ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第62話 特撮

俺は午前中は沖田さんの修行を受け、昼飯を食べるとレヴィアたん主演の特撮番組『マジカル☆レヴィアたん』の撮影現場にルフェイと一緒に来ていた。

本当は修行を続けたかったんだが、先にレヴィアたんと約束していたんだから仕方ない。それに俺も特撮に出演できるのは楽しみだからな。

撮影ではレヴィアたんが堕天使の格好をした敵を次々に倒していく。和平を結んだばかりなのに、この番組は堕天使に喧嘩を売っているのか?

 

「あれ、会長?」

 

所在なさげにしている会長を発見した。

何故、こんなところにいるんだ?リアス・グレモリーとのレーティングゲームのために修行しているんじゃなかったのか?

とりあえず俺は会長のところに挨拶に行く。

 

「会長、久し振りです」

 

「っ!?き、き、霧識くん!?な、な、何でこんなところにいるの!?」

 

会長がテンパって凄い勢いで後ずさる。いつもクールな会長にしては珍しいな。

 

「ゲストとして特撮に出演しに来たんです」

 

「霧識くんも今回の特別番組に出演するの?」

 

も?ということは会長も出演するのか。 いつもはレヴィアたんの趣味を恥ずかしがっているのに意外だな。

 

「特別番組って何ですか?」

 

「聞いていないのですか?今回のは二時間の特別番組ですよ」

 

ゲストとして出演してくれ、しか聞いてないんだけど。

 

「にしても、会長がこういうのに参加するのは珍しいですね」

 

「……今回は特別番組だから記念に一緒に出演して、と泣いて頼まれたもので。しかも衣装も準備が終わっているようでしたので仕方なく……」

 

会長が遠い目をしながら言う。

何か、その姿は容易に想像できるな。て言うか、準備した衣装って、もしかしてアレのことか?ちょっと失敗したかもな。

 

『はい、カット!』

 

撮影が一旦、休憩に入ったようだ。すると、レヴィアたんがこっちに向かって走ってきた。

 

「久し振りね、ソーたんに霧識ちゃん」

 

「だから『たん』はやめてください」

 

「それほど久し振りでもないと思うが」

 

て言うか、昨日も会ってるし。

 

「ところで、この子が霧識ちゃんが紹介するって言っていた世界一可愛い魔法少女?」

 

レヴィアたんがルフェイを見ると俺にそう聞いてきた。ちなみにルフェイも撮影に参加することになっている。

 

「そうだ」

 

「初めまして。ルフェイと言います」

 

ルフェイが可愛らしくペコリと挨拶する。

 

「うん。確かに凄く可愛いね」

 

「だろ?」

 

ルフェイの可愛さがあれば世界から争いをなくせると言っても過言じゃない。いや、むしろルフェイの可愛さを取り合って戦争になるか。

 

「でも、これなら私の勝ちだね」

 

レヴィアたんがウインクしながら可愛く訳の分からないことをほざきやがった。

 

「何、言ってんだ?確かにレヴィアたんも可愛いのは認める。だが、ルフェイの方が可愛いに決まっているだろ!」

 

男には譲れない戦いというものがある。これがそうだ。

仮に魔王と全面戦争になっても、これだけは譲れない。

 

「いや、私の方が可愛いもん」

 

レヴィアたんが頬を膨らませて子供のような仕草をする。こんな子供みたいな性格で本当に仕事がちゃんと出来ているのか心配になるが今はどうでもいい。

 

「え~と、霧識さん。毎回そこまで力説しないで大丈夫ですよ。私は霧識さんが可愛いと思ってくれるだけで充分ですから。……それに恥ずかしいですし」

 

「……ルフェイ。そう言ってくれるのは嬉しい。だが、これだけは譲れないんだ」

 

俺はルフェイの頭を撫でながら言う。するとルフェイは顔を赤くして幸せそうな顔をする。何回見ても、やっぱり可愛い。

 

「レヴィアたん、このルフェイを見ろ。この可愛さに勝てる存在がこの世にあると思うのか?」

 

「くっ……。………あ!」

 

レヴィアたんが悔しそうな顔をしたかと思うと次の瞬間、何かを思い付いたような顔をする。

そしてレヴィアたんが会長に抱き付く。会長の顔がみるみる赤くなる。

 

「確かに可愛い女の子が照れている姿は可愛いね。でも、それならソーたんも負けてないんだから」

 

それも良いが俺的には百合な感じの方が興味がある。特に姉妹というところがポイントが高い。

て言うか、ルフェイとレヴィアたんの対決のはずなのに何で会長が参加するんだ?まぁ、いいけど。俺のすることは変わらない

 

「ちょ、いきなり何するんですか、お姉さま!?」

 

会長は言葉で言うほどに抵抗の意味を示していない。姉に抱き付かれたのが実は嬉しいのだろう。やっぱり会長もシスコンか。

俺はレヴィアたんに対抗してルフェイに抱き付く。もちろん撫でるのはやめない。

 

「は、はわわわわわ。いきなり何するんですか!?」

 

ルフェイがいきなり抱き付かれて焦りながらもウットリとした表情をする。

 

「会長は可愛いというよりもクールなイメージだ。会長よりもルフェイの方が可愛い!」

 

「霧識ちゃんは分かってないね。いつもはクールなソーたんが照れるから可愛いんだよ!ギャップ萌えというヤツだね!」

 

くっ!確かにそれは否定できない。ギャップ萌えには俺も理解がある。と言うより好きだ。

 

「それにコレを見てよ」

 

