「私に格の差を教える?所詮、貴方は道化師。そんな貴方に何が出来ると言うのですか?」
俺を馬鹿にしたような口調で喋るカテレア。
それ、完璧な前フリだから。やられ役として良い仕事をするな。
「こんなことだよ」
そう言うと俺は手を上にあげてパチンッと指を鳴らした。
すると魔法使いの半分近くが黒いローブを脱ぎ捨てた。
「なっ!これはどういうことですか!?」
「今、ローブを脱ぎ捨てた奴はお前じゃなくて俺の仲間だ。やれ、お前ら!」
俺の指示で黒いローブを脱いだ魔法使いが脱いでいない魔法使いに攻撃を開始する。
「これはどういうことかな?」
「見た通りだよ、サーゼクス。俺は禍の団に潜入捜査して内部から破壊した」
今回のやり方は破壊というよりも乗っ取りの方が近いけど。
「そうじゃなくて、今回のテロの発案者は君なのかと聞いているんだ」
「いやいや、発案者は俺じゃなくてカテレアだ。俺はそれに乗っかっただけ。まぁ、元々テロなんて実行させた上で完璧に潰す予定だったけど」
「完璧に潰す?魔法使いを従えた程度で図に乗らないことね」
従えた、という言い方は正確じゃないな。仲間にした、の方が正しい。
ちなみに仲間にした方法は十八禁なので言えない。強いて言うなら予想以上に色々なタイプの変態が多くて大変だった。さすがに全員ではないが結構な人数とヤったから腰が痛い。中にはレズもいたので、そいつらはレイナーレに相手してもらった。
「お前こそ部下の手綱も握れないのような奴が魔王を名乗るつもりか。今の状況を見たら俺の方が魔王に相応しいんじゃないか?時間があれば全員を仲間にすることも出来たぜ」
「ふん、それがどうしたのですか?魔法使いなんていなくても、私にはまだコレがあります」
そう言うとカテレアは懐から小瓶を出した。
「あれは何だ?」
「え~、では実況さん。解説をよろしく」
俺が全部一人で解説をしたのでは実況の二人の意味がない。
『カテレア・レヴィアタンが取り出したのは蛇と言われるもので、オーフィス様の力を宿したものです』
『簡単に言うと飲むだけでパワーアップできる栄養ドリンクみたいなものです』
何か怪しい響きだな。まぁ、蛇にはリスクなんてないけど。
「オーフィスだって!?彼が遂に動き出したのか!」
彼?ああ、そういやオーフィスには姿とか性別の概念はなくて、前は男の姿をしていたんだったな。俺には今の姿が全てだから関係ないけど。
「そう、オーフィスが禍の団のトップです」
そうなのか?もうオーフィスはお前らに興味はないぞ。
「そう言えば、実況をしている二人は誰なんだ?お前の友達か?」
「それに関しては別の機会をお待ちください、って感じだ」
レイナーレが生きていることがバレたらイッセーあたりに何を言われるか分からない。まぁ、バラしてリアクションを見るのも面白そうだが。
「まぁ、それでも強いて言うなら、世界一可愛い魔法使いと変態だ」
『そんな……世界一だなんて……。言い過ぎですよ』
いやいや、全く以て言い過ぎではない。それだけは断言できる。
『ちょっとご主人様、一言だけでは私の変態性が伝わりませんよ』
知るか。後で自分で説明しろ。
「ちょっと霧識ちゃん!今、実況している子が世界一ってことは私よりも可愛いって言うの!」
レヴィアたんが凄い勢いで詰め寄ってきた。レヴィアたんがふざけるたびにカテレアが物凄い表情で睨んでくるんだが。
「うん」
即答する俺。レヴィアたんも可愛いけど、やっぱりルフェイの方が上だな。
「こうなったら私が世界一だってことを証明してあげるわ!」
そう言うとレヴィアたんは魔法使いの戦いに参戦した。それで証明できるのは強さだけで、可愛いさの証明は無理だと思うぞ。
「セラフォルー!仮にもレヴィアタンを名乗っているのですから、もっと威厳のある姿を見せなさい、とさっき言ったばかりでしょ!」
何かカテレアが厳格な母親でレヴィアたんが自由奔放な娘みたいに見えてきた。
「黒いローブを脱いでる奴は俺の仲間だから攻撃するなよ!」
「分かったわ」
そしてレヴィアたんも魔法使いを蹂躙し始める。さすが魔王だな。普段はふざけていても強い。
「今、気付いたんだが白龍皇はローブを脱いだ奴を攻撃してないか?」
「正解だ、ゼノヴィア。白龍皇はテロリスト側だ」
思ったよりも気付くのが遅かったな。
「……それは本当の話か?」
「そうだけど」
「いつかヴァーリが俺の手元が離れるような予感はしていたが、本当にそうなるとはな。あれだけ『世界を滅ぼす要因だけは作るな』と言ったのに」
