匙との決闘が決まった次の日の昼休み。
「今日も部活か?」
松田が俺とイッセーに質問してきた。
「ああ、球技大会に向けて練習中ですよ」
「俺はサボるけど」
と言うより、マトモに練習に参加したことないな。いや、普段もそうか。小猫とゲームをしているだけだし。
て言うか、今日は新人悪魔の顔見せのために会長がオカルト研究部の部室に行っているから練習はないはずだ。興味ないし俺は昼寝しておくか。
「霧識もたまには参加しろよ」
「いや、だってオカルト研究部が球技っておかしいだろ?」
「……それを言われたら何も言えねぇよ」
さすがのイッセーもおかしいと言うのは理解していたのか。
「それよりもイッセー、変な噂が流れているから気を付けろよ」
変な噂?どれのことだ?心当たりがあり過ぎる。
「な、なんだよ、元浜……」
「美少女をとっかえひっかえしている野獣イッセー。リアス先輩と姫島先輩の秘密を握り、裏では鬼畜三昧のエロプレイを強制。その性衝動は転校したての天使にまで及ぶ。日本の文化を教えると言って堕落させていく。そして野獣イッセーの美少女食いは続いていく」
続いていく、って今後があるみたいな言い方だな。後、俺が聞いた噂よりもぬるいな。
「おい!マジか!?俺、そんな風に見られていたのか!?」
「まぁ、これは物語のプロローグ。本番はこれからだ」
やっぱり続きがあったのか。後で聞こう。
「続きなんて聞きたくねぇよ!……って言うか、何で小猫ちゃんだけ噂にないんだ?」
「小猫の噂だけ流さないようにそいつらを痛め付けたからな。ついでに言っておくと、俺は他の噂には関与していない」
あの時の映像は十八禁だな。エロじゃなくてグロで。
「犯人はお前らか!」
ゴッ!ドゴッ!
イッセーが二人を殴った。
「痛いぞ、イッセー」
「でも男子はともかく女子が全く信じてくれないんだよな。『今の兵藤がそんなことするわけないでしょ。馬鹿なの?死ぬの?』って言われたぜ」
二人はショックで泣いているようだ。こいつらの涙なんか気持ち悪いから見たくない。
「ふふーん。俺の人望がなせる業だな」
「俺が木場とイッセーが付き合っているという情報を学園中の女子に流したからだな」
「……は?」
驚きのあまりイッセーが固まってしまった。
「この前の合宿の時に一緒に着替えているところや風呂に入っているところを写真で撮ってな。それを加工して女子に配ったんだよ。学園の女子の半分以上は信じている」
まさか半分も信じるなんて予想外だったが。まぁ、これで俺と木場のホモ疑惑を消すという作戦は成功したわけだ。
「いつの間に!気付かなかったぞ!」
「知らないのか?シャッター音がしないカメラがあることを」
さすがに姿は神器で認識できなくしたが。ちなみに防水性、その他色々と優れた高性能のカメラだ。ヴァーリに冒険先の写真を撮ってきてもらったりしている。まぁ、自分で行く場合もあるが。
「後、漫研の部員がコレで今年の夏コミはイケる、と自信満々に言っていた。ちなみに内容は女好きの変態がイケメンに迫られ同性の良さを知っていく、って感じだったはずだ」
「そんな情報、聞きたくねぇぇぇ!」
そして球技大会当日。
「何で私がこんな格好をしているんですの?」
俺の前には駒王学園の制服を着ているレイヴェルがいる。今日は学園見学ということで球技大会を見に来ている。ちゃんと会長からは許可を得ている。
「俺の神器でこの学園の生徒だと誤認させることは出来ても、服装は無理だからな。下手に目立つのはレイヴェルも嫌だろ?」
本当は服装も出来るけどレイヴェルに制服を着せるために嘘をついた。
「それに似合ってるから問題なし」
「べ、別にそんなこと言われても嬉しくありませんわ……」
照れて顔を赤くしている様子も可愛いな。バレないように写真を撮ろう。
「それよりも速くしないと部長の試合が始まりますよ」
そう言うと小猫が俺の頬を引っ張りながらリアス・グレモリーと会長が試合しているコートに向かう。
「イテテテテッ!ちょ、ちょっと離してくれ!」
「断ります」
マジでこのまま行くつもりか?
