俺が堕天使総督アザゼルに拉致られてから時間が経ち、高校二年生になった。俺がどうやって堕天使から開放されたのか、とか今までに何があったかは後で語るとしよう。ただ、非日常も馴れれば日常になり普通に暮らしている。それでも前よりは楽しいし、大変だ。
放課後、俺が帰ろうとしていると複数の女子に追いかけられている三人組の男子がいた。
「うぉぉぉー!逃げろー!」
こいつは松田。丸刈りで爽やかなスポーツ少年に見えるが、写真部に所属しており女子の写真を下心全開で撮りまくっている変態だ。別名『エロ坊主』、『セクハラパパラッチ』。
「くそっ!見付かったのはイッセーのせいだぞ!」
こいつは元浜。眼鏡を通して女子の体型を数値化できる特殊能力を持つ変態。別名『エロ眼鏡』、『スリーサイズスカウター』。
「ふざけるな!俺は覗いてもないんだぞ!」
こいつは兵藤一誠。特徴は特になし。別名『欲望の権化』、『性欲の塊』。これは別名だったけ?まぁ、どうでもいいか。
「あ、七瀬くん。そこの覗き犯を捕まえて」
三人を追いかけている女子の一人が俺に言ってきた。
やっぱり覗きをしていたのか。こいつらは学習しないな。
「退け、霧識!」
「退くわけないだろ。罪には罰だ、変態共」
俺は三人を鞄をフルスイングして止めた。
「ありがとう、七瀬くん。本当、こいつらには困ったものよ」
「ああ、しっかりボコボコにしてやってくれ」
さて、俺は今日発売の漫画の新刊を買いに書店に行くか。
「ちょっと待て、霧識!俺達は親友だろ!見捨てるのか!」
「誰が親友だ、誰が」
俺は変態三人の叫びを聞きながら校門を出た。
「アレも出ていたのか。予想外の出費だ」
金には困っていないが、今の財布の残りで晩ごはんの材料を買えるか心配だ。いつも必要以上の金額を持ち歩かないのが災いしたな。
「あれ?霧識じゃねぇか」
俺は書店から出たところでイッセーと会った。
「また、漫画か?お前ももっとエロに目を向けろよ」
「俺はお前らみたいにモテないわけじゃないからな」
「くそっ!モテる奴の余裕かよ。木場といいお前といい何でモテるのに彼女を作らないんだよ。意味が分からん」
木場というのは学年で一番モテるイケメンだ。でも、告白されても断り続けているせいでホモ疑惑が上がっている。主に俺との。別に木場とは交流がないのに何故、こうなったのだろう?
「あの兵藤一誠さんですか?」
突然、黒髪の美人がイッセーに話かけてきた。……こいつ、堕天使だな。何のようだ?
「ああ、そうだけど。何か用かな?」
分かりやすいぐらい動揺してるな。
「私と付き合ってください!」
何が目的は分からないけど面白いことになってきたな。
「霧識、おかえり」
俺が家に帰ると『無限の龍神』オーフィスが出迎えてくれた。ヴァーリの紹介で会って以降、妙になつかれた。オーフィス曰く『霧識には力とは違う何か感じる』とのこと。そのせいで度々、俺の家にやって来ている。ヴァーリチームと合わせて半ば居候状態だ。
ちなみに俺は普通の一軒家で一人暮らしをしている。親は仕事中毒で俺に金だけを渡して帰ってこない。
「おう、ただいま。って、黒歌。勝手に人の家の冷蔵庫の中身を食べるのをやめろ」
「別にいいじゃないかにゃ」
勝手に冷蔵庫からチョコレートを出して食べているのは黒歌。妖怪の猫又の中でも強い力を持つ『猫魈』だ。そうは見えないぐらい図々しい奴だ。
「すみません、霧識さん。私はちゃんとやめるように言ったんですけど」
魔法少女の格好をした少女はルフェイ・ペンドラゴンだ。
「ルフェイは悪くない。悪いのは全部、そこの野良猫だ」
「酷いにゃ。自分がロリコンだからって私だけ冷たく当たって」
「何回も言っているが俺はロリコンじゃない」
「嘘にゃ。私のこの素敵ボディには興味を示さないでルフェイやオーフィスに優しいのは霧識がロリコンだからにゃ」
「俺が冷たいのはお前が図々しいからだ」
て言うか、その前にチョコを食べるのをやめろ。
「ところでヴァーリとお義兄さんは来てないのか?」
「はい。ヴァーリ様とお兄さまは今日は用事があって来れません」
そうか、二人は来ないのか。だったら飯は足りるな。
「前から思っていたけどアーサーを呼ぶ時のお兄さんの発音がおかしくないかにゃ?」
そんなことはない。これで合ってる。
「霧識、美猴のこと忘れてる」
「オーフィスは優しいな。あんな猿のことを覚えているなんて」
美猴は西遊記で有名な孫悟空の子孫だ。かなり自由な性格で黒歌に次いで迷惑だ。
「じゃあ、俺は着替えてくるから荷物を片付けといてくれ」
「分かりました」
「我もする」
「私もするにゃ」
「お前は寝てろ」
黒歌が参加すると余計に仕事が増えるからな。
「酷いにゃ!」
「うるさい。だったら真面目にやれ」
それだけ言うと俺は自分の部屋に服を着替えに行った。
ルフェイがヒロインのはずなのに黒歌の方が主人公と絡んでるな。
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