ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第58話 フェニックス家

若手悪魔の会合が終わった後、アジュカとファルビウムに挨拶した。アジュカとは仲良くやれそうな気がする。

その後、俺はルフェイと合流してフェニックス家に来ていた。

グレモリー家に負けてないほどの大きい城だ。フェニックス家はレーティングゲームが始まってから台頭してきた成金の一族らしいが、かなり稼いでいるようだな。

 

「お久し振りですわね」

 

入り口に着くとレイヴェルとライザーの『兵士』ミラが出迎えてくれた。

 

「ああ、そうだな」

 

実際に会うのはかなり久し振りだ。コカビエルの一件があってトップ会談が終わるまで、駒王町は簡単に出入り出来なくなっていたからな。別に俺から会いに行っても良かったが、その暇がなかった。

 

「ところで、何でミラがいるんだ?」

 

「七瀬さんが来ると聞いたのでお出迎えに来たんです」

 

特にミラと接点はなかったと思うんだが。強いて言えばミラがイッセーのドレス・ブレイクを食らった時に庇ったくらいだ。

 

「……霧識さん、もしかして」

 

「何だ、その人を疑うような目は?」

 

「いえ、別に」

 

ルフェイが拗ねたようにそっぽを向く。その仕草も可愛いが俺は悪くないだろ。

 

「で、ライザーはどこにいるんだ?まずはそっちを片付けないとな」

 

「それでしたら、あちらですわ」

 

俺達はレイヴェルとミラに案内されてライザーが引きこもっている部屋に向かう。

俺はライザーの引きこもりを治す代わりに冥界にいる間、泊めてもらう約束をしている。ライザーの件は俺にも少し責任があるしな。一通り弄った後で引きこもりを治してやることにした。

 

「ライザーの様子はどんな感じなんだ?」

 

「部屋にこもって、一日中レーティングゲームの仮想ゲームをしているか、チェスの強い領民をわざわざ家に呼び寄せて一局しています」

 

前にレイヴェルから聞いた説明と一緒だな。毎日、同じことをして飽きないのかね?

 

「ところでルヴァル・フェニックスはいるか?今回の目的の一つなんだが」

 

「ルヴァルお兄様は今日は仕事でいませんわ」

 

それは残念。まぁ、まだ機会はあるから良いか。今日は別のことをするだけだ。

 

「本当にレーティングゲームが好きなんですわね」

 

「色々な対戦方法があって勉強になるからな。それに選手もバラエティーに富んでいて面白い」

 

中には歴史上の人物や伝説の生物を眷属にしている奴もいるくらいだ。これ以上の見せ物はそうはない。

各勢力にもレーティングゲームのファンがいるのも頷ける話だ。

 

「特に好きな選手は誰なんですか?」

 

ミラが興味深そうに聞いてきた。

 

「そうだな。好きな選手は沢山いるが嫌いな選手なら決まっている。『皇帝』ディハウザー・べリアルだ」

 

「へぇ、意外ですわね。ディハウザー・べリアルはレーティングゲームのランキング一位でファンも沢山いますのに」

 

確かにディハウザー・べリアルには沢山のファンがいる。だが、それでも俺は好きになれない。

 

「だってべリアル家の特性は『無価値』だろ。何の面白味もない」

 

『無価値』は相手の特性を一時的に意味のないものにする能力。フェニックス家で例えるなら不死身でなくなるということだ。

俺は選手の特性が見たいのに、これでは意味がない。

 

「確かにそう言われれば霧識さんの趣味には合わないかもしれませんわね」

 

理由はそれだけではないが。何となくだがディハウザー・べリアルの戦いは嘘臭い。俺には圧倒できるのに盛り上がる試合を演出しているように見える。

まぁ、それに関しては俺も同じだが。だが、俺とディハウザー・べリアルでは決定的な違いがある。俺は楽しんでいるが、ディハウザー・べリアルは楽しんでいない。そこが俺の一番気に食わないところだろう。

 

「あ!お兄さん、発見!」

 

「久し振り、お兄さん!」

 

上から声がしたので見てみるとイルとネルが二階から俺に飛び込んできた。そして俺の上に乗っかってきた。

 

「久し振りだな、イルにネル」

 

俺は二人を下ろしながら挨拶する。

 

「ねぇ、私達と戦おうよ!」

 

「この前は決着が着かなかったからね!」

 

それも良いかもな。この前は途中で邪魔が入って仲良くなり損ねたし。

 

「じゃあ、ライザーの引きこもりを直してからな」

 

「ヘタレなライザー様をよろしくね!」

 

「今度こそバラバラにしてあげる!」

 

相変わらず可愛い顔で怖いことを言うな。そしてライザーの評価が低いな。

 

「また後でね!」

 

「バイバイ!」

 

そう言うと二人はどこかに走り去っていった。元気な二人だな。

 

「……前から思っていましたけど、霧識さんは可愛い女の子とすぐ仲良くなりますね」

 

「可愛い男の娘とも仲良くなったがな」

 

「……何のフォローになっていませんわ」

 

そうか?そんなことはないと思うが。

 

「ちゃんと仲の良い男もいるぞ。サーゼクスとかミカエルとかアザゼルとか」

 

「……見事に三大勢力のトップしかいませんわ」

 

