ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第31話 商談

「嫌だぁぁぁぁ!俺は帰るんだぁぁぁぁ!」

 

イッセーの話を聞いた匙が青ざめながら逃げようとする。そして、それを小猫が捕まえている。

ちなみに俺と小猫は参加することを決定している。下手なことされてアザゼルの計画を潰されたら困るからな。何よりもこんな面白そうなことに俺が参加しないなんて有り得ない。小猫は木場のためだろう。

 

「これはお前ら、グレモリー眷属の問題だろ!シトリー眷属の俺には関係ない!」

 

俺はグレモリー眷属じゃないけどな。にしてもイッセーも他にいないからって普通、匙を誘うか?

 

「参加しないとイッセーと木場と匙の三角関係という噂を流すぞ」

 

「ふざけんな!何だ、その訳の分からない脅しは!」

 

「何で俺まで巻き込むんだよ!?」

 

面白そうだからだろ。それに意外と腐女子に人気があるからな。

 

「だが、協力したら確実なソーナ会長の口説き方を教えてやる」

 

「よし、協力しよう」

 

一瞬で意見を百八十度変えるとは。現金な奴だ。

 

「本当にそんな方法があるんですか?」

 

小猫が他の二人に聞こえないように小さな声で聞いてきた。

 

「多分な。匙には絶対できない方法だけど」

 

その方法とは会長にチェスで勝つこと。会長は前に付き合うなら自分よりも頭の良い相手じゃないと嫌だ、と言っていた。そして会長よりも頭の良い奴なんてほとんどいない。つまり、会長よりも頭が良いことが証明されれば付き合える可能性は高い。

 

「じゃあ、まずはゼノヴィアとイリナを見付けないとな」

 

「ああ、それなら居場所を知ってるぞ」

 

「何?どこにいるんだ?」

 

「案内するから着いてこい」

 

ケーキバイキングに行く途中で見かけたんだよな。

 

「そういや、駅前のケーキバイキングって女子限定じゃなかったか?」

 

「神器で俺を女と誤認させたに決まってるだろ」

 

同じようなことは今までにも何回かしてるから馴れたものだ。欲しいグッズが女子限定の場合もあるからな。

 

「なぁ、それって女子更衣室に堂々と入れるってことか?」

 

「……だからイッセーは俺の神器を覗きに使おうとするな」

 

何で毎回同じようなリアクションをするんだろうね、こいつは。

そして俺達は路頭で祈りを捧げるイリナとゼノヴィアのところに着いた。

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲を」

 

まだ移動していなかったのか。て言うか、よく補導されなかったな。他の連中もこんな怪しい二人組には関わりたくないということか。

 

「……何やってんだ、あれ?」

 

「イリナが騙されて絵画を高額で買わされたらしい。それで金がないから、あんなことをやっているみたいだ」

 

俺の幼馴染みはどうしようもない馬鹿らしい。にしても、馬鹿に露出狂。教会の人手不足はそこまで深刻なのか?

 

「何でそこまで知ってんだ?」

 

「少しの間、様子を見ていたからな」

 

十分くらい観察していたけど面白かった。小猫が早くケーキを食べたいと言うから途中でやめたが。

 

「だったら助けてやれよ」

 

「だって恥ずかしいだろ?」

 

こういうのは遠くから見ているから面白いんだよ。当事者には出来るだけなりたくない。

 

「こうなったら異教徒を脅してお金をもらうしかないわね。主も異教徒相手なら許してくれるはず」

 

馬鹿な幼馴染みが物騒なことを言っている。仮に主が許したとして日本警察が許すわけないだろ。法治国家なめんなよ。

 

「寺でも襲撃するのか?やめておけ」

 

露出狂が真面目なことを言っている。

 

「それよりもエクスカリバーを使って大道芸をしよう。どの国でも通じるインターナショナルな娯楽だ」

 

「それは名案ね。エクスカリバーで果物でも切れば路銀は溜まるはず!」

 

俺と同じぐらい酷いエクスカリバーの使い方をしているな。

俺は見兼ねて二人にアドバイスをすることにした。

 

「ストリップショーでもしたらどうだ?」

 

これなら体一つで儲けることが出来るからな。ゼノヴィアにはピッタリの稼ぎ方だ。

 

「あれ?何で霧識くんがここに?」

 

「なるほど。その手があったか!」

 

ノリノリだな。普通の女の子は嫌がるはずなんだが。

 

「おー、ストリップショー。何て素晴らしい響きなんだ!」

 

イッセーもノリノリだな。こいつは変態だからどうでもいいけど。

 

「ちょっとゼノヴィア!やめてよね!一緒にいる私も恥ずかしいんだから!」

 

「元はと言えばイリナが絵なんか買ったのが原因だろ!」

 

喧嘩を始める二人。腹が減って苛立っているのだろう。

 

「どうしますか?」

 

「そうだな。お前ら、飯を奢ってやろうか?」

 

「では早く行こう」

 

「そうね」

 

