ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第37話 禁手

禁手(バランス・ブレイク)偽りの現実の支配者(ミラージュ・ファントム・ルーラー)』!」

 

俺を中心に球体のようなものが広がっていき、会長達が張っている結界の手前で拡大が止まる。

 

「な、何だ、この空間は!?これが貴様の禁手か!?」

 

コカビエルが俺の禁手を前に動揺している。得体の知れないものに恐怖を覚えるのは当たり前だし、これにはそれだけの価値がある。

 

「正解だ、コカビエル。そして、この空間全てが俺の支配領域だ」

 

通常状態ではお互いがお互いを認識する必要があったが、禁手状態ではこの空間の中にいるもの全てが能力の効果範囲だ。そして、今までと違って想像したものを自由に認識させることが出来る。ちなみに使用限界は三十分。本気で能力を使えば、もっと使用時間は減る。

 

「イッツ・イリュージョン!」

 

グラウンド中から大量の花火が上がる。まぁ、そう見えるだけで実際に花火が上がっているわけではないが。

 

「……綺麗」

 

「綺麗だね」

 

花火は大反響のようだ。昨日、テレビで見た花火対決の花火を再現しているから綺麗なのは当たり前だけど。

 

「こんなものは所詮、幻!俺にダメージを与えることは出来ない!」

 

「それはどうかな?」

 

俺がパチンッと指を鳴らすと花火がコカビエルに直撃する。

 

「あちっ!クソッ!」

 

花火を当てすぎてコカビエルが見えなくなっている。何というかシュールな絵で面白い。

 

「どうだ?脳が認識すれば幻でもダメージを受けるんだぜ」

 

ちなみに痛みは感じるけど、体にダメージはない。だから相手を殺すことは出来ない。まぁ、精神を破壊することは出来るけど。

 

「だが、花火ごときで俺を倒せると思うなよ!」

 

「そうだろうな。最初からそんなことは思っていない」

 

俺は花火を中断する。俺のイメージで能力を発動するから、複数のものを同時に出すのは難しいのだ。

 

「次はこれだ!」

 

俺は巨大ロボットを出した。

 

「巨大ロボット、かっけぇ!」

 

イッセーが巨大ロボットを見て感動している。エロ以外にも興味があったのか。

よく見たら小猫も子供ようなキラキラした目でロボットを見ている。女の子といってもオタクだから、こういうのも興味あるのか。本当に色んなものが好きだな。

 

「……おい、これってもしかして」

 

「そう、コカビエルの予想している通り、これはマオウガーだ!」

 

現在、アザゼルが制作中の巨大ロボットを完成させた姿だ。アイデアは俺も色々と出している。

 

「ふざけるなよ!それのせいで俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ!?アザゼルの野郎、人数が足りなくなるとすぐに俺を呼び出してやがって!断ると給料を払わないし!しかも人が乗るタイプの奴を作った時、無理矢理に俺を乗せた上に爆発したんだぞ!それなのにアザゼルの奴は侘びの一つもいれず笑うだけだ!せめて迷惑料ぐらいは払いやがれ!」

 

マオウガーを見た瞬間、今までの不満が爆発したのか次々に文句を言うコカビエル。ストレス溜まってたんだな。

 

「……ねぇ、グリゴリってブラック企業か何かなの?」

 

「別に組織自体がブラックではない……と思う。副総督のシェムハザさんがちゃんと管理しているし。ただ、幹部の性格に問題があるだけで」

 

ちなみに下っぱは意外なことに真面目な性格の奴が多い。でなきゃ、グリゴリが組織として成立するはずがない。

 

「霧識先輩がそこまで言うなんて、よっぽどなんですね」

 

何か言葉にトゲがあるな。まぁ、いいけど。

 

「何かそれを見ていたらムシャクシャしてきた!」

 

そう言うとコカビエルはマオウガーに向かって全力で攻撃する。おい、そんなことしたら学校が壊れるだろ。

そしてマオウガーは壊れてグラウンドには巨大なクレーターが出来た。

 

「て言うか、本物じゃないから壊しても意味ないけどな」

 

壊れたマオウガーが復活する。しかも三体に増えて。

 

「貴様、何が目的だ!?いつも通りの嫌がらせか!?さっき俺も含めて全員を楽しませるって言ったよな!?」

 

「い、いや、その……。最初はそのつもりだったんだけど……」

 

何かコカビエルが可哀想すぎて何とも言えない。本当に最初は華麗にフィニッシュまでもっていくつもりだったんだ。それがマオウガーを出した瞬間に潰れてしまった。

だが、その程度で手を緩めるほど俺は甘くない。

 

「いけ、マオウガー!」

 

マオウガーが三体連続でコカビエルに向かってロケットパンチをする。

 

「そんなものが効くか!」

 

コカビエルはマオウガーの攻撃を食らうが、気合いで弾け返した。コカビエルのキャラが崩壊してるな。いつもなら笑うんだけど、今日は何か笑えない。

 

「じゃあ、次はこれだ」

 

コカビエルの後ろから鎌を二つ出して翼を斬る。それと同時に翼が切れたように誤認させる。

 

「なっ!翼が!」

 

実際に切れたわけではないが、コカビエルは落下していく。

そして下に直前まで認識できなくして待ち構えさせていたケルベロスがコカビエルに火球の球を撃ちだして丸焦げにする。

 

「食われてたまるか!」

 

下で食べようと口をつき出しているケルベロスをコカビエルは光の剣を出して斬ろうとする。

 

「させるか」

 

次は縄を出してコカビエルをベーコンみたいに締め付ける。て言うか、こんがり焼けていることもあって本当にベーコンみたいだ。

 

「……ダラダラ」

 

「おい、小猫。よだれを拭け」

 

俺に言われて焦った様子で小猫はすぐによだれを拭いた。戦闘で腹が減ってるからって、アレを食べようとか思うか?

