「匙、何事ですか?」
俺がセラフォルー・レヴィアタンからサインを書いてもらったところで会長が現れた。後ろにはリアス・グレモリーとサーゼクス、そしてもう一人紅髪の男性がいる。おそらく、二人の父親だろう。
「ソーナちゃん!見つけた☆」
セラフォルー・レヴィアタンは会長を見付けると嬉しそうに抱き付く。
「な、何故、お姉さまがここに……。今日のことは黙っていたはずなのに」
「うぅ、酷いよ、ソーナちゃん。ショックで天界に攻め込もうとしちゃたんだから」
涙目で口調は可愛いが言っていることが恐ろしい。しかも冗談には聞こえない。
「セラフォルー様、お久し振りです」
「あら、リアスちゃん。おひさ~」
会長に抱き付いたままリアス・グレモリーに挨拶するセラフォルー・レヴィアタン。聞いて通りの自由な性格だな。
「イッセー。ご挨拶しなさい」
「は、初めまして。リアス・グレモリー様の『兵士』をやっている兵藤一誠です。よろしくお願いします」
イッセーが頭を下げなから真面目な挨拶をする。イッセーなら初対面の目上の人物が相手でも嫌らしい目付きでセクハラじみた発言をすると期待していたんだが。残念だ。
「初めまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」
一旦。会長から離れてピースサインで横向きにチェキするセラフォルー・レヴィアタン。あざとい感じはするがアリだな。
「ねぇ、霧識ちゃん。この子が噂の赤龍帝?」
いきなり『ちゃん』付け!俺も誰が相手でも馴れ馴れしくするタイプだけど、これはそれ以上だ。て言うか、『ちゃん』付けなんてされたのは生まれて初めてだ。
後、何で俺に聞いたんだ?
「そう、この変態が赤龍帝の兵藤一誠です、レヴィアたん」
「何だ、その不本意な紹介のされ方は!?後、魔王様に対して慣れ慣れし過ぎるだろ!」
一番正しい紹介の方法だと思うが。後、本人がそう呼べ、って言ってるんだから問題ないだろ。
「おー、その名前で呼んでくれたのは霧識ちゃんが初めてだよ。皆、私が魔王だからか遠慮して呼んでくれないのよね」
俺の手を掴みながら嬉しそうにするレヴィアたん。多分、呼ばれないのは魔王とか関係なくて恥ずかしいからだと思う。俺は別に恥ずかしくないけど。
「と言うわけで、ソーたんも霧識ちゃんを見習ってお姉ちゃんと仲良くしよう。そして姉妹同士での抱き合いながらの百合展開とかが良いと思うのよ」
「『たん』はやめてください!そして、絶対に嫌です!」
会長が強い意思でレヴィアたんの意見を否定する。目元は引きつっているが。姉が恥ずかしいのだろう。
ちなみにイッセーはサーゼクス達と話している。会話を聞く限り、もう一人の紅髪の男性は予想通りサーゼクスとリアス・グレモリーの父親のようだ。
「酷い!ソーナちゃんがお姉ちゃんを苛める!」
レヴィアたんが何故か俺に泣き付いてきた。もしかして、俺にこんなになついているのはファンだと言ったからか?何とも距離感がつかめない。
後、一応『たん』付けはやめたのか。
「大丈夫。会長は人前だから恥ずかしがっているだけ。別に本気で嫌っているわけじゃない」
「……本当?」
上目使いの上に涙目のレヴィアたん。ヤバい。かなり可愛い。これは応援するしかない。
「本当だ。俺も手伝うから頑張れ」
「何で余計なことを言うのですか!?」
会長が焦ったように言ってくる。この様子から見て、俺の予想は当たっているようだ。
「よし、お姉ちゃん、頑張る!」
何か幼児化しているような気がするけど可愛いから良いか。これが本性の可能性もあるし。
「もう我慢できません!」
いつもは冷静沈着な会長が目元を潤ませて、この場を走り去っていく。何か俺の中のS心がくすぐられる。
「よし、行きましょう、レヴィアたん!」
「お姉ちゃん、ソーたんの気持ちが分からなくてごめんね!今から二人っきりになれる場所に向かうのね!」
「違います!そして『たん』付けはやめてください!」
そして俺とレヴィアたんは会長を追い掛けていく。ちなみに俺と会長は午後の授業には出席できなかった。
そして翌日の放課後、オカルト研究部のメンバーは旧校舎一階の『開かずの教室』とされている部屋の前に来ていた。能力が危険視され封印されていたリアス・グレモリーのもう一人の『僧侶』がここにいるらしい。扉には幾重にもテープが貼られており、呪術的な刻印も刻まれている。
「……何で霧識くんがいるのかしら?貴方の趣味を考えて呼んでいなかったはずなのに」
俺の趣味?言い方から、いつもの悪ふざけのことを言っている感じではないが。どういう意味だ?
