ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第24話 VS匙

「ゲーム七瀬 1ー0」

 

まずは俺がパーフェクトで一ゲーム目を制した。

 

「さて、これで終わりか、匙元士郎」

 

「お前の『氷の世界』は見破った。まだ勝負は分からないぜ」

 

「……何?」

 

相手の死角を突くこの技を見破った、だと。ハッタリには見えないがどうするつもりだ?俺なら目を瞑って耳だけで反応するが。匙に同じことが出来るとは思えない。

 

「まずーゲーム目、匙先輩のサービスゲームを霧識先輩が制しました。二ゲーム目で霧識先輩の『氷の世界』を破って匙先輩、逆転できるか。要注意です」

 

にしても小猫、楽しそうだな。試合をしている俺よりも盛り上がっている。

 

「七瀬 サービスプレイ」

 

俺はコーナーギリギリにサーブを打つ。

 

「さぁ、お前の意地、見せてもらうぜ」

 

「負けるかよ」

 

匙は俺のサーブをなんなくレシーブした。まぁ、会長と練習していたというなら、これぐらいは余裕だろ。

そういや、匙は勝った場合、俺にどんな命令するか聞いてないな。後で聞くか。

 

「ほうら、凍れ」

 

な!?死角がない!まさか!

 

「これでどうだ!」

 

「ちっ!」

 

初めてポイントを取られたな。今までの匙とは雰囲気が違う。

 

「0-15」

 

「今のはどうやって返したんですの?」

 

「簡単な話です。集中して視野を広げ、反応速度を上げることで死角を消したんです」

 

口で言うのは簡単だが、実行するのは難しい。悪魔だからこそ出来たことか。

 

「だったら、もう一回。ほうら、凍れ」

 

「その技は見破ったと言っただろ」

 

「0-30」

 

まぐれではないみたいだな。

 

「おいおい、キングってのも意外と使えんぜよ」

 

やっぱり自分とタイプの違うキャラを使ったのが間違いだったかな。

 

「多少はやるようだな。見直したぞ」

 

「負け惜しみを言うな。『氷の世界』を破ったんだ。後は身体能力の高い俺の方が有利だ」

 

匙は俺が改造人間だということを知らないから、そう考えるのも無理はない。いや、それを計算に入れても俺が一つしか切り札を用意していないと考えている時点で匙の敗北を決定しているようなものだ。

 

「だったら、お前のその思い上がった幻想をぶち壊してやろう」

 

俺はそう言うとサーブを打って試合を再開した。『氷の世界』にはもう一段階あるが使う気はない。技名を言うのが恥ずかしい。ここは別のキャラでいくか。

 

「瞳に映る全てのもの、因縁和合の幻であり夢か、はたまた現実か……。『幻有夢現』」

 

「何が『幻有夢現』だ。そんな球、余裕で――」

 

スカッ。

 

匙は球がある場所とは全然違う場所で空振った。

 

「15ー30」

 

「何か雰囲気が変わりましたわね。まるで別人ですわ」

 

「今のは匙先輩が霧識先輩の動きや呼吸等から次のプレイを予測する。そこで霧識先輩は打つ瞬間にコースを変えることで匙先輩にあるハズもない打球を追わせたんです」

 

いや、違うけどね。それはお互いに一流の技術があって初めて出来ることだから。そんな技術は俺も匙も持っていない。これは単純に俺が神器の能力で認識をずらしただけだ。

 

「さて私の必殺技は後、十三個あります。これでも続けますか?」

 

これは嘘だ。正確には俺の手持ちは一つだからな。

 

「何か口調まで変わっていますわね」

 

それはキャラに引っ張られたからだな。まぁ、これはこれで雰囲気が出るからいいか。

 

「クソッ!諦めてたまるか!」

 

「じゃあ、やってみてください。『幻有夢現』」

 

そして俺はまたポイントを取った。

 

「30-30」

 

「これはもう匙先輩に勝ち目はありませんね」

 

ここでヒロインが応援に来たら面白いんだけどな。花戒も仁村も試合が終わってすぐに生徒会の用事があるから来れないらしいし。会長が来るとも思えない。

 

「じゃあ、もう一回『幻有夢現』」

 

「40-30」

 

「これでマッチポイント。匙先輩、後がありません」

 

さて最後はアレにするか。

 

「次は一球でいいばい」

 

「まさかコレは!?」

 

「どうかしましたの?また口調が変わったのと関係があるのかしら?」

 

まさか今の言葉だけでバレるとは。小猫、詳しすぎるだろ。

 

「コレは『無我の境地』の奥の三つの扉の一つ『才気煥発の極み』。頭脳を活性させることで一球ごとの戦略パターンを瞬時にシミュレートし最短何球目で決まるかを見ることが出来る究極奥義」

 