そしてコカビエルはケルベロスの口の中に入った。

 

「ペッ!」

 

コカビエルが吐き出された。不味かったのか。この場に何とも言えない空気が流れる。

とりあえずフィニッシュまでやったが、予定とは違って華麗に出来なかったな。俺にはシリアスの才能がないのだろうか?

 

「ところで食べる?」

 

「「「食べるか!」」」

 

全員にツッコまれた。一応、ケルベロスの火で良い感じに焼けているから食べれないことはないと思うぞ。俺は何があっても食べたくないけど。

 

「おい、何を馬鹿なことをやってるんだ?」

 

声がしたので上空を見てみると、禁手して白い鎧に包まれているヴァーリがいた。ギリギリ間に合ったみたいだな。

 

「料理教室でコカビエルのベーコン焼きを作ってた」

 

「そんなことよりも何でコカビエルがベーコンになってるんだ?こいつには俺のストレス発散に付き合ってもらう予定だったのに」

 

自分から聞いておいて、その言い種は何だ?

 

「……おい、あいつは誰だ?」

 

イッセーが緊張したように言ってきた。ライバルである白龍皇には本能的に感じるものがあるのか。て言うか、そんなことは俺よりもドライグに聞けよ。

 

「そうだな。良い機会だから紹介しておくか。俺の仲間でイッセーのライバルの白龍皇だ」

 

名前は俺が言うよりも本人から名乗らせた方が良いだろ。

 

「こいつがドライグの言っていた奴か……」

 

「ちなみにロリコンだ」

 

「……へ?」

 

俺のヴァーリに対する追加情報にイッセーが目を丸くする。全く予想していなかったのだろう。俺も最初にヴァーリがロリコンだと知った時は驚いたからな。

 

「余計なことを言うな」

 

「いいだろ。真実なんだから」

 

それに早いか遅いかの問題だ。赤龍帝VS白龍皇の演出プランもすでに考えている。次はちゃんと撮影して冥界のテレビで放映してやる。

 

「それにロリコンという言い方も好きじゃない。戦いばかりの日々を送っているから、たまには純粋で可愛いものを見て癒されたいだけだ」

 

自分から勝手に戦いばかりの日々を送ってるんだろうが。それに癒されたいだけなら人形でも充分なのに前、断っただろ。

つくなら、もっとマトモな嘘をつけ。

 

『宿主には苦労しているようだな、白いの』

 

イッセーの籠手が光だして声を発している。ドライグか。

 

『それはそっちも同じだろ、赤いの。聞いてるぞ。常に女性の胸を見てムラムラしている万年発情男が宿主だと』

 

ヴァーリの鎧の宝玉も白き輝きを発した。

 

「何だ、その失礼な紹介のされ方は!?」

 

イッセーが心外そうにしている。真実だろ。

 

『たまにはこういう宿主もいいぞ』

 

『だが、こっちは変態だが歴代最強の宿主だ。対して、そっちは変態で歴代最弱の宿主だ。戦いにはなるとは思えないぞ』

 

別に変態をつける必要はないだろ。にしても、これが貴重な二天龍の会話か。全く神聖な感じがしないな。

 

『確かに今のままだと戦いにならないだろうな。だが、それは今後の成長しだいだ』

 

『そうか。では俺達と決着をつけるまでには宿主を強くしていろよ、ドライグ』

 

『ああ、もちろんだ。じゃあな、アルビオン』

 

二天龍の会話が終わったようだ。

 

「兵藤一誠、一言だけ言っておく」

 

「な、何だ?」

 

これは意外な展開だな。ヴァーリのことだからイッセーのことを無視して帰ると思っていたのに。何を言うつもりなんだ?

 

「胸はただの脂肪の塊だ。そんなものには何の価値もない」

 

それだけ言うとヴァーリはベーコンになっているコカビエルと、股を押さえて気絶しているフリードを回収すると飛んで帰っていた。

最低の捨て台詞だな。

 

「てめぇ、戻ってこい!おっぱいの素晴らしさを徹夜で教え込んでやる!」

 

イッセーがコカビエルと戦闘している時よりも本気の目で叫ぶ。

 

「……史上最低の二天龍」

 

小猫が軽蔑するような目で呟く。それには俺も激しく同意だ。だが、それが面白くて良いんだがな。

さて、めんどくさい後処理とか手伝わされる前に帰るか。




予想以上に酷いことになりました。全部マオウガーのせいです。原作を読んでいて何となく出したいな、と思って出したらこんなことになりました。

では感想待ってます。

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