レイヴェルがどうリアクションを取っていいか困っている感じだ。

いやいや、ちゃんと他にもいるぞ。ヴァーリチームのメンバーに曹操、アルマロスだっている。

 

「着きましたわ」

 

レイヴェルが火の鳥のレリーフが刻まれた扉の前で止まった。ここがライザーの部屋か。

 

「ところで、どうやってお兄様を治すつもりですの?」

 

「チェスをするつもりだ。トラウマの原因の一つである俺に勝つことが出来れば自信の回復に繋がるはずだ」

 

「なるほど。それだけでは足りないかもしれませんが、切っ掛けには良いかもしれませんわね」

 

俺の意見に納得したレイヴェルがコンコンと扉をノックする。

 

「あれ?霧識さんってチェスが得意だったような」

 

ルフェイが呟いているが、今は触れない方が良いだろう。

 

「お兄様、チェスの相手が来ましたわ」

 

即興で嘘をつくレイヴェル。やっぱり頭が切れるみたいだ。

 

「……それは明日じゃなかったか?」

 

中から覇気のない声が聞こえてくる。話には何回も聞いていたが本当に重症みたいだな。前に会った時とは別人みたいだ。

 

「いえ、今日ですわ。ずっと引きこもっているから時間の感覚がずれているんじゃないですの?」

 

「そうか。じゃあ、扉を開けるから少し待ってくれ」

 

そしてライザーが扉を開けて顔を見せた。髪はボサボサでだらしない格好をしている。

 

「……この女の子が今日の相手か?」

 

俺とルフェイを勘違いしているのか?何か不自然なほど視線が俺の方を向かないが。

 

「いえ、こちらがお兄様の相手ですわ」

 

ライザーが一瞬、俺を見る。そして、またルフェイの方を見る。

 

「……この女の子が今日の相手か?」

 

さっきと同じ台詞を繰り返すライザー。どうやら勘違いではなく、ただの現実逃避らしい。

 

「やぁ、久し振りだな、ライザー」

 

俺は手を振りながら友達に話かけるようにライザーに挨拶した。それを見てライザーは怪訝な顔をする。

 

「……レイヴェル。俺を騙したのか?」

 

おい、せめて返事くらいはしろよ。

 

「騙していませんわ。今日は霧識さんがお兄様のチェスの相手をします」

 

「……何?この男が俺の相手だと」

 

やっとライザーの意識が俺に向く。

 

「ああ、そうだ。それとも自分の得意分野でも俺に勝つ自信がないか?」

 

「いいだろう。そこまで言うなら戦ってやる」

 

そして三十分後

 

「 I win!You lose!」

 

結果は俺の快勝。強いは強いけど定石通りといった感じで次の手が読みやすかった。

ライザーはチェス盤に倒れこんでいる。そして顔をあげて俺に言う。

 

「クソッ!貴様が勝ったのは偶然だ!調子に乗るなよ!」

 

「だったら、もう一局するか?」

 

「当然だ!」

 

更に一時間後

 

「……得意のチェスでも勝てないなんて。俺には何の価値もない。死のう」

 

ライザーはベットに寝転んで完全に塞ぎこんでいた。

何も出来ず俺に三連敗したのが堪えたようだ。

 

「ちょっと、どうするんですの!?更に酷くなっていますわよ!」

 

「いや、ライザーが思ったよりも弱かったから」

 

「グハッ!」

 

血反吐を吐くライザー。不死身のフェニックスにも精神攻撃は有効のようだ。

 

「今にも死にそうですわよ!」

 

マジで死ぬ一歩手前って印象だ。俺が思っていたより精神が弱いな。

 

「こうなったらユーベルーナを呼ぼう。男なんて単純な生き物。女を抱けば元気になるはず」

 

特にライザーは眷属をハーレムとか言うスケベ。この方法でいけるはず。

 

「それなら毎晩のようにヤっています」

 

「マジか、ミラ」

 

「はい」

 

う~ん、どうしたものか。正直、安全な方法はこれしか考えていなかったんだが。

こうなったら最終手段を使うしかないか。

俺はスマホを取り出してアルマロスに電話をかける。

 

「ちょっと例の実験の被験体の話だが。――ああ、どんなことをしても死なない便利な奴が見付かったぜ。――OK。俺は忙しいから部下をこっちに手配してくれ。――大丈夫大丈夫。仮に死んでも俺が責任を取るから。後は任せたぜ」

 

そして俺は電話を切る。これでライザーの引きこもりの件は解決するだろう。最後までライザーが生きていたらの話だが。

 

「……今の実験とか死ぬとか物騒な会話は何ですの?」

 

「ライザーの引きこもり脱却プロジェクトだ。鉄球でサンドイッチされるくらいだから安心しろ」

 

「……それは実験と言うよりも拷問の気がしますわ」

 

言われてみれば、そんな気もするな。まぁ、大丈夫だろ。俺も鉄球を食らったけど生きているし。ライザーの場合は俺の時よりも重量も数も増えているらしいけど。

 

その後、背中にGの刻印を刻んだライザーがレーティングゲームの大会を荒らし回ったというが、それはまた別の話である。




久し振りのライザー眷属の登場に、原作よりも早いライザーの復活?です。
ライザーの出番はもうありませんが、眷属達の出番はまだあります。

では感想待ってます。

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