マジでこのまま行きました。通りすがりの生徒達に変な目で見られたりしたせいでレイヴェルは離れて歩いていた。
「あー、いてぇ。後で冷やした方がいいな」
試合はちょうど始まったところだな。隣のコートで花戒と仁村も試合をしている。
「私の魔動玉は百八式まであるわ」
「受けてたつわ。支取ゾーンに入ったものは全て打ち返す」
二人共ノリノリで楽しそうだ。
「人前であんなに魔力を使っていいんですの?」
レイヴェルが会長とリアス・グレモリーの試合を見て驚いている。当然、隣のコートの二人も魔力全開で戦っている。周りに被害が出なければ良いが。
「大丈夫だろ。観客を見てみろ」
「キャー、二人とも格好いいです!」
「おおー、すげぇ魔球だ!」
凄い盛り上がりだな。中には元浜と松田みたいにテニスウェア姿を気持ち悪い目で見ている奴もいるが。
「大半は盛り上がり過ぎて気にしていない。そして、大体のことは魔球で説明がつく」
「……この学園の生徒は何とも単純な思考回路をしていますわね」
それは否定できないな。
「部長ぉぉぉぉ!がんばれぇぇぇ!」
聞き覚えのある声がしたと思うと、そこには大声でリアス・グレモリーを応援しているイッセーの姿があった。目線が太ももに集中しているような気がするがどうでもいい。
「会長ぉぉぉぉ!勝ってくださぁぁぁぁい!」
反対側には『生徒会』と刺繍された旗を振っている匙の姿があった。あいつ、この後、俺と試合があることを分かっているのか?
そして二試合とも終わって次は俺と匙の試合。ちなみに結果は両方、ラケットが壊れたことによる引き分け。まぁ、あんだけ魔力を使ってたらそうなるよな。さて、デートの件はどうするか。
「今から霧識先輩と匙先輩の一騎討ちが始まります。実況&解説は私、駒王学園一年の塔城小猫と――」
「レイヴェル・フェニックスでお送りします。……って何で私がこんなことをしているんですの!?」
コートの横に俺が設けた簡易的な実況席に小猫とレイヴェルが座っている。ちなみにルールは何試合もあるので二ゲーム一セットと短くなっている。
「何で実況なんかいるんだ!?」
「そっちの方が盛り上がるだろ。ちなみに審判は生徒会の由良だ」
由良はこういう男同士の熱い展開が好きらしく自分から名乗り出た。念のために言っておくと男同士、と言うのはホモ的なことじゃなくて友情的な意味合いだ。
「匙、サービスプレイ」
由良の合図で匙がサーブを打ってくる。
「この試合、何がなんでも勝つ!」
さすが悪魔。人間と比べると身体能力が優れているから下手なテニス部員よりも良いサーブを打つ。
「だが、この程度では俺には勝てんぞ」
俺は匙のサーブをライジングで返してリターンエースを取った。
「0―15」
「まずは霧識先輩がリターンエースで先制。匙先輩はここからどう持ち返すのか。人の弱点を見付けるのが得意な性格の悪い霧識先輩相手に厳しい展開です」
何か言い方にトゲがあるな。
「……ノリノリですわね。私はどうすればいいんでしょうか?」
流れに乗れば良いと思う。
「クソッ!会長に練習を手伝ってもらったんだ!簡単に負けられるか!」
生徒会の仕事で忙しいのに練習までしていたのか。しかも会長に手伝ってもらっていたとは。選択肢を間違えたか?
「気合いで勝てるほど俺は甘くないぞ」
「何か霧識先輩が敵みたいです」
「あの人は元からそんな感じですわ」
何か実況が失礼なことを言っているな。
匙は練習の成果が出ているのか思ったより強く、さっきからラリーが続いてる。
「ふむ、中々やるな。だが本番はこれからだ」
さて、盛り上げるために用意した必殺技を使うか。
「ほうら、凍れ」
「なっ!」
匙は俺のリターンに対して一歩も動けなかった。
「0―30」
「一体、何が起こったんですの?」
「今のは『氷の世界』。霧識先輩が匙先輩の死角に打ったんです」
勝手に技名を言うなよ。それは俺が格好つけるところなのに。
「そんなことが可能なんですの?」
「普通は不可能です。でも、霧識先輩はその不可能を可能にしてしまった」
そんな持ち上げられても困るんだが。ただ改造人間の観察力を使っただけだし。
「そんなのアリかよ」
「勝つのは俺だ」
予定よりも早いレイヴェルの再登場です。
ついでに言っておくと最初に思い付いた主人公の技は『氷の世界』ではありません。それは次回、使います。
では感想待ってます。