一瞬で喧嘩をやめる二人。どいつもこいつも現金だな。

 

 

 

 

 

「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

ガツガツとファミレスで注文したメニューを腹に治めていくゼノヴィアとイリナ。

後、イリナが食べているのは洋食だから故郷の味ではないな。

 

「……おい、こんなに頼んで金は大丈夫なのか?」

 

「春休みにラスベガスに行ってギャンブルで荒稼ぎしてきたから大丈夫だ。贅沢しなければ一生働かなくても暮らしていけるだけの金はある」

 

最初はギャンブルで神器を使うつもりはなかったんだけどな。グリゴリでもギャンブルで巻き上げたりしていて金に困っていなかったからな。でも一人、妙にイカサマが上手い奴がいたからムカついて神器を使ってそいつを破産まで追い込んだのは良い思い出だ。

 

「高校生の生活じゃねぇよ」

 

「ああ、そうだ。イッセーと匙は自腹で払えよ」

 

可愛い女の子に貢ぐのはいいけど、男に払う金なんて一銭たりともない。

 

「いや、元から自分の分は自分で払うつもりだったから良いけどよ」

 

「待て!そんなに金があるなら俺の分も払ってくれたっていいだろ!エロゲーの初回特典版が高かったせいで今月、ピンチなんだよ!」

 

俺と匙と小猫はイッセーを軽蔑したような目で見る。ゼノヴィアとイリナは食べるのに夢中で話を聞いていない。

 

「小猫も好きに頼め」

 

「元からそのつもりです」

 

「おい、俺の話を聞け!」

 

変態で馬鹿な奴の話など聞く必要はない。

そして食べ終わったところで本題に入る。

 

「で、私達に接触した理由は?」

 

「イリナのエクスカリバーを買い取ろうと思ってな。値段は一千万でどうだ?」

 

前に擬態の聖剣を使った時に気に入ったんだよな。応用力も高くて色々なことに使えそうだ。

 

「本題はそれじゃねぇよ!」

 

「俺にとっての本題はこれだ」

 

正直、いらないことをしてコカビエルに接触されて面倒なことになっても困る。護衛とかめんどくさいからコカビエルが事を起こすのを待つ方が俺にとって都合が良い。

 

「いや、さすがにエクスカリバーは売れないよ」

 

「でも一千万だぞ。このまま何も食べられずに餓死をしてはエクスカリバー奪還どころではない。ここは慎重に考えるべきだ」

 

「う~ん、難しいところね」

 

自分で言っておいて何だが迷うなよ。エクスカリバーを売っていいわけないだろ。そして、仮にエクスカリバーに値段をつけるとしたら一千万で済むわけないだろ。

 

「だったら二千万でどうだ?」

 

「……話をずらさないでください」

 

パシーン!

 

小猫がどこから取り出したのか分からないがハリセンで叩いてきた。そして小猫は食事を再開する。これはツッコむべきか?

 

「……残念だけど仕方ないわ。エクスカリバーを売るわけにはいかないからね」

 

本当に残念そうにしているゼノヴィアとイリナ。これは頑張ればどうにかなるかもしれない。

そして我慢できなくなったイッセーが無理矢理、本題を始める。

 

「あんた達からしたらエクスカリバーを堕天使に利用されるぐらいなら破壊した方が良い。違うか?」

 

イッセーにしては頭を使ったようだな。それだけ本気ということか。

 

「ああ、その通りだ。それで?」

 

「俺達もエクスカリバーの破壊に協力したい」

 

木場のためにエクスカリバーを破壊したいイッセーと、エクスカリバーを破壊してでも回収したいゼノヴィアとイリナ。利害は一致している。

 

「そうだな。一本ぐらいならいいだろう。ただし、正体はバレないようにしてくれ。こちらもそちらと関わりを持っているように上にも敵にも思われたくない」

 

無理だな。トップ会談が行われた場合、確実にバレる。

にしても意外と簡単に許可したな。

 

「ところで盗まれたエクスカリバーは何なんだ?それを知っていた方が対処しやすい」

 

「天閃、夢幻、透明の三つだ」

 

どさくさに紛れて盗むなら夢幻だな。適当に壊れたことにすれば大丈夫だろ。

 

「……何か企んでいますか?」

 

「気のせいだろ」

 

何のことを言ってるか分からないな。俺は常に誠実な男だ。戯言だけどな。

 

「でも悪魔の手を借りていいの?」

 

「一人は悪魔ではなく人間だ。後はドラゴンの力を借りたことにしたらいい。上も人間やドラゴンの力を借りてはいけないとは言ってない」

 

どう聞いても屁理屈にしか聞こえないな。柔軟と言えば聞こえはいいが、よく分からない考えの持ち主だな、ゼノヴィアは。

 

「じゃあ、木場にも連絡するぞ」

 

そう言うとイッセーは携帯を取り出て木場に電話した。

 




コカビエル戦のどさくさに紛れて、どうにかエクスカリバーを盗めないかと考えています。中々、難しくて思い付きませんが。

では感想待ってます。

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