ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第17話 レイヴェル

現在は俺も小猫から通信機器を貰って、別行動している木場に合流しようとしているところだ。

ん?敵の気配を感じる。

 

「と、危ない!」

 

俺は敵の奇襲攻撃を小猫を抱き抱えながら避ける。

 

「ありがとうございます」

 

そして、小猫を降ろす。

 

「残念。意外とやるわね」

 

声のした方向を見てみるとフードを被り魔導士みたいな格好をしているオバサンがいた。確かライザーの『女王』だったな。

 

「人がもっとも油断するのは目的を達成した時だ。それは悪魔も同じ。そしてライザーはサクリファイスを好んで使う。このタイミングで攻めてくることは容易に予想がつく」

 

「頭が良いのね。でもライザー様を倒すことは出来ない。無駄な足掻きよ」

 

「あら、それはどうでしょう」

 

姫島朱乃がやって来た。

 

「確か『雷の巫女』でしたね。貴女と戦ってみたかった」

 

「あらあら、では私がお相手しましょう。『爆弾王妃(ボム・クイーン)』さん」

 

「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ」

 

なるほど。『爆弾王妃(ボム・クイーン)』と呼ばれるのは嫌いなのか。

 

「じゃあ、姫島先輩。そのオバサンの相手は任せました」

 

「ちょ、オバサンって私のことですか!?」

 

妙に焦っているオバサン。もしかして年齢のことを気にしているのだろうか?

 

「だって『爆弾王妃(ボム・クイーン)』って呼ばれるのが嫌いなんだろ?」

 

「オバサンよりはマシよ!」

 

めんどくさいな。だったら仕方ない。

 

「じゃあ、爆弾王妃(ボム・クイーン)オバサン」

 

「殺すわよ!」

 

そう言ってオバサンは俺に攻撃を仕掛けようとする。短気なオバサンだな。

 

「貴女の相手は私ですわ」

 

姫島朱乃がオバサンに向かって雷を放つ。

 

「ここは私に任せて木場くんのところに向かってください」

 

そして俺達は今度こそ木場のいる運動場に向かう。

 

「戦場で敵を無駄に煽るのはやめてください」

 

「これで相手が冷静さを失ってくれたらラッキーだろ?」

 

本音は体育館の件のストレス発散だが。でも、あんなオバサンを弄っただけでは満足できない。どこかに可愛い女の子はいないかな。

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、リタイア』

 

消去法で考えると、やったのは木場か。一気に三人も倒すとはやるな。

これで向こうはライザー含めて九人。こっちは七人。まだ向こうの方が多いのか。

 

急にイッセーが体育用具を入れる小屋の物陰から現れた手に掴まれて引きずり込まれた。

 

「敵か?」

 

見てみると、そこにはいたのは木場だった。

 

「……おい、イッセーをこんな人気のないところに連れ込んでどうする気なんだ?」

 

「い、いや、違うよ!別に僕はそんなこと考えてないよ!」

 

焦っているところが怪しい。

 

「祐斗先輩、時と場所は選んでください」

 

「小猫ちゃんまで!だから違うって!」

 

そんなに誤魔化さなくていいと思うぞ。確かに皆にバレてる訳ではないが、それでも俺と小猫は知っているんだから。

その時、元気の良い女の声が聞こえた。

 

「私はライザーに仕える『騎士』カーラマイン!こそこそと腹の探り合いをするのも飽きた。リアス・グレモリーの騎士よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!」

 

見てみると野球部のグラウンドの中央に甲冑を装備した女性がいた。にしても豪快な女だな。俺と気が合いそうにない。後、ライザーを呼び捨てにしなかったか?

 

「よし、これで話を誤魔化せる」

 

木場はそうボソッと言ってライザーの『騎士』のいる野球部のグラウンドに向かう。別に隠す必要もないと思うが。

 

「僕はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』木場祐斗」

 

「俺は『兵士』の兵藤一誠だ」

 

木場につられてイッセーも名乗った。仕方ないので俺と小猫もグラウンドに向かう。

 

「そう言えば俺は名乗る時に何て言えばいいんだ?俺は眷属じゃないから役割がないんだが」

 

名乗る時に格好がつかないというのは大問題だ。

 

「普通に人間で良いんじゃないですか?」

 

「それだとインパクトが足りない」

 

「じゃあ、お菓子職人で」

 

「それは小猫の願望だろ」

 

俺達が着くと、すでに木場とカーラマインは一対一の対決を始めていた。血気盛んな奴等だな。

 

「ヒマそうだな」

 

イッセーの近くに行くと後ろから、顔の半分にだけ仮面をつけた女に声をかけられた。確かライザーの『戦車』だったか。

 

「全く頭の中まで剣で埋め尽くされた者同士、泥臭くてたまりませんわ」

 

今度は金髪縦ドールの女の子が話し掛けてきた。にしても縦ドールって漫画では見たことあるけど現実では初めてだな。確か『僧侶』だったはずだ。

 

「そりゃ、同意見だ。俺は真正面から戦うよりも知略の方が好きなんだ」

 

「自分からレーティングゲームに参加するような人ですから、貴方も戦闘好きだと思っていましたわ」

 

「俺は快楽主義者だから面白そうな事には積極的に関わることにしてんだよ」

 

ここでイッセーが急に後ろに飛び退いて、二人に構えを取った。

 

「ブーステッド・ギア、スタンバイ!」

 

Boost(ブースト)!』

 

しかも倍加まで始めた。俺が話している途中に無粋だな。

 

「私、貴方のお相手はしませんわよ。イザベラ、貴女がお相手してあげたら?」

 

イザベラと呼ばれた女は素直に頷いて前に出た。

 

