを見て我慢できなくなったからにゃ」

 

なるほど、それは理解できる。いつか、こんな日が来るんじゃないかとは思っていたからな。

 

「……だが、何で小猫を襲ってるんだ?」

 

「ムラムラしてやった。後悔はしてないにゃ」

 

「後悔しろ!」

 

「Hから始まる仲直りがあっても良いと思うにゃ」

 

「良いわけないだろ!」

 

恋人が少し喧嘩した程度なら、それで良いかもしれないが小猫と黒歌の確執はそんな簡単なものじゃないだろ。

嫌いな相手に犯されて喜ぶ奴とか、どんな特殊な趣味だよ。

 

「……お姉さまと仲良さげですが本当にどういう関係なんですか?」

 

小猫が俺から離れると警戒するように言ってきた。もうちょっと抱き付いたままで良かったんだけど仕方ない。ルフェイも安心した顔をしているし。

て言うか、今のが仲良そうに見えたのか?

 

「そりぁ、一晩を共にした仲にゃ……」

 

黒歌が頬を上気させて色っぽい感じに言う。相変わらずエロい仕草が上手いな。

 

「ああ、この前の夜通しやったゲーム大会な」

 

あの時は大変だったな。特に黒歌と美候は深夜の変なノリになっていたし。

 

「……霧識はつれないにゃ」

 

「実際、黒歌とは何もないしな」

 

まぁ、本当は黒歌に襲われて途中までならヤったことあるけど。だが、何故か黒歌とはヤる気になれない。性格はともかく見た目は悪くないのに何でだろうな。

 

「……ゲーム大会とかやってたんですね。……私もしたことがないのに」

 

更に小猫の警戒レベルが上がる。しまった。いつものノリで話してしまった。俺としたことがこんな簡単なミスをするなんて。

ただ最後の台詞は警戒というよりも嫉妬的な意味合いに聞こえたが。

こうなったら小猫と黒歌を俺が仲直りさせるしかないな。黒歌のことはどうでもいいが、このままでは俺と小猫の関係にも問題が起きる。

 

 

 

 

 

一時間後、黒歌の事情を半分くらい嘘をつきながら説明して小猫を説得することに何とか成功した。頭を撫でたり息を吹き掛けたりしながら小猫の思考力を奪った成果だな。そうじゃなきゃ、ここまで上手くいかなかっただろう。

もちろん、ルフェイから許可をもらっている。今晩、埋め合わせをするのが条件だが。ちなみにキスの許可は下りなかった。

黒歌は邪魔できないように黒と仲良く追いかけっこさせている。後で小猫の寝顔写真をあげる代わりに黒歌は抵抗できないことになっている。

 

「いつまで、こうしてれば良いにゃ!?」

 

「もうちょっと時間がかかりそうだ。具体的に言うと一時間くらい」

 

「さすがにもう限界にゃ!」

 

確かにもうヘロヘロと言った感じだな。

 

「さすがにもう良いんじゃないですか?」

 

もうちょっとしたいんだがルフェイが言うなら仕方ないか。

 

「黒、終了だ」

 

そう言うと黒は黒歌を追いかけるのをやめて俺の元にやって来た。

 

「よしよし、よくやった。次があったら、その時も頼むぞ」

 

「……次なんて……なくて結構にゃ」

 

俺が黒の頭を撫でていたら黒歌がやって来て倒れた。

 

「おいおい、もっと体力鍛えろよ」

 

「……普通、誰でもこうなるにゃ」

 

そうか?ヴァーリやお義兄さんなら余裕でこなせそうだが。

俺が黒歌の相手をしている間にルフェイが黒を魔方陣で帰している。

 

「小猫の説得に成功したぞ」

 

「本当かにゃ!」

 

黒歌が凄い勢いで立ち上がる。

思ったよりも元気じゃねぇか。やっぱり、もっとやっておいた方が良かったな。

 

「……お姉さま、先輩から事情は聞きました。でも、やっぱり簡単に許すことは出来ません」

 

小猫がまだ心を整理しきれてないながらも勇気を出して黒歌に話かける。

 

「じゃあ、どうすれば許して仲直りしてくれるにゃ?そして一緒のベットで――イタッ!」

 

何か俺の苦労が台無しになる気がしたので黒歌を殴ってとめる。いや、もう手遅れか。

小猫が引いた顔をしている。

 

「それはお姉さまの誠意次第です」

 

「誠意って言われても何をしたら良いか分からないにゃ」

 

まぁ、結局は小猫は気持ち次第だからな。具体的に何をしたらいい、みたいな分かりやすい答えはないだろう。

 

「そうですね。じゃあ、まずは禍の団を抜けて――」

 

「分かったにゃ」

 

小猫が台詞を最後まで言い切る前に黒歌が了承した。本当にちゃんと聞いていたのか?

 

「え?そんな簡単に決めていいんですか?」

 

「別に問題ないにゃ。何となく禍の団に入っているだけだしにゃ。それに毎日テロ活動をせずにダラダラと過ごしているにゃ」

 

テロはともかく何かはしろ、って感じだな。このタダ飯ぐらいが。

前にこの事を言ったら体で払うとか訳の分からないことを言っていたな。体で払うんだったら働け。

 

「黒歌が抜けるなら他のメンバーに連絡しておくか?」

 

「そうだにゃ。こうなったらオーフィスも誘って全員で抜けるにゃ」

 

「ちょ、え!?何か私の一言で原因で大事になってきているんですが!」

 

小猫が珍しくアワアワしている。これが昨日、レヴィアたんが言っていたギャップ萌えか。アリだな。

 

「別に問題ない。ヴァーリチームには禍の団でしたいことなんて何もないんだ。全員、何となくいるだけ。小猫が言わなくても、そのうち抜けていたさ」

 

前に俺達は何で禍の団に入ってるんだろうな、って話し合いがあったくらいだ。

ヴァーリとお義兄さんの目的は戦闘、黒歌と美候は娯楽。ルフェイはお義兄さんについてきただけ。全員、禍の団じゃなくても目的は達成できる。

本当に何で入っているんだろうな?謎だ。




どうでもいい話ですが最初『罪には罰だ』という台詞は主人公の口癖になる予定でした。ですが、気付いたら使うのを忘れていました。
今後、この台詞は使うかはその場のノリで決まるでしょう。

では感想待ってます。

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