俺は今、のんびりとクッキーを食べながらイッセーと木場の戦いを見物している。
木場の方を見てみるとカーラマインが炎の渦を巻き起こしていた。
「我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風を司る!受けよ!炎の旋風を!」
俺達の場所から離れているとはいえ熱い。とりあえず俺と小猫は熱さを認識できないようにした。レイヴェルは大丈夫だろ。
「祐斗先輩の剣が融けてます」
木場が今だしていてる氷の剣がカーラマインの熱風で融けていた。すると木場は刀身の融けてなくなった剣を前に突き出した。
「だったら
豪快な音を立てていた旋風が木場の剣のほうへ吸い込まれていった。よく見ると木場の剣の刀身には円状の特殊な刃が生えており、円の中心には不可解な謎の渦が出来ている。あそこに風を吸い込ませたのか?
そして木場は次に地面に手のひらを向けると、グラウンドから複数の魔剣が飛び出してきた。しかも形状から刀身まですべてが違う。
「あれが祐斗先輩の神器、
ほぉ、それは面白い。そう言えば英雄派には自由に聖剣を作ることが出来る奴がいたな。アレの魔剣バージョンか。
「あの剣士、中々やりますわね。カーラマインでは勝てそうにありませんわ」
「自分の仲間がやられているのに余裕そうだな?」
「貴女がさっき言った作戦は私の仲間が減れば使えませんからね」
結構、頭が良いな。しかも仲間がやられることをプラスに考えることが出来るとは。俺好みだ。
「他にも作戦は十二個あるから問題ない」
「どうせ、ハッタリでしょう?」
見透かされてるな。まぁ、それでも問題がないのは本当だが。
『
イッセーの倍加が終わったみたいだ。
「ブーステッド・ギア!爆発しろ!」
『
イッセーの両手に力の波動が集まっていく。そして、それを撃ち出した。
「ぐわっ!」
威力を抑えているようだが、それでも撃ち出した魔力の勢いに負けてイッセーが後方に吹っ飛んだ。まだイッセーでは赤龍帝の力を使いきれてないな。レーティングゲームが終わったら、次の戦いに備えてトレーニングメニューを強化するか。ドラゴンの力は戦いを呼び込む。強くならないとヴァーリに追い付く前にイッセーが死んでしまう。
「イザベラ、受け止めるな!避けろ!」
カーラマインが叫ぶ。それを聞いてイザベラは受け止めようとしていたのをやめて回避行動を取った。
目標を失ったイッセーの魔力の塊はテニスコートに飛んでいった。そしてテニスコートは跡形もなく消し飛んだ。
「デタラメな威力ですわね」
「赤龍帝の力はまだまだ、あんな物じゃない」
「霧識先輩はイッセー先輩の神器に詳しいんですか?」
「いや、別に。そういう訳じゃない。ただ、神を倒すことが出来ると言われているロンギヌスがあの程度だとは思えないだけだ」
まぁ、実際はある程度は詳しい。前にアルビオンから昔話を聞いたことがあるからな。
イッセーとカーラマインが格闘戦を開始する。イッセーがカーラマインの攻撃をガードした後、隙をついて一撃いれる。もしかして、今のは体育館のアレか?
