お義兄さんと俺の母親が刃を交える。二人共、かなりの実力者。衝撃がこっちにまで伝わってくる。
「だから、どういう状況なんだ!?誰が説明してくれ!」
「ふむ、仕方ない。では簡単に説明してやろう」
剣士の方はルフェイとレイナーレに任せて俺はこっちだな。
「白龍皇には周囲を半分にする力がある」
「……だから何なんだ?」
「分からないか?つまり白龍皇が本気になればリアス・グレモリーの胸を半分にすることが出来る、ということだ」
「な、何だと……」
自分の世界観がひっくり返ったかのような衝撃的な表情をするイッセー。
毎度のことながら何でこの作戦はこんなに上手くいくだろうな。
「更に何度も能力を発動することで小猫並の絶壁にすることもイテッ!」
「……余計なお世話です」
不満そうな顔をした小猫が俺に石を投げ付けてきた。小猫は胸なんかなくても可愛いから大丈夫だぞ。
「なるほど、その発想はなかった。それで身長も半分にすれば世界中の女性を幼女化できるな」
さすがの俺もそこまでの発想はなかったよ。だが悪くない計画だ。ちょっと魔法使いで実験してみるかな。
「ふざけんな、てめぇ!俺の部長のおっぱいを半分にするつもりかァァァァッ!」
「それも良いかもしれないな」
俺も良いと思うが、その場合サーゼクスを敵に回すことになる。それだけは避けたい。いや、案外サーゼクスも乗ってくるかもしれない。
「さぁ、イッセー!今こそアザゼルからもらったリングを使い、白龍皇を倒すんだ!」
『ご主人様、台本と台詞が少し違いますよ!』
確かに台本と台詞が違う。台本ではヒーロー番組風にリアス・グレモリーの胸を半分にすることを企む悪の白龍皇を倒せ! みたいな台詞だった。だが幼女化計画を聞いた今、ヴァーリを悪とは呼べない。
て言うか、何で向こうの実況をしているはずなのに、こっちのもちゃんと聞いてんだよ。
「許さねぇ!絶対に許さねぇぞ、ヴァーリ!」
『Welsh Dragon over Booster!』
今までにないほど迫力のイッセーがリングを使い禁手状態になる。前にライザーと戦った時とは桁違いのドラゴンの力を感じる。イッセーにとってはリアス・グレモリーの処女よりも胸の方が大事なのか。
「ハハハハハッ!面白しれぇ!こんな二天龍対決は初めてだ!」
アザゼルが大爆笑している。その気持ちはよく分かる。俺も笑いを堪えるのが大変だ。
「……最低です」
小猫が半眼でツッコむ。確かにイッセーは最低だ。
「ウォォォッ!」
イッセーが凄い勢いで空中にいるヴァーリに向かって突進する。
「いいぞ、かかってこい!少しは楽しめそうだ!」
イッセーの体重の乗った全力の一撃をヴァーリは片手で受け止める。
「聞いていた話よりはパワーが上がっているな。だが、まだ足りない」
「クソッ!」
イッセーが更に攻撃するが、ヴァーリはそれを全て避ける。
「アスカロン!」
イッセーが籠手からアスカロンを伸ばして攻撃するが、それでもヴァーリには一撃も与えられない。アスカロンは龍殺しの聖剣。当たれば大ダメージだが、当たらなければ意味はない。
「ぐはっ!」
イッセーがヴァーリの一撃を胸に食らった。足がガクガクいってるし、鎧にヒビがはいっている。このままでは呆気なく決着が着きそうだ。
こうなったら、もっと煽るしかない。
「どうした、兵藤一誠!貴様の胸に対する想いはその程度か!神器は所有者の想いで進化する!お前の意思が本物ならドライグは応えてくれるはずだ!」
『そんな想いに応えたくないわァァァァッ!お前は毎回毎回、胸のことで相棒を煽りやがってェェェェェッ!天龍を何だと思ってやがるんだァァァァッ!』
ドライグが俺に怒鳴ってきた。ストレス溜まってたんだな。でも俺じゃなくて、そんなことでしかパワーアップできない自分の相棒を恨め。
「何か幻聴が聞こえるな。もしかして病気か?」
『無視するつもりか!』
『諦めろ、赤いの。奴はそういう男だ。私もいつも宿主を幼女関係で弄られて苦労している』
何かアルビオンがドライグを慰めている。かつて二天龍を相手に三大勢力が手を結んだように、俺を相手に二天龍が手を結ぼうとしている。
二天龍の仲直りか。それは興味深い。俺は人間のまま死ぬつもりだから、次の赤龍帝と白龍皇には会えないだろう。だったら二天龍の因縁を俺が終わらせるのも面白い。
まぁ、悪魔に転生する可能性もあるけど。
「ふざけるな!おっぱいは俺の全てだ!それがこの程度な訳がないだろ!」
更にイッセーのドラゴンの力が増す。やっぱりイッセーをパワーアップさせるには胸関係で煽るしかないな。諦めろ、ドライグ。
そしてイッセーは再度、ヴァーリに突進する。ヴァーリの魔力の弾が当たり、装甲が少しずつ破壊されていくが気にせず突っ込む。
「食らいやがれ!」
イッセーが全力の力を込めた拳はヴァーリの防御を破壊して顔面をぶん殴った。
「!?」
ヴァーリは予想外の一撃に何が起こったか一瞬、理解できなかったみたいだ。
恐らくアスカロンを籠手に収納したまま龍殺しの力だけを拳に宿らせたのだろう。予想以上の成果だな。さすがにまだヴァーリに勝つのは無理だろうが、今後の成長が楽しみだ。
「グッ!」
俺の母親が飛んできた。
『若干アーサー選手の方が有利に勝負を進めています』
へぇ、あのお義兄さんが若干か。やっぱり、かなり強いみたいだな。剣士対決は後で撮ったヤツを見るか。
「大丈夫か、紫織ちゃん!」
「大丈夫よ、お兄ちゃん。でも邪魔しないでね。久し振りに面白い相手なんだから」
母親は狂気的な笑みを浮かべながら立ち上がる。
ゾクッとくるものがあるな。フリードもイカれていたが、その比じゃない。本当に人間か疑わしいレベルだ。
「そうこなくては。私も楽しいですよ」
「ええ、そうね」
二人が再度、刃を交えようとした時、絶対零度よりも冷たい声が聞こえてきた。
「……私は楽しくないですよ」
声が聞こえた場所を見てみると執事服の目が笑ってない男性がいた。俺に向けられた言葉じゃないのに寒気がする。
「「「…………」」」
全員の視線がその人に集中する。イッセーとヴァーリも戦闘を中断している。まだ撮影の途中なんだけど、どうしよう?