そう言うとレヴィアたんは一枚の写真を取り出した。その写真には笑顔でレヴィアたんに抱き付いている幼い会長が写ってた。

 

「どう?可愛いでしょ?」

 

ルフェイには僅かに劣るが、それでもかなりの可愛さだ。

 

「……ルフェイ。子供のころの写真はあるか?」

 

「え~と、それなら兄が撮りためていたはずですが……」

 

お義兄さんか。直接、頼んでも見せてくれないだろうな。盗み見みるしかない。

 

その後も俺とレヴィアたんは照れて赤くなっているルフェイと会長を幸せそうに眺めながらお互いの可愛いところを言い争っていく。

途中からテンションが高くなってお互いに抱き締めるのをやめて火花を散らせながら睨み合う。レヴィアたんに関しては比喩ではなく魔力で本当に火花が散っている。何か死にそうな気がするが、ここで退くことは出来ない。

 

「そろそろ撮影を再開しますよ!」

 

監督らしき人物が現場全体に聞こえる声で言う。

だが、俺とレヴィアたんの自慢対決は続いていく。

 

「……え~と、撮影を開始したいのですが」

 

女性スタッフが怯えながら言ってきた。

 

「「邪魔だ(しないでね)!」」

 

俺達に怒鳴られて女性スタッフは涙目で走り去っていく。魔王に怒鳴られたのが、よっぽど怖かったのだろう。

 

「……お姉さま、マトモに仕事しないなら私はこのまま帰りますよ」

 

「霧識さんも真面目にやらないなら……え~と、少し……微粒子程度ですが嫌いになりますよ」

 

「「すみませんでした!」」

 

俺とレヴィアたんは喧嘩をやめて同時に土下座した。どんなに僅かでもルフェイに嫌われるのは嫌だ。

 

「じゃあ、撮影を再開しようかー!」

 

レヴィアたんは撮影に向かう。

 

「ちょっとスタッフさん、聞きたいことがあるんですけど」

 

俺は近くで暇そうにしているスタッフに自分の仕事の事を聞く。

どうやら俺の役は邪神を復活させて世界征服を狙う悪の魔法使いブラックファントムで、ルフェイはブラックファントムの従者らしい。俺はちょい役だと思っていたが重要なキャラだな。

会長の役はレヴィアたんのピンチに颯爽と現れるレヴィアたんの妹役だ。完全に私情が入っているな。

 

そして撮影が休憩になると、またレヴィアたんはやって来た。

 

「ねぇ、霧識ちゃんに頼んでいた衣装は持ってきてくれた?」

 

「持ってきたけど大丈夫か?言われた通りに色違いの同じ衣装を用意したけど」

 

「それがどうしたの?」

 

レヴィアたんが首を傾げて不思議そうな顔をする。本当に気付いてないのか?

 

「役からして着るのはレヴィアたんと会長だろ?」

 

「うん、そうだね」

 

「つまり、胸のサ――」

 

俺は背後から物凄く重いプレッシャーを感じて台詞を最後まで言うことは出来なかった。

プレッシャーの発生源を見てみると会長が絶対零度の笑みを浮かべている。

 

「……何か?」

 

リアス・グレモリーの母親と同じ雰囲気だ。だが、俺は学習する男。同じ方法で二回も負ける訳にはいかない。

 

「いえ、何もありません!そうですよね!パッ……うおっ!」

 

会長が魔力の塊を放ってきた。明らかに全力だ。

俺はそれはギリギリのところで避けることに成功した。

 

「……その続きを言ったら殺しますよ」

 

本気の目だ。もし、さっきの台詞の続きを言ったら迷わず俺を殺すだろう。

 

「すみませんでした!」

 

さすがに土下座はしなかったが全力で頭を下げた。俺は学習する男だ。次から同じ雰囲気を感じたら逆らうのはやめよう。

 

「じゃあ、もう少ししたら霧識ちゃん達の出番だから向こうの衣装室で着替えておいてね」

 

そういや俺の衣装って、どんな感じなんだろうな?俺が持ってきたのはレヴィアたんと会長が着るフリフリの魔法少女の服装だけだ。

そんなことを考えていたら向こうから監督が困った様子でやって来た。

 

「すみません、セラフォルー様。ちょっと困ったことになりまして」

 

「どうしたの?」

 

「実は次のシーンで使う怪獣が急に来れなくなりまして」

 

「う~ん、それは困ったね。CGを使う訳にはいかないし」

 

いや、CGで良いだろ。何で変なところで拘ってるんだよ。

 

「あ、良いこと思い付きました」

 

ルフェイが手を合わせて言う。やっぱり可愛い。

 

「何をだ?」

 

「いえ、怪獣役ですが黒ちゃんに頼んではどうでしょう?」

 

ああ、なるほど。黒はケルベロスだ。そこら辺の怪獣よりも迫力がある。

 

「監督、良い代理がいるぜ」

 

「何ですか?」

 

「ルフェイ、頼む」

 

「分かりました」

 

ルフェイが魔方陣を展開すると中から黒が現れる。そして現れた黒が頭を下げて俺に向けてきたので撫でる。最初は可愛げに欠けると思っていたが、育てているうちに愛着が沸いてきた。

 

「地獄の番犬ケルベロスこと黒だ。どうだ?」

 

「おー、良いですね。これでいきましょう。と言うより、これでいかせてください!最初の怪獣なんて、どうでもいいです!」

 

監督が予想以上に黒に食い付いてきた。

て言うか、最初の怪獣役がどんな生物かは知らないが何か可哀想だな。




ペットにしたはいいけど全く出番のなかったケルベロスの登場です。多分、次回も登場します。

では感想待ってます。

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