「弾けろ!『
イザベラの服が弾け飛ぶ。そして反射的に体を隠す。イッセーはその隙をついて魔力の塊を放ってカーラマインを倒す。
『ライザー・フェニックス様の『戦車』一名、リタイア』
「よっしゃ!」
イッセーが歓喜の叫びを上げた。自分が戦えていることが嬉しいのだろう。
「イザベラを倒したのは評価しますけど、酷い技ですわね。女性の服を消し飛ばすとは……」
「俺の友達がドスケベの変態でごめんなさい」
俺はレイヴェルに頭を下げて謝る。木場もカーラマインに謝っている。
「ここね」
「あれ?イザベラ姉さんは?」
「まさか、やられちゃったの?」
ここでライザーの残りの眷属『騎士』と『僧侶』、『兵士』の獣耳の女、二人がやって来た。これで全員だな。
「お前らもクッキー食べるか?……って言いたいところだけど、小猫が食べてしまって、あんた達にやる分はないんだ。悪いな」
にしても食べるの早すぎだろ。こっちは俺とレイヴェルの二人で食べてるけど、まだ少し残ってるぞ。
「いや、別にいらないけど。て言うか、ここでのんびりしてて良いの?」
「何が?」
「ライザー様と、あんたところのお姫さまが一騎討ちするんだって。ほら」
言われた方向を見てみると、新校舎の屋上に炎の翼を羽ばたかせているライザー・フェニックスと黒い翼を羽ばたかせているリアス・グレモリーがいた。よく見るとアーシアも一緒にいるな。もしかしてライザーからの一騎討ちの申し出でも受けたか。これでは俺のプランが台無しだ。ちょっと遊び過ぎたな。
「どうしました?そんな焦った顔をして」
レイヴェルが嬉しそうな顔をしている。こいつ、性格が悪いな。
「このまま負けたら面白くないからな」
「おい、霧識!部長が負けるって言うのかよ!」
「ああ、確かにグレモリー先輩は『紅髪の
いや、勝つこと自体は余裕だ。だが、それでは俺の目的が達成できない。
「……らしくないですね、先輩」
「俺は元々、負けることには抵抗がない。負けて達成できることもあるからな。俺は常に自分に損のないように行動するだけだ」
ん?負けて達成?ああ、そうか。レーティングゲームで達成できなくても問題ないのか。後で挽回できる。
「どうしましたの?急に楽しそうな顔をして」
「いや、別に。気にしなくていい」
イッセーの方を見てみると、すでに走り始めようとしていた。
「霧識、小猫ちゃん、木場。ここは任せた。俺は部長のところに行く」
「何を馬鹿な言ってらっしゃるのかしら?シーリス、あの男をとめなさい」
「御意」
そう言われるとシーリスと呼ばれた『騎士』がイッセーの前に立つ。
「では、そろそろ私も戦います」
小猫が立って獣耳をした『兵士』二人と対峙した。
「よし、頑張れ」
「先輩は戦わないんですか?ニ対一なんですけど」
「小猫なら大丈夫だろ。まぁ、もし無理だと言うなら協力するが」
「必要ないです」
そして小猫も戦闘を開始する。
「あの『戦車』の方、大丈夫ですの?ニィとリィは獣人の女戦士。体術は大したものですわよ」
確かにレイヴェルの言う通り押されぎみではあるな。間違いなく一対一なら勝てるだろうが、相手の連携が厄介だ。
「まぁ、大丈夫だろ」
「どこから、そんな根拠がくるのか気になりますわ」
どこから、と言われてもただの事実を言ってるだけなんだが。
「おい、シーリス。そいつは触れただけで女の服を消し飛ばす技を持ってる。他の連中も一応、気を付けておけ」
「何で敵に情報を与えるんだよ!霧識は誰の味方なんだ!」
イッセーが倍加をして逃げ回りながら俺に文句を言ってきた。
「俺は可愛い者の味方だ。そして悪の敵だ」
「俺は悪か!」
何を今更、言ってるんだ?
「「悪ですわ(ね)」」
小猫とレイヴェルが同時に言う。どう見てもイッセーは女の敵だ。
「イッセーくん、ごめんね。僕もフォロー出来ないよ」
「木場までか!さすがに俺も泣くぞ!」
ドォォォォン!