「よし、イッセー。任せたぞ」

 

「おう!って、だから何でお前が指示するんだよ!」

 

文句を言いながらもイッセーは前に出てイザベラと対峙する。

そして戦闘が開始した。

 

「ところで、お前は戦わないのか?」

 

俺は『僧侶』のところに行って雑談を開始する。

 

「お前ではありませんわ。私にはレイヴェル・フェニックスという名前があります」

 

「フェニックス?」

 

「ライザーは私の兄ですわ。私は勉強のためにこの場にいるだけですわ」

 

へぇ、あいつの妹か。妹?妹が眷属。しかも、あいつは眷属をハーレムだと勘違いしている馬鹿。

 

「もしかしてライザーはシスコンか!?」

 

シスコンはお義兄さんといい黒歌といい、めんどくさい。それに魔王のサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンも超弩級のシスコンだという話だ。もしライザーもシスコンだというなら、めんどくさいことになりそうな気がする。

 

「別にお兄様はシスコンではありませんわ。お兄様曰く『妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある。ほら、近親相姦っての?憧れたり、羨ましがる者は多いじゃん?まぁ、俺は妹萌えじゃないから形としての眷属悪魔ってことで』だそうです」

 

確かに妹をハーレムに入れたいというのは理解できる。でもライザーがシスコンじゃないというのは良い情報だ。シスコンは怖いからな。

にしても、立ったまま会話するのもしんどい。俺はバッグからシートを取り出す。

 

「それよりも貴方は戦いませんの?」

 

「俺は一対一の対決を邪魔するほど無粋じゃないからな。小猫、ちょっと端を持ってくれ」

 

「分かりました」

 

小猫に協力してもらってシートを引き終える。

 

「って、何をしていますの!?」

 

「何、って女の子をこんな地べたに座らせる訳にはいかないだろ?」

 

俺逹は靴のままシートに座る。靴を脱いで、咄嗟の時に動けなかったら困るからな。

 

「そういうことじゃなくてですね、何でゲーム中に休憩しているのかを聞いているのです!」

 

「することがないからだろ?んなことよりもレイヴェルもこっち来れば。クッキーと紅茶があるぜ」

 

そう言って俺はバッグからクッキーの入った入れ物と水筒を取り出す。

 

「もう真面目に貴方の相手をするのは嫌ですわ。どんな思考回路をしていらっしゃるんですの?」

 

諦めたような感じでレイヴェルもシートに座る。

 

「ほら、食ってみろ。俺の手作りだ」

 

そう言って俺はレイヴェルにクッキーを差し出す。

小猫はすでにクッキーを黙々と食べている。

 

「私の方が上ですわ」

 

レイヴェルが自信満々に言う。

 

「レイヴェルもお菓子を作るのか?」

 

「たしなみ程度ですけどね」

 

「だったら先輩と勝負したらどうですか?私が審判をします」

 

絶対、自分が食べたいだけだろ。

 

「これを食べただけで充分ですわ。私の勝ちです」

 

「ふむ、そこまで言われたら俺も引けないな」

 

「いいですわ。私が格の違いというものを見せてあげますわ」

 

「あ、そうだ。紅茶、飲むか?」

 

そう言って俺はレイヴェルに水筒を差し出す。この紅茶はお義兄さんが選んだ物でかなり美味しい。

 

「貴方が口をつけた物なんて飲めませんわ」

 

「別につけてないから大丈夫だ。俺はもう一個の奴を飲むから」

 

バックから別の水筒を取り出す。

 

「ところで、そのバッグ。前から持ってました?気付かなかったのですけど」

 

レイヴェルが水筒を受け取って飲みながら聞いてきた。

 

「俺の神器の能力は認識を操ること。走る時に邪魔にならないようにバッグを認識できなくしてたんだよ」

 

さすがに体育館での戦闘中はどけてたけどな。おかげでバッグを取ってたら雷に巻き込まれそうになって焦ったが。

 

「敵に自分の能力を教えるなんて余裕ですわね」

 

「俺の能力は知られたからって対応できないから問題ない」

 

「でも、不死身には勝てませんわよ」

 

「不死身程度で俺に勝てるわけないだろ。俺には十三のフェニックス無効化システムがあるからな」

 

まぁ、嘘だけど。実際は四、五個だけだ。いや、俺の正体を隠す必要がなかったら本当に十三個あるかもしれない。

 

「へぇ、それは是非、聞いてみたいですわね」

 

「まずは眷属にライザー・フェニックスをリアス・グレモリーに、俺をライザー・フェニックスだと認識させるんだ。そうすれば俺の命令で自分の眷属が襲ってくる。眷属をハーレムだとか言ってる奴なら心が折れるだろ」

 

「酷いことを考えますわね」

 

「先輩は人の嫌がることをするのが得意ですからね」

 

この程度が俺の本気な訳ないだろ。本気ならライザーが一生、立ち直れないぐらいのことをしてやるさ。

 

「霧識に小猫ちゃんも何で戦闘中に敵とのんびりお茶会をしてんだ!?」

 

イッセーが今更ながらツッコんできた。今、倍加が終わったみたいだ。

木場の方は複数の剣を出しながら優勢に戦っている。面白い俺好みの神器だな。

これは俺が戦闘に参加するよりも小猫とレイヴェルとお菓子を食べながら見ている方が楽しそうだ。




予定よりもレイヴェルとの雑談が長引いたせいで、ほとんど戦闘シーンがない。ちなみに考えている内容はまだ結構あります。元々、主人公にはあまり戦闘はさせない予定だったけど、ここまでないのは予想外です。多分、次回は戦闘シーンがあります。

では感想待ってます。

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