「げっ!駿くん!何で、ここにいるの!?」
さっきまでとは一転して恐怖を顔に浮かべる母親。父親の方を見ると同じく恐怖を顔に浮かべ冷や汗をかいている。
「……何で?それは貴女達が勝手にハワイを飛び出して、こんなところに来ているから追い掛けてきたのですよ」
丁寧な言い回しが更に恐怖を煽る。
「逃げるわよ、お兄ちゃん!」
「了解!」
二人はお義兄さんとの勝負を捨てて一目散に逃げる。
「逃がすわけないでしょうが」
そう言うと執事服の男の右手に鞭が現れる。それで男は二人を捕らえた。もしかして神器か?俺の知らない神器だ。
「ちょ、私達をどうするつもり!?」
「もちろんお仕置きです」
物凄く良い笑顔だ。この人は間違いなくドSだな。
「妹は悪くないぞ!全部、俺が悪いんだ!妹の分も俺が受ける!」
「なるほど、妹を庇う姿には好感がもてますね」
「じゃあ!」
「はい、二人共仲良くお仕置きの量を二倍にします」
「「グワワワワッ……ガタッ」」
急に二人が電気に打たれたみたいな感じになった後、気絶した。電気の鞭がこの人の神器なのか?
そして二人を引っ張ってこっちに、というよりミカエルのところに来た。
「すみません、ミカエル様。この馬鹿共を会談の間、邪魔しないように海外に繋ぎ止めておくのが私の仕事でしたのにこんなことになってしまって」
なるほど、それでハワイにいたのか。国外追放みたいなものか?何か違うな。
「構いませんよ。お二人が来た頃には、すでに会談が終わっていましたので」
「そう言ってくださると有り難いです。では私はこの馬鹿共にお仕置きをしなくてはいけませんので、これで」
ミカエルに礼をすると男は帰ろうとする。次の瞬間、俺を見ると少し驚いた顔をして話かけてきた。
「もしかして霧識くん?」
「そうだけど。もしかして知り合い?」
う~ん、会った記憶はないな。
「私の名前は萩原駿。君の両親のお付き……というより監視役をしているものです。君が赤ちゃんの時に抱いたこともあります」
へぇ、そうだったのか。あの両親の監視役ねぇ。
ん?もしかして毎月の振り込みはこの人がやっているのか?
「会談に関する資料を読んでいて君の名前を見付けた時は驚きました。しかも堕天使側の代表ですからね」
「色々とあったんだよ」
まぁ、アザゼルに会う前から色々あったけど。
「ところで、この二人は俺のことを覚えていないみたいだけど」
とりあえず一番気になっていたことを質問する。
「そうなんですか?おかしいですね。この前、霧識くんの話で花蓮さんと盛り上がっていたのですが。内容は……言わない方が良いですね」
え?何それ?逆に気になるんだけど。
「じゃあ、また後でお家に挨拶に行きます」
そう言うと今度こそ萩原さんは二人を引きずって帰っていった。
「……ミカエル、お前のところの部下は大変そうだな」
「……その分、仕事面では優秀なんですけどね。それに、そちらも同じでしょう?」
何かアザゼルとミカエルが話している。
「よし、イッセーとヴァーリ。試合再開だ」
「「出来るか!」」
二人同時にツッコまれた。
まぁ、気持ちは分かる。もう完全にそんな空気じゃない。試合映像は撮れた分を編集してどうにかするか。
じゃあ、もうすることはないし、いつも通り面倒事を押し付けられる前に帰るか。
父親の持つ神器の出番がなかったですね。ちゃんと設定は考えているんですが。
両親は次回も出ますが、その次の出番はかなり先になると思います。その時に神器を使う予定です。まぁ、案外すぐに出る可能性もありますが。
もう一人の主人公の家族の出番はもう少し先になります。
では感想待ってます。