急にフィールド全体を震わせる振動がきた。屋上の方を見てみるとリアス・グレモリーとライザー・フェニックスがやり合っている。ライザーは余裕の表情でリアス・グレモリーは息も上がってギリギリだ。そろそろヤバいな。
「俺に力を貸しやがれ!ブーステッド・ギア!俺は部長を助けるんだよ!」
『
イッセーの籠手の形が変化していく。甲の部分にあった宝玉の他に、もう一つの宝玉が腕の方に現れ、全体のフォルムも少し変わっている。
なるほど。イッセーのリアス・グレモリーを助けたいという強い思いに応えて進化したのか。
「木場!お前の神器を解放しろ!」
イッセーはそう言うと木場の方に向かって走り出した。
「
木場はイッセーの真意が分かっていないようだが、剣を地面に突き刺して神器を解放した。すると、いくつも魔剣が地面から姿を現す。
そしてイッセーは地面に拳を放ち叫んだ。
「ブーステッド・ギア!第二の力!『
『
運動場全域が刃に包まれた。様々な形状の刀身が天に向かって鋭く飛び出している。
これは譲渡の力だな。籠手で高めた力を他の者、もしくは物に譲渡し、力を爆発的に向上させることが出来る能力。
「どこを触っているんですの!」
「仕方ねぇだろ。我慢しろ」
ちなみに俺は炎の翼を出して飛んでいるレイヴェルに抱き付いて、これを避けた。こんなの人間の俺が食らったら死ぬぞ。にしてもレイヴェル、意外と胸があるな。着痩せするタイプなのか。
「ちょっと暴れないでください」
下を見てみると、いつの間にか小猫が俺に引っ付いていた。
ライザーの眷属達は地面から生える魔剣に体を貫かれている。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』二名、『騎士』二名、『僧侶』一名、リタイア』
今のでレイヴェル以外の敵は全滅か。そして魔剣が出てくるのが収まったところで俺達は地面に降りた。
「さ、さすがに二人は重いですわ……」
「悪いな。後で、ちゃんとお礼はするから」
「当然ですわ」
でも、何をしようか。コスプレが好きなら俺の家にある服を貸して撮影会をするんだが。
『リアス・グレモリー様の『女王』一名、リタイア』
そう言えば、まだオバサンが残ってたな。忘れてた。
そして動揺している木場はオバサンが近付いてくるのに気付かず攻撃を食らった。
『リアス・グレモリー様の『騎士』一名、リタイア』
木場がやられたことでグラウンド中にある魔剣が崩れていく。一気に人数が減ったな。
「てめぇ、降りてこい!俺がぶっ潰してやる!」
姫島朱乃と木場がやられたことで冷静さを失ってるな。別に死んだわけじゃないし、これはゲームなんだから気にしなくてもいいと思うが。
だが、今までの戦いで限界がきていたらしく、その場で転倒した。
「仕方ないな」
そう言うと俺はイッセーに『フェニックスの涙』を飲ませて回復させる。
「なっ!ダメージがなくなっていく」
「ちょ、何で『フェニックスの涙』を持っているんですの!?」
「さっき抱き付いた時に拝借した」
レイヴェルが『フェニックスの涙』を持っていて良かった。
「さぁ、行け。イッセー。ここは俺に任せろ。お前はリアス・グレモリーを助けてこい」
ここは俺に任せてお前は先に行け、一回は言ってみたかった台詞をついに言えた。
「おぅ、任せた」
そう言うとイッセーは新校舎に向かって走り出した。
「さっきまで戦いもせず、しかも私から奪った『フェニックスの涙』で何を格好つけてるんですの?」
レイヴェルがジト目で言ってきた。折角、格好つけたのに台無しだ。
「まぁ、いい。とりあえず小猫とレイヴェル、それにオバサン。今から見ることは秘密にしてくれよ」
この戦いを撮ってるカメラが俺達を認識できないようにした。俺の力は機械さえも騙すことが出来る。これから俺が使う力を他の連中に見られたくない。
「まぁ、見ることは出来ないだろうけど」
「何をするつもりか知らないけど、もしかして私を倒すつもり?」
「そのつもりだよ、オバサン」
そして俺は周りに聞こえないように呟いた。
「
次回、レーティングゲーム決着。今まで何もしていない主人公がついに動きます。
では感想待ってます。