「昨日、サーゼクスと電話した時に聞いた」
「お兄様ったら……」
リアス・グレモリーが頭に手を当てて呆れたように言う。
そして魔方陣を展開して扉の封印を解き始めた。
「そういや昨日の昼休み、俺達と分かれた後、どうなったんだ?」
「……今、それを聞くのか?」
どう考えても今、気にする事ではないんだが。まぁ、それだけ気になっていたということか。
「プライベートな問題なので言うことは出来ない」
一つ言うとしたら俺的には非常に満足できる展開だった。少し興奮しすぎたせいで鼻血が出てしまったが。そしてサーゼクスと同じようにレヴィアたんとも仲良くなれた。
何か今度、レヴィアたんが主演の特撮番組『マジカル☆レヴィアたん』への出演も決まった。和平前にグリゴリの人間の出演を決めて良いのか、とは思うが。まぁ、すでに和平は決まっていることだし、気にしなくていいか。
「さて、扉を開けるわ」
扉に刻まれていた呪術的な刻印が消え去り、扉が開く。
「イヤァァァァァアアアアアッ!」
物凄い声量の絶叫が響き渡る。
リアス・グレモリーと姫島朱乃は気にせず中に入っていく。そして俺も続いて中に入ると薄暗い部屋の中に棺桶があった。そういや、詳しいことは聞いてないけど確か吸血鬼だったな。それで棺桶か。
にしても、この部屋は俺が好きな感じに可愛く装飾されているな。仲良くやれそうな気がする。
「おー、男の娘!初めて見た!リアルにいたのか!」
この部屋のある主は駒王学園の女子制服を着た可愛い男の娘だった。何か怯えているけど、どうでもいい。とりあえず、まずは写真を撮らないと。
「ヒィィィ!何ですか、この人は!?怖いです!」
怯えている顔も可愛い。昨日もそうだったが新しい扉を開きそうだ。
「うおっ!こんなにテンションの高い霧識は初めて見た!」
遅れて入ってきたイッセーが俺を見て驚く。その後ろには小猫にゼノヴィア、木場とアーシアもいる。
「おおっ!金髪美少女!」
ん?イッセーは何を言ってるんだ?まぁ、いい。忙しいから後回しだ。
「怖いぃぃぃ!助けてぇぇぇっ!」
「よし、良い表情だ!」
「それは犯罪です」
「イテッ!」
小猫が俺の鳩尾を殴ってきた。いつもなら避けれたが、今回は写真を撮るのに集中しすぎて気付かなかった。
「……一撃で気絶させる予定でしたのに。意外と頑丈ですね」
さらっと物騒なことを言うなよ。にしても何か不機嫌だな、小猫。
「もしかして俺が小猫以外を撮ってるのが不満なのか?」
「……違います」
やっぱり照れている顔が一番可愛い。撮っておくか。
「小猫ちゃん、ありがとう!助かったよ!」
「よしよし、もう大丈夫」
吸血鬼が小猫に抱き付いて、それを小猫が頭を撫でながら慰めている。可愛い女の子と可愛い男の娘の組み合わせ。ヤバい。昨日に続いて鼻血が出そうだ。
百合も良いかもしれないな。一人は男だけど。
「……いつも俺のことを変態って言うけど、霧識って俺以上の変態だろ。おかげで金髪美少女を見てテンションが高くなっていたのに冷静になったぜ」
「何を勘違いしているか知らないが、あいつは男の娘だ」
この場における金髪美少女はアーシアだけだ。
「……男の娘?つまり、あいつは女じゃなくて女装野郎ってこと?」
イッセーが引きつった表情をしている。何がショックなんだ?
「ええ、霧識くんの言う通りよ。彼はギャスパー・ヴラディ。私の『僧侶』で駒王学園の一年生。そして、転生前は人間と吸血鬼のハーフよ。ちなみに趣味は女装」
人間と吸血鬼のハーフか。ギャスパーは可愛いだけじゃなくて面白い存在でもあるわけか。
「こんな残酷な話があっていいものか……」
落ち込んだように倒れ込むイッセー。気にするのは女装の部分だけなのか。
「おい、イッセー。性別は関係ない。可愛いという結果だけが大事なんだ。それに男の娘なんて萌えるだけだろ?」
「うるせぇ!お前みたいな変態と一緒にするんじゃねぇ!」
どうせイッセーは胸にしか興味のない変態。男の娘の良さは分からないか。
「何を言ってるんですか?」
呆れたような表情で小猫が俺とイッセーの会話に入ってきた。
「ほら、小猫ちゃんも言ってやれ!」
「男の娘は最高じゃないですか」
「小猫ちゃんまでもか!」
やっぱり小猫には男の娘の良さが理解できているようだな。良く見たら少し鼻血が出ている。
主人公の性癖について説明しておくと可愛いければ全てが守備範囲です。つまりロリだけじゃなく、年上も男の娘もアリです。ちなみにショタも範囲内です。
後、今回で百合も追加されました。
では感想待ってます。