まぁ、そういうことも有り得たか。昔の自分の性癖に気付かず戦闘にしか興味のなかったヴァーリなら。
「大丈夫大丈夫。今のヴァーリにその意思はないから」
「……は?」
アザゼルが驚いた表情をする。
「あいつ、俺が性癖をバラしたから完全に開き直ってからな。今のヴァーリは幼女のご機嫌取りで忙しい。まぁ、全く成功しないけど」
「うるさい!」
ヴァーリが魔法使いの蹂躙をやめて俺に魔力の塊を放ってきた。俺はそれをギリギリのところで避ける。
「何すんだ!当たったら死ぬだろ!」
「知るか!余計なことを言うお前が悪い!」
そんなんだからオーフィスも相手してくれないんだよ。
「……何か分からないけど、イラッときたのでもう一発」
ヴァーリがカテレアの隣に並ぶともう一発撃ってきた。
「危なっ!」
今回も避けることに成功したけど、さっきよりも威力が上がっている。
「おい、ヴァーリ!お前は何のために禍の団に入ったんだ!」
「禍の団に入ったのは強い奴と戦うためだ。だが、俺がここにいるのは七瀬霧識を倒すためだ」
『ここで解説します。ヴァーリ様は普段から霧識さんに弄られまくってイライラしていました。だから今回のゲームで霧識さんを倒してリーダーとしての威厳を取り戻そうとしているのです』
さすがルフェイ。ちゃんと俺の指示したタイミングで俺の書いた台本を読んでくれたな。
「……いつまで私を無視したら気が済むのですか?」
かなりイライラした様子でカテレアが言ってきた。正直な話、忘れていた。
「そうだったな。俺はお前に格の差を教えてやるんだった」
「そんな減らず口を叩けるのもここまでです」
カテレアがさっき取り出した蛇を飲み込んだ。その瞬間、カテレアの全身から放つ魔力が脹れあがった。
「バァンッ!」
俺は銃声を口に出してガンマンのように祓魔弾を取り出して早撃ちする。そして弾丸がカテレアの喉元にヒットする。
前にオーフィスと一緒にアニメを見た時に格好いいと言っていたので練習した。
「グッ……。ですが、蛇の力を得た私にその程度の攻撃は」
「それはどうかな?」
俺の攻撃を食らったカテレアの魔力が元に戻る。
「な、力が!?何をしたのですか!?」
「蛇に衝撃を与えて破壊した」
「そんなこと出来るはずがない!」
まぁ、そうなんだけど。新校舎の上で黒歌と一緒に見学しているオーフィスが弾が当たると同時に蛇を回収しただけだ。
「お前が今の事象を信じようが信じなかろうが、どうでもいい。重要なのは蛇の力がなくなったことだ」
「くっ……」
悔しそうな表情をするカテレア。だが本番はここからだ。
「さぁ、どうする?お前は仲間を失い、力を失った。他にも何か手があるなら早くしろ。俺はお前の全ての希望を壊して完全勝利する!そして絶望的なまでに圧倒的な格の差を教えてやろう!」
俺はカテレアに打つ手がないことを知っていながら、わざと煽る。
「……これじゃあ、どっちが悪役か分からないな」
『ご主人様はいつも、こんな感じですよ』
余計なことを言うな、レイナーレ。せっかく格好つけているのに台無しになるだろ。
「仮にも真の魔王を名乗るなら他人の力になんか頼らず自分の力でどうにかしろよ。そんなんだから魔王になれなかったんだよ」
俺は異空間から夢幻の聖剣を取り出して構えながら言う。
「……言わせておけば。それなら……グッ!」
俺に攻撃を仕掛けようとしたカテレアの右腕が急にどこからか飛んできた攻撃に吹っ飛ばされた。
え~と、何が起こった?こんなの俺のシナリオにはないんだが。
攻撃が来た方向を見てみると二人の変人がこっちに歩いてきていた。一人は侍みたいな格好をしながら西洋剣を持った女。もう一人は魔法使いが持つような杖を持ちながら忍者みたいな格好をした男。何とも奇妙な格好をした二人組だ。
「ありゃ?外しちゃったか」
「いやいや、右腕を吹っ飛ばしただろ」
「私にとっては相手を殺せなかったら外したのと同じなの、お兄ちゃん」
ヤバい!あの二人はカテレアなんかよりも遥かに面倒だ。
「……さっきの攻撃は聖剣の波動だな。もしかして味方か?」
「不正解だ、ゼノヴィア。奴等は史上最悪の敵だ」
シナリオに狂いが出るが仕方ない。今は奴等の排除が先だ。
「気持ちは分かりますが、アレは味方ですよ」
「知り合いなのか、ミカエル」
「彼等は七瀬霧識くんの両親です」
遂に主人公の両親が登場。詳しい説明は次回します。
では感想待ってます。