小猫のテンションが高すぎて少し怖いな。こんなに喋っているのは初めて見た。

ちなみにコレは改造人間も神器も関係ない素だ。

 

「こんなところで負けたら会長に顔向けに出来ねぇ!」

 

「だったら、その覚悟を見せてみるばい。『神隠』」

 

コレは俺が神器で途中でボールを認識できなくする。匙は俺のサーブを打ち返……した。

 

「え?何で?」

 

驚きすぎて口調が崩れたけど、どうでもいい。何故、返せた?匙を見てみると目を瞑っている。

 

「まさか!」

 

「匙先輩は神経を研ぎ澄まし、来た打球を素直に返しているだけなので霧識先輩に次の手を読ませていません」

 

マジか。土壇場で能力が開花するとか主人公かよ。

 

「匙!この私が練習に付き合ってあげたのです!勝ちなさい!」

 

声が聞こえた場所を見てみると会長が応援に来ていた。ここでヒロインの登場。何か俺が逆転負けしそうな流れだな。

だが、その流れを潰すから面白い。

 

「僕の本気を見せてあげよう、匙元士郎!」

 

コレは使いたくなかったんだがな。

 

「君にはもう聞こえていないだろうけどね」

 

匙が音を認識できなくした。

 

「ゲームセットオンバイ 七瀬 2-0」

 

よし、これで俺の勝ちだ。とりあえず俺は能力を解除する。

 

「最後のはもしかして……」

 

「……最低です」

 

実況の二人が俺に冷たい目を向けてくる。しょうがないだろ。スポコン的な展開にイラッときたんだから。

 

「匙……。貴方は頑張りました」

 

負けて落ち込んでいる匙のところに会長が励ますためにやって来た。何だ、この展開。俺の予定と違うんだが。

 

「でも俺は負けてしまいました!会長に練習まで付き合ってもらったのに!七瀬の奴に裸でグラウンド百周させられませんでした!」

 

「「は?」」

 

匙がいきなり訳の分からないことを言ったせいで俺も会長も驚いてしまった。

ん?こいつは何て言ったんだ?

 

「……匙、よく聞こえませんでした。もう一度、言ってください」

 

会長の目が笑っていない。かなり怖い。

 

「……え~と、七瀬の奴を裸でグラウンド百周……」

 

「霧識くんに勝つために練習に付き合ってください、と私のところに来たのはそのためですか?」

 

「……はい」

 

俺よりも匙の方がえげつないことを考えていたな。

 

「匙、お尻を出しなさい。お尻叩き千回です」

 

会長の手には魔力が込められている。しかも、こんな人前で。コレは痛い上に恥ずかしくて死にたくなるな。

 

「お、おい、七瀬!助けてくれ!」

 

ここで俺に助けを求めるのかよ。

 

「ああ、そうだ。俺が勝ったからお前が裸でグラウンド百周な」

 

「え!?」

 

「いや、当然だろ。最初はもっと優しい奴にするはずだったのに残念だな」

 

まぁ、これであの二人がケンカしないと考えると悪いことばかりではない。

 

「い、いや……会長。駄目ですよね……?他の生徒にも迷惑がかかりますし」

 

「そうですね」

 

「ホッ」

 

会長の言葉に匙が安心したようだ。だが、俺は知っている。会長がそこまで甘くないことを。

 

「さすがに尻叩き千回した後にその体力は残っていないでしょう。それに女生徒には見せられません。ですから後日、女生徒の目の届かないところで走らせます。霧識くんもそれでいいですか?」

 

「なっ!」

 

今の会長の発言に匙が驚いた顔をしている。

 

「そうですね。匙はどうでもいいけど女生徒に迷惑はかけられませんからね。それでいいです」

 

「というわけで話し合いも終わったところで尻叩き千回を開始します」

 

そして尻叩きが開始された。匙の絶叫を周りの生徒が哀れそうに、もしくは楽しそうに見ている。

とりあえず俺はレイヴェルと小猫のところに行くか。

 

「じゃあ、そろそろ昼飯の時間だな。弁当を取りに行くか」

 

「そうですね」

 

そして俺達は校舎に向かう。

 

「そうだ、レイヴェルもオカルト研究部のメンバーと一緒に食べるか?」

 

「いいんですの?」

 

「別に問題ないだろ」

 

その後、イッセー達と合流して皆で弁当を食べた。ちなみに今日はレイナーレじゃなくて自分で作った。やっぱり人に食べさせる分くらいは自分で作らないとな。




今回でドッジボールもして球技大会を終わらせる予定だったのに。予定以上にシーンを追加してしまった結果か。
ついでに書いておくと主人公の技は仁王のイリュージョンです。なったキャラは順番に跡部、大和、千歳、幸村です。幸村に関しては使うつもりはなかったんですけどね。何故か使ってしまいました。

では